産業構造審議会総会(第12回)‐議事要旨
日時:平成24年8月27日(月曜日)16時~18時
場所:経済産業省本館17階 第1~3共用会議室
出席者
米倉会長、青山委員、秋山委員、生駒委員、上原委員、天野委員代理、浦田委員、大西委員、翁委員、尾崎委員、小室委員、佐々木委員、白石委員、高橋委員、田川委員、佃委員、南雲委員、野原委員、野間口委員、橋本委員、松本委員、宮島委員、宮田委員、山地委員、渡辺委員、岡村臨時委員、三村臨時委員
議事概要
(1)経済産業大臣挨拶
枝野経済産業大臣
- 本日はお忙しいところお集まりいただき、また日頃から経済産業政策にご支援を頂き感謝。日本経済は従来から抱えていた財政赤字やデフレといった内なる課題に外的な要因が加わり、かつていない危機に陥っている。日本経済の直面する課題は、円高等による根こそぎ空洞化、エネルギー制約、企業戦略・産業構造の行き詰まり、個人の貧困化・地域の疲弊、マクロ経済の行き詰まりの5つに分類できると考えている。
- 明治維新以来の我が国の経済産業構造が大きな転換期を迎えており、構造問題に真正面から取り組む攻めの対策が必要。「成熟と多様性を力」に「価格競争から価値創造経済へ」転換するという方向性で進めており、日本再生戦略にもその方向性を取り入れてもらっている。
- 一方で、我が国の経済・国民生活が足下から脅かされており、特に原発事故や震災からの再生、円高・空洞化への対応、デフレからの脱却、電力供給不安の解消については、速やかに効果を上げる必要がある。こうした足下の状況や今後の経済産業政策について、大所高所からの活発なご議論をたまわり、予算の概算要求につなげていきたい。
牧野経済産業副大臣
- よろしくご指導いただきたい。
柳沢経済産業副大臣
- 昨年の9月から、福島原発事故の現地対策本部長を兼務して約1年経つ。原発事故からの復旧・復興は総論から各論に議論が移ってきており、まだまだ長い道のりである。ぜひ皆様からご意見を頂戴したい。
中根政務官
- 本日はよろしくお願い申し上げます。
(2)事務局補足説明
北川総括審議官より資料について説明。
(3)自由討議
青山委員(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会副会長)
- 消費生活アドバイザー・コンサルタントという立場からすると、消費者政策が若干弱いのではないかと思う。空洞化対策も重要だが、内需の掘り起こしなくして産業競争力を高めることはできない。2年ほど前から議論されてきた地域の高齢者サービスなどの潜在的需要の発掘などが重要。中心市街地活性化政策も実証実験にとどまらず、地域の消費者・経済を活性化する先進的な取り組みを普遍化する努力をしてほしい。
- 法整備など健全な市場の確立に向けたインフラ整備が進みつつある。経産省所管の法律は消費者庁に移管されたものも多いが、特定商取引法や消費生活用製品安全法など消費者庁と共管となっている部分もある。経産省は地方局を持っており、執行面を強化していることを評価したい。
- 消費者庁では食品表示を分かりやすい表示に一元化することに取り組んでいる。経産省もTPPなどの議論で関連しており、消費者庁を始め、関係省庁をまきこんで議論するためのイニシアティブを握ってほしい。
南雲委員(日本労働組合総連合会事務局長)
- 「個人の貧困化」について、平均的労働所得の低下は経済成長を阻害する要因であると認識している。国家公務員の給与の引き下げが、地方公務員にも適用されれば、地域の疲弊に繋がる可能性がある点に留意する必要がある。野田政権は分厚い中間層の復活を主張しているが、具体的にどう実現していくか。国内への海外投資収益の還元については、生産性3原則をふまえて、目に見える具体的道筋を示すべき。
- 人材は経済成長の原動力であり、多様な人材が活躍できるよう育成を強化していく必要がある。目下では日本再生戦略に掲げられている成長分野や、福島原発の廃炉に関する技術者の育成が不可欠。人材育成を実践していくためには魅力ある職場が必要。
- エネルギー・環境政策の再設計が大詰めを迎えている。世論調査の意見は考慮すべきだが、安全安心、コスト経済性、安定供給等の視点をふまえてバランス感ある議論をしてほしい。
- 連合は、日本のものづくり技能を若い世代に伝えるため、埼玉県、岐阜県、大阪府に絞って熟練技術者を工業高校等に送る取組を実践している。生徒にとっては社会人としての礼儀等も含めて成長につながる一方、技術者も孫のような生徒に教えることに生き甲斐を見いだしている。昨今予算が削減されているので、政府の支援継続をお願いしたい。
岡村臨時委員(日本商工会議所会頭)
- 日本再生戦略の中で、中小企業戦略が柱となったことは高く評価したい。中小企業政策は従来、金融や税制支援といった守りの対策が中心だったが、企業の創業支援・新市場開拓支援・人材育成等、攻めの政策に転換して欲しい。「ちいさな企業未来会議」の提案事項が書かれているが、ぜひ諸施策をきめ細かく実現してほしい。
- 地域経済の中核は中堅企業だが、これらの企業は中小企業基本法ではカバーされていない。中小企業基本法の改正を含めて、中堅企業の支援を強化して欲しい。
- 投資収益の国内環流が盛り込まれているが、日本への対内直接投資残高は国際的に低水準であり、海外企業が日本に投資したくなるような環境整備を考えるべき。税制や規制改革、特区の活用等を通じて、国内投資を促進するための環境整備を考えてほしい。
- TPPを始めとした高いレベルでの経済連携は、日本経済の活性化に不可欠。
三村臨時委員(新日本製鐵代表取締役会長)
- 日本経済の現状に対する基本認識はまったく同感。むしろ、産業の空洞化についてはより大きな危機感を持っている。資料で示されている危機感と政策の重点が結びついておらず、物事を小さく取り上げているような気がする。例えば昨年の資料では、農業についてTPPを通じて産業構造の改革を進めることが取り上げられていたが、今年の資料ではTPPに関する言及はたった一箇所に留まっており、記述も慎重になっている。
- 「エネルギー制約下での新たな産業構造を構築」といった表現があるが、エネルギー制約がある中で経済を成長させることはできるのか。エネルギーの安定供給とリーズナブルな価格は、経済成長にとって不可欠であり、そのために何をすべきかを示す必要がある。現在の記述では、エネルギー制約が当たり前という表現になる。
- 産業構造は常に新しくしていく必要があるが、厳然たる事実は、今後10年かかっても、自動車産業に匹敵する産業は生み出すことは出来ないということ。既存産業の国際競争力をどう担保するのかも、大きな柱として触れていただきたい。
上原委員(明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授)
- 流通部会では、震災に強い強靱な流通が議論になっているが、経産省を超えた統一的な災害対策を作り、その中に流通政策を位置づけていただきたい。
- シミュレーションによれば、首都直下型地震が起きると、ミネラルウォーターがわずか2週間で全国に流通しなくなる。首都圏は保管施設や生産施設が集中しているため、被害が出ると全国的な需給バランスを崩してしまう。誰がどこで生産して、どこに在庫があり、どうやって商品が流れているのかをマクロ的につかんで、緊急時の対応を考えておく必要があり、政府レベルで取り組んで欲しい。
天野委員代理
- 稼げるグローバル市場環境の形成に向けてEPA・FTA等の経済連携の推進と記載されているが、投資協定、租税条約、社会保障協定等もあわせて重要。TPP交渉に早期に参加できるように、これまで以上に関係国との協議を進めてほしい。
- インフラシステム輸出の競争力強化。JICAの海外投融資の本格的再開を始め多くの施策が盛り込まれており、ぜひ早期に実現してほしい。
- 法人実効税率の引き下げは実現したが、更なる引き下げが必要。また、国際課税制度については、我が国国際企業の国際競争力と資源確保の観点から、諸外国への働きかけを含め、いっそうの改善を図ってほしい。
- 商社業界としてもエネルギー資源の確保や省エネルギープロジェクトを進めるが、政府としても対策を着実に進めてほしい。中長期については、エネルギーの安全保障という観点も踏まえたベストミックスを進めてほしい。
浦田委員(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)
- TPPについて、言及が少ない。TPPは他のEPAやFTAと重要性が違うのにもかかわらず、多くのEPA・FTAと並列的に書かれている。日本のTPP参加表明によって、日EU、日中韓、RCEP等、いろいろ動き出したが、TPPへの動きが遅くなるにつれて、その他の協定の進み方も遅くなった。そうした観点から、TPPについてもう少し触れて欲しかった。
- TPPを進める方法だが、経産省の考えをまずは示すべき。どうやってTPPについて結論を出すのか。たとえば農業に対してどうするのかについて触れなければTPP参加は実現できない。一案だが、アメリカや韓国にあるようなTAA(貿易調整支援制度)のようなセーフティネットを整備すれば、自由化しやすくなる。そうしたところまで具体的に書いていただきたい。
翁委員(日本総合研究所理事)
- 財政面での制約が大きい中、規制改革が重要。グリーン、ライフ、農業は最も期待される分野だが、最も厳しく、改革のテンポが遅い。医療機器の薬事法改正や、センスある経営者の農業への新規参入など課題は山積している。経産省は、厚労省や農水省に働きかけて、ビジョンを打ち出して議論し、オールジャパンで規制改革を進めてほしい。
- ダイナミックな企業再生をしやすい環境作りが重要。グローバル化、人口動態の変化により、大・小問わず企業を取り巻く環境は激変しており、変化に応じて企業が変革していく必要性がある。地域の企業においても、合併による競争力強化や業種転換が必要とされているが、そこまで踏み込めていない企業が多い。その際、営業譲渡を受ける側の人を採用するための支援など、雇用流動化に対するサポートも必要であり、北欧の積極的労働市場政策のようなパッケージを考えることが重要。
- ダイバーシティの推進も重要であり、経産省が女性の働きやすい環境作りに積極的に取り組んでいることを評価。女性のM字カーブは緩やかになってきているが、管理職や30歳過ぎの女性正社員はまだまだ少ない。女性が働きやすい環境を作ってほしい。
小室委員(ワーク・ライフバランス代表取締役社長)
- 労働力の人口については触れられているが、労働時間の減少についても危機感を持ってもらいたい。介護の時間制約を持つ男性社員が急増する中、残された仕事が残された人の残業増でまかなわれるため、メンタル疾患が増えている。残業が増えて収益が落ちるという疲弊集団になっている。このような構造を転換するためには、社員数を増やすことで、適正な労働時間内で働いて勝っていける構造にする必要がある。弊社の社員は全員残業ゼロで業績を上げている。育児や介護を両立しながら働ける集団を作ることで、多様な価値観を持った社員によって、高付加価値の製品・サービスへと転換を図ることができる。
- このような転換を実現するために、経産省にしかできない対策として、次の3点がある。1つめは、長時間労働をさせる企業が損をする仕組みの導入。日本は欧米に比べ、時間外割増率が先進国の中できわめて低いため、一人の人間を徹底的に長時間労働させる方が得な仕組みになっている一方で、欧米では残業させるよりも新規採用の方が得という仕組みになっている。2つめは、介護や育児で時間制約のある若者を雇用すると得をする仕組み。3つめは、介護や育児で出勤ができない人への在宅勤務支援。システム導入費用やセキュリティなどの理由で企業は立ち止まっている。団塊世代が70歳に入る2017年までに、介護をしながら働くという労働スタイルを進める必要がある。
- やせ我慢モデルから付加価値モデルに移行させるためには、労働スタイル変換が急務。これを行わなければこの人口構造の中で生き残れない、と書き加えていただきたい。
白石委員(関西大学政策創造学部教授)
- さまざまな制約を克服しながら、内需の拡大と新興国需要の獲得に取り組むことには多くの人が賛成する。
- 国内では、女性が働くための保育、高齢者サービスは確実に需要が見込める。仕事を離れていく女性の労働力を活用していく観点からも必要。保育士や看護師の資格保有者は多くが潜在化している。看護師の8人に1人が早期に離職するのは、安い給料で24時間通じて働かなければならない環境などに問題がある。潜在看護師がどこにどれだけいるか把握するデータベースが必要。これらは厚労省の問題だが、インドネシア人やフィリピン人の看護師合格者も少ないため、今後人材が不足する10年間は「プラクティカルナース」という事務作業を担う看護師を育成するなど、参入障壁を低くする取り組みが必要。
- 海外市場のダイナミックな変化に対応する際、インフラと新産業育成を結びつけ、地域の競争力を高めることを考える必要がある。イギリスのファンボローはロンドンから50キロ圏内、東京と成田の距離と同じくらいであるが、軍用空港を民間会社に払い下げて200億円かけてターミナルや関連施設をつくった。毎年ビジネスジェット等の展覧会を開催し、業界関係者の取り込みを図り、ファンボローの周辺に訓練施設が50社立地し、ケータリング、ホテル、タクシーなど4000種類の仕事が生まれている。成田と羽田にビジネスジェット専用のターミナルができたが、ホンダが作ったビジネスジェットをどうのようにして売り込み、ハンドリングやケータリングなどの周辺ビジネスを取り込むのか、マインド鎖国にならずにダイナミックな発想で考える必要がある。
高橋委員(昭和電工代表取締役会長)
- 網羅的でよくできているが、日本人の日本のための再生戦略であり、外国人の経営者や労働者にとって、日本の事業環境が魅力的だと感じられるような計画かどうかという視点も必要。企業はASEANをはじめとして海外市場に積極的に出かけ、日本企業が現地で円滑に事業運営を進めるための条件整備を先方政府に要求し、先方政府も要求を聞いてくれる。それと逆のことを日本の政府も取り組んでほしい。
- 日本の新成長戦略は素材としての化学。新しい事業、新しい素材はリスクがあるため、一企業の力では厳しいため、研究開発に対する支援をお願いしたい。狙ったものを作れるかというリスク、狙ったものが事業になるのかというリスクがあり、一企業で行うのは非現実的。企業が取りきれないようなリスクについては、体制、税制、知的基盤を国で担保してほしい。
田川委員(JTB代表取締役社長)
- ツーリズムに関する政策については、成長戦略と位置づけていながらなかなか実行できていない。特にインバウンドは800万人台から増加しておらず、国際交流の中で日本の立ち位置がはっきりしない。国際競争力のある地域経済の創出が必要であり、交流人口の増加、国際交流人口の誘致等に言及する必要がある。
- 更に産業観光もまだまだ一般化しておらず、日本の宝が日本国民に知られていないため、ツーリズムによって日本と世界に産業観光を知らせる必要がある。また、地域の雇用拡大という観点でもホスピタリティー・ツーリズム産業は重要。このような地域の宝を磨く産業が活性化してくることが望ましい。
- 車輌分科会においては、競輪場等の公営競技場の施設を限られた競技のみに使用するだけでなく地域の施設に活用していくという議論も必要だと思う。
佃委員(三菱重工業取締役会長)
- 航空機宇宙産業に対する官民一体となった諸施策につき、次の観点等を踏まえ、迅速に実行願いたい。全般としては、第一に安全保障の要であること。第二に航空機宇宙産業は当審議会の新産業構造部会等で先端産業と位置付けられ、また経産、厚労、文科3省連名による2012年度版ものづくり白書でも新産業分野に位置付けられていること。
- 個別施策としては、第一に内閣府等で議論されたパッケージ型インフラ関係大臣会合や当審議会のインフラ・システム輸出部会の重点分野に宇宙産業を位置付け、既に相応の成果を挙げており、航空機産業についても同様の成果が十分に期待出来ること。第二に金属材・複合材等の素材産業及び素形材産業や装備品産業を巻込んだ複合領域における共同開発等により、極めて大きな産業波及効果が期待出来ることが挙げられる。
- 次に航空機及び宇宙産業の個別要望を申上げる。先ず航空機産業は産業構造ビジョンが作成されて以来、完成機である”三菱リージョナルジェット(MRJ)プロジェクト”の推進による”機材提案からファイナンス・運航・整備に至る総合ソリューションの提供”を掲げている。しかし新規参入であるMRJの場合、貿易・金融制度上の政府支援が無ければ販売機数を伸ばしビジネスとして成立させることは困難。”金融・サービス面こそが深刻な課題”との指摘が当審議会の航空機委員会からも出ており、リースファイナンスやプロダクトサポート等に対する更なる御支援をお願いする。また航空機は初期投資が大きく回収に30~40年を要する。民間企業にとっては市場への参入障壁が極めて大きい事から、長期的な視点に立った政府による継続的投資が必要である。
- 一方の宇宙産業は、準天頂衛星システムの構築が閣議決定され、また内閣府に宇宙戦略室と宇宙政策委員会が設置されJAXA法も見直された。これらは産業界が要望してきたものであり、産業化、安全保障、研究開発、外交を大きな柱とした宇宙空間の開発・利用に対する政府の戦略的推進体制が整ったものと理解する。課題としては競争力確保と技術力の高度化に資する次世代ロケット開発が滞っていることであり、予算面の一層の充実を期待する。また、宇宙産業の”海外への製品輸出・サービス提供”や”国際共同プログラムへの参加・貢献”は、航空機産業と同様に世界における日本のプレゼンス・ブランド力を高めることに繋がる。インフラ・システム輸出へ向けた政府の一層の支援並びに関連する法制度の整備を引続きお願いしたい。
野原委員(イプシ・マーケティング研究所代表取締役会長)
- 自動車産業に匹敵する産業がすぐには興せないのはそうだと思うが、だからといって今の産業だけではやっていけない。小さくてもいいので新産業を興していく必要があり、再生可能エネルギーやIT融合、グリーン成長戦略、ライフ成長戦略等、農林漁業再生等の分野で新しい事業の創出をしていく必要がある。その際、新しいプレイヤーを創出していくことが重要であり、いろいろなテーマが取り上げられて、それぞれのテーマで実証事業や補助事業が行われているが、参画するメンバーにも新しいプレイヤーの参加を勧めるべき。
- 「海外で稼ぎ、日本での消費も促すクールジャパン」には大賛成。海外展開も重要だが、その人たちが日本に来て、日本で消費をすることをもっと育てるべき。たとえば、常設のライブ・ミュージカル・ショップにはアジアから人が来るので、国内のエンターテイメント産業も育つ。
- 今回、女性メンバーが多く加わったが、女性を入れようという意志を感じて、うれしく思っている。
野間口委員(独立行政法人 産業技術総合研究所理事長)
- 大量生産・価格競争モデルからの脱却や、稼ぐモデルへの転換には強く同感。これらの方針を実のあるものにするためには、知的財産戦略を進める必要がある。技術だけではなく、デザインやブランド等の知財をしっかりと保護し、事業に活かしていける環境を作る必要があり、ぜひ実行して欲しい。
- 知的財産に関わる国際的状況は4~5年で大きく変わった。これまでは、日米欧が特許出願の中心だったが、近年、新興国、特に中国が増加し、中国の出願が日米を抜き世界一になった。このため、権利紛争等の被害が日本企業でも出てきており対応が必要。米国、中国では、自国の中小企業の権利取得をサポートするための職員を大幅に増員している。我が国でも、2002年の知的財産戦略大綱以来、特許庁の人員は増強しているが、世界で戦える人材にするには、いっそうの工夫が必要。中国における知財軋轢の動向をみると、中国における知財の文献検索をいち早く展開するような取組も必要。
- 知財政策は極めて専門的であるため、企業の幹部も各社の専門家に任せてしまっている。他方で知財戦略は経営戦略上の重要性を増しており、企業や経産省の幹部にもその重要性に鑑みて積極的に取り組んでいただきたい。
橋本委員(東京大学大学院工学系研究科教授)
- 産業界・アカデミックの技術力・研究力は低下したとは思っていないが、中国、韓国の水準が日本に近づいてきていることが、将来に対する不安感になって、若い人に影響を与えている。今年の東大工学系の博士課程志望者が激減したが、学生に理由を聞くと、将来に対する職の不安があるからとのことである。
- 日本は技術面でトップを走っているが、中国や韓国がすぐ後ろに迫ってきているため、企業の研究開発の大半は2,3年先の短期的なスパンになってきている。企業戦略上やむをえない部分もあるが、経産省としては長期的な方向性を示して、10年、20年先のための研究というのも支援してほしい。大きな方向性については政権が変わっても方針を変えずに続けていってもらいたい。
- 中国や米国の研究開発費が大幅に増えている一方で、日本は横ばいであるが、単純に増やせと言うつもりはない。財政制約のある中では、研究開発投資はいったん決めた方向性に対して資源の集中と継続を実践していくことが重要。国のプロジェクトは毎年新しいものを作っていくため、既存のものは毎年一律カットになるが、既存のものの中でも良いものは太くしていく必要がある。他方、新たな芽を育てる仕組みも重要であり、アカデミックなところにたくさん芽があるため、経産省と文科省との協力がきわめて重要。
- 技術で勝ってビジネスで負けているケースが多いと言われており、研究開発にかかるビジネスモデルは、産業界が独自に考えるだけではなく、国家戦略として考える必要がある。初期段階から最終的な出口を認識しながら、研究開発現場に落としていくことが必要。そのためには理科系の学者だけではなく、経済学者や社会学者、企業経営者を研究開発プロジェクトに内在させることが重要。
松本委員(一橋大学大学院法学研究科教授)
- 今年の資料を見ると、今までに比べて国内市場重視の視点が出てきているという印象。外で稼ぐというモデルがうまくいかない場合には、国内で稼ぐことも重視する必要がある。その前提として、国内で安心して財やサービスを購入できる状況をつくっていく必要がある。サービスについては新しいものが出てくる余地があるので、安心して購入できる環境整備が必要。消費者庁は規制をするのが役割だと自己規制している印象があり、経済産業省は財・サービスの提供者に対する取組を積極的進めてもらいたい。
- さらに、現在の安全安心だけではなく、将来の不安を取り除く政策がいろいろな分野で必要とされている。経産省の所管ではないかもしれないが、経済政策としての社会保障問題や、私的財産の活用等による老後生活の仕組みづくりなどにも取り組んでほしい。
宮島委員(日本テレビ報道局解説委員)
- 日本に成長戦略が必要ということは、多くの国民が実感しているが、成長戦略が本当に進むのか、実感がもてない。日本再生戦略におけるグリーン、ライフ、農林漁業等は、他省庁のハードルは高いと思うが、絞り込んで決めた分野であり是非がんばってほしい。
- エネルギーミックスについて、国民は思っていた以上に原発への抵抗感が強い。原発廃止は経済への影響があることを説明しても、原発ゼロを求める人が多い。私自身もやや意外であると感じたが、国民の実感と経済界はかなり乖離がある。どのエネルギーミックスを選んでも、政府として取り組む必要があるのは、再生エネの促進やコストの低下であり、新たな成長分野の種になるように全力で取り組むことが必要。その姿勢が見えないと、原発継続のための説明と思われてしまう。
- ダイバーシティについては、新産業構造部会でも議論になった。今や老舗の国立大学の医学部でも女性が半分を超えたり、昔の旧制中学で地域の進学校も半数以上は女性というところもある。国は女性の教育にも多額の投資をしているのだから、「いまある人材資源」として女性を活かすことが不可欠。ダブルインカム・ツーキッズが無理なく実現できるのであれば、消費に対しても好影響がでてくる。一方で実際には大変な壁があるので、社会のバックアップを強化していくべきであるが、40~50代の価値観ではなく、10~20代がこれからどう生きていくかという視点で政策を作っていく必要がある。
宮田委員(東京藝術大学学長)
- 「小さな企業に光を当てる」「個を活かす」「イノベーション人材を育成する」といった記述があるが、産業振興の観点からは大きな変革を考えた方がよい。
- 我々は、「上野の山文化ゾーン」というものをつくっている。ひとつのイベントを行うと、100万人が上野の山に来る。上野の山地区には各種施設がたくさんある。この地区は世界的に見ても多様な価値観と人材を集約できる潜在力を持っている。文化や観光を包括できるモデルケースとして、文化と産業を統合した文化産業省をつくって、上野の山をモデルケースとして上野の山特区をつくる事で、いろいろな面での活性化を実現できる。
- 国が美しく豊かになるためには産業が必要。経済産業省におけるクールジャパンを活性化するためには、「1% For Arts」を提言したい。
山地委員(地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)
- エネルギー環境政策については白紙からの見直しが進んでいるが、新たなエネルギーミックスや電力需給構造の検討にあたっては、再生可能エネルギーに過度に期待する理想主義的な議論が進んでいる。将来を見据えた理想主義的な議論はもちろん大切だが、地に足のついた現実的な議論も進めなければならない。エネルギー安全保障やエネルギーコスト抑制の重要性にも配慮が必要。グリーン分野が本当に成長に結びつくのか現実感をもった議論も行う必要がある。固定価格買取制度を導入することによって、どのくらい再生可能エネルギーが導入出来るのか、どの程度費用を要するのか等、3年先の見直しを前提とした議論をする必要がある。
- 原子力に対する不安や、原子力行政・専門家に対する国民感覚は大変厳しい。しかしそれをそのまま受け止めるのではなく、バランス感覚を持って議論する必要がある。今は、エネルギーの安定供給やコストに関する重要性が薄くなってしまっている。エネルギー環境政策に関する多様な選択肢の維持を、ぜひ考えてほしい。
- 国際的な視点は重要。2国間オフセットクレジット制度については記述があるが、それ以上に、ダーバン・プラットフォームの下で2015年までに2020年以降の国際枠組みを決めることになっているが、その中で今回の震災や原子力事故を受けて、数値目標よりも行動を重視した目標を作る必要がある。
渡辺委員(トヨタ自動車相談役)
- 総論について、今回のレポートは日本経済の直面している危機感を記述しているが、書かれている危機感についてばらつきがある。このままだと日本は沈没してしまうという危機感を、国政に携わる方々に理解してもらう必要がある。
- また、戦略はよくまとまっているが、戦術をどう展開するかが重要。キーワードはスピードとチームワークである。そのための仕組みを国がどう作るか。政府の強力なリーダーシップの下で、省庁横断的に行う必要がある。企業でも重要なテーマについてはプロジェクトチームを部署横断的に進めていく。政府でもぜひ考えてほしい。
- 各論について、自動車の場合、次世代自動車について記述していただいているが、ハイブリッド自動車から電気自動車、そして水素自動車へと移り変わっていくことは確実。目先の事ももちろん大切だが、10年先の技術開発・生産戦略も重要であり、政策を総動員してほしい。
- 通商政策部会を担当しているが、部会の中で、新興国を始めとした成長市場の取り込みが不可欠という議論をしている。しかしながら経済連携の締結が遅れており、TPPも昨年11月に関係国との協議入りをスタートしてからほとんど進展していない。経済連携を積極的に進めて欲しい。
大西委員(東京大学大学院工学系研究科教授)
- 中国の地方都市に10km四方に100万人の都市を作るために、先日中国に呼ばれて議論したが、効率的な都市、信頼性の高いインフラを造ることに対する、日本への期待が大きかった。今後、我々の持っている技術やそれを応用した成果に関する評価は、世界的に高まっていくのではないか。技術の国際標準化や、要素技術を持った企業が組み合わさり一つの都市の姿を描くなど、近隣諸国に、日本の役割を示していくことが必要。
- 中国の地方都市に対して提言をしていくためには、日本の地方都市がなくなると困るので、地方都市の振興が重要。
- 原子力について、この文章だけでは今回の教訓を経産省が本当にくみ取っているのか疑問。超長期間にわたり廃棄物を管理する必要があるが、必ず事故は起きるという前提で、人命を損失しないという観点から原子力を考えることが必要。
石黒経済産業政策局長
- 御指摘頂いた点については対応していきたいと考えている。人を生かす産業の育成やダイバーシティマネジメント等については成長戦略の観点から重要だと考えている。
佐々木通商政策局長
- TPPについては、おっしゃる通り記述は慎重だが、政策は慎重だとは思っておらず、積極的に進めていきたいと考えている。
保坂総合政策課長(高原資源エネルギー庁長官 代理)
- エネルギー・環境会議での議論は2030年におけるエネルギーミックスに関するもの。関西電力管内では大飯原発が稼働しなくても電力が足りたという指摘もあるが、相当無理な節電を強いており、今年のような節電が続くと事業継続は難しいという声が特に中小企業から上がっている。
- 原子力規制庁において、原発の安全性も含めた全体の議論をしていきたい。またエネルギーミックスが確定した後には、総合資源エネルギー調査会において、足元のエネルギー政策に関する議論をしていきたい。
米倉産業構造審議会会長
- 東日本大震災からの復興・再生は急務。被災者の故郷への帰還、産業の復興に加えて、経済産業省には、特に被災地における企業活力の復活、新たな産業の創出にも取り組んでいただきたい。エネルギー政策の立て直しも必要。総合資源エネルギー調査会での議論も踏まえつつ、日本経済の成長を持続的に確保するという観点から、政府として責任ある方向性を示して欲しい。足下の電力供給不安の解消は、企業活動、国民生活の継続の観点から喫緊の課題。この不安の解消に全力を挙げていただきたい。
- 日本経済の成長を支えるという経済産業省の本務を全うして欲しい。複数の委員から規制改革の必要性についてご意見をいただいたが、全く同感。日本が再生するためには抜本的な規制改革を行って、国の内外から日本は本当に変わったと思ってもらうことで、国内外からの投資を呼び込み、日本再生を果たしていくべき。経済産業省には各省庁の先頭に立って頑張ってもらいたい。
- 日本再生戦略が作成されたが、後は実行あるのみ。各戦略についてスピード感を持って確実に実行していただきたい。
(4)経済産業省政務三役締め括り挨拶
中根経済産業大臣政務官
- 本日は多様な観点から貴重な御指摘を賜り、厚く御礼を申し上げる。
- 女性委員の多くから、ダイバーシティや多様性に関する期待を寄せていただいた。政権が変わってもR&Dに関する政府の方針は変えるべきではない、分厚い中間層を再生することが必要、ツーリズムの振興、規制改革の重要性等、多くの貴重なご意見を賜った。政府全体をあげて全力で取り組んでいきたい。
(5)当日、御発言いただく時間を取れず、後日、委員の皆様からいただいた御意見は下記の通り。
生駒委員(ファッション・ジャーナリスト/公益財団法人三宅一生デザイン文化財団理事)
- 日本に対する信頼、あこがれ、尊敬を獲得し、世界のお手本になる産業構造の姿を示すべき。長期の戦略を示し、外からの信頼を獲得して欲しい。私からは5点申し上げたい。
- 1点目は、目指すべき産業構造について。経済構造はプロフィットエコノミーからソーシャルエコノミーにシフトしている中で、日本は、世界に貢献していくという大きく構えた産業形態を目指す必要があるのではないか。CSRのような活動を産業単位で行い、わかりやすい形で外に訴えていく必要がある。
- 2点目は、文化貢献の重要性について。文化交流は既成概念を超える次元で感動を与え、人の結びつきを深める非常に有効な外交手段。クールジャパンは文化交流に非常に有用な手段であり、大きな柱に据えて取り組む必要がある。
- 3点目は、ダイバーシティの推進について。多種多様な働き手により、社会全体で産業を支える必要がある。また、シニア層の知識・経験は貴重なアーカイブ。この知識・経験の継承についてサポートする体制を整備し、対外的にもアピールをして欲しい。今後は、今のピラミッド型から、フラット型・ジェネレーションハイブリット型の就業構造に転換していくことが重要。
- 4点目は、ローカルグローバルの推進について。観光などに役立つ伝統産業工芸品や地域資源と、地域の産業を結びつけて、グローバルに発信することが重要。東京一極集中から地方への産業移転を進めて欲しい。
- 5点目は、新規産業の創出、新規事業・創業の支援について。自分の回りで、20代の若い起業家志望の方が増えている。その人達を甘やかす必要はないが、新産業の芽を育てるためにも、若い才能に投資し、新規事業の支援を行うことを明確に打ち出すべき。加えて、外国企業もウェルカムであることを明確にアピールするため、特区制度等にしっかりと取り組むべき。
尾崎委員(早稲田大学法学学術院教授)
- キーワードは、「産業インフラ」。エネルギーも産業構造も、広い意味での産業インフラである。日本再生のためにも、各国に見劣りしないように日本の産業インフラが整備されている必要がある。
- また、「国を挙げて」というのも重要。省庁の壁を、国益という視点から乗り越えて欲しい。
- 商品先物についても、産業インフラという観点が重要。商品先物市場によるリスクヘッジがリスクマネジメント手法の1つであることを、国を挙げて啓蒙活動すべきではないか。
- 総合取引所については、個別の取引所の統合をどうするか等と矮小な問題にするのではなく、国は、証券とデリバティブの税制上の損益通算の実現や、投資家の口座の一元化等、証券とデリバティブの融合という広い視点に立って、政策を立案して欲しい。
- 新自由主義的な規制緩和ではなく、法律の整備が必要。世界標準に合致したコンプライアンスのコストを払っていることを日本のセールスポイントにすべきであるし、また、そのように日本から発信していくべきである。
佐々木委員((株)イー・ウーマン代表取締役社長/(株)ユニカルインターナショナル代表取締役社長)
- 戦後の日本は、一つの価値観を共有することでスピードをもって前進することができたが、グローバル社会では、多様な価値観の含有と活用がカギ。日本がいかに多様性(ダイバーシティ)を活かすか。産業構造を含め、あらゆる点での「新しい視点」に目を向けることが必要。
- そのためには、女性リーダー増加の必要であり、まずは政府審議会を始め、分科会や実行委員等の委員長に女性が必要。
- ダイバーシティは、「働き方」の多様性や、労働人口の確保のための施策として語られることがあるが、本質は違う。ダイバーシティは、物事を決定する際に、多様な視点から考えているか、ということ。もう社会的視点での「男女参画」は終了させ、CSRでもなく、男女平等でもない、まさに「経済成長戦略」として「多様性活用」に取り組むことが必要であり、「決定権者に女性を増やす」ことが大切。
- 女性総数を増やすという現在の女性活用の視点に加え、さらに女性リーダーを増やすという明確な数値目標を掲げることが、社会構造を新しくしていくカギ。物事の決定に、いかに新しい視点を加えるかが重要であり、大臣、議員、CEO、取締役、役員など等の決定権のある重要ポストに、どれだけ多様な人を増やすか。女性を増やすかを意識していくことが必要。
- そこで、産業構造を提案する審議会をはじめ、まず、すべての政府審議会から決定権者に女性を増やすことから始めるべき。決定権を持つポジションにおいて多様性の割合を高めることが、構造改革への第一歩となる。決定プロセスに多様な視点が入らなければ、構造改革は、ない。
以上
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経済産業政策局 産業構造課
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最終更新日:2012年10月22日
