第5章 円高の影響が著しかった中小企業の輸出入

 平成5年2月以降進展した円高は,我が国中小企業に対して,前回のプラザ合意後の円高以上の影響を与えており,特に,輸出型産地は最も直接的な影響を受けている。

第1節 平成の円高局面の特徴

1 為替相場の動向

 平成5年の為替相場は1ドル124円台で始まったが,2月以降円高が急激に進展し,8月には一時100円台の史上最高値を記録するに至った。このような今回の円高局面を前回の円高局面(昭和60年9月のプラザ合意後)と比較すると,ドルに対する円の上昇率では前回の方が今回より大きかったものの,前回の円高の内容が各国通貨に対するドルの独歩安であったのに対し今回は円の独歩高であることが特徴となっている(第1-5-1図)。このため,日本製品の価格面での競争力は各国の製品に対して著しく低下し,我が国中小企業もその影響を大きく受けることとなった。

2 中小企業への影響

 前回の円高局面においても,いわゆる「円高不況」の到来により中小企業の景況は相当悪化したが,中小企業庁「製造業構造変化実態調査」(5年12月)によれば,円高が中小企業の経営に与えた影響は今回の方が前回よりも大きかったとする企業が多い。その理由としては,「単価引下げ要請が強い」「取引先の生産減少等の影響が大きい」「国内市場の競合激化」とする企業が多く,景気低迷が長期化する中での円高進行という悪条件の重なったことが大きく影響していることが分かる(第1-5-2図)。
 一般に,輸出企業はドル建て輸出価格を引き上げることによって為替差損を回避するが,今回の円高局面では,国際競争力の低下を背景に(第1-5-3図),為替コスト上昇分の製品輸出価格への転嫁が困難になっている。この点を前回と今回の円高局面における為替転嫁率(=輸出物価上昇率/為替相場上昇率)で比較してみると,前回は52.0%であるのに対し,今回は37.9%の転嫁にとどまっている(第1-5-4表)。
 また,上記「製造業構造変化実態調査」で昭和61年時点(昭和61年中心相場平均値168.03円)での中小企業の輸出採算レートを見ると,170円未満(170円より円高でも採算可)とする中小企業が過半数を占めていた。これに対し,平成5年12月時点(中心相場月平均値109.70円)での輸出採算レートは110〜120円が最も多く,130円以上(130円より円高では採算割れ)とする中小企業も11%に達しており(第1-5-5図),今回の円高局面では中小企業の輸出採算レートと実際の為替相場との乖離が前回以上に拡大している。この点からも今回の円高が輸出型の中小企業に与えた影響が前回以上に深刻であったことが分かる。

3 輸出型産地の状況

 産品の多くを輸出に依存する中小企業の集積である輸出型産地は,今回のような急激な円高の深刻な影響を最も直接的に受けていると考えられる。
 このような輸出型産地の景況を,中小企業庁「輸出型産地円高影響調査」(平成5年5月〜6年2月の毎月調査)で見ると,金属洋食器,眼鏡枠,スカーフといった産品を生産する全国20の代表的な輸出型産地の大部分において,前年同月と比べた輸出向け成約額が「少し」又は「大幅」に減少した。特に円高がピークに達した平成5年8月以降では,9月と10月及び平成6年1月を除く各月において全産地で成約額が減少した。また,前月と比べ業況が悪化したとする産地が毎月過半数を占めており,輸出型産地の業況が月を追って悪化し続けていったことが分かる(第1-5-6表)。
 さらに,8月時点の同調査によれば,前回の円高局面と比較した今回の円高局面に顕著な特徴として,20産地中18産地が「今回の方が内需転換による対応が困難」と回答している(第1-5-7図)。このことから,前回の円高局面で既に相当の内需転換努力がなされ,内需転換によって対応できる余地が少なくなっているため,今回の円高に対応するための内需転換は困難になっていることが分かる。

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