産業構造審議会総会(第4回)‐議事要旨
日時:平成16年8月3日(月曜日)14時30分~16時30分
場所:本館17F 第1~3共用会議室
出席者
奥田会長、池尾委員、大沢委員、大橋委員、翁委員、加藤委員、茅委員、神崎委員、河野委員、田中委員、辻村委員、寺島委員、中山委員、本間委員、前田委員、増田委員、宮本委員、村上委員、吉川(洋)委員、吉川(弘)委員
議題
『平成17年度経済産業政策の重点施策について』
議事概要
- 冒頭、奥田会長から委員交代及び新委員の紹介、議事の公開、配布資料について確認の後、「平成17年度経済産業政策の重点施策」について、資料を用いて石田総括審議官から説明。
- 中川経済産業大臣から挨拶の上、「平成17年度経済産業政策の重点施策」について自由討議。
- 委員からの意見に対して事務局から回答し、最後に奥田議長からもコメントをいただき閉会。
中川経済産業大臣の発言、委員からの主な意見及びそれに対する事務局からの回答、奥田会長の発言、の要旨は以下の通り。
中川経済産業大臣挨拶
(中川大臣)
先週一週間、WTO交渉でジュネーブに出張しており、総理にその報告をしてきた。WTOについて御報告申し上げると、農業が重要課題の一つであることはいうまでもないが、私の立場からはいわゆる非農産品の品目、あるいはサービス貿易の今後のあり方や貿易を促進するためのバックアップシステム、例えば貿易円滑化の問題等につき、多方面にわたって様々な国々と議論をしてきた。
印象に残るのは、WTO交渉全体を進めていくにあたり、私自身アフリカの国々とじっくり話をして、先進国と、途上国との間の意識の上でのギャップを痛感したこと。世界が平和で、貿易相手国が少しでも豊かになることで貿易が成り立つわけであるから、貿易立国である以上、我々としてキャパシティビルディング等の支援においても役割は大きいという風に感じた。
しかし、同時に日本はもっとその先に行く必要があり、総理のもとで報告した「新産業創造戦略」をどうやって実現をしていくかということの大事さも改めて痛感した。
日本版ヤングレポートであるこのレポートを実現していくのは、もちろん技術でありものづくりであるが、もっと言えば人づくりということ。第1線の科学者、技術者から、現場の金型をつくる職人あるいは巧みの技を持った方に至るまで、あるいは次の世代を担う子供たちにいかにそういったものに興味をもたせ、その能力を遺憾なく発揮できるような体制をつくっていくかということが大事だと思う。
世界知的所有権機関(WIPO)の事務局長にもお会いした際に、発明の権利保護のシステム等において国際的な調和をとる必要性を話し合ったが、国際的協調の中で世界が豊かで平和になってこそ、日本もさらに繁栄していくことが可能になる。その時に、日本は技術や様々な特性を活かして、世界をリードしていくことが重要であろうと痛感している。
日本も一部の勝ち組だけではなくて、各地域において、あるいは各産業においてそれぞれが、がんばれる、希望をもてるような環境作りに努力をしていきたい。地域、中小企業も含めてがんばれるような体制を作っていく、そのために17年度に向かって何をなすべきかということが我々の大きな課題であり、今日お集まりいただいた皆様方に御指導を頂きたい。
平成17年度 経済産業政策の重点施策についての自由討議
- 17年度の重点施策は体系的にできていて納得のいくものであるが、問題意識として2点発言したい。
メガトレンドや方向性がしっかりしておりアジアの広域連携について視界を広げているのが今年のレポートの特徴であると思う。アジアの広域連携のより具体的なプラットホーム、つまり問題提起から具体的なプロジェクト、アジア共通プロジェクト作成すべきではないか。日本ができるだけイニシアティブをもってアジアの共通プロジェクトみたいなものをより明確にしていくことが産業政策で特に重要。FTA的な通商政策だけでなくプロジェクト化という点が重要。
もう一点、産構審のレポートは、国民に選択肢を突きつけるものがあってもよいのではないかということ。納得のいくメガトレンドを示すだけでなく、例えばエネルギーと環境などどこかで重大決断しないといけないような、悩ましいが選択しなければならないものを提示する報告書が出てきてもよいのではないか。方向性を提示すだけでなく、問題解決型のいくつかの選択肢を国民に提示し決断を求める報告書を意識して作ることが必要。
- ものづくりといった日本の強みの部分に焦点が当てられている。また、人材に重点をおいている点も賛成。
一方で、現実に足下で起こっている部分、泥臭い部分にも焦点を当てていくべき。
人材投資の減少に対して減税をしていくことは大いに賛成であるが、現実には正社員数が減少している中で、技術・技能を伝承していくゆとりが非常に少なくなっていることに注視していくべき。
新しい流れとして急速に派遣や請負が増えているが、かなり悪質な場合もあるので、注意して欲しい。年金制度改革と関連して高齢者の雇用が義務化されたが、こういった高齢者の雇用を保持する一方で、若い人の雇用もきちんと確保していくことが重要になってくる。
中国は、単なる工場にとどまらずマーケットとしての魅力がある。しかし、中国経済が加熱状態にあるのかとか、エネルギーや水等の正確なリスク情報が掴みにくい。広範な情報提供をしていただきたい。中国はビジネスチャンスであるとともにリスクも大きい。情報提供が非常に重要なポイント。
- 自動車産業、IT産業といったものがブランドとして日本を支えているが、こういった日本の大きなプレゼンスを先端的な技術で化学が大きく支えていると自負している。最近の中国では欧米の大企業から中国内で2000~3000億規模の投資が行われている。5~10年後には中国が脅威になるのは明白。我々の生きる道は新産業創造戦略にもあるように日本でしか開発できない技術を連続して開発していくことであり、人材の育成が非常に大切。
白川さん、野依さん、田中さんと化学の分野で連続してノーベル賞が出ているが、20~30年前の功績が出ているのであり、現在の化学レベルが高いとはいえない。現在の学生のレベルを上げ、日本の産業を支えている化学技術レベルを上げていくことが必要であり、ぜひ具体的な政策をとっていただきたい。産官学での取り組みが必要。
- 研究開発、特に官の基礎研究に関してコメントと質問を申し上げたい。最近、エレクトロニクスに限らず、企業において、どんどん研究開発の中身が基礎よりも応用、応用よりも開発といった市場志向、出口志向になっている。
このような中で、大学においても、少なくとも外見からは独法化や大学発ベンチャー1000社といった出口志向の傾向、施策の方向性が見える。
こういった状況で日本の基礎研究はどうするのか。期待されるのは官の研究開発により、次の時代のシーズをどんどん用意しておいてもらうのが望ましい。基礎研究をどんどん官に移していけば、企業は安心して出口志向を進められる。
アメリカにおいては、国が次のシーズを準備して民間企業に出していくというサイクルがある。そういった中で、科学技術創造立国の項目で出口志向を進めていくというのは基本的に正しい選択だと思うが、研究開発において応用と基礎をバランスよく進めていくことは重要。研究開発における、官民のバランスについての考えを聞かせていただきたい。
- 経済産業の発展は好ましいが、一方でそれによる環境問題、特に温暖化問題は必然的に生じてしまうもので、この両方のバランスをとるのが常に問題であり、総合的な方向を国として考えて欲しい。
現在、経済財政諮問会議で経済政策のことを議論し、温暖化対策推進本部で環境対策を議論しているが、経済と環境をどうするかを一度全体として議論することが重要。
新産業創造戦略の中身で7つの新産業分野と重点政策が扱われているが、いずれもいい点だけが取り上げられて、問題点がやや隠されているのではないか。例えば燃料電池の場合、単にコストが高いという点だけではなくて、需要が増えた際の水素供給の問題もある。現在の脱炭素志向の時代において、化石燃料を排出して使うという今の方式は、所詮限界があり、どこかで非炭素資源というものを考えなければいけないが、そうなると様々な考え方を変えなければいけなくなる。それぞれの技術の持つ問題点を明確に出して、どのように解決するかということを、先々の展望と同時に論じていかないと本当の意味での開発というのはできない。技術開発について、利点を言い、ターゲットを言うと同時に、是非解決すべき問題点を同時に議論して欲しい。
- 人材の育成・活用のところで、若年失業者対策の推進というものを挙げている。確かに、先ほどの資料でも失業率の推移で、15歳から24歳のところが、10%となり2桁で一番高いというお話があった。しかし、同じ15歳から24歳の労働参加率、要するに学んでいる人を除いて、学んでいない人の人口の中での労働参加率というのが、若者のところで44.8%で、これは先進7カ国の中では6番目で、かなり低いということがOECDにおいて指摘された。失業率というのは、仕事をしたいとか働きたい、仕事を探しているというのが条件になるが、それ以前に、まさに何もしていない人を労働参加させるということも大変大事で、これは社会保障制度などの基盤を整えていくことにおいても大変大事。
- 17年度の重点施策の第1に、人材の育成というものを取り上げている点は製造業にとって非常に心強い。やはり、技術あるいは研究開発、現場力というものの向上・充実の中心となるものは、やはり人である。したがって、人材の育成・教育については、非常に重要視して、力を入れているところである。現在ものづくりの現場において、技術力というものが低下しているのではないかと危惧している。一番、働き盛りで活力があるのは、40歳代だと考えているが、その40歳代が非常に少なくなってきており、その次の30歳代が多いという状況にある。よって、この30歳代の人たちにどのように技術あるいは技能を伝承していくか、あるいはそれを向上させていくかということが課題。説明の中にも、人材投資の減税ということを考えているとあったが、是非私どもの人材育成について、強力なる御支援・バックアップをお願いしたい。
- 重点施策については網羅的で、よくまとまっていると思う。この中に、「社会システムの再構築、高信頼性の構築」とあり、企業制度改革、市場ルール整備についての記述がある。市場の活性化、経済成長の促進、あるいは、自由で公正な、そしてグローバルな競争力を保持するために、今、公正取引委員会では独禁法の改正に取り組んでおり、消費者団体としてもこの独禁法の改正には大賛成。独禁法の目的の中には、一般消費者の利益を確保すると書かれており、この改正を次期国会で認めていただきたいと考えており、その際には、経済産業省のサポートが必要。
- 中小企業の中心にある小売業については、まだ非常に厳しい状態が続いている。例えば百貨店業界では、この2004年についても、全国百貨店売上高は、2.0%減であり、その中で特に厳しいのが地方都市の百貨店である。また、同時に旧来の繁華街・商店街の凋落が進んでいる。その結果、2004年の近畿2府4県の倒産件数は、1751件と、相変わらず厳しいものである。
このような中で、地方の都市の中心部では、商業施設の郊外化が進み、必要な生活水準を満たすだけの商業施設が崩壊しつつあるというのが現状である一方で、高齢者を中心に都心回帰の指向が強くなっている。その結果、都市部に住み、移動手段を持たない高齢者にとっては、大変不便な状態が起こっている。
そして、もうひとつ中小小売業を圧迫し、商店街の衰退の一つの引き金をとなっているのが、GMS、深夜営業である。
特に、この消費不況対策として、都市部の商店街へのご支援をお願いいたしたい。例えば固定資産税その他の公租公課の減免の問題、あるいは水道・電気代等の問題、さらに駐車場整備等についても、援助をいただきたい。また、環境対策に対する行政支援として、例えばISO14001の認証を所得した場合に、何らかの補助をいただく等の特例措置についても検討してほしい。
- 時間軸の問題が不明確。長年の懸案事項から直近の課題まで、平板に並べられていて、具体的に何をしようとしているのかが見えない。例えば環境とエネルギーの問題、税と経済活性化の問題等について、立ち入った問題提起をし、今年どのように具体化をしていくのかという発想が浮き出るような状況を作り上げる必要がある。
第2番目の問題として、今諮問会議の中で、21世紀ビジョンを構想しながら、全体の施策の体系化ということを改めて小泉構造改革の重点強化期間の中でやろうということであるが、是非この21世紀ビジョンの中に、経済産業施策の問題を具体的にはめ込んで、そして実施する段階にまで落とし込むという作業までやってもらいたい。
3番目として、政策の評価と予算の配分というものに対する問題意識についてのお考えを聞きたい。経済産業政策の上において、どのように過去の施策を検証し、将来の施策の上に反映し、予算を重点化していくという点が重要。
「安定的なマクロ経済運営と活力を生む」というこのテーマとの関わりで言えば、小さな政府にという流れの中で、重点的に資源を投入していくという、まさに「選択と集中」という点では、経済産業政策も例外ではない。とりわけ政策的経費の大きな経済産業省において、一体それをどういう形でとらえ直すのかということは非常に重要な論点である。
- 平成17年度の経済産業政策の重点施策の中にも、事業再生を引き続き着実に推進するという言葉が入っている。事業再生についての取組というのはかなり進んできていると思うし、マクロ的に見ても過剰債務は随分減ってきたが、ミクロ的に見ると、過剰債務を抱えている企業は、中小企業に多く、大企業の中にもまだ残っていると思われる。その意味で、まだ自律的に事業再生に企業が早期に踏み切れる環境が整ったとは言えない状況ではないか。
例えば、金融の融資慣行を見れば、個人保証の問題というのが一つの大きなネックになるし、倒産法制についても、それによって、事業によっては事業価値が極めて損傷してしまうという問題があり、さらに事業再生に関わる人材というのもまだまだ層が薄い。また、そもそも企業の経営者に対して、事業再生に取り組むプレッシャーが働くようなコーポレートガバナンスの仕組みといったこともまだ必ずしも十分ではない。
産業再生機構については、もう買取期間がほとんどなくなる。RCC等の取組も進んでいるが、民間で事業再生ビジネスが自律的に進んでいく環境整備というのが非常に重要。
17年度の重点施策との関係でも、例えば、事業再生を進めて、事業スポンサーがつくことによって、競争力のある産業再編が進んでいくということや、様々な地域再生の取組も、やはり過剰債務を抱えたままでは、なかなか取り組めないという企業が多いと考えられるから、引き続き再生に向けての環境整備ということを是非ご検討いただきたい。
- 先ほどから指摘されているように、若年層の失業率が高くて、トレーニングの機会を若者が得られていないということは、それ自体非常に深刻で大きな問題だが、その前に、若年層に対する動機付けが日本社会として不十分であり、若い世代の将来に対するアスピレーションのようなものが一般的に落ちているという問題がある。本当にどういうチャンスを日本の社会が若者に与えているのか、ジャパニーズ・ドリームみたいなものがあるのか、という点が重要。
- 10年間で300万人ほど正社員の数が減り、非正規従業員が500万人増えており、雇用の質が落ちている。そういう中で、若者のやる気そのものもなくなっているのではないか。
人材育成においては、産業界と学校と、それから個人の間での協力が重要。社会全体で人材を育てていくという視点をもう少し持つべき。全体的に見て、21世紀は正社員型の日本社会というよりはむしろ、色々な雇用形態の中で多様な人たちの人材をもっと活用しなければいけない。
今後、共働き世帯が増えていくわけであるから、むしろお金だけで報酬というのを考えるのではなく、例えば時間的にゆとりのある働き方において時間というのも一つ報酬になっていくと思うので、そういった働き方の柔軟化を位置づけていけば、もっとサービス経済の中で雇用を生み出していくことができるのではないか。
中川経済産業大臣よりコメント
(中川大臣)
非常に貴重なご意見をいただいた。例えば、化学離れの問題、あるいはまたものづくりには40代・30代が重要であるとか、学力低下の原因は何なんだ、若者の雇用形態はどうなのかであるとか、高齢者の都心回帰と中心の小売り・商店街のミスマッチをどうするか、というようなご意見等々色々いただいた。
実は我々も問題意識を持っている問題を、より実態に即して、あるいはまた論理的にお話いただき、そういう意味では大変参考になった。しかし、だからどうしたらいいんだというのは、実は我々にまったく分からないし、果たしてこれは経済産業省なり政府の仕事なのかなというところも含めて、悩んでいる。
海外に行くと必ず、美術館や博物館には、平日であろうと、小学生・中学生の子どもたちが、熱心に美術品やあるいはその国の伝統的な文化財を興味深く見ている姿を見て、どうも日本とはちょっと違うぞと感じた。
動機付けが大事であるという議論があったが、そういうところから、出発するのかなと思う。あるいはノーベル賞の田中先生から直接話を伺った際に感じたことだが、失敗をおそれないということも重要であると思う。そのような風土・風潮、生き甲斐を作る、それがものづくりなり社会づくりなり、ひいては国造り、世界づくりにつながっていくんだろうと思う。しかし、どういう風にしていったらいいのかという点については、結論が出ていない。一つあるのは、財務省との厳しい折衝が予想される中、私は絶対やれと言っているが人材育成減税、これを何とかしたいと思っている。しかし、その程度の知恵しか実は出てこないわけであり、そこを先生方にまたご指導いただきたいと思う。
今日の議論の中にあったように、タイムスケジュールプラス優先順位をいかに考えるかであるとか、責任転嫁ではなく、責任を持って、国民に判断をしてもらう、国民に考えさせることを我々が提示をするというようなことが重要なヒントかなと思わせていただいた。
経済産業省は幅広い役所であるが、子どもの動機付けまで経済産業省でやれないということも率直に申し上げながら、今日貴重なご意見をいただいて、これから役所の中、あるいは各党との色々な折衝が控えているが、がんばっていきたい。どうぞ引き続き、一つブレイクスルーをするために、お力添えをいただきたい。
委員からの意見に対して事務局から一括して回答
(石田総括審議官)
確かにエネルギー・環境の問題に止まらずに、社会保障の問題とか、税の在り方とか、通商問題とか、いろいろ国民に選択肢を問わなければいけない問題というのは、数多く出てきており、今後難しい問題、政策課題に直面した時に、選択肢を提示するようなやり方というのは、まさに一考に値するものだと思っている。
施策の時間軸が見えないではないかとの御指摘について。確かに若干平板になっているが、当然それぞれの中に時間軸を設定しているつもり。今後、具体的な実施にあたり、時間軸が見えるような形で進めていきたい。
また、21世紀ビジョンの中に、経済産業政策もしっかりとはめこんでいくべきだと、むしろありがたい御指摘をいただいた。是非そうしたいと考えている。21世紀ビジョンの今後の進め方の中で、むしろ是非、各省のこういった検討のリソースをフルに活用していただけるとありがたい。
さらに、過去の改革・政策をちゃんと評価して、将来に生かしているのかという御指摘だが、限られた予算の中で、新しい施策を打ち出していかなければいけないということで、施策の過去の評価は相当思い切ってやっているつもり。今後もそうしたところに力を入れていくとともに、そうした努力について目に見えるような形で、示していきたい。
(北村通商政策局長)
東アジアの経済連携を深めていくプロセスとして、いわゆる経済連携協定とともに、共通のプロジェクトといったものが、両々相俟って進んでいくということが望ましいことだと思っている。ただ、残念だが、アジアがヨーロッパと違う点は、経済の成り立ちが、各国によって非常に違うところがあり、例えばASEANの中には、未だに日本からの協力に大きく期待している国もある。ただし、その中でも情報関係を中心に、例えば日中韓では、共通プロジェクトの動きが最近、強くなってきている。繰り返しではあるが、経済連携協定の枠組みをしっかり、早く作っていくということと同時に、共通のプロジェクトをその中でやっていく、こういった努力をしていきたいと思っている。
次に中国経済について。言うまでもなく、世界経済あるいは日本経済、日本の産業に中国経済が非常に大きな影響を与えており、その影響はますます大きくなろうかと思う。これに関して2点の取組みを進めている。1つは中国側との政策対話を強化していくこと。中国政府は一体何を考え、何をやろうとしているのか、マクロ経済運営だけではなくて、エネルギー政策や個別の産業政策について何をやろうとしているのか。その点については、特に経済産業省として中国政府の国家改革委員会、あるいは商務部等との関係でのチャネルがあるが、これを更に強化をしていきたいと思っている。
それから、中国経済に関する情報分析あるいは情報提供をすべきだというお話だが、中国経済、中央もとりわけ地方の状況がよく分からない、あるいは統計自体が信頼性がないという問題がある。私どもあるいはJETROや、アジア経済研究所といったところまで総動員して、中国経済の分析を最重点課題としてやっていきたい、その上できちんとした情報発信をしていきたいと考えている。
(北畑経済産業政策局長)
産業の人材育成の関係について。一つは大臣の方からお答えしたように、企業の人材育成分野への費用の投資が少なくなっているので、焦点として、人材投資減税というものに挑戦をしてみたいと考えている。
それからお金の面ではなくて、仕掛けの面でも新政策を検討中。製造現場の中核人材として30代と50代の間に谷間があって、技術の伝承が難しくなっている、あるいは技術の高度化に伴う、更なるレベルアップ、こうした観点から、一つの仕掛けとして、大学を活用したいと思っている。国立大学が独立行政法人化した大きな流れを受け、研究開発だけではなくて、人材育成の面でも役割を果たしていこうという大学が随分出てきている。そこで、製造現場の中核人材の育成・強化策として、企業がノウハウを持ち寄り、大学が教育プログラムを作成し、政府がこれを支援するということで、30カ所ぐらいの事業を財務省の方に予算要求しようかと考えている。
若い人たちの、失業者ではなく無業者とでも呼ぶべき人たちの働く意欲について。私どもも、まったく同じ問題意識であって、若者の挑戦を促進するというのが一つの政府の方針。「若者自立・挑戦戦略会議」というのを昨年4大臣で設置し、この中で、若者の失業については、ジョブカフェという新しい制度を作った。これは県が主体となって、民間の能力を活用して一気通貫の職業紹介をするという仕組み。他に、働くことの目標を作るという意味で、小中高校での職業教育の中で、キャリア教育とインターンシップを取り入れていくといった新政策を検討中。
そもそも労働とか勉強する意欲の先の目標という話について。1つは、それぞれの職業についてスキル標準と言っているが、能力を評価して、それに見合う報酬がもらえるような仕掛けを色々なところに作っていきたい。ITの技術者・研究者、それからコンテンツの事業者とか、そういう新しい職種についてそういうことを考えていきたいと思っている。
また雇用形態の多様化の中で、アプローチも多様化をするようにという点について。先ほどの無業者対策と併せて、一つはe-Learningという仕掛けをやってみようと思っている。IT技術を活用し、いつでも学びたい時に学べるという仕掛けを作っていきたい。
事業再生については、産業再生機構、それから中小企業の再生支援協議会、RCC、産業再生法、色々な仕掛けができあがっており、これらが活用されて、徐々に進んでいると思う。産業再生機構は確かに期限が来ているわけだが、産業再生機構ができたことにより、民間の再生ファンド、あるいはそういう再生ファンドで再生事業をやってみようという人材が出てきた。以前に比べて、産業再生を支えるいろんな仕掛け・人材は層が少しずつ厚くなってきているのではないかと思っている。
個人保証の問題について、今日、包括根保証の問題について法制審が開かれ、保証の極度額のないものは無効、保証期間については、合意で定める場合は5年以内、合意で定めない場合は3年とみなすことになる方向。また、契約は書面で行うことを義務づける等、規制のあり方について議論がなされており、いずれにしても、法務省での法制化を期待している。
独禁法の改正については、公正取引委員会から案が出て、パブリックコメントに付されている。経済団体連合会の意見も出た。私どもとして、内々公正取引委員会と議論をしているところで、競争促進という大きな方向は正しいと思うが、詳細については、きめ細かく調整をいたしたいと考えている。
それから、新産業創造戦略とエネルギーと環境、こういうものがちゃんと整合が取れているのかという点。並行して調整をしており、新産業創造戦略の中の2010年の見通しにおいても、環境型で産業構造が転換していくという絵姿になっている。
また、いいことばかりで課題が書いていないという点について。実はこの資料ではそこまで書いていないが、本体の文章ではそれぞれ課題を整理して、それに対する対策を整理しているので、後でお読みいただきたい。
(石毛製造産業局長)
中国などとの競争を意識するとハイエンドのものを作り続けられるかどうかがポイントであり、そのためには技術力・人材育成がポイントだというお話であるが、まったく同感。3つだけ申し上げると、1つは知的資産を増やすということが重要になるが、試験研究税制を抜本的に直して、新聞報道もされているが、非常に使いやすくなり、投資を刺激し、企業の支出が増えているのではないかと考えている。次に、形成した知的資産についていかに保護していくのか、模倣品対策ということで先ほど施策の紹介があったが、こういう位置づけの中で取り組んでいく。
それからもう1つは人材の件。子どもだけでなくて、歳を取った人にもいかに動機付けを与えるかということが非常に大事。従来だと叙勲だとか褒賞だとかそういう制度があるが、それ以外にものづくりに取り組む人等を、いかに褒め称えるような形で動機付けを与えるのかという点について考えているところであり、今後その検討を進めたいと思っている。
(斎藤産業技術環境局長)
基礎研究と実用化の部分について。今回の新産業創造戦略で、技術によって戦略的に日本の産業を盛り立てていこうという背景には、かなり基礎的な部分、シーズからスタートして、ここに一定の蓄積があるからこそ、上に綺麗な花が咲くと考えているということがある。ではなぜかなり出口を見据えたものを強調しているかというと、最近の状況においては、基礎研究から実用化に至るまでの期間が非常に短くなっており、スピードの競争になっているという点がある。その中で、大学は基礎研究、国立研究所はその中間段階、実用化の部分は民間企業でと、それぞれの強みがあるが、これらが一つの共通のシナリオを持って、一種の総力戦でやらないと、スピード感のある実用化というものはできないという問題意識があり、出口を見据えた技術マップというものを強調させていただいている。
基礎研究から応用にどうつないでいくかという点について。日本の大学は今でも高いレベルの基礎研究をやっている。産業技術総合研究所の1つのビジネスモデルは、いかに産業界での実用化に結びつけるかである。それを第二基礎研究と呼び、またそれを開発に結びつけていくという、そのモデルを、分野を特定したもの以外にもシステムとして回るような仕組みを構築していきたいと考えている。
経済と環境の両立ということであるが、大きな話としては、今後の21世紀の経済ビジョンということで、経済財政諮問会議においても今後のマクロフレームを検討されると聞いている。その中の要素には、社会保障の問題、地球環境等の問題、あるいは国家の財政問題というような制約要因を取り入れて、日本の21世紀の経済、どうマクロフレームとして、構築していくかという議論があると聞いている。その際には、地球環境という息の長い議論と照らし合わせると、長期的な経済成長がどういうものになるか、それがどのような経済構造あるいは産業構造によって達成されるかという視点が、大変重要な要素になってくると思う。同じく、資料3-3の16ページのところで、2030年にかけて二酸化炭素の排出量がどうなっていくかと、これは我々として一定の経済成長・産業構造を前提に、こういうことになると提示したもの。したがって、そういう長期的な問題を提示していくということが1つ。それからもう1つ、大変重要だと思っているのは、今回の新政策の中にも書いてあるが、やはり国際的視点。アジア、特に中国におけるエネルギーの消費、あるいは産業活動の強化というものが地球環境にも大きな影響を及ぼすということなので、アジア大におけるそういう問題を検討する視点というものも提示している。我々としては、検討の場は、色々今後模索して行こうと考えているが、長期的な経済の状況、あるいは国際的な視点等を十分に提示して、その中から経済と環境をどう両立させていくかということについての議論に役立てていきたいと考えている。
(小平資源エネルギー庁長官)
燃料電池については、例示として挙げられたものであるが、明るい展望を示した時に、それを実現する上ではもちろん課題はあるわけであり、そういう課題も併せて示し、検討して、対応していくことは当然重要であると考えている。既にそのような流れで議論されてきていると思うが、これからもより一層、意識して取り組んでいく必要があると思っている。
なお、燃料電池について申し上げると、これはまだまだ技術開発競争等も多いわけで、ある時間軸の中で次第に立ち上がっていくもの。その中で例えば、供給のインフラをどういう風に整備していくのか、経済性を考えながらどうやっていくのかとか、あるいは化石燃料から水素を得るのであれば、地球環境的には結果として同じことになるのではないかといった御指摘があるわけで、技術的な対応も含めて、どういう方法があるのかということについて、課題をしっかりと提示をした上で、対応についても関係者の間で努力をしていく必要があると思っている。
(望月中小企業庁長官)
中小小売業の停滞について。昨今の経済成長は、輸出と設備投資主導で始まった。したがって、今後個人消費が力強く伸びてくれば、影響があるのではないかと思っている。ただ問題は、最近の個人消費の中身で、過去とは相当パターンが変わっているのではないかという点。情報家電だとか自動車というものが主導した時に、中小小売業への消費拡大の好影響がある程度軽減されざるを得ないというところがある。
また、中心市街地の問題については、駐車場の整備や各種補助をしながら、再活性化ということを努力してきた。なかなかうまくいかないところもあるが、うまくいっているところについて、もう少し成功事例を広めていきたいと考えている。
そうはいっても、先ほど御指摘があった郊外の大規模店が、特に昨今、激しく進出しているということの影響は無視できないものがある。ただまちづくり三法の中においても、この点については、都市計画とかゾーニングとかそういう世界で、何とかまちづくりを考えながら対応していこうということになっている。私どもとしては、国土交通省などと十分に意見交換しながら、現在の状況に対応した、更なる打つ手がないかということは考えていきたいと思っている。
議長からコメント
(奥田会長)
私からも最後に、議長として、経済産業省にお願いをしたいことを2、3申し上げる。
人材の育成と活用について。少子高齢化が進む中で、産業会・教育界をはじめ、社会全体で取り組むべき、全政府的な取組が必要。これに関連して、社会保障制度、あるいは雇用法制の在り方、また先ほどあった人材育成減税等のインセンティブの実現、あるいはまた総合的な少子化対策、こういうものについても経済産業省として、しっかり取り組んでいただきたい。第2に、アジア諸国との経済連携協定、あるいはWTO、こういうものについては、一部の問題で全体が振り回されることがないように、国益とは何かということについて政府・国民を挙げて、判断していくことが重要であると思うので、これらの点について、経済産業省のリーダーシップを期待したい。それから、エネルギー・環境問題については、総合資源エネルギー調査会との合同会議を設けて、国家戦略として取り組むべき提案がなされている。本年は温暖化対策の見直しの年であるが、環境税や排出枠規制が安易に導入されることのないように、是非経済産業省としてもしっかりと議論をしていただきたいと、こういうことを私から申し上げておく。
以上
お問合せ先
経済産業政策局 産業構造課
