経済産業省
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企業価値研究会(第26回)‐議事要旨

日時:平成20年3月31日(月曜日)13時~15時
場所:経済産業省本館17階第一特別会議室

出席者

神田座長、赤井委員、石綿委員、梅本委員、大杉委員、久保田委員、蔵元委員、柴田委員、高山委員、武井委員、谷家委員、寺下委員、徳本委員、西川委員、萩尾委員、畠山委員、服部委員、藤田勉委員、藤田友敬委員、藤縄委員、星委員、堀井委員、松古委員、柳川委員 他

議題

実際の買収局面(いわゆる有事)における買収者側及び被買収者側の行動のあり方について

議事概要

事務局より「実際の買収局面(いわゆる有事)における買収者側及び被買収者側の行動のあり方について(討議用資料)」について説明を行った後、討議を行った。主な討議内容は以下の通り。

どのような条件を満たせば、買収防衛策が株主の合理的意思に依拠するものといえるか?

1.株主意思の確認方法について

  • 株主意思の確認方法としては株主総会決議が最適だが、機動性に欠けるため、必ずしも株主総会決議が必要ではない。ただし、買収防衛策の発動の透明性確保のため、手続の事前公表が望ましい。
  • 取締役会で発動を決定する場合は、株主総会決議の場合より取締役会の説明責任が格段に重くなる。
  • 株主意思の確認として、導入時と発動時に株主総会の普通決議(過半数による勧告的決議)をスタンダードとして採用するべき。
  • 買収防衛策の本質は、発動することではなく、あくまで、買収者を一時停止させることにあり、それを前提とするのであれば、特別決議でなくても、勧告的決議や、普通決議、取締役の選解任決議でも十分ではないか。さらには、これらの決議を行って買収防衛策を消却できるという可能性があれば足りると考える。
  • 適切に情報が開示され、必要な時間的余裕が与えられ、おかしなインセンティブの歪みがあたえられるような構造がない状態で株主が判断を行うための条件を確保するものであれば、広く認められてもよいのではないか。
  • 買収防衛策が株主の合理的意思に依拠するための要件は、結局、買収者や買収行為の悪性により異なるとしか言うほかない。
  • 会社法上、株式は譲渡自由であるのが原則。裁判所は、濫用的買収者に対しては、取締役会限りで対抗措置を講ずることができるとしている。また、夢真事件のケース(株式分割)を見ても、時間と情報を確保するためなら、取締役会限りで講じる対抗措置も認められるように思われる。
  • 被買収者が、株主のために代替案を提示するのに必要な時間を買収者側に要求することは合理的なことであり、もっと広く認められてよいのではないか。

2.株主意思を問う方法としてのTOBと株主総会の適切さについて

  • TOBだけではなく、株主総会にも「強圧性」があることに留意すべき。株主の意思を確認する方法として、TOBと株主総会のどちらが良いかは、場合によって異なる。
  • 株主総会の「強圧性」は、企業の取引先株主が、企業側提案に反対するような議決権行使を避けるというものと推察。しかしながら、そのような取引先はTOBにも反対するはず。
  • TOBの強圧性がある場合には、株主総会で株主の意思を確認する必要性が高い。反対に、強圧性がないTOBの場合には、何が何でも有事に株主総会の判断を仰ぐ必要があるということにならないよう配慮すべき。

買収防衛策の発動にあたって、買収者に対して経済的補償を行う必要があるか否か。

1.「経済的補償」の意義について

  • 経済的補償が何を意味しているのかを明確にして議論すべき。例えば、譲渡可能ということをもって経済的補償をしたことになるのか、あるいは、無議決権株式を出すことは経済的補償になるのか。
  • 現行のほとんどの買収防衛策が、新株予約権を全株主に無償で割り当てるというスキームをとっていることを踏まえ、そのような新株予約権の割当ては、ここでいう経済的補償に含まれないということを明記すべき。その上で、経済的補償に含まれるのは何かということを議論すべき。

2.議論の位置付けについて

  • 経済的補償の要否は、買収防衛策が株主の意思に沿っているにもかかわらず、内在的制約があるか否かを問題にするものと位置付けられる。
  • 「予見可能性」や「損害回避可能性」については、これらが持ち出される理論的背景を整理した上で、要件として適切か否か議論することが必要。

3.経済的補償の要否について

  • 導入時と発動時に株主総会の普通決議(または過半数の勧告的決議)を行うことがスタンダードになるのであれば、経済的補償はなくてよいし、補償しないのがスタンダードであるべき。その際、買収者が損失を回避できること、つまり、TOBを撤回できることが担保されていればよい。
  • 「予見可能性」や「損害回避可能性」は、買収者を一時停止させる前提として必要。
  • 「損害回避可能性」について、現実に株主の意思を問う機会がなくても、買収者が買収防衛策を消却できる可能性があれば足りるし、さらに、公開買付期間の上限にこだわる必要はなく、TOBを取り下げることも前提として考えればよいのではないか。
  • 有事に防衛策を発動するに当たっては、相応のプロセスと理由をもって判断されることからすると、本来であれば補償は不要なのではないか。
  • 有事導入の場合には経済的補償が必須であるとすると、平時導入を促進することになるのではないか。その是非についても検討すべき。
  • 日本で濫用的買収が起きる可能性は否定できず、経済的補償は必要ないというメッセージを強く打ち出すべき。

買収局面において、株主が買収提案の是非を適切に判断するにあたって必要な情報は何か?

1.被買収者側の情報開示について

  • 被買収者の現経営陣は、今後のビジョンを発表していくことになると思われるが、それに対するコミットメントをモニタリングすることも必要。
  • 平時・有事を分ける必要はないのではないか。平時から情報開示をしっかりやっていれば、有事になってもあわてることなく、平時から開示している企業価値向上策を堂々とアピールすればよいだけのこと。

2.買収者側の情報開示について

  • 買収者の情報開示については、あまり拡大解釈すべきではない。友好的買収であっても、買収者が買収後の利益等の具体的な数字を開示することは、自らの手の内をさらすことになるため絶対にない。経営ビジョンを提示させる程度ならよいが。
  • 買収者が100%の支配を目指し、それがとれないなら買収をあきらめるという買収で、かつ、その対価が現金である場合には、買収者が今後の経営計画や業績予想を開示しないのでよいのではないか。他方、少数株主が残存するような部分買収の提案は、買収者側の情報開示も必要。
  • そもそも買収者が、買収後の数値等を開示させるのは限界がある。また、そのような中で開示を求めることは、被買収者が買収者のプランを否定しやすい土壌を作ってしまうことにもなる。株式取得割合によって買収者に開示を求める情報の内容に違いを設けるのはどうか。
  • 買収者側が提供できる情報にも限度がある。もちろん、被買収者が要求するのは構わないが、それに対して、「出せない」という答えもあって然るべき場合もありうる。
  • 買収者側についても、本当に企業価値を高める経営ができるかどうかは、示さなければならない。

3.その他のご意見

  • 予測的情報をどこまで開示させるのか、情報の正確性をどのように担保するのかといった点についても検討が必要。

その他

1.検討にあたって踏まえるべき視点について

  • グリーンメーラーに対する対策だけでなく、経営陣の保身のためではないという点についても整理し、経営陣のための買収防衛策ではないという目的を最初に打ち出すことが必要。
  • 経営者の保身のためではなく、企業価値を高める経営戦略、方向性を守るという視点が必要。
  • 企業価値研究会で議論すべき意義は何かを考えるべき。1つは、法的な論点についてルールメイクを行うこと。もう1つは、どういう基準でルールを設定すれば、企業価値にとってプラスになるのかを、外部に向けて発信すること。
  • 発動のための基準が、結局は平時の企業経営にも大きな影響を与えることになることから、「平時の企業経営に対してどのような影響を及ぼすか」というという点も含めて発信することが必要ではないか。

2.今回の議論と「買収防衛策指針」との関係性について

  • 今回の議論と05年の「指針」との関係を整理すべき。「指針」は買収防衛策の「導入」の際の判断基準を議論したものであって、これに従って導入した買収防衛策であっても無条件に「発動」が許容されるものではないという理解を前提に、今回は「発動」について議論しているということ。

3.裁判所の考え方について

  • 日本の裁判所は「買収防衛策は発動されるものではない」という前提を共有していないのではないかという疑いがある。
  • これまでの裁判所は、発動を前提とした買収防衛策の可否を議論してきた観があるのは、経営陣が株主の意思を問うことなく、最終的に買収をブロックできるような種類の買収防衛策(第三者割当て)を講じた事案で裁判所の判断が問われたからではないか。

その他のご意見

米国のポイズンピルは、経営陣に強い力を与えるものである。少なくとも米国との比較でいえば、強い買収防衛策が存在することのみをもって、必ずしも日本が閉鎖的であるということにはならないのではないか。

関連リンク

 
 
最終更新日:2008年4月17日
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