経済産業省
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ソーシャルビジネス研究会(第1回)‐議事録

1.研究会の趣旨説明等

事務局から趣旨説明

2.「ソーシャルビジネス」の定義

事務局より、資料1~3、参考1にもとづき説明。

谷本座長
事務局説明を補足すると、ソーシャルビジネス(以下SB)は、コミュニティビジネス(以下CB)と全く異なるものではなく、必ずしも地域にこだわらない、より広い概念として整理していこうとする考え方である。SBをCBと別にしようということではない。研究会で、CBについて書かれている資料から、ステップアップしていこうとしており、CBの延長上でより広い概念としてSBを整理しようということである。
SBの定義においてポイントとなるのは、3つの項目、社会性、事業性、革新性である。ソーシャルビジネスを一般の中小企業やベンチャーと区別する際、単に資本金や従業員数などでは示せない。ポイントとなるのは、社会的課題にビジネスとして取り組むことをミッションとしていることにある。

永沢委員
SBやソーシャルベンチャーとCBに大きな違いはないと思う。SBを考えた場合、地域は、フィールドとして必要であり、実行上必要になる。しかし、地域住民ということについては、CBの場合も同様であるが、住んでいる人が取り組んでいるよりも、むしろ、その地域には住んでいないが愛着を持っている、地域に関係している人が関わるケースも多く、そこで活動の支援がグローバルに広がっていき、地域の課題を解決していっていると思う。
SBと呼ぶとき、社会性について、お金を稼ぐところが「ソーシャル」なのか、使うところが「ソーシャル」なのか、といえば、稼ぎ方が「ソーシャル」ならば、SBといってよいと思う。また、事業性については、いま採算が取れているSBは1~2割程度でしかない(特にNPO法人)ので、それら以外についても、稼ぐ仕組みをもっていれば、たとえ現状は採算が取れていなくてもSBとするか、否かがあると思う。

谷本座長
広い意味では、SBにおける社会性は、お金を稼ぐところと使うところの両方からみても良いと思う。何らかの社会的課題の解決を目指すというソーシャルミッションを持っていることがSBの一つの定義だと思う。
事業性については、ビジネスであるということが重要であるが、採算性が取れているとすると難しいので、採算性がとれていることに限定しない。

佐野委員
資料1の3段落目で、「自己実現の満足感や生きがいを与える活動である。」としているが、ビジネスという側面から考えると気になる表現である。このあたりの定義については、SBという意味では、社会的課題の解決ということに力点をおいた方がよいのではないか。
われわれの場合、ホームレスの仕事を作るために売れるか売れないかわからない雑誌を作り、ホームレスが独占販売を行なっている。この事業を、事業型NPOでやっても良かったが、有限会社でやっている。NPOは、社会的必要性に、正当性と公共性というミッションがあり、そこにNPOとしての存在意義がある。われわれの場合は、まず事業性であって、大きく事業をやることで、ホームレスの仕事をつくることを重視した。そこでは、機動性とともに倒産もありうるという形態である。NPOは公共性を重視するが、有限会社であれば倒産してもよいし、軽く、明るく、元気にやれるということでもある。
当社の場合、市民がパトロンとなって年間一口5万円の寄付や定期購読といった形で発行協力寄付をえておりこれが年間1000万円弱で、広告収入に匹敵する。有限会社なのに寄付をしていただけるという状況がある。ただし、社会的企業は社会問題を、ビジネスの手法で解決していこうとするものだと考えている。

鈴木(政孝)委員
事業性がなくて継続しないということであれば、SBとは呼べない。必ずしも事業規模を大きくしていく必要はないが、それぞれの市場に応じた適正規模で、継続的に事業を行っていくことが重要。
NPOは倒れても良いのではないか。新しくビジネスとして担う人がいればよい。
団塊世代について、NPOの側に来なくなってきている。これは企業が抱えてしまっていることによるのではないか。

駒崎委員
実務家にとってはSBの定義に拘泥する必要はなく、この研究会では明確なアウトプットを出してもらいたい。困っている人を助けるという事が重要である。
我が国のSBの担い手として、若い人は多くはない。アメリカのように、ベスト&ブライテストな人材がSBに参入していくという流れが日本にはないので、そのような流れを作れるようこの研究会に期待したい。どのようにすれば、そのような流れ、波を起こせるか、切り込んでいけると良い。アメリカのボストンのSB(恵まれない地域に出前教育をする事業等)では、年間40億ドルの予算で、南アフリカにも進出しており、ビジネスとして成功している。

井上委員
若い人についていえば、何かのためにがんばりたい、社会的な何かのために働きたいと思っている人が出てきていると思う。
革新性について、SBが引き起こすイノベーションには3つあると思う。第一に、「ここに社会的課題がある」ことを明らかにしたというアナウンスメント効果。第二に、有効な事業モデルを提示し、実際にやってみせること。第三に、どうやって事業を広げていくかというスケーラビリティ(scalability)。最後の点がこの研究会で一番重要だと考えている。ひとつの団体が大きくなるよりも、それぞれの地域の担い手にノウハウを伝授して、現地にあったやり方(現地適合)で地域に引き渡していくようなソーシャルフランチャイズの可能性があると思う。

鈴木(均)委員
企業も、社会性、環境や社会に目を向け、本業を通じて社会の課題解決を図っていこうという”Socially oriented”な面が強くなってきている。その中で、NPOやSBと“Socially oriented”な企業の違いは、NPOやSBはミッションを非常に重視することである。“Socially oriented”な企業は本業へのメリットを優先せざるを得ないのに対して、NPOやSBでは社会的なミッションが先にある。
2002年にNEC社会起業塾(現在の名称)を立ち上げた。NPOの基盤強化、事業としてNPOに従事しても一定の所得を得ていくようにしなければ継続性が担保できないと思い、NPOに従事するプロフェッショナルを育てる事を目指した。最初のターゲットは学生であったが、学生の場合時間がありそうに見えるが必ずしもそうではなく、学生のみを対象としていては難しいと感じ、その後、NPOにこだわらず社会の課題を事業で解決することと、学生以外の若手まで対象を広げて取り組んできている。

谷本座長
大企業がこのような領域でかかわるというのは、今NECがしているような支援をするということと、直接いろいろなSBを起こしていくというものもあると思う。社会的な課題の解決に、大企業が持っているさまざまな資源を活用することで、そのプロジェクトそのものは大きな利益が上がらないかもしれないけれども、新たな可能性を秘めているとか、社会の接点につながっていく新しいムーブメントになるかもしれないということではないか。

曽根原委員
CB=地域の課題を解決する、という印象を受ける。SBのほうが自分の活動に関してしっくりくる。地域という言葉は日本語だと単一だが、英語だと、ローカル、リージョン、コミュニティなど様々な側面がある。定義づけや領域設定は必要だと思う。(SBでは)地域というよりも様々な切り口でビジネスを展開しているので、領域設定をしてどのようなビジネスがあるかを浮き彫りにすると、これから新しいことを始める人にもビジネスモデルがわかりやすく伝わる。

竹内委員
(事務局が提示したSBの定義では)比較的新しいビジネスだけを対象にしているような感じを受ける。障害者雇用であれば、数十年間やっている企業もある。これから起こす起業だけでなく、そうした以前からの企業への支援も行う必要がある。
革新性はなければならないか。他団体のビジネスを真似することは、革新性がないからだめということではないであろう。既存の企業や行政ができないことをできるようにするという点から言えば、何らかの革新性があるのではないか。
事業性については、助成金や寄付金で行っている場合、事業性がないという判断になるのか。

谷本座長
もちろん中小企業で、障害者を雇うなど、何年も前から取り組んでいる企業もある。今後は、起業という面も重要であるということだと思う。
真似をしビジネスの可能性を広げることもイノベーションの一つであり、元のモデルを改良して地域にあうものにするなども一つのイノベーションである。
事業性の有無は、重要なポイントである。

竹内委員
CBを育てることを行なっている事業体の場合もSBということでよいのか。そうした事業体と金融機関が連携できたらよいと思う。

山口委員
何をもってSBというのかというと、ソーシャルミッションがあり、収入については、ミッションに共感して利用者として支払ったり、寄付をしたり、と様々な形がある。本来払うべき人件費を払わずに、事業を行なっているケースもある。寄付に支えられている団体も、事業だけで運営している団体も、SBと捉えてよいのではないか。
公的機関からの委託で成立しているNPOも多いが、そうした点からは、経営者のマインドが重要ではないか。
SBに必要な経営資源への支援として、たとえば金融とか寄付文化などの新しいリソースをつくるだけでなく、営利企業とSBが相互のリソースを共有しあうなどの発展的なあり方が実現するとよいと思う。一金融機関にできることには限界があるので、社会の大きなインフラとしてより多くの金融機関が参入できればよいと思う。

土肥委員
一般企業の中のひとつの社会的事業も、SBに含めて議論すべきかどうかを確認する必要がある。欧米では、“Socially Oriented Company”や“Socially Responsible Business”などと呼ばれているが、例えば、欧米の大手医薬品メーカーでは、アフリカにHIV/AIDSの治療薬を寄付ではなく、持続可能な形で、半永久的に非営利価格で提供・販売するという社会的な事業があり、今後の研究会でこうした企業の取り組みまで含めて考えていくのかどうかを確認しておきたい。

鈴木(均)委員
大企業も、本業が社会的な課題を解決する方向に進む。例えば、途上国で経済的なやり方で情報通信環境を整備しようとすれば、携帯電話が良いということになり、それで経済改革や社会改革になっていく。
企業はNPOに近づき、NPOは企業に近づく、という一般的な傾向はある。ただし企業は採算、経済面、営利活動上のメリットなどを常に考える。NPOやSBは、ミッションを先に考えて、その実現のためにどのようにしたらよいかということを考える。企業の社会的活動とSBは、そのあたりが違うのではないか。従って、営利企業の社会的活動はSBと捉えないほうが良い。営利企業はSBのサポーターとして、SBを広げるためにどのように関わることができるか、という位置づけでよいと思う。

谷本座長
今回の研究会では、大企業の取組みに焦点を当てるにことはとくにしない。

鈴木(政孝)委員
SBの場合、ミッションが大事であり、まずミッションありきではないか。もう一つ大事なのは、人や社会をこのように変えていきたい、そこに向かって事業を進めていくという経営計画ではないか。CBとSBで違う面として、ミッションであったり、ビジョンであったりという、最初のキーワードが変わってくるのではないか。
私は7年間事業型NPOとして会員を引っ張ってきたのは、まさにこのミッションをどうやって達成するのか。達成は単に数的実績だけではなく、成果を出すことが必要である。つまり、人を変える、社会を変えるという、成果を出せないようなNPOは、NPOではないと思っている。この点がCBと違うような気がする。

永沢委員
一般的に住民がCBを起こすときには、地域の中でコンセンサスを作りながら、多くの共感・ニーズから事業を面的に立ち上げていくことが多い。そのため、ビジネスの形でやってもリスクが少なく失敗しにくい。一方、SBで重視されるミッションは、点というイメージがあり、ミッションと地域コンセンサスがあわない場合もあるかもしれない。

井上委員
SBにおいても、ミッションを掲げるリーダーの周りに人が集まり、共感する人たちのコミュニティが作られる。また、ミッションに共感する企業との出会いを通じて活動が展開することもある。
食品を扱う企業から捨てられる食品を困窮者に回すという事業をするSBがあるが、そういった企業が余った商品の一部を寄付しようとすると、少量であれば問題はないものの、量が多くなると寄付に対し課税されることになり(有税での処分)、結果として寄付ができない、従って、企業がコミュニティに協力できないといったケースもあるらしい。

谷本座長
コミュニティという概念、捉え方にはいろいろある。地域的な意味でのコミュニティ。また社会的の課題について地域をこえて取り組もうという人が集まってきた、賛同者たちのコミュニティもあろう。

3.国内調査、海外調査のアウトライン

事務局より、資料4、5について説明

井上委員
SBについては、アジアでもよく動きが出てきている。韓国はかなり動いているという感じがする。中国でも、社会的課題解決に関連して、動きがあるようである。

曽根原委員
中間支援団体について二種類あると思っている。ゼネラリスト型支援の中間支援団体とスペシャリスト型の中間支援団体。そういう視点を含んだ調査をしてもらえるとよい。海外事例では、英国では、条件が不利な地域でのパートナーシップ支援等があると聞く。政策の示唆になると思う。

竹内委員
SBを経営する人、実行している人のキャリアに興味がある。日本のNPOだと非常勤や無償労働者が多い。アメリカだと、キャリアのある銀行員などが多い。どのような経験を積んできているのか、資金を貸すという立場で考えると、経験の有無などによっては不安になったりすることもある。日本のNPOにも、常勤で組織のミッションにふさわしいキャリアのある人材がどの程度いるのか、関心がある。

永沢委員
海外の制度については、そもそも文化・宗教などのバックグラウンドや税制などの違いがある。日本の今の制度的現状や法人の状況に、適応できるものとできないものがある。どこが違うことにより、海外では実現できているかについて、きちんと見ておく必要がある。

谷本座長
政府やサードセクターの位置づけが国によって大きく異なる。ヒアリング等で得られた基礎資料、ローデータなどをもとに、議論していく必要がある。研究会として、野心的にアウトプットを出していこうと思っており、ローデータとしてきちんとみておく必要がある。

井上委員
背景については、例えばアメリカではCRA法、Low Income者向けへのTax credit(税額控除)など、民間資金のSBへの流れが制度的に形成されている側面があり、単体としてのNPOだけでなく、その背景にある政府のレバレッジなどにも留意する必要がある。
アメリカの事例を参考にすると、地域の中心になるリーダーに、フェローとして3年間程度人件費を支給し、自由に活動していただく。その活動の報告会を、コミュニティにおいて発表し、そこに、企業や金融機関等も出席してマッチングの機会とするといった試みもあるのではないか。

以上

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最終更新日:2007年10月23日
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