経済産業省
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デジタル・ネットワーク社会における出版物の利用活用の推進に関する懇談会 出版物の利活用の在り方に関するワーキンググループ(第5回)‐議事要旨

日時:平成22年6月1日(火曜日) 10時~12時
場所:学術総合センター 1階 特別会議室

出席者(敬称略)

池田 隆夫(朝田 大構成員代理)、池田 政寛、牛口 順二、大久保徹也、大橋 信夫、加藤 嘉則、喜多埜裕明、佐藤 陽一、里中満智子、渋谷 達紀、島並 良、杉本 重雄、田中 久徳、徳田 英幸、新居 眞吾、野口不二夫(簑島 俊和構成員代理)、服部 達也、広瀬 英治(村山 悦昭構成員代理)、船本 道子、細島 三喜、三田 誠広、村瀬 拓男、矢田 泰規

議事概要

1. 村瀬構成員から参考資料に基づき、説明。

  • 出版物に係る出版者の権利は、完成した出版物に係る権利付与が必要であり、企画段階等における貢献に対する権利の付与は不要。他の著作隣接権の在り方を踏まえた場合、例えばレコード製作者が「音を固定した者」というかたちで規定されており、楽曲をプロデュースした者という形では定義されていないことと同様の取扱いが適当。
  • 権利の法定化によって、より簡易な契約実務が実現できる。日本は成文法の国であり、個々人の取引が法律を前提とした簡易な形で契約できるという利点を生かすべき。紙の出版物に関しては、出版権という詳細な規定があることによって、現実の出版契約は極めて簡易に行われている。年間何万点も発行される出版物について、契約の都度、権利の内容を詰めることは現実的ではない。
  • ある出版物に係る権利が出版者にあったとしても、当該著作物を異なる態様で出版物化すればその権利は及ばない。
  • 出版「者」は営利企業としての出版「社」とは完全には一致しない。著者自らが出版物化して、それをiPad等で配信をした場合には、著者は著作者でもあり出版者でもある。出版者へ新たな権利を付与したとしても、出版社の既得権益を守る手段にはならない。
  • 例えば、誰かが既にパブリックドメインとなった出版物をコピーして配布することは、出版物の作成に係る労力に便乗していることであり、何らかの対策が必要。
  • 仮に、出版者が独自の権利を持ったとしても、著者の許諾なしに当該著作物の流通は不可能。その結果、きちんとした契約を促進させる効果が事実上存在するのではないか。
  • 紙の出版物に係る出版権を設定していれば、紙媒体の出版物に係る海賊版に関しては独自に対抗することが可能。
  • 物権的な権利に係る契約でない場合ないしは電子的な配信契約に基づく場合、海賊版に対して法的に対抗することは不可能な状況であり、対抗する場合には著者から委任をしてもらうことになる。違法配信に法的対抗措置をとる場合にあたっては、著者にも過剰な負担を強いる部分もあるので、独自の対抗権限が必要。
  • 例えば、ある出版物について、事実上絶版の場合、出版者同士の話し合いにより、元々の版元とは異なる出版者から当該出版物が単行本として発行される場合がある。著者と出版者との間だけの個別の契約であれば、契約内容がはっきりしないので、死蔵される可能性がある。権利が法定化され、流通すべき権利が明確になることにより、より適した出版者がそれを引き継ぐというルールを整備しやすくなるのではないか。

2. 資料利5-1 「利活用ワーキングチームにおける論点整理」に基づき、議論。

  • (ア)3.(2)出版者への権利付与について、以下のとおりやりとり。
    • 「出版者の権利」が遡及するかどうかや、保護期間については、著作物が出版物として流通する流れの中で、出版物の保護をどのように位置づけるかという議論の中で決めるべき。現状、再販制度によって小売価格を版元が指定できるのは紙媒体の書籍、雑誌に限定されている。出版者は電子出版に関して、価格のコントロールはできないことを前提にしなければならないと考えている。その際の著者への印税の計算に関しては2つの考え方がある。1つは版元の中での希望小売価格をみなし定価と考えた上で、みなし定価に複製部数ないしは複製保障部数掛ける印税という形でお支払いするケース。もう1つは版元に入ってきたお金の一部を分配するケース。
    • 出版者が著作隣接権を得た場合、当該隣接権が第三者の手に渡ることについて不安を感じる。また、電子出版においても、紙媒体の出版物の場合と同様に当初に出版契約を結んだ出版者からの許諾が得られず、再度、同じ著作物について電子出版を試みる場合に障害となる可能性があり、何らかの対応が必要。
    • 海賊版に対する対抗は、立場によって方針、考え方が異なる。この点について法制度化を行うことで、融通がきかなくなる恐れがある。
    • 出版者が隣接権を所持している場合においても、著者による著作権の利用許諾があってこそ、当該権利は実質的な意味を持つものである。また、出版社側も流通させる意思がない作品に関しては、権利を手放し、流通させる意思がある作品に関しては、きっちり流通させる。こういったルール形成を推進することによって、不安が解消される。
    • 海賊版について、実際に多くの著者が対抗してくれとはおっしゃるが、著者の名前を出して裁判を行うことについては消極的なケースが多々ある。
    • 出版物に係る著作隣接権の内容に関しては、レコード製作者の権利として認められている複製権、送信可能化権、譲渡権及び貸与権が1つの基準になると考えている。
    • 契約により発生する出版権に対し、著作隣接権は事実行為によって発生する。隣接権をどのように行使するかということは著作権者との間の契約で決定される。
    • 出版権に係るモデル契約のひな形が完全に行き渡れば、出版権への権利付与の必要性は低くなる。しかしながら、契約が結ばれない可能性や、契約があったとしても法的対抗権限の問題があり、出版物に係る著作隣接権を法定化されている方が出版物に係る契約コストを軽減できるのではないか。
    • パブリックドメインとなった著作物については、著作権法上保護されない。これは、苦労して作った出版物に対する補償はないということであり、他人に当該出版物を勝手に自由利用されても何も言えないことになる。これについては何らかの対応を図ることが必要ではないか。
  • (イ)4. (1)図書館と民間の役割分担について、主に以下のとおりやりとり。
    • 現状、市場に流通している書籍については、基本的に図書館が契約をして利用者に提供している。公共図書館における電子書籍の利用が外国のように進んでいないのは、図書館に提供されているコンテンツの絶対数がまだ少ないためである。電子書籍の市場が拡大し、コンテンツの絶対数が増加すれば、公共図書館、大学図書館、学校図書館それぞれが独自に電子書籍を購入し、利用者に提供することで、さらなる電子書籍市場の発展を実現できる。
    • 図書館の所蔵資料については、その一部分についてコピー可能である。(著作権法第31条)この点については、紙をコピーすると品質が劣化するが、所蔵されている電子書籍等のプリントアウトについては品質の劣化等が見られないことからも、著作権法第31条をそのまま適用することは慎重になるべきと考えられる。例えば料金を徴収するなど従来とは違う考え方が必要。
    • 図書館で電子書籍を貸し出すことに関しては、紙の出版物よりも厳格に貸出期限を管理することが可能であるとともに、複製制限を設けることも技術的には可能。
    • 電子書籍の流通を促進するため、検索機能の充実が必要。市場に流通している出版物及び過去の出版物双方について、利用を促進するような基盤を整備することが必要。公共セクターと民間事業者の連携が必要。
    • 図書館の持っている大きな役割の一つはレファレンスのサービスであり、出版物に造詣が深い図書館員や、書店店員が協力して、利用者が必要とする出版物の提供に資する活動を行うことが期待される。
  • (ウ)4. (2)多様な知へのアクセスのルートの確保について、主に以下のとおりやりとり。
    • 情報がもたらすシナジー効果については、アクセス数の多寡によって決定される。検索機能を使用してインターネットで何かを調べるにあたり、本の商品情報は出てくるが、本の中にある情報そのものをその時点で知ることができないため、情報ソースに係る選択肢の中に書籍が入ってこない可能性がある。インターネット上における商品情報ではなく、書籍の中に入っている情報そのものの活用を図ることが重要。
    • 情報に接するポイントを増やせば増やすほど、それほど需要はないと思われた情報であっても非常に多くの人が利用する事例が数多く存在する。例えば、本そのものに対する認知を増大させるという意味だけでも、全文検索や、家から図書館の所蔵資料を検索できることには大きな意味があり、シナジー効果が生まれてくる土台の形成に資すると考える。
  • (エ)5.その他について、主に以下のとおりやりとり。
    • 電子書籍の利用者側から見ると、特定の端末、特定のソフトウェアを買わないといけないことが購入意欲を減退させてしまうので、囲い込み方式ではなく、ユニバーサルアクセスを目指していただきたい。
    • 紙の本は1冊出版されればどこの書店でも同じものが買えるので、電子書籍においてもあらゆる環境において同じように読めるものを購入できることが望ましいが、これは標準フォーマットを統一することと同義ではない。
    • 出版物は、表現行為そのものであり、潜在的に他者の人権等を傷つける可能性がある。紙の出版物の場合は、出版者の責任において出版するが、電子書籍の場合は、どこがそれを担うのか検討が必要。基本的には同様の構造が望ましい。
    • 英語で書かれた文章についてはOCRによるテキスト文書化が容易である一方、日本語で書かれた文章のテキスト化は大変なコスト(人手による構成作業に係る費用等)を要する。この原因としては日本語は英語のようにアルファベットだけで表現できるものではなく、漢字など多数の記号を用いていることと、正字を印刷所ごとに外字として登録・データ化しており、印刷所間の互換性が全くないことが指摘できる。
    • iPadには青空文庫が読めるソフトが入っているが、正字ではなく、類似の文字で表記されている。こうした状況については、共通のフォントを開発して、それを安くユーザーに提供することを急がないと、漢字文化が崩壊し、日本の出版文化の伝統が途切れてしまう。
    • 縦書き、横書きの混在などの日本語の特色にファイル・フォーマットを対応させることが必要。
    • アメリカでは、雑誌の版面をiPadで再現できているのは、基本的に紙媒体で出版、発売したものにさらに電子化する権利についても版元に対して保障されているから。日本では雑誌を電子化する際には改めて個別に権利者に許諾をとることが必要。
    • 印刷技術の開発、発展等によってもたらされたマスコミュニケーションの歴史は、標準化の歴史であり、標準化することでコストを下げて、ビジネスを成立させてきたという側面があるのも事実。紙の本で使用されている全ての漢字が電子的に再現できないことが、そのまま文化の破壊につながるという議論はやや性急ではないか。
    • フォーマットに関しては、標準化につながる活動も進んでいるが、こうした活動については、標準化に取り組んでいる技術的なコミュニティの中だけではなく、より広い範囲でのサポートや盛り上がりを作っていくことも重要。
    • 電子出版において要求される技術、アート、表現方法等に対応できるクリエーターの育成が必要。
    • アクセシビリティの観点について、iPad向けやキンドル向け、あるいはもっと一般のデバイス向けにコンテンツを供給するにあたり、出版者において障害者のためのガイドラインの制定を進めることが必要。
    • 文字の問題等について、携帯で電子書籍を配信する場合、正確な文字が出ないことを前提としており、必要に応じて著作者の了解を得た上で部分的な書き換えや、文字の置き換えを施したコンテンツを配信している。重要なことは国会図書館がデジタル図書館として電子化された資料を蓄積していくという観点から考えた場合に、電子化資料の質をどうするのかということ。最終的な配信環境や端末の能力に応じて再現の質が落ちてしまうことはやむを得ないが、質を落とすことを前提に電子化資料の整備が進められることは良くない。
    • ファイル・フォーマットについては、日本語を国内の人にきっちり読んでいただくことも重要だが、多言語化及び視覚障害者の方や高齢者に配慮したファイル・フォーマットの作成にも必要。
    • 視覚障害者のアクセシビリティに関して、読み上げソフトでは完全な読み上げは難しい。日本ではボランティアの朗読者が普及している。点字図書館等で用意している音訳データはデイジーというシステムで、コンバーターを作ればMP3に変換される。キンドル等はMP3にも対応しており、幅広い活用の余地がある。
    • 電子書籍の出版により紙の本が売れなくなるというよりも、むしろ、今まで紙の本を買わなかった人が今後紙の本を買うようになるのではないか。電子書籍で読んだ上で紙の本を買う人は必ずいる。実際にアメリカでは紙の本が大幅に売れなくなったという事例はない。もっと積極的に安い電子書籍を出版できるようなシステムを早急に作り、電子書籍を普及させれば出版者も作家も経済的な見返りが得られる。
    • 電子出版というマーケットをうまく牽引していくために、経産省主導で文字コードについて新しい標準の形成に向けた動きが起きているか。
    • 今のところそういった動きは把握していないが、そういうご意見が寄せられていることは認識しており、何らかの検討の場を設定できればと考えている。

3. 渋谷主査より、今後の進め方について説明。

  • 6月8日の火曜日に第2回の懇談会が予定されており、その懇談会の席上にて、このワーキングの本日までのご議論について報告する必要がある。最終的にはできる限り一定の方向性が出るようにしたいが、論点によってはさらなる検討が必要なものもあろうかと思うので、6月8日の懇談会においては、現在のご議論の状況について報告をすることにする。
  • 今後、最終的な取りまとめに向けて、このワーキングにおいてさらにご議論をいただいて、さらにはっきりした一定の方向性が出せるように努めてまいりたい。
  • なお、6月8日の懇談会に提出する資料については、事務局と私とでご相談させていただいた上、取りまとめたい。

問い合わせ先

経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課)
TEL:03-3501-9537

 
 
最終更新日:2010年8月8日
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