経済産業省
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デジタル・ネットワーク社会における出版物の利用活用の推進に関する懇談会 出版物の利活用の在り方に関するワーキンググループ(第3回)‐議事要旨

日時:平成22年5月20日(木曜日) 10時~12時
場所:グランドアーク半蔵門 4階 富士(西)

出席者(敬称略)

池田 隆夫、池田 政寛、牛口 順二、大久保徹也、大橋 信夫(大川 哲夫構成員代理)、加藤 嘉則、喜多埜裕明(畠 良構成員代理)、佐藤 陽一、里中満智子、渋谷 達紀、杉本 重雄、田中 久徳(遊佐 啓之構成員代理)、新居 眞吾、楡 周平、野口不二夫、服部 達也、広瀬 英治、船本 道子、細島 三喜、三田 誠広、矢田 泰規

議事概要

1. 矢田構成員から資料利3-2「電子ブック技術(XMDF)の取組みと国際標準化推進について」に基づき、説明。

  • アメリカでアップルが展開するiTunesミュージックストアでは、1ドル99セントでコンテンツを販売し、楽曲のダウンロード数は増えているが、マーケット自体は縮小している。こうした現象が日本の出版業界にも訪れないだろうかと危惧している。
  • アメリカ流のビジネスモデルが日本に持ち込まれ、日本の出版文化、ビジネスモデルが壊されてしまうことに対して対策を講じることが必要。
  • ネット時代においても日本の出版文化をきちんと守るため、電子化することによってコンテンツの付加価値を高め、出版ビジネスを発展させる方法を考えていくことが必要。特に文化的に近いアジア圏に輸出産業として発展させていくことが重要。
  • XMDFは、国内における展開にとどまらず、フランスやアジア圏におけるコミックの海外展開の中で、昨年2月にIECの国際標準という形で標準化に成功した。
  • 国際標準を取ったということは、日本発のビジネスモデルを構築するにあたり、非常に有力なツールになるということ。例えばWTOにもTBT協定という協定があり、加盟国は、国際的に認められた標準仕様や勧告については強制力を持って採用しなければならないという基本的な考え方がある。
  • XMDFは、2001年から文字物を中心に発展してきたが、途中でテキストだけではなくて、音声や動画も取り込める形になり、辞書やコミックなどのコンテンツが再生可能となった。2008年には、電子辞書についても再生可能となり、「辞書機能」として携帯電話などにプリインストールされるようになった。
  • コンテンツ・タイトル数は、テキスト系については3万タイトル、コミック系については6万3,000ファイル、辞書系については1,000タイトル。
  • XMDFは、KDDIとソフトバンクにおける端末が対応している。また、ドコモはメーカー個別ということで、シャープ製やNEC製の端末が対応し、その他の端末はJAVAで対応しているなど、日本の携帯電話の大半で使用可能。さらに、ゲーム機については、ソニーのPSPや、ニンテンドーのDSの楽引辞書はこのXMDFで提供しているとともに、その他の専用端末等でも再現できる。
  • XMDFは、基本的には、XMLという国際標準のベースのフォーマットを改善したものであり、(1)日本の出版コンテンツの表現力を多彩に取り込んでいること、(2)著作権保護ということで、改ざん防止、DRMなど、不正にコピーをした場合に追跡するというフットプリント機能を備えていること、(3)高速アクセスということで、CPU、メモリー空間がない端末でも再現できる非常に軽いプラットフォームになっているといった3つの特徴がある。
  • テキスト拡張機能については、バックグラウンドの背景画像とテキストを二重で重ね合わせること、その中にBGM機能を取り込むこと、クイズであるとか学習系の機能で答えが見えないようにすることにも対応できる。
  • XMDFのコンテンツは、文字と同時に音声、動画再生が可能。
  • XMDFのオーサリングツールにおいては、テキスト系、画像系、HTML素材、外字、音声といったものについて表現力を保ちながら対応している。
  • XMDFでデータを作っておけばいろいろな端末における利用が可能となる、ワンソースマルチユースシステムを構築している。
  • XMDFが国際標準となったので、今後、このXMDFに他のフォーマットを統合し、日本発のビジネスモデルが組み込めるような形にすることが重要。
  • 日本の文化を守りながら日本の出版コンテンツがユーザー(海外ユーザーも含む)に評価されるような仕組みに持っていき、出版業界に携わる方々がビジネスとしてウィン・ウィンな関係が築けるものを構築していくことが必要。そのためには、日本の出版ビジネスを拡大し、輸出産業として発展させていくことが重要。

2. 野口構成員から資料利3-1「米国市場における電子書籍業界の概況」に基づき、説明。(内容については非公開)

3. 意見交換

  • 米国において、電子書籍の最大の支持者は年配の方。紙の本は字が小さくて読みづらいが、電子書籍は、字の大きさを自由に変えることができ、本を読まなくなっていた年配の方々の需要を喚起した。実際に電子書籍が売れている地域のユーザー調査をしたところ、平均年齢が非常に高かった。Text to Speech等、障害者の方々に配慮した電子書籍の提供は、デイジー出版と併せて、さらに積極的に取り組むべき。
  • アメリカでは特に出版物に関するレーティングが厳しく、出版者から許諾をもらえない場合がある。特に性表現を含めたものに関しては、文化の違いがあり、アメリカのルールに従ってビジネスをしている。
  • 漫画に対する海外における表現規制については、ストーリーに継続性がある場合においても、各話において規制対象となるものと、そうではないものに分かれる場合がある。
  • 日本の漫画は右から読むという特色がある。こうした日本の漫画を世界に普及させていく、あるいはビジネスモデルを確立するためには、日本として電子コミックに係る技術、ビジネスモデルを輸出していくことが必要。
  • アメリカで発行されている日本の月刊漫画誌は、基本的には12歳以上を対象としている。また、その内容についても自主規制という形になるが、かなり配慮をしている。こうした努力を通じてコミックという文化の定着を試みている。
  • 日本の漫画を海外で発行する際に焦点となるのは、暴力表現及び性表現の2点。1コマのためだけに全巻配信停止となることは読者にとっても好ましくないので、大抵の作者は部分的な修正を承諾している。
  • コミックに対する規制の国際間の異なり、文化や宗教観の違いであるが、相手に合わせようとするだけでは日本の文化は理解されないので、部分的な修正について、その本質を失わないものとして許容できる作品や、こうした行為に適切に対応できる作者だけが海外に進出していけばよい。
  • 米国の出版市場においては、電子書籍配信事業者は、大手出版者のみならず、中小様々な出版者とも取引をしている。中小出版者の中には、自ら電子化するノウハウやインフラがないところもあるが、中小出版者及び個人の電子出版物を束ねて電子化して権利処理を請け負うビジネス主体も出てきている。また、個人出版の動きや個人の出版をサポートするような会社も出てきており、デジタルのみの事業の枠組みが形成されてきている。
  • 日本は契約よりも信頼の中でビジネスをしてきたということがあり、一概にアメリカの契約のスキームを持ってきても機能しない。その中で、日本において、時代に対応した権利処理のプロセスを構築していくことが必要。当該プロセスの構築にあたっては、利益の関係者への適切な分配について議論できるような枠組みなり仕組みをについて用意することが必要。
  • 基本的には、権利処理は契約で行うべきであり、契約システムの形成が重要。
  • アメリカの出版者は、JASRACのように権利の信託譲渡を受けているという形になっており、電子書籍事業者に対するライセンスを発行することも容易である。
  • アメリカの場合は権利交渉窓口が明確。これに対して日本は不明確でありこうした課題を解決するような仕組みの構築が必要。
  • アメリカでの電子書籍配信の取組については、中小規模の出版者の方が、電子化によるメリットに対して期待している。市場を引っ張る作品は大手出版者から出されているケースが圧倒的に多く、規模面では大手出版者が市場を引っ張っている構図にはなるが、ビジネスのメリットとしては、大手よりも、流通上比較的フリーな立場に置かれるケースが多い中堅、ローカルな出版者に非常に大きい。
  • アメリカの場合、通常、出版後は出版者が全ての権利を所持しているので、電子書籍を配信する場合は、契約期間内であれば出版者が窓口となって対応する。また、出版契約は、出版者が絶版に決定した場合は、作家にそれまで所持していた権利を全部返すので、著作権者が明確になる。日本の場合、出版権はその単行本の出版権だけで、その後の取扱いについてあいまいであることが多く、電子出版をする場合に問題を生む可能性があるので、一定のルールを作ることが必要。
  • 海外で既に電子配信されているコンテンツを日本で販売する際の窓口が不明確。
  • 例えば、アメリカで販売されている雑誌が、日本国内において売られる場合は、船賃等が加わり若干高く売られている。その雑誌の電子版を低価格で日本で配信した場合、書店の本は売れなくなる可能性がある。
  • 日本で雑誌・書籍をデジタル化して配信する場合の問題点の中の1つは、出版物がデジタル化された再販制度が適用されず、同一出版物同一価格が維持できないということ。これについては適切なルールが必要。
  • 例えば、同様の英語出版物がアメリカとイギリスの出版者双方から出版されている場合、日本において当該英語出版物を輸入して販売する際は、イギリスの出版者ではなくてアメリカの出版者から輸入しなければならないといった制限があることがある。海外の出版物の取扱いについてはこうしたルールを踏まえることが重要。
  • 紙媒体における出版にあたり、これまでは、作家と出版者との間に明確な出版契約を結ぶということはないが、電子出版の際には出版者と著作者との間で明確な契約を結んでおくことが必要。
  • 出版にあたっての契約については、会社の対応によるところが大きい。いわゆる大手の出版者は、出版が決まると、印税率や、出版者が権利をおさえる範囲、電子出版に係る取り決めが記載された契約書を提示し、作家の意向に沿った形で契約を結ぶ。
  • 二次利用に関しては、作家が具体的な申し出に一つ一つ対処して、条件交渉を行うことはできない。今後、書籍の電子化が進めば、契約ベースで、二次利用に係る取り決めも事前になされるようになる。
  • 現在は、二次利用に係る取り決めは、概ね契約書に記載されているが多い。トラブルはほとんど個人的な、作者の考え方、資質、そして編集部との関係性に起因するものであり、電子化にあたっても過度に心配する必要はない。
  • アメリカの出版者の多くが、電子的な配信の権利に係る契約を著作者と締結するが、書籍の中の写真やチャート等は、権利者から許諾が取れないケースが圧倒的に多い。本文以外の、写真、チャート、イラストに係る権利処理が、アメリカにおいて電子書籍を配信するにあたり、出版者側の1つのハードルになっている。
  • 雑誌1冊に数百人のライツホルダーがいるので権利処理ができない場合が多い。アメリカの場合、記事、写真とともに、依頼した時点で包括的に契約を行う。日本の場合はそういった慣習がなかったので、何らかのガイドラインを構築する方向で対応する予定。

4. 渋谷主査から、今後の進め方について説明。

  • これまで3回のワーキングチームの会合で、ヒアリングと意見交換を行い、様々な意見を頂戴したが、6月中に懇談会において一定の取りまとめを行うことになっており、論点を整理した上で、取りまとめに向けたご議論をいただくことが必要。
  • 次回のこのワーキングチームにおいて、これまでの議論を踏まえ、論点を整理させていただいた資料を用意し、その資料に基づいてご議論いただきたい。
  • 論点を整理するに当たって、意見を追加したい場合は、事務局宛に提出いただければ、次回の資料にできる限り反映する。

問い合わせ先

経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課)
TEL:03-3501-9537

 
 
最終更新日:2010年8月8日
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