経済産業省
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産業構造審議会総会(第14回)‐議事要旨

日時:平成26年4月2日(水曜日)15時~17時
場所:経済産業省本館17階 第1~3共用会議室

出席者

委員等出席者
米倉会長、生駒委員、天野委員代理(槍田委員代理)、大渕委員、神津委員、小林委員、小室委員、佐々木委員、白石委員、清家委員、山地委員、岡村臨時委員、三村臨時委員
経産省出席者
松島副大臣、磯﨑政務官、立岡次官、日下部官房長、糟谷総括審、多田政評審、渡邊技総審、菅原産政局長、加藤地域審議官、中山審議官(通商戦略担当)、横尾貿易局長、片瀬産技局長、宮川製造局長、富田商情局長、村上審議官(産業保安担当)、上田資エ庁長官、羽藤特許庁長官、横田中企庁次長、安藤関東局長、平井総務課長、松尾会計課長

議事概要

(1)大臣ビデオレター

茂木経済産業大臣

  • 産業構造審議会第14回総会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
  • 安倍政権が発足して1年と3ヵ月がたちます。経済成長率も5四半期連続でプラスなど、日本経済に明らかに回復の兆しがみえております。賃上げについても、3月12日の春闘の集中回答日には、9割以上の企業がベースアップ実施と回答するなど、これは実に6年ぶりのことであります。今後は経済の好循環を実現して、景気回復の実感を全国津々浦々にお届けしていきたいと考えております。
  • このためにも、日本経済が抱える3つの課題、過剰投資、過剰規制、そして過当競争を是正していきたいと考えております。昨年の臨時国会で成立いたしました産業競争力強化法を力強く実行することによりまして、新市場の開拓、設備投資、ベンチャーの起業、さらには産業の再編、事業再編を進めていきたいと考えております。
  • 東日本大震災から3年が経過しました。被災地の復興、そしてエネルギー政策は、日本にとって最重要な課題であります。私自身先頭に立って、引き続き廃炉、汚染水対策にしっかりと取り組んでまいります。被災地の産業の創造、そして被災中小企業の再生の支援に全力で取り組んでまいります。
  • また、エネルギー政策についても、エネルギー源ごとの特徴を明確にし、そしてそれを踏まえ、現実的かつバランスのとれたエネルギーの需給構造を構築していきたいと考えております。
  • 中長期的な視点に立てば、新興国の経済成長に伴います世界経済の構造変化、さらにはイノベーション、ビジネスモデルの変化、そして日本国内における少子高齢化の進展など、我が国の持続的な成長を確実にする上で、国を挙げて取り組まなければならない大きな課題が存在いたします。既に新興国戦略に基づきます海外市場開拓に取り組んでいるほか、技術で勝ってビジネスで負ける、こういった歴史からの脱却に向けたオープンイノベーションの推進、日本経済の体質を変えていくための女性の活躍促進などにもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
  • 本日は、委員の皆様から忌憚のない御意見を大所高所からいただけると考えております。今後の経済産業政策の立案に向けて、御意見をしっかりと踏まえてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

(2)事務局補足説明

糟谷総括審議官より資料について説明。

(3)自由討論

小室委員((株)ワーク・ライフバランス代表取締役社長)

  • 今後の議論の中に是非加えていただきたい点として、人口ボーナス期、人口オーナス期という観点について経済の発展と結びつけて議論していただきたいと思いまして資料を用意してまいりました。
  • 人口ボーナス期、人口オーナス期という考え方は、ハーバード大学の人口学者のデービッド・ブルームが10年ほど前にこの人口ボーナス期とオーナス期が経済に与える影響がかなり大きいということを特定しまして、今、広く認知されてきている考え方です。
  • 人口ボーナス期というのは、多産多死の社会から少産少子の社会に切りかわる際に、子供が減って生産年齢の人口が少なくなった状態を指します。高齢者が少なく、労働力が豊富なので、社会保障費が少なくて済み、経済発展がしやすいといわれる時期です。現在の中国、韓国、シンガポール、タイがそれらに当たります。60年代から90年代頃で日本の人口ボーナス期は終わったとされています。ちなみに、この人口ボーナス期は一度訪れた後、1つの国には二度と来ないといわれています。高度成長期の後に、医療や年金制度などの充実によって、高齢化社会になることによって高齢者の比率が高まり、人口ボーナス期が終わるといわれています。中国では間もなく、この人口ボーナス期が終わります。インドは2040年まで続くといわれています。
  • 一方で、日本は今ここにあるわけですけれども、人口オーナス期は、人口構成の変化が経済にとってマイナスに作用する状態を指します。オーナスとは負荷や重荷という意味で、働く人よりも支えられる人が多くなる状態を指し、労働力人口が減少して、現役世代が減少して、引退世代を支える社会保障制度の維持が困難になったりする時期がこの人口オーナス期に当たるということがいわれています。日本では、90年頃から人口オーナス期に入りまして、現在はその真っただ中、今後も抜けることができない状態です。
  • 一般的に人口オーナス期の国の経済成長を維持するには3点が重要だといわれています。1点目が社会保障を整備し、世代間格差是正に取り組むこと。2点目が女性や高齢者の雇用を促進し、労働力率を高めること。3点目が、労働投入が減少しても生産性を向上させることによって、成長率を維持していくことといわれています。日本は主要国で最も早く少子高齢化の進行と人口オーナス期入りを経験した国です。日本経済が今の人口オーナス期に持続的な繁栄を実現できれば、その経験やノウハウは他の新興国に役立つだろうと考えられています。ここまでが一般的な人口ボーナス期、オーナス期、またそれが経済成長に与える影響というものを整理した内容です。
  • ここからは私の考察ですが、人口ボーナス期に経済発展しやすい働き方は、まず1点目に、なるべく男性が働くことです。重工業の比率が高いため、筋肉が多いほうが適している業務が多い。それから、なるべく長時間働くことです。早く、安く、大量につくって勝つという手法が人口ボーナス期の手法ですので、時間イコール成果に直結しますので、時間が重要です。そして、3つ目が同じ条件の人をそろえる。均一なものをたくさん提供することで市場ニーズを満たせるので、まず、同じ条件の人がどんどんつくるというのが重要です。もう一点は、労働力が基本的に常に余っている状態が続くのがこの人口ボーナス期ですので、わかりやすい一定条件で足切りをして、働ける人と働けない人を分けるというのが納得させやすいというような構造を持っています。ですので、多くの企業は転勤や残業でふるい落とすという方法をして、ふるい落とされないでしがみついた人は残れるというようにすることによって、忠誠心を高めていくというような手法をとっていく、これが人口ボーナス期には経営者として非常に有効です。労働者はかえがきくので、立場が非常に弱くて、一律に管理をすることができるというのが人口ボーナス期の特徴です。
  • 一方で、人口オーナス期に経済発展しやすい働き方としては、使える労働力はフルに活用するということが重要になります。そして、なるべく短時間で働くことが重要になります。当然、教育の投資をするからなのですが、日本人の時給は中国人の8倍、インド人の9倍です。したがって、本人たちが長時間働きたいといったとしても、体力に任せて働かせずに、短時間で成果を出すくせを徹底的にトレーニングしないと利益が出ない構造に入っていきます。そして、市場が均一なものに飽きていくため、なるべく違う条件の人をそろえる必要、違う価値を短サイクルで提供する必要が出てきます。また、労働力は常に足りないので、転勤や残業の可否で足切りをするということをすると、介護をする男性も皆ふるい落とされてしまいます。今、私どもが御依頼をいただく企業では、育児で休んでいる女性の数を介護で休んでいる男性の数が超えているという企業さんが非常に増えてきており、一定の長時間労働ができるか否かを分かれ目とすれば、ほとんどの方がふるい落とされてしまうという状態になります。ですので、この状況で必要となってくるのが、労働する上での障壁から、育児・介護・もしくは難病や障害といったものを外す、労働環境の整備が重要になってくるかと思います。これが冒頭にプレゼンいただいた資料では組織のオープンネスというような形でも書かれていたかと思います。
  • 主要国で最も早く少子高齢化の進行と人口オーナス期入りをした要因というのは、労働環境の転換を図らなかったということが1つ大きな要因にあるかと思っています。まず、1点目に、時間外労働の割り増し賃金の率は、日本はフィリピンと同じレベルの1.25倍です。先進国では1.5から1.75倍というのが大体の平均なのですけれども、1.25倍にすぎない。もう1つが労働時間違反をしている企業を国として意図的に放置したという背景があったと思っています。このことによって、経営者にとっては、長時間労働できる男性を主に採用、登用したほうがもうかりやすいという構造と、固定費をかけないために新規の雇用を削り、少ない人数に残業させるというほうがもうかりやすいという環境をつくりました。こうして、人口ボーナス期に経済発展しやすい働き方をその後も続くように固定化するというような仕組みをつくってしまったと思っています。人口オーナス期に関してですが、先進国の平均は、平日時間外割り増し 1.5から1.75であり、休日出勤は2倍かかります。例えば、有給休暇を積み残せば国際会計基準では全て企業の負担額となりますが、こういった仕組みを入れることによって、残業代を赤字の原因とし、短時間で働かせよう、育児、介護で抜けることもフォローできるだけの数を雇用しよう、負債額を増やさないために休日を管理しようという、人口オーナス期に経済発展しやすい働き方への変換を促進することができると思っています。
  • 人口ボーナス期にしか発展できない働き方を固定化してしまっている仕組みを変えるというようなことを根本的に入れていかないと、この国の経済発展がこの人口構造の中では図れないのではないかと思っており、この旗振りを経済産業省に期待しています。今日、できればこういったものはどちらの部署でどのように検討されていくのかというようなことを教えていただけたらありがたいと思っています。

清家委員(慶応義塾大学塾長)

  • グローバル競争が非常に厳しくなっております。一方で、今まさに小室委員が御説明いただきましたように、国内的には人口の減少が今後加速して、今いわれた人口オーナスの問題が顕在化していきます。この中で、我々が豊かな生活水準を維持していくためには、答えは1つしかない。それは1人当たりの付加価値生産性をいかに高めていくかに尽きると私どもは考えております。そのためにも、もちろんいろいろなことをしなければいけないわけですけれども、やはり産業的には日本の稼ぎ頭であります製造業を維持し、そしてさらに力強くしていく必要があると考えております。この総会に先立ちまして、先月19日に製造産業分科会を開催いたしました。その分科会での議論を短く、私から3点ポイントを強調させていただきたいと思います。
  • 1点目は、製造業の稼ぐ力を強化するということです。製造業は、いうまでもないわけですけれども、我が国で付加価値を生み出す金の卵でありまして、海外の市場、特に新興国の市場などを取り込みつつ、国内の生産基盤を維持・強化していくということが大切です。そのためには、中国など賃金の低い新興国と同じものをつくるのではなくて、より付加価値の高いものをつくって稼ぐ力を高めていくことが必要です。例えば、再生医療であるとか生活支援ロボットであるとかクリーンな次世代自動車、航空機等の新しい市場を開拓していく。あるいは、新しい産業を国内に創造して、さらに、例えばそれを制度化することによって海外展開していくというようなことも1つの方法ではないかということが議論されました。また、その際、日本の強みである安全であるとか安心といった価値をベースに、サービスと連携しながら課題解決型の事業として製造業の力を海外に向けて輸出していったり、ブランドやデザインの戦略をさらに強化していくといったことも必要であろうと。いずれにしても、そういったことを含めて製造業の稼ぐ力を強化していくということがまず第一でございます。
  • 2つ目は、GNTと最近よくいわれるわけですけれども、グローバル・ニッチ・トップ企業を後押ししていくということであります。こうした企業は、従来の下請構造といったようなものには必ずしも依存しないで、独自に、自律的に開発拠点を国内に残しつつ、地域の企業と連携しながら、大企業への提案であるとか海外の販路開発を積極的に行っている企業です。そうした企業の表彰等も行っていますが、ここが新たな稼ぎ手になるのではないかというポイントが議論されました。日本中の中小企業には、こうした国際的なオンリーワンの競争力を持った企業がたくさんあるわけでございまして、これらのグローバル・ニッチ・トップの企業をさらに発掘し、その発展を支援していく必要があります。このグローバル・ニッチ・トップの支援については、例えば海外において、ドイツなどにも例がございますが、その一国の輸出競争力全体の底上げに資するだけではなく、地域経済の活性化にもつながるということが期待されております。
  • 最後に、3つ目のポイントは、ものづくりの人材についてです。製造業の稼ぐ力を向上させるためにも、人材が鍵になってまいります。製造業の場合、現場でものづくりをしていく技能工の人たちから、研究開発や生産現場のエンジニア、あるいはもっと上のほうの経営マネジメントの人材に至るまで、付加価値を生み出すために様々な専門分野に応じて、適材適所の人材の組み合わせが重要です。例えば、グローバル経営や新しい商品開発のためのオープンイノベーションの場で、多様な人材が組織にいるということが重要になってまいります。しかし、ものづくりの現場では、企業の中で人材を手塩にかけて育ててきたことがこれまでの日本の強みでもありましたし、これから強みであるわけでございまして、人材の流動化ということは、一面では、能力を持った人が最適なところで働くという意味では日本全体の生産性を高めるわけですけれども、もう一面では、当然企業の中での人材育成というのは人的資本に対する投資ですから、一定の雇用期間がなければそうした投資は行われないわけで、そういう面で人の流動性が一方で高まるだけではなかなか人が育ちにくいという問題も出てきます。
  • バランスの問題ですが、競争力の源泉となるものづくりの人材が、企業内でしっかりと手塩にかけて育てられるような環境づくりも極めて重要だと思っております。そうしたことを実現するためにも、稼ぎ頭になる、あるいは稼ぐ力のある製造業、あるいはグローバル・ニッチ・トップ企業等が国内に立地し、発展していく必要があり、ものづくり高度化のための拠点を国内にしっかりと維持できるように、例えば電力料金などのエネルギーコストであるとか、税制面のハードルの問題であるとか、人材育成の問題といったようなことについて、製造業の立地競争力の強化に向けて、引き続き政府には強力に取り組んでいただきたいというのが私どもの分科会の議論の主なポイントでございます。ありがとうございました。

白石委員(関西大学政策創造学部教授)

  • 私の大学の位置する千里丘陵は、昭和30年代当初に開発が進み、高齢者世帯が非常に多くお住まいです。エレベーターなどもだんだん設置されてまいりましたが、8割が高齢者だけが住んでいるというような団地も珍しくございません。こうした高齢化に対応する産業の可能性の1つとして、介護ロボットがあります。経済産業省と厚生労働省で、介護分野で4大重点領域を取り決め、これから介護ロボットの開発などを進めようとしているところで、今年度の予算も26億円程度ついているのではないかと思います。
  • 1キロ以内に生活利便施設がない、病院がないというような人たちは、全国の20%強です。これを受けて、コンビニエンスストアを経営する企業などによる、巡回移動車を走らせた生活支援が散発的に行われているわけですけれども、これから買い物難民といわれる人たちは 600万人になっていきます。
  • もっと驚くべきことに、ひとり暮らしの中で、1週間に1回しか他人と会話しない人たちが全体の1割を占めています。こうした状態を放置していきますと、やはりひきこもりや認知症につながってまいります。私は、介護支援やマンパワーを補う上での介護ロボットも非常に重要だと思いますけれども、もう少し簡便なもので、高齢者の思いを酌みとり、コミュニケーションでき、見守りをしていくようなロボットの開発を進めていくべきではないかと思います。例えば、デアゴスティーニが売り出した「ロビ」というかわいい小型のロボットで、本を買うごとに部品が手に入り、最後まで買うと15万円かかる商品が、10万部も売れたことからも、いかにコミュニケーションが大事で、それを高齢者の方たちが望んでいるか、読み取れるのではないかと思います。大和ハウスも、「パロ」という空想上のアザラシに近いコミュニケーションロボットをつくったりしていますけれども、まだまだ介護ロボットやコミュニケーションロボットとは何かというような定義も曖昧で、効果もよくわかりません。それを使うことによってどんな効果があるのか、中小企業さんではなかなか検証しにくく、幾らお金をかけてつくったとしても、介護保険の対象にならなければもとはとれません。事故リスクの問題もあります。
  • 私は、コミュニケーション型で、人工知能なども組み、薬の飲み忘れや、1日の目標歩数をクリアするための歩き方の助言ができて、かつ見守りができるようなロボットをつくって世界中に売り出していくことが大事だと考えます。そして、国際ルールで先導的な役割を果たしていけば、これから広がっていくマーケットも大きいのではないかと思います。是非、いろいろな企業が、こういうコミュニケーションロボットを実験できるような場所をつくっていただきたい。
  • 例えば、NTT西日本がユニシスと北國銀行と組んで光BOXというものをつくって、パソコンが使えない方でもテレビで地域の商品が買えるようになりました。こうしたコミュニケーションが可能になると、地域産業に与える影響も少なからずあると思うのです。重装備ではなく簡便で、全ての人たちが使いやすく、かつ投資額も大きくない、効果が検証しやすい、それで普及していくような仕組みをつくっていただければと思っております。

神津委員(日本労働組合総連合会事務局長)

  • 今後、経済産業政策を検討されるに当たって、是非お願いしたいという意味で、3つの観点で申し上げさせていただきたいと思います。
  • 1つは、日本の国なり日本人が持つ強みを生かしながら、弱みのところをどう正していくかということだろうと思っています。強みということについては、お互いに支え合うとか、力を合わせるところだろうと思います。あの大震災の中で、世界からも称賛された支え合い、助け合いというのは決して、だての話ではないのだろうと思いますし、日本のものづくり産業における独特の強みは、そのことと決して無関係ではないのだろうと私は思います。冒頭、茂木大臣からのお話の中で春闘のことについて触れられましたが、これもある意味、支え合い、助け合いだと思っています。昨年9月から12月にかけて行われた政労使会議というのは、政労使がお互いにどういう形で経済の好循環に向けた貢献ができるのかということを議論し合いながら、もちろんよって立つ立場の違いは踏まえつつも、共通して力を合わせていこうという認識合わせとして、非常に意味のあるものだったと思っています。考えてみれば40年前は全く逆向きの話で、狂乱物価、超インフレをどう抑制していくかということで、政労使が力を合わせたという実績もあるわけであります。
  • 弱みということでいうと、まず1点目として、世界の中で戦っていくにおいて、一人一人の個人の力をどうやってもっと鍛えていくのかという点に課題があるかと思います。若い方々の中にも、かつてないような、目を見張るような人材が随分育っていることも一方の事実だと思うのですが、ひきこもりや、留学への消極性なども叫ばれる中、個々の力をどのように高めていくのかという視点が極めて大事なことだと思います。2点目として、国内だけで通用する閉じた議論に陥っていないかという嫌いがあると思います。国際社会に通用するということを常に点検していくということが不可欠だろうと思います。3点目は、縦割りでの議論が先行してしまう点にあると思います。偏った議論で右往左往するということの繰り返しになっていないか、自らチェックしていくということが必要なのだろうと思います。
  • 2つ目に、産業政策をいま一度どっしりと踏み込んで考えていただきたいと思います。オイルショックやプラザ合意後の円高、リーマンショックなどの荒波を乗り越えて生き抜いている産業というのは、極めて高い価値を持った産業であるものの、これからも隆々と栄えていくためには、官民ともに力を合わせて政策を考えていく必要があるのではないのかと思います。新しい分野に力を入れることはもちろん重要ですが、従来型のところも是非お願いしたい。
  • 「成熟産業から成長産業へ」という言葉がよく使われますが、何となくそうだよな、と世の中が思ってしまう言葉であることが、危険だと思っています。1つには、労働移動についてもどんどん起こればいいというようなコンセプトで語られる点にあります。労働移動を支える制度を整えることは大事ですが、現場の個々の労働者が、自分の所属する職場とか企業とか産業をどのように発展させるかということに思いを致して働くことの強みというのは、1回失うと二度と取り戻せないものであることから、労働移動を促進するということに価値を置くことには問題を感じています。
  • 3点目は、現場の知恵の活かし方を念頭におきつつ、雇用の軸をどう考えていくかということです。貿易赤字、経常赤字が恒常的なものとなりつつあるというようなお話もありました。海外現地生産は、海外のニーズをしっかりと取り込む意味で大事だと思っておりますが、気がついたら国内がすかすかになっているというようなことになるのでは、国破れて山河ありということになってしまうと思います。一方で、財政赤字の問題も抜き差しならぬ問題です。私どもは、公契約条例をできるだけ広げるという運動も展開しているのですが、財政赤字がもたらしている雇用の劣化にも非常に大きい問題があると思っています。こうした、貿易赤字や経常赤字の恒常化、財政赤字などが、ボディーブローのようにきいて劣化する雇用をどう反転させるのか、オールジャパンで考えていく必要があると思っています。
  • 私ども、連合として「働くことを軸とする安心社会」ということを打ち上げておりまして、先ほど来、小室委員からありましたワーク・ライフバランスの問題意識は同様ですし、清家委員からありました教育と雇用とのかけ橋というようなことも視点として持っているところであります。

大渕委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

  • 私は知的財産法を専攻しておりますので、本日のテーマにつきまして、主に知的財産の観点からお話しさせていただければと思っております。
  • 今、注目を集めておりますOECDの各国の技術貿易を比較した報告によりますと、我が国の技術貿易は、93年以降、輸出額が輸入額を上回り、純収支は約2兆円となっています。ただ、その規模は米国の現在の5分の1で、輸出額では米国の20年前の水準にとどまっています。このような状況のもとで、我が国企業が技術で稼ぐためには、その環境を整備していく必要があり、そのためには知財戦略の推進が不可欠であると思っております。
  • 知財関係では特許庁が、現在の特許の審査期間の半減など、新たな目標設定を行い、知財分科会でも職務発明の見直しなどについて議論を開始したところであります。職務発明とは、従業者が職務として行った発明についての取り扱いですが、これは従業者と使用者の双方にとって、発明や出願についてのインセンティブに大きな影響を与えるものであり、我が国のイノベーションに大きな影響を与えるものです。また、政府全体としても国際的な制度調和や中小企業等の支援など、世界最高、最速の知財システムを実現するための取り組みが喫緊の課題となっております。
  • 資料2の21ページに、イノベーションの担い手としてはベンチャーが重要であるとあります。残念ながら日本ではなかなかベンチャーが育たず、存在感が薄いということがあります。ベンチャーの育成というのは、我が国のイノベーションにとって不可欠な重要ポイントかと思いますが、ベンチャーは知的財産の助けなくしては育成ができませんので、特に特許に力点を置いていただければと思っております。
  • 同じく資料2の23ページについて。技術だけでは勝てないという状況になってきています。ブランドやデザインとして、商標や意匠と組み合わせた形で一体として考えていかない限りは知的財産で勝っていくことはできないし、我が国のイノベーションも成長も図れないということだと思っております。
  • 最後になりましたが、資料2の27ページに関連して、企業、市場、国家を巻き込んだルール競争の加速は、ものづくり等にも非常に重要になってきます。知財ルールについても、合理的なルールを我が国で導くことによって、世界の中のルール競争に勝ち抜いていくことが不可欠ではないかと思っております。

生駒委員(ファッション・ジャーナリスト/公益財団法人三宅一生デザイン文化財団理事)

  • 今こそ、日本社会全てにおいて変化のときが来ていると思うのです。変化するときに必要なことは、新しい価値観を生み出すクリエーティブな考え方、それから、そのクリエーティブな考え方を許容できる想像力だと思うのです。私は、日本人全員がその変化に対して積極的に挑めば、産業構造はもちろん社会も全て生まれ変わることが必ずやできると思っていますが、その際、社長さんだけ頑張っても、企業のほかの方々が頑張らないと、やはり変化は生まれないと思うのです。
  • オーナス期に産業構造を変換させて、1人当たりの付加価値生産性を高めていく上で、何が必要かを話したいと思います。
  • クールジャパンの原点は、25年前のイギリス、ブレア政権下で起こった「クールブリタニア」にあります。重厚長大な産業構造がイギリスを支えられないとなったときにブレアが提案したのは、デザインやアートや建築といったクリエーティブな領域を産業化していくことでした。しかし、これは単にその領域でお金をもうけようということだけではなかったように思うのです。このクリエーティブな考え方を社会全体に適用させることで、今、それから25年後のイギリスは、文化の力で社会全体を活性化させていくような構造をつくり得たと思うのです。文化的な力というのは日本の宝であり、私は、日本の文化は世界に貢献できると信じています。自然と共生していく考え方や、人を思いやるような互助作用的な考え方というのは、世界のあらゆる国にお役に立てると思っています。
  • そのためのまず1点目として、付加価値生産性を高めていくためには、ジェネラリストではなくスペシャリストを育てる土壌を私はつくるべきだと思っています。日本では、計算や穴埋めで競うような偏差値的な教育が主体となっていますが、想像力の豊かさを評価できるような、クリエーティブな偏差値による教育を育てていくべきだと思っています。こうした教育が、ひいては変化を起こせる人材を生み出すのではないでしょうか。例えば、日本の出版者では、2年おきに部署を異動させてしまいますが、この状況ですとスペシャリストができません。日本はジェネラリストをつくる国だと思っていますが、短い時間で効率よく高い生産性を生むには、スペシャリストがこの国をどんどん埋めていかねばなりません。
  • 2点目として、新しい価値観を生み出す力を評価する土壌をつくりたいと思うのです。例えば、日本にラグジュアリーブランドはないとよくいわれるのですが、コムデギャルソンや三宅一生さんのブランドは、中国に限らず、ヨーロッパでもある種のラグジュアリーブランドであり、日本が生み出した全く新しい価値観のラグジュアリーの領域だと思うのです。私はそうした意味で、日本は、欧米にない新しい価値観を生み出せると思っています。例えば、村上隆さんや草間彌生さんは、21世紀のピカソではないかといわれています。日本はたくさんの人材を輩出しているのですから、それを自国で評価して押し出していけるような構造をつくるべきだと思っています。
  • 3点目として、日本人が誇りを取り戻すことが重要だと思います。アイデンティティーは、働き方においても、産業構造自体においても、変化を起こす上でも非常に重要な要素であり、クールジャパンの持つ役割の1つは、日本人のアイデンティティーを打ち立てることだと思っています。例えばこの春、日本橋が大ブームです。お江戸の中心であり、五街道の起点でもあった日本橋は、しばらく古びたまちになっていましたが、全く新しいクリエーターやビジネスマンが集まって、そのまちを再生させ、若い人たちを日本橋に流れ込ませています。このように、クールジャパンの力を使うことで、社会全体、産業構造全体に貢献したいと思っています。

天野氏(槍田日本貿易会会長 代理)

  • 本日は槍田会長の代理で出席させていただいております。通商分科会は近く開催されると聞いておりますので、本日は分科会の意見という形ではなく、商社業界として、今後、中長期的に産業政策に何を期待するかといったことにつきまして、簡潔にコメントさせていただきたいと思います。
  • 貿易収支の赤字幅の昨今の拡大をどう考えるかということは、中長期的な問題を考える際に避けて通れないと思います。2011年に31年ぶりに貿易赤字に転落しましたが、このまま赤字が続き、さらにそれを補う所得収支が伸びなければ経常収支も悪化するというような状況でございます。貿易収支自体が悪いということではなく、収支構造が変わってきているものと理解することもできますが、昨今の貿易収支の赤字は、東日本大震災による原発稼働停止を受けた原油、LNG等の輸入額の増加や、スマートフォン等のエレクトロニクスの輸入増加が主な要因でありますが、この状況を是正し、経常収支ベースでは健全な姿に戻していく必要があります。
  • 海外での投資や事業等を拡大することで所得収支をより増やすこと、国内のコストを減少させる意味において、エネルギーの安定供給とコストの削減を実現していくための中長期的なエネルギー政策の策定、さらに日本製品の輸出競争力を含めた産業基盤の競争力強化を図っていくことが、重要であろうと思います。
  • また、日本貿易会が従来から提言・要望を行っており、昨年の総会でも申し上げました事柄ではございますが、まず、貿易の振興と、日本企業が海外でより仕事をしやすくなる環境の整備のために、経済連携等のさらなる推進や投資協定、租税協定、社会保障協定等々の促進について、一層力を入れていただきたいと思います。2番目に、インフラ輸出の国際競争力強化に向けた支援については、政府に注力いただいていることを大変心強く思っている次第です。3番目に、我が国への産業立地を促進し、雇用を確保するために、国際的なイコールフッティングを図るという観点から、早期に法人実効税率の引き上げを初めとする企業の活力を引き出すような税制改正を実施していただきたいと思います。そして4番目に、規制改革の着実な実行は、非常に重要なポイントです。
  • 中長期的には、こうしたものに加え、インバウンドとアウトバウンドの両方をみながら、うまくバランスをとりつつ政策を進めていくということが重要ではないかということを議論させていただいております。外国からの投資を受け入れ、外国企業と日本企業が切磋琢磨する中で、日本企業の競争力も高め、様々な企業が日本を起点として国内外でビジネスを行うこと、いわば日本をビジネスハブにするという発想が、ますます重要になります。具体的なアイデアはまだ詰まっていませんが、産業の新陳代謝とかビジネスをより意識した産官学連携による研究開発、イノベーションに対するインセンティブの付与、知財の有効利用等々が挙げられるのではないかと思う次第です。さらに、先日成立いたしました産業競争力強化法に盛り込まれている、企業実証特例制度やグレーゾーン解消制度等々につきましても、それが日本の産業基盤の強化につながるだけではなく、外国企業を日本に呼び込むインセンティブにもなればと期待しているところでございます。また、陸海空の物流においては、ハブ機能の一層の充実が求められます。対内投資という観点からは、外国企業にとってより進出しやすい体制を、例えばワンストップサービスを可能な限り実施していくというようなことを前向きに検討いただきたいと思います。

岡村臨時委員(日本商工会議所名誉会頭)

  • 日本という国がこれからどういう形で生きていくかということを考えたときに、基本的に、「科学技術」で生きていく以外に方法はないと思います。そのためには、付加価値の高い技術を、インテレクチュアル・プロパティー(IP。知的財産権)という観点から眺めて、どのように高めていくのか、どのように蓄積していくのかということが非常に重要な問題であり、ものづくりということに余りこだわる必要はないと思います。IPの高いものづくりの技術はもちろん存在し、しっかり守っていくべきですが、必ずしも、ものづくりということだけにこだわらずに、IPをどう蓄積していくのかということをポイントに置いて、政策を進めていただきたいと思います。またその際、環境・エネルギー・ライフサイエンスなど、ものづくりと人の技術とが非常に絡み合っている分野について、領域を明確化する必要があります。
  • また「対内投資をいかに増やすか」という視点が、依然としてまだ欠けています。海外の技術者が日本で起業したい、あるいは海外の会社が日本へ投資をしたいという環境が全然生まれてきていないという現実には、法人実行税や、エネルギーコスト等の問題があるわけですが、海外の目からみたときの日本に立地する魅力がどうなのかということを冷静に眺め、すぐに対処する必要があります。
  • 資料2の34ページの地域中核企業についてですが、まずは「中堅企業」の定義を見直す必要があります。現在、中小企業が得られる税制等の恩典を、中堅企業が得られていません。具体的に言えば、資本金が10億円以下、1億円以上の中堅企業は、地域の中核企業として地域経済の活性化に非常に力を発揮しているにもかかわらず、税制等の恩典の対象として穴があいているということに、気をつけておかなければいけない点だと思います。
  • いかにして付加価値の高い技術をIPとして蓄積していくのか。それを支えているのは一体誰なのか。今申し上げたように、中堅企業も非常に大きな役割を果たしており、そこに焦点を置いた政策を打っていただきたい。そして、日本に対内投資が可能な立地条件を早急につくり上げるということが必要ではないかと思います。

山地委員(地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)

  • 私は産業技術環境分科会に関わっておりますので、地球温暖化対策と研究開発について発言させていただきたいと思います。
  • まず、地球温暖化対策ですけれども、昨年のCOP19で2020年の温暖化対策目標として、前政権のときは90年比25%としておりましたが、今回は現時点での目標として05年比で3.8%減としました。温暖化対策においても、世界の温室効果ガスの排出量における日本のシェアをみると、一番注目されるエネルギー起源のCO2でも4%を切ってきましたし、メタンや N2Oや、その他温室効果ガスも入れると3%を切っている状態で、今後シェアはますます低くなっていく一方です。我が国における対策はもちろん重要であるものの、温暖化対策においても国際的な貢献が非常に重要であり、貢献がきちんと世界にみえる形で取り組むことが、非常に大事だと考えています。
  • 鉄鋼や石炭火力などの産業技術に関する、我が国の効率の高さはよく知れ渡っていることであり、さらに生活関連の製品、LEDとかヒートポンプとかも非常にすぐれているので、そうしたものを通した世界の温室効果ガス削減への貢献をどのように訴えていくかが重要となります。例えば、二国間オフセットクレジット(JCM)が1つのきっかけだと思いますが、同時に客観的に計量・レポート・検証ができるというシステムをつくることで、我が国の国際貢献を訴えていく必要があります。これは非常に重要なことであり、産業技術環境分科会でも努力いたしますが、是非御支援いただければと思っております。
  • 研究開発については、文科省と経産省の合同検討会において、シーズから社会実装までを一気通貫で取り組もうとしています。社会実装の産業技術的なところは民間で、と思われがちですが、シーズに当たる基礎的な研究と、社会実装との間で抜けているところの橋渡しに関する政府の役割を、是非意識していただきたい。つまり従来、民間の研究開発といわれてきた社会実装において、国の役割は非常に大きいということです。
  • もう1つは、やはり人材に問題があります。私は大学に16年ぐらいいたのですが、大きな予算をつけていただいても、社会実装まで踏まえてそれをマネージしていくことは、忙しさゆえに苦しくなっています。このため、研究開発マネジメントに関する人材をきちんと位置づけて育成していく必要もあると思っています。

三村臨時委員(新日鐵住金(株)相談役))

  • 昨年11月、岡村会頭の後を継いで日本商工会議所の会頭になりましたけれども、各地域を回りまして感じたことを、まずお話ししたいと思います。
  • 例えば、北海道ブロックでは、中心都市の札幌は比較的健全なのですが、それ以外の小樽や釧路、苫小牧などの周辺の地域は一様に、人口減少に悩んでいます。他のブロックでも、大体、同じ様子となっています。よって、単に、日本全体が人口減少の中にあるだけではなく、中心都市に人口が集中している結果、周辺の地域においては、二重の意味での人口減少が起こっている。その中で、どのように地域の振興、地域経済の活性化を進めるかが、悩みの種であります。
  • 先ほど小室委員から、人口ボーナスから人口オーナスに転換した国は絶対、元に戻らないというようなお話がありましたが、人口オーナスの被害を最小限に食いとめる工夫はできると考えています。今、足元の日本の経済成長率は 0.8%とされていますが、恐らくそれより小さく、0.6くらいしかないのではないでしょうか。将来、例えば50年後に人口がさらに減った場合の日本の人口オーナスの規模というのは、年間 0.9%ぐらい大きくなり、資本蓄積も非常に困難な中、日本が成長するということは非常に難しい。そうなると、今後、ありとあらゆる政策の中に、少子化対策を入れる必要があります。
  • 例えば、フランスは有名ですが、イギリスにおいても10年がかりで、出生率を上方シフトさせたのです。それが人口動態に影響するまでには数十年かかりますが、だからやらないということではなく、数十年かけてもやることが大事です。少子化対策は、1日でも早く取り組むべきテーマでありますので、根本的な成長戦略として、この点にもっと力を入れていただきたいと思います。
  • 高齢者対策費と少子化対策費のバランスについてのデータをみると、日本では今、高齢者対策費が少子化対策費の10倍かかっているところ、諸外国では大体2、3倍となっています。しかも日本は、その高齢者に対する支出の大半を国債で賄っており、子孫にツケを回しているということになっています。ですから、人口減少、オーナスをやむを得ない前提として考えるのではなくて、人口減少を防ぐ抜本的な施策を是非ともお願いしたいと思います。

佐々木委員((株)イー・ウーマン代表取締役社長/(株)ユニカルインターナショナル代表取締役社長)

  • まず最初に、前回に提案させていただいたことを受け、8月だけでなく4月に開催していただけましたこと、御礼申し上げます。
  • 経済発展と同時に生活の質の向上、この両方を高めていくために、よりよい働き方、よりよい暮らし方を目指すということが大きな目的だと思いますが、2020年という時期に1つの焦点を当てて、具体的なアクションプランを立てる考え方は、とても良いと思う。その上で、3つお話したい。
  • 1つ目は、多様性、ダイバーシティーについて。ダイバーシティーの推進が、日本の経済を大きく発展させる非常に重要なキーワードであると思っております。経産省においても、プロダクトイノベーション、プロセスイノベーション、外的評価の向上、社員のモチベーション向上などの要因を挙げて、ダイバーシティーが経営を向上させ、経済も向上させる効果があると平成23年に発表されております。
    ただ現在、「ダイバーシティー」という言葉が、多くの企業や社会の中で、女性活用と間違えられているところがあると思います。確かに、ダイバーシティーを日本社会に推進、促進させていくための途中段階として、女性の活用が大変重要であるとは思っていますし、促進したいとも思っていますが、私が定義するダイバーシティーとは、組織が、あるいは社会が前進するという目的のために、多様な視点で討論を行うことだと思っております。ですから、イノベーションを起こすため、グローバル競争力を高めるため、一方で危機管理をしていくためにも、経営者、組織の仕組み、従業員の3つの立場において、経産省がダイバーシティーを促進するには、重要な意味があると思っております。
    具体的に、経営者に関しては、独立社外役員や女性外国人の役員の導入、採用が大きく滞っていますので、是非これを促進していただきたいと思います。次に、組織としては、労働時間の短縮を始めとして、研修・採用・人事評価の面で変革を起こしていく仕組みをつくることが重要です。3つ目の従業員については、みずから学び、自分の貢献する力を高めていくということが重要だと思います。このように、ダイバーシティーというキーワードは、単なる女性活用ではなく、競争力、イノベーション、様々な面で高めるということで、具体的な策を是非つくっていっていただきたいと思います。
  • 2つ目は、日本の技術力について。日本人の技術力と真面目な働きぶり、安定した品質管理は世界に誇るものです。これらを、その真面目な仕事ぶりと合わせて海外の中でアピールしていくためには、ルールをつくる人、その良さを国際的に発信できる人、あるいは国際交渉力が高い人を育てていく必要があります。
    なおその際、日本国内の市場においては、現行法のもとで、中小企業や小さなベンチャーの発案が知的財産として守られにくいために、大きい企業にアイデアを吸い上げられて、小さな会社自体がなかなか伸びません。ですから、国内の構造、知的財産の考え方を変えていくことも、経産省の大変重要な使命であると思っています。
  • 3つ目は、大変身近なところですが、この委員会のあり方でございます。やはり産業構造審議会ですから、ここに中小企業であったり、ベンチャーであったり、外資系の企業であったり、より多様な人が委員に入ってくることを希望します。
    また、この審議会の委員には私を含めて女性の委員が増えましたけれども、分科会の座長などには女性がいらっしゃらないと思います。審議会自身の構造改革にも取り組んでいただきたいと思います。

小林委員(横浜国立大学客員教授)

  • 日本の産業と製品は、安全を付加価値、売り物にしなければならず、それが生き残る道である。そのことについて、委員の皆さんに御理解いただいていることにまずお礼を申し上げたいと思います。
  • 私は2つの大学の工学部で50年間、教育に従事してきており、先ほどからお話があった、イノベーション・クリエーション・クリエーティブ・スペシャリスト・独創的教育といったことを実践してきました。しかし、世間の大学に対する要求は非常に矛盾していると思うのです。
  • 独創的教育をしなさいと言いながら、自分の子供はみんな大学を出したいのです。今、日本は高校生の半分以上が大学に行く時代になっていて、誰でも大学に行きますが、そこには大学に行く目的がないのです。みんなが行くから行く、親が行けというから行くというのが今の大学ですから、日本の教育は全て平均的になってしまいます。そこに、独創的教育を求めることが、極めて矛盾した要求なのです。独創的教育をするならば、落ちこぼれを作らなければ、つまり、大学でかなりの人を落第させて卒業させないようにしなければできません。ところが日本では、文部科学省も世間もそれを許さず、卒業させることが大学の目的になっています。みんなが入れて、みんなが卒業。要するに、平均的な教育というのが日本の目的だったのです。
    全員の教養レベルを上げて、日本が一見、非常に豊かな社会になっていく中で、皆さんの要求する独創的教育をどのように実現するかということが、我々に課されている非常に重い課題なのです。人材育成として何が要求されているのか、経済産業省の立場から、文部科学省と連携して議論していただきたいと思います。
  • 昭和35年に工業高校を出た、今はリタイアされた方々にインタビューして、その仕事がどのように日本の産業を支えたか、という実例を集めた本があります。それを見て思ったのですが、高専の問題とか職業学校の問題もありますが、工業高校や農業高校など、産業の分野での実業高校を、もう少し見直す必要があります。若いときに使命感を持って、技能や技術に邁進する生き方もあって良いと思うのです。

清家委員(慶応義塾大学塾長)

  • 三村委員が言われたことは、非常に大切だと思います。ロストディケイズといわれますけれども、その中で失ったもののうち最も基本的なものは、やはり人口です。人口減が始まったのはごく最近ですけれども、出生率が2を割ったのは1970年代の半ばなのです。ですから、そのとき既に、次のジェネレーションはそのときのジェネレーションよりも人口が少なくなるということは確実でした。もちろんそのときは、出生率が回復するという期待があったと思いますけれども。
    そういう面ではまさに、三村委員がいわれたように、少子化対策はすぐに、できるだけ早く、しかもあらゆる手だてを講じる必要があります。これは決して、産めよ増やせよというのではなくて、子供を産み育てたいという人たちの希望がかなえられるようなサポートを強力にするということ。これは子ども・子育て支援を強力にするということだと思います。

米倉産業構造審議会会長(日本経済団体連合会会長/住友化学(株)代表取締役会長)

  • 少子化対策は非常に重要でありますが、一方で移民法の制定を問題提起される方はいらっしゃいませんでした。世界各国から優秀な人材を呼び込むとともに、彼ら彼女らに日本への理解を深めてもらう努力が必要なのではないでしょうか。海外からの対内投資を呼び込むということと同様に、外国人にとって生活のしやすい環境をつくるべきだと思います。

小室委員((株)ワーク・ライフバランス代表取締役社長)

  • 私も、三村委員がおっしゃったとことにも1つだけ申し上げたいと思います。経産省には、この国の経済のためにも、少子化対策が本当に必要だということを是非認識していただきたいと思います。決して厚労省だけのテーマではないと思っています。
  • あと4、5年で、団塊ジュニア世代の多くの女性が平均的な子供を産める年齢を終えてしまいます。その後に対策をしても何も効果はなく、非常に時間が迫っている問題です。その数年で女性が子供を産みたいと思うか否かを分けるポイントは、仕事に必ず復帰できるか否かであり、その際には保育所の数が一番重要となりますが、4,000億円以上が不足しています。経産省から出してはいかがでしょうか。そうすれば優秀な女性が全員、日本の企業に戻ってきて、労働力として働いてもらえる。その女性たちの教育には、国立・私立を問わず、税金をたくさん使っているわけです。血税を使って教育した人を社会で活用しないというのは、国民にとっても大きな損失ですので、ここは本当に重要なポイントです。
    また、1人目を産んだ女性が2人目を産みたいと思うかどうかは、1人目を産んだときに夫の帰宅時間が早かったかどうかで変わります。個人的には、夫の帰宅時間が早かったら3人目も4人目も産もうと思います。労働時間の問題と少子化対策との関係性を認識することで、この国をもう一度、繁栄のフェーズに戻す後押しができるわけですので、そこをいかに説明できるかが、経産省の腕の見せどころではないかと思っています。

菅原経済産業政策局長

貴重な、非常に啓発される御意見がたくさんありました。ありがとうございます。
経済産業政策局長として、これからの産業政策をどうするのか、各方面から問われておりますが、そうした問いかけをする人の産業政策のイメージは、やはり昔の産業政策なのです。経産省はこれからどの産業を伸ばすつもりなのか、どこを対象に補助金や税制措置を講じるのか、技術開発ではどの技術を重視していくのか等、何を狙いにするのかという発想での産業政策を期待されているように感じました。
ただ、政策を担っている我々からすると、そうした古い産業政策の延長線上に答えはなく、私たちの組織はそうしたものに全精力を傾けるべきではないと認識しております。幅広い延長線上の答えを求めるのではなく、不連続をつくり出す環境を、産業政策としてどのようにつくり出すか、問われているのだと思っています。
不連続をつくる一番の担い手は、新規のプレーヤーです。この場合の新規のプレーヤーというのは、恐らく若者であり、女性であり、外国人、海外の人材を想定していますが、意識改革を促すことで、既存の経営者も、この対象に取り込むことが重要です。なお、新規プレーヤーの法人格としては、ベンチャー企業や外資が想定されます。これには、外国人が日本に投資したくなるような魅力ある環境を作ることが重要です。

  • また、将来を考えると、ゲーム・チェンジング・テクノロジーが必ず出てくると思っています。白石委員からも御指摘がありましたが、日本は、世の中を変えるような技術の持ち手として、決して土俵から外れていないと思っています。むしろ、土俵の真ん中で相撲をとっていると自己評価しても良いと考えています。一方で、技術開発のシーズ段階から最終的に商品化するに当たっての橋渡し役としても、政府の重要性を御指摘いただきましたが、不連続な環境下で、日本が本当のゲームチェンジャーとなるために対処すべき課題については、我々も委員の皆様と同様の認識を持っていると考えています。
  • 人口減少に関する問題については、もしこのまま人口減少が続いた場合に、地方の各経済単位における産業がどのようになるか、一生懸命模索しています。ものづくり産業がない地域で特に人口減少が加速していく中において、社会保障の移転所得をどう効率的に使っていくのか、またそうした地域の人たちの価値観とどう折り合いをつけていくのか、考えなくてはいけません。価値観の折り合いをつけることは、政府のすべき仕事ではないのかもしれませんが、雇用の場もなく若者のいない社会で、年配の人たちだけでどのように地方のハピネスを実現するのか、考える必要があるということです。
  • 「働き方」「人口減少」「外国人」「外資」「技術」といった論点を切り口に、不連続をつくり出すための環境整備に全精力を費やすことが、経産省に限らず、政府全体に求められています。従来の仕事に注力することは当然ですが、これまでと異なり、こうした課題にこそ重点を置くべきであると、改めて感じたところであります。貴重な御意見を頂戴し、ありがとうございます。

生駒委員(ファッション・ジャーナリスト/公益財団法人三宅一生デザイン文化財団理事)

  • 私も今、大学やファッションスクールで教えているのですが、産業界と、大学などの教育機関、そして公共研究機関がつながることが大事です。例えばアメリカでは、MITメディアラボやスタンフォードでこうした連携が実践されていて、日本からも「スプツニ子!」という28歳の女性がMITメディアラボで助教授をしています。アメリカのように、日本でも今後は、大学・産業界の双方でオープンになっていただき、つながりを深めることで、新しいイノベーションを生み出せたらと思っています。

米倉産業構造審議会会長(日本経済団体連合会会長/住友化学(株)代表取締役会長)

  • 最後に、私から一言コメントさせていただきたいと思います。委員の皆様には、多岐にわたる分野につきまして活発な御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
  • 安倍内閣による一連の政策が功を奏し、我が国の景気は緩やかに回復を続けて、政府が目指す経済の好循環が生まれつつあります。この好循環をより力強い持続的なものにしていくためには、本日の議論にもありましたように、将来の日本のあるべき姿を見据えて、その実現に向かって、国を挙げて積極的に行動を起こしていくことが重要です。産業界としましても、新しい事業や製品、サービスの開発にチャレンジし続け、新たな成長の機会を生み出して、日本の経済の真の再生をリードしてまいりたいと考えております。
  • そのためにも、我が国の成長戦略を着実に実行し、企業や個人が持てる力を最大限に発揮することができる環境を整備していくことが重要です。新たな成長を生み出していくために、これから特に重要になってまいりますのは、ベンチャー企業の役割であります。ベンチャーの活性化はイノベーションを加速させるだけでなく、世界から我が国への新しい投資を呼び込むことにもつながってまいります。経済産業省の皆様には、ベンチャーの活性化につながる各種の支援策や環境整備の取り組みをスピーディーに、とりわけエクイティマネーの育成というものを考えていただきたいと思います。
    4年前、私が経団連会長に就任した際、就任挨拶で、経営者はもっと自信を持ち、積極的な経営に当たっていこうと、そして政府に過度の依存をするのではなく、自分たちで産業競争力を更に高めるべき、と申しました。そのためには、イノベーションが必要であり、イノベーションの加速を目的として、「未来都市モデルプロジェクト」を立ち上げました。現在、日本全国11ヵ所で11のプロジェクトが走っております。省エネ、介護、医療、農業などの分野でイノベーションを推進し、本当に住みやすい、暮らしやすい都市をつくっていこうとしております。未来都市モデルプロジェクトでは、自治体と大学の連携も加速しております。
  • また、経済のグローバル化が進む中で、世界では経済連携協定を初めとするルールづくりにおいて、激しい競争が展開されており、我が国といたしましても官民一体で、この競争に臨むことが不可欠であると存じます。
  • 産業界といたしましては、引き続き、高い成長が期待されるASEAN地域をはじめ、世界各国の政府並びに産業界に対し、民間外交を通じて積極的に働きかけを行ってまいる所存です。政府におかれましても、我が国の国益と世界経済の持続的な発展に資する戦略的なルールメイキングに向けて、今後とも全力で取り組んでいただきたいと存じます。
    産業界といたしましては、経済産業省の皆様にその舵取り役としてリーダーシップを発揮していただくことを大いに期待しておりますので、何とぞ、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(4)締めくくり挨拶

松島経済産業副大臣

  • 今日、国会、衆議院の経産委員会で中心市街地活性化法の改正の議論をしており、各地域が本当に活性化されるのか、元気になるのか、それぞれ自分の地元のイメージで質問・答弁してまいりました。
  • 人口減少の問題や、出生率の問題、少子化対策とか子育ての問題など、それらが全部経済に結びついている。そして、日本の教育、社会基盤、経済全体や社会全体がどうなるかということと、私たちが取り組む、産業構造を考えていくということは、本当に裏表の関係にあると思っています。
  • エネルギーと中小企業政策に関しては別に審議会があるのですけれども、産業構造審議会というのは経産省が取り組む仕事の、およそ全てのことを議論していただいています。審議いただいたことを踏まえて、政治・行政の世界では、来年度の予算、政策、それに先立つ骨格を決めることになりますので、今日、忌憚のない御意見を伺ったわけであります。インフラシステムの輸出にしても、ベンチャーの問題にしても、対内直投の話にしても、イノベーションや知財など基盤となるところに、産業構造の課題があると思っております。今日の皆さんの御意見を、本当にしっかりと生かしてまいります。
  • 夫の帰宅時間によって2人目、3人目を産めるかどうかという、非常によくわかりやすい指摘がありました。私自身、人生で唯一やり残したことは、子供を産み育てることだと思っています。子どもを産むならば、女性は是非早く決断し、そして男性もパートナーに子どもができたら、お金の意味でも手間暇の意味でも、喜んで一緒に育てようといえるようになっていただきたい。そのためにも、企業の方々には、正規社員をたくさん生み出すようにお願いしたいと思います。
  • 一方で公務員は、夜中まで働いており、その一因は国会関連の業務にあります。男性も女性も、この働き方をしていたのではどうしようもありません。まず、隗より始めよで、政治家であり、行政のトップに近いところにいる者として、このシステムを変えるべく議論をすることで、まず行政を変え、それが企業、社会の変化にもつながるように、しっかりと努めてまいりたいと思っております。今日は皆さん、本当にありがとうございました。

磯﨑経済産業大臣政務官

  • 今日は皆さん、本当にいろいろな意見をいただきまして、ありがとうございました。冒頭から出席させていただきましたので、皆さんの大所高所からの御意見を賜りまして、非常に参考になりました。
  • 今の日本社会は、課題先進国といわれまして、課題解決先進国にならなければいけないともよくいわれることでございますけれども、まさに今日も、今の課題をどうチャンスに結びつけていくかというお話をいただきましたし、まさに人口の問題にしてみれば、それを前提に物事を考えていくという方向だけではなくて、そもそもそれにどう対応していくのかという御意見もいただいたと思っております。
  • 働き方からものづくりの話まで、いろいろな方向性をいただいたと思います。今、経産省としては、例えば福島、被災地の復興、あるいは経済の好循環という問題もあるわけでございますけれども、やはり中長期的な視点も持って、日本の国をどういう方向にもっていくかという視点を忘れずにいなければなりません。そのための経済産業政策というのは、今日皆様方からいただいたいろいろな方向性を参考にしながら、6月の日本再生戦略の見直し、8月の予算へ取り組んでいきたいと思います。今日この4月の段階で皆様方から御意見をいただいたというのは、今後の政策に反映していく中で非常に重要なタイミングだと思っておりますので、今日の御意見を参考にさせていただきながら政策をつくってまいりたいと思っております。本当にありがとうございました。

以上

お問合せ先

経済産業政策局 産業構造課

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最終更新日:2014年6月3日
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