産業構造審議会総会(第3回)‐議事要旨
日時:平成15年8月28日
場所:本館17階第1、第2、第3共用会議室
議題
『平成16年度経済産業省の重点施策』について
議事概要
『平成16年度経済産業省の重点施策』について石田総括審議官から説明を受け、自由討議。その後、会長よりコメント。委員からの主な意見および会長の発言要旨は以下の通り。
- 他省庁との連携を密にとって施策の実行にあたって欲しい。(例えばIT分野など)重点施策の実施にあたっては消費者の視点も重視すべき。
- 産業金融が重点施策の冒頭にきている点は評価できる。金融機能の捉え方が、依然として資金供給という面ばかり前面にでいるように感じるが、チャレンジ社会の形成にはリスク分担の設計をどうするかという視点が重要。過度な不動産担保への依存からの脱却、短期の資金供給への対応に加えて、中小企業にいかにして、単なる貸付のような資金でなくエクイティ的な性格を持った資金を提供していくかということが非常に重要な課題である。
- 従来型の地域産業振興策は意義を失いつつあり、その見直しが迫られている。構造改革特区制度のように、今後はいかにして地域のやる気、アイディアを引き出していくかということが政策として重要であり、(中央から地方へという一方向的な関係ではなく)中央と地方が互いに応答し合うような関係が望ましい。
- ユビキタスネットワークのIT環境の構築においては、個人消費者のみではなく、産業全体を含めていつでもどこでも共通に使えるということが重要である。情報家電、電子タグ等の施策の展開においては同じネットワーク規格、同じインターフェイスで全てがつながっていることが重要である。
- ひとつひとつの施策に関しては誤りではないが、どこが「重点」か、さらには具体性を持った行動計画であるかという観点からは疑問が残る。産業力の強化、戦略性においては
(1)IT、エネルギー、食品等の経済のファンダメンタルズにおける安全保障に対する問題意識を施策の背景としてもつことが重要である。
(2)21世紀の日本経済を担う新しいプロダクトサイクル、事業創造において、より具体的なプロジェクトのイメージや、いつまでに何を行うのかといった数値目標を明確にした行動計画が確立されるべき。一例としては、研究開発に単に予算をつけて終わりではなくて、事業化、プロジェクト化に向けた戦略性が重要である。 - もの作り基盤の強化において、熟練技能、基礎基盤技術の育成が必要である。もの作り教育等と合わせて、中小企業の現場等での技能・技術の習得にむけた支援も必要である。
- 中小企業の現場においても若者の学力低下が深刻な問題となっており、人材育成が急務である。大学教育等も含めてトップのみならずアベレージでの能力の向上が重要である。
- 女性が経済活性化に役割を果たせるような社会をつくることが不可欠である。重点施策の中の「チャレンジ社会の再興」において女性の問題を取り入れて欲しい。アベレージでの能力の向上の中においては女性の担う部分が多くあり、支援等を行っていただきたい。
- 消費者の視点を取り入れた商品開発という観点からも女性の視点を取り入れていくことは非常に重要である。商品開発の分野においては生活実感をもった女性の感性の重要性が増しており、人材育成においては若年者のみならず、例えば子育てをしている女性など、女性の人材育成をはかり、活用していくことが重要である。
- J-ブランド構想においては、いわゆるJ-POP、デジタルコンテンツ等の既に現在あるもののみではなくて、これからどういうものを生み出すかという視点が必要である。今あるものの権利をいかにして守るかに加え、どのような仕組みで生み出していくかが重要である。人材に加え、市場をいかに作り出すか、情報の世界に向けた発信等に取り組むべき。
- 質の高い公共サービスの効率的な提供について省庁間を含めて業務改革を進める必要があり、電子政府の実現を早急にはかるべき。人材の育成においては、産業再生などの場における高度な専門人材として、経営者の流動化等も重要である。
委員からの意見に対して事務局から一括して回答
- 消費者の視点、生活者の視点は極めて重要であると認識しており、施策の展開においては明確に意識して進めていきたい。横断的な施策分野については、一例としてご指摘のIT分野においては、内閣のIT戦略本部において関係省庁協力のもとe-Japan戦略が取りまとめられる等しており、その他の施策分野においても他省庁との連携強化を図り、互いに齟齬をきたすことのないように取り組んでいきたい。
- 重点施策について、今後の行動計画が重要である点についてはご指摘の通りである。我々も、研究開発に予算をつけて終わりではなく、企業間コンソーシアムの形成、マーケットに出す戦略、ロードマップの作成等も含めて取り組んできているところであり、今後も強化していきたいと考えている。
- 経済の活性化、消費をリードする上でも女性の力は重要な役割を果たしていると認識している。内閣府の「男女共同参画会議」において、女性の積極的な活用や社会進出に取り組んでいるところである。経済産業省としてもその一環として、「男女共同参画社会研究会」の報告書を取りまとめたところであり、その中において、女性が活躍しやすい環境を整えている企業ほどパフォーマンスがよいという結果も報告されている。これからも、女性への支援を念頭において施策の充実に取り組んでいきたい。
- J-ブランド構想においては、今あるJ-POPだけでなく、ものづくり等の基盤的なものも含めて日本の強みのあるものを幅広く世界に売り込んでいきたい。
- 産業金融の問題には、供給主体、供給手法、リスクへの対応、政策の支援対象のそれぞれの多様化という視点から取り組んでいるところである。ご指摘のリスク分担に関しては、リスクを客観的、数値的に把握することがまず重要であるとの認識から信用リスクデータベースの整備に取り組んでいる。リスクの担い手の分散については、債権の証券化等によりいかに幅広くマーケットで負担するか、さらにはその負担に対して、国が支援する分野の有無、およびその手法について検討していくことが重要である。中小企業への擬似エクイティ的な支援が重要であることはご指摘の通り。手法の多様化の中で、出資のためのファンドの充実、有限責任組合法の対象の拡大等に取り組んでいきたいと考えている。金融対策については、金融庁、日銀と連携しながら取り組んでいきたい。人材育成については、厚生労働省、文部科学省と一体となって取り組んでいる。特に若年雇用の問題については教育、キャリア形成支援、就職支援、労働市場の整備、企業支援等の様々な角度からの総合的な対応を図ろうとしている。これらと同時にご指摘の学力、能力の向上が重要であり、経済活性化を担う人材の育成という観点から、大学において社会や企業ニーズにあった職業能力を身につける教育、高い専門性のある教育を行うよう文部科学省と連携しながら取り組んでいきたい。
- 産業クラスター計画においては、中央からのお仕着せではない手法を取り入れて、地方局の徹底した現場主義により取り組んでいるところである。現在参加企業数は5000、参加大学は200を数えている。今後も産業クラスター計画を拡充、強化していく必要があると認識している。
- ユビキタスネットワークの規格の標準化を重要な施策の一つとして進めており、商品のコード体系においては、経済産業省提唱の日本案が国際規格となる方向で進んでいる。技術面においてはインターオペラビリティの重要性を踏まえて進めていきたい。ITにおける関係省庁の連携においては、首相が本部長であるIT戦略本部におけるe-Japan戦略の推進や、内閣危機管理監のもとでセキュリティの問題に取り組む等、密に連絡をとりながら進めている。日本ブランドの形成に関して、コンテンツは輸出可能性のあるサービス産業の一つと位置づけており、マーケットの創出は重要であると認識している。東京国際映画祭の活用や、クリエーター、プロデューサー人材の育成、海賊版対策等含めて包括的に取り組んでいきたい。IT、サービスにおいては女性の視点も重要であると考えておりそういった視点からも施策の充実を進めたい。また、質の高い公共サービスの効率的な提供を目指した電子政府の構築に関しては、IT戦略本部におけるe-Japan戦略IIにおいて、行政の効率化を最重要課題としており、政府全体としてその充実を図っていきたい。
- 技能者の育成については政府全体としても問題意識を強くもっており、関係各省連携をとって「ものづくり基盤技術振興基本法」の運用にあたっている。「ものづくり白書」においても技能者の育成の問題については、各省の対策の強化が提言されている。経済産業省としては、ものづくり技能の代表的な例として、金型・ロボット部品を取り上げてものづくり技能の向上を目指して集中的な予算配分、制度の運用にあたっている。
会長より取りまとめコメント
一年前と比べると、企業収益、実質GDP成長率等に明るい動きが見えてきているが、デフレの継続、失業率の高水準での推移等の懸念材料も依然として存在している。
今後とも、気を緩めることなく、官民一体となって抜本的改革に取り組む必要があり、そういった観点からも「平成16年度経済産業省の重点施策」の実現は重要である。
本日の議論としては、各省庁間の連携の強化、消費者の視点の取り入れ、構造改革特区制度の推進、21世紀の日本のビジョンを実現する行動計画、実行計画策定の重要性、産業金融におけるリスク分担の問題、技能員の教育、若年者の教育、経済活性化・市場開発という視点からの女性の活用、ユビキタスネットワークの構築等が課題であるという指摘があった。
会長として数点指摘したい。今夏の関東圏の電力需給の逼迫問題や先日発生した北米東部大停電のような事例から、電力の安定的供給について国民的関心が高まっており、原子力の安全に対する国民の信頼を回復するための取組や、燃料電池等の新エネルギーの活用を進めていただき、安定的な供給システムの実現を図っていただきたい。
また、16年度の「地球温暖化対策推進大綱」の評価・見直しに向けて、いかに国民生活や経済活動に過度の負担を課さずに地球温暖化問題の解決のための知恵を出していくかが重要であり、そのような観点からの今後の検討を期待したい。
ようやく光が見え始めた経済活性化への道筋を確かなものとするためにも、少子高齢化・デフレなどの構造的な問題に取り組み、日本経済の将来展望を示し実行していくことで、将来への不安感、不透明感を払拭していくことが重要である。そのような中で、当審議会の重要性は高まっており、今後とも経済産業政策の道筋を示し将来へのビジョンを描くという当審議会の使命に資する活動を行っていきたい。
以上
お問合せ先
経済産業政策局 産業構造課
03-3501-1626
