第3章 流通業,サービス業における構造変化


 本章では,流通,サービス,建設,運輸等の中小非製造業の現状及び構造変化について分析する。流通業においては,競争激化の中で業況は厳しいものとなっているものの,効率化に向けた動きも見られることを示す。一方,サービス業は,情報化の進展,消費者意識の変化等を背景として大きく成長している分野が多いことなどを示す。さらに,建設業,運輸業の現状及び構造変化についても分析する。

第1節 流通業

 ここでは,いわゆる「低価格化現象」の進展等を背景とする流通業(小売業及び卸売業)における競争激化の中で,中小流通業者は小規模企業を中心に厳しい状況に追い込まれていること,また,効率性の向上等による生き残りを模索する動きが見られるなど,流通業においても構造変化が進展していることを明らかにするとともに,従来製造業に比べ非効率性を有していた中小流通業がセクター全体としては,効率化に向けた動きを見せていることを分析する。

1 我が国流通業の生産性の向上

 我が国流通業の労働生産性(1人当たり付加価値額)は製造業の6割程度であり,この労働生産性の格差は他の先進国と比べても大きなものとなっている(第2-3-1表)。すなわち,国際的に見ると製造業に比べた我が国の流通業の労働生産性は相対的に低いと言える。もとより,こうした傾向は日本の流通に固有の消費者の多頻度小口買い等の特徴によるところが大きいと考えられるが,産業連関表で見た消費財の商業マージン率(=商業マージン額/購入者価格)の動きは,昭和30年代以降一貫して上昇傾向にあり(第2-3-2図),製造業に比べれば,運送業等も含んだ流通産業全般の効率化は遅れをとってきたことがうかがわれる。また,このような傾向は,いわゆる「価格破壊」とまでいわれた商品の低価格化が進展する中においても,最終消費財の卸売物価指数の低下率に比べて最終消費財の消費者物価指数の低下率が小さかったことからもうかがえる。しかしながら,平成5年後半以降消費者物価指数の低下率が卸売物価指数の低下率に接近し,両者の乖離は縮小しており,平成7年10〜12月期にはついに逆転することとなった。以下で詳細に分析するが,このように,近年においては流通業の効率化(流通段階の短縮化,個別企業の効率化等)の進展によっ・BR> ト生産性が急速に向上している可能性がうかがえる(第2-3-3図)。

2 中小小売業

(1) 中小小売業を取り巻く環境変化

 ここでは,中小小売業を取り巻く環境変化として,商品の低価格化,大店法の緩和以降の大規模小売業の新規出店等の動き,近年の取引慣行の変化等が存在したことを示す。

@ 消費者ニーズの変化を背景とした商品の低価格化傾向

 従来より,高齢化社会の進展,女性の社会進出,モータリゼーションの進展等に伴い,ライフスタイルが多様化する中,消費者ニーズもそれに応じて多様化,個性化の程度が強まってきている(第2-3-4図)。特に,バブル崩壊後は,値頃感,自らの趣味・嗜好を満足させる商品を求める傾向が強くなっている。
 こうした消費者ニーズの変化を背景として,近年,商品の価格低下の動きが,前述の物価指数の動き(前掲第2-3-3図)が示す通り定着する傾向を示している。このような商品の低価格化の背景には,既述の消費者の価格志向の高まり,低価格輸入品の増加に流通業者が積極的に対応したことなどがあると考えられる(第2-3-5図)。特に,後述するような新業態小売業等が,戦略的な価格引き下げを行い,こうした動きを主導している一方,他の大半の小売業は,この動きにやむなく追随しているか,又は他店の影響を被っている状況である(第2-3-6図)。低価格化の動きは,大手と中小とを問わず,小売業の経営に深刻な影響を与えており,低価格化をプラスに評価している小売業は,大規模小売業でも16%にすぎず,中小小売業では7%となっている(第2-3-7図)。
 しかし,今後については,大規模小売業のうち半分以上が,価格の引き上げまたは現状維持の方針を取っていることにかんがみれば,低価格化傾向はある程度減速する可能性もあると考えられる(第2-3-8図)。

A 規制緩和を背景に増加する大規模小売業の出店・営業時間延長

 平成2年5月の大店法(大規模小売店舗法)の規制緩和,平成4年1月末の改正大店法の施行,平成6年5月の第3次規制緩和措置等を背景に,近年,大規模小売業の出店件数が増加している(第2-3-9図)。その内訳は,大手スーパーも含めたスーパーマーケットが最も多いが,その一方でホームセンター,衣料品専門店,家電専門店といったカテゴリーキラー(専門量販店)群も相当の出店増加を示している(第2-3-10図)。
 なお,大規模小売業の立地については,平成6年12月に通商産業省がショッピングセンターのディベロッパーを対象に実施した「ディベロッパー実態調査」において,商業集積開発の立地の選択に当たって郊外を指向するものが,今後について従来以上に増加する傾向にあることからも,大規模小売業は郊外を中心に出店してゆくものと考えられる(第2-3-11図)。
 さらに,大規模小売業においては,営業時間延長の動きも顕著になってきており(第2-3-12図),夜間の従業員確保が困難な中小小売業は,大規模小売業における営業時間延長により「遅い時間に大型店に客が流れ売上が減少した」とするところが34%に上っている(中小企業庁「小売業経営戦略調査」7年12月)。

B 新業態小売業の登場

 前述したように消費者ニーズの変化を背景として,近年,ディスカウントストア,カテゴリーキラー,ホームセンター等の低価格を売り物とする新業態の小売業が登場し,売上を伸ばしてきている(第2-3-13図)。
 また,一般の中小小売業が,競争相手としてもっとも意識している業態として,大型総合スーパーの次にディスカウントストアを指摘していることからも(第2-3-14図),ディスカウントストア,カテゴリーキラー,ホームセンター等の新業態小売業が中小小売業者の強力な競争相手として現れてきている。

C 流通慣行の変化

(ア) 変化のきざしが見られる従来型の流通取引慣行

 メーカー希望小売価格に代表され,製造業者が自社製品について流通段階の各レベルの価格を設定する「建値制」についての問いに対して,流通業者(卸・小売業者)としては「もともとみられない」「過去にあったが現在では見られない」「ほとんど価格設定に影響していない」とする企業が合わせて約4割,「価格設定の参考にされている」とする企業が約4割前後となっており,一方で,「ほぼ守られている」「厳密に守られている」とする企業は,2割程度に止まっている(第2-3-15図)。なお,「過去にあったが現在では見られない」とする企業も5〜6%存在する。また,商工組合中央金庫「中小卸・小売業の構造変化実態調査」においても,「建値制」が「少なくなっている」とする企業の割合が卸売業で32%,小売業で29%となっており,近年「建値制」に変化の動きが見られる。また,様々な事由により販促費等の名目で仕入価格が事後的に値引きされ,割り戻される「リベート制」についても,近年「売上高達成リベート」「販売数量リベート」があるとする企業にわずかながらも減少傾向が見られるとともに,「リベート制度は見られない」とするところが若干増加しているといった変化がみられる(第2-3-16図)。商工組合中央金庫「中小卸
・小売業の構造変化実態調査」においても,「リベート制」が「少なくなっている」とする企業の割合が,卸売業における仕入先,販売先との間でそれぞれ45%,41%,小売業で39%となっていることからも,「リベート制」にも変化の動きが見られる。
 さらに,このような従来見られた「建値制」「リベート制」等の取引慣行が変化する中で,大規模小売業,中小小売業を問わず価格決定権が川上(メーカー側)から,川下(小売側)へ移行していることが見られる(第2-3-17図)。
 また,今後についても「建値制」「リベート制」等の制度・商慣行に対して廃止を求める声が相当存在すること(第2-3-18図),さらに,メーカーサイドからもリベート制廃止の声が出てきていること(第2-3-19図)から,こうした傾向は強まるものと考えられる。ただし,近い将来,建値制が崩壊すると仮定した場合の現体制での対応が可能かとの問いに関しては,中小の卸・小売業とも「問題ない」とする声が過半数を占める一方,「困難」とする声も2〜3割程度見られる(第2-3-20図)。このため,「建値制」をはじめとする従来型取引慣行の急速な変化によって,今後中小流通業の中には厳しい対応を迫られるものも出てくることも予想される。

(イ) 崩れつつある流通系列構造

 家電,化粧品業界等を中心とした,一部のメーカーにおいては,かねてよりメーカー系列販売店網(メーカーが自己の商品の販売について自己の政策が実現できるように組織化した販売店網)を,中小小売業を中心として構築し,自社商品の価格維持を図るとともに,その安定販売ルートを確保してきた。しかしながら,系列販売店の売上シェアは,一貫して低下傾向(第2-3-21図)にある。系列販売店の売上シェアが40%程度にまで低下した結果,系列販売方式の流通システムの維持がコスト的に見合わなくなってきたことが,メーカーにおいて販売・流通の効率化のため,販売系列店政策を見直す動きが出てきている(前掲第2-3-19図)一因と考えられる。こうしたメーカーと流通業との系列関係の見直しの動きは,前述のメーカー主導の価格決定(建値制度等)の見直しの動きとともに既存の商慣行が崩壊しつつあることを象徴的に示すものの1つと考えられる。

(2) 中小小売業の動向

 ここでは,中小小売業に関する各種指標を見ることによって前述の中小小売業を取り巻く環境変化のなかで,中小小売業の厳しい現状を明らかにする。

@ 回復の遅れの目立つ中小小売業の業況

 バブル崩壊以後の景気後退以降中小小売業の業況は厳しいものがあり,平成5年10月以降の緩やかな景気回復局面においても中小小売業の回復の遅れは目立っている。特に平成6年10〜12月期以降は,ほぼ一貫して足踏みから弱含みの動きが見られている(第2-3-22図)。この背景としては,前述した商品の低価格化に伴って仕入単価は引き続き下がっているものの,客単価も一段と低下していることから中小小売業の利潤を圧迫していることが考えられる。

A 回復の遅れが目立つ販売額

 通商産業省「商業統計表」によると,小売業の実質販売額(消費者物価指数を用いた実質値)は,全体としては実質値のとれる昭和49年以来増加を続けていたものの,平成3年から平成6年の間にマイナス2.3%(名目値では同0.7%と昭和33年の年間販売額の調査開始以来最低の伸び率)と初めて減少に転じた(第2-3-23図)。小売業の実質販売額の変化を規模別にとらえて見ると,大規模小売業と中規模小売業(従業者数5〜49人の小売業)は一貫して売上を増加させている一方,小規模小売業(従業者数1〜4人の小売業)は平成3〜6年において売上を減少させているなど足踏みが見られる(第2-3-24図)。
 また,最近の小売業の販売額の動きを通商産業省「商業動態統計」によって見てみると(前掲第1-1-12図),大規模小売業,中小小売業の販売額ともに平成4年前半以降平成5年前半まで低迷を続けていた。ただし,平成5年後半からは,大規模小売業,中小小売業の販売額はともにマイナス幅が縮小し,特に大規模小売業は,平成6年7〜9月期以降,対前年同期比伸び率がプラスに転じている。これに対し,中小小売業は,平成6年に若干の回復が見られたものの,平成7年4〜6月期以降は,対前年同期比伸び率がマイナスに転じて以降マイナスで推移している。
 以上のように,販売額動向を巡っては,長期的に見ても,短期的に見ても大規模小売業に比して中小小売業の厳しさが目立っている。

B 厳しい状況にある中小小売業の収益動向

(ア) 低価格化が進展する中で自社利潤の削減による対応を続ける中小小売業

 中小小売業の粗利益率(=営業利益率+販売管理費率)は,近年までほぼ25〜30%の間で安定的に推移していたものの,平成4年に中小小売業の粗利益率は30%台半ばまで上昇して以降,そのまま高水準に止まっている(第2-3-25図)。この平成4年以降の粗利益率の動きの主要な要因は,売上の落ち込みによる人件費率(対売上高人件費率)等の経費率の上昇と考えられ,売上高の減少に人件費を中心とした経費の削減が追いついていないことがうかがえる。営業利益率は平成4年以降低下を続け,平成6年度には10年ぶりにマイナスに転じている。このことから,中小小売業は,低価格化が進展する中で自社利潤の削減による対応を続けていることがうかがえる。
 一方,この時期の大規模小売業の粗利益率の動きを見ると,粗利益率の低下と合わせて販売管理費率も低下しており,営業利益率で見ると,中小小売業同様,基本的には漸減傾向となっていたものの,中小小売業ほどの落ち込みは見られなかった(第2-3-26図)。特に平成6年度は,一段と粗利益率が低下している一方で,販売管理費の削減がそれを上回り,前年度以上の営業利益率を確保し得ている。すなわち,大規模小売業が,現在の低価格化の流れに合わせてより一層の商品価格の引き下げを実現させている一方,経費の削減をはかることによって採算を確保しようとするローコストオペレーションに,いち早く取り組んだ結果と考えられる。これに対して,ローコストオペレーションへの取り組みが遅れている中小小売業は,低価格化が進展する中で,自社の利益の削減を中心とした対応を行うなど,厳しい状況が続いているものと考えられる。

(イ) 小規模小売業において高い対売上高経費率

 また,規模別の採算を見ると(第2-3-27図),おおむね小規模小売業ほど販売管理費率が高くなっており,このため,粗利益率も高くせざるを得ない状態となっていると考えられる。このことからも,規模の利益を享受し得ない小規模小売業ほど,低価格競争の中で不利な状況に置かれるケースが多いことがうかがえる。特に,資本金5百万円以下の小売業においては,営業利益率がマイナスとなっており,商品の低価格化が進展する中で,小規模小売業が厳しい状況に追い込まれていることが明らかになっている。

(ウ) 損益分岐点比率の高い小売業

 小売業の損益分岐点比率の動きを見てみると,大規模小売業,中小小売業ともに平成6年度には若干の低下傾向を示しているものの長期的には上昇傾向を示しており,特に,中小小売業では,平成5年度には過去20年間において初めて100を超えている(利益の出ない状態)。中小小売業の損益分岐点比率は,平成6年度には100を若干下回ったもののいまだ高い水準にあり,中小小売業の経営に余裕がない状況を示している(第2-3-28図)。

C 減少の続く商店数

 小売業全体の商店数は,昭和57年以降減少を続けているが(第2-3-29図),小売業の商店数の変化を規模別にとらえて見ると,販売額同様,大規模小売業と中規模小売業は商店数を大きく増加させている一方で,小売業の商店数の過半を占める小規模小売業の商店数はそれを上回る勢いで大きく減少している(第2-3-30図)。このことから,小売業においては小規模を中心として,厳しい状況に追い込まれていることがうかがわれる。

(3) 効率化に向けた動きが見られる中小小売業

 以上述べてきたように厳しい状況にある小売業だが,一方で,このように激しい競争の中で以下に示すように小売業全体では効率化に向けた動きも見られる。
 ここで,1店当たりの実質販売額の動きを見ると,平成3年から6年の間には景気回復の遅れによる消費の低迷等に伴い,規模にかかわらず減少を示しているものの,長期的に見ると中小小売業の1店当たりの実質販売額は,増加傾向にあると言える。特に,小規模小売業を中心とした中小小売業の1店当たりの実質販売額は,昭和54年を基点とすれば,なお,中規模小売業・大規模小売業に比べ高い水準にある(第2-3-31図)。
 一方,小売業全体の従業者数は,商店数の動きとは異なり,従来より増加傾向となっている(第2-3-32図)。ただし,規模別にとらえて見ると,大規模小売業と中規模小売業は従業者数を増加させている一方で,小規模小売業の従業者数は,既述の商店数の減少を受けて減り続けている(第2-3-33図)。
 ここで,従業者1人当たり実質販売額を見ると,1店当たりの実質販売額の動きと同様,総じて平成3年から平成6年の間に大幅に減少しているものの,小規模小売業においては,平成6年の減少幅は比較的小さく,長期的な増加傾向は続いており(第2-3-34図),中小小売業全体としてみると小規模小売業を中心とした効率化の動きの一端がうかがえる。しかしながら,絶対水準を比較すると,平成6年においても中小小売業の1人当たり実質販売額は,大規模小売業の6割(小規模は同45%弱)程度しかなく,提供するサービスの違いによる要因もあり一概には言えないものの,まだまだその差は大きいのが現実である(通商産業省「商業統計表」)。
 また前述したように,最近卸売物価指数の低下率が消費者物価指数の低下率を下回ることとなったことも流通業の効率化へ向けた動きの現れと考えられる。
 以上述べてきたように,様々な痛みを伴いながらも,大企業・中小企業を問わず小売業全体としては効率化に向けた動きが見られる。

(4) 競争激化により厳しい環境下にある商店街

@ 最近の商店街の景況

 既存の商店街は,顧客の郊外への分散,駐車場不足,空き店舗の増加といった問題を抱えており,日本商工会議所「商店街に関する実態調査」(6年11月)によると,その89%が「衰退」または「停滞」と答えているなどから,商店街の景況は総じて厳しい状況にあることがうかがわれる(第2-3-35図)。

A 商業集積としての商店街

 商店街に立地する中小小売業においては,従来「消費者のアクセスの良さ」という良好な立地環境,「集客力がある」「ニーズをつかみやすい」といった点が商店街に立地するメリットであった。しかしながら,前述のような厳しい商店街の現況を背景に,全体的にこのような出店当時あった商業集積としてのメリットは現在低下している。こうした傾向は「メリットは特にない」という小売業が大幅に増えていることからもうかがわれる。その一方で「集客力がある」とするものがなお相当数存在しているほか,「共同事業ができる」「公的な各種支援が受けやすい」といった点がわずかながら増加しており,引き続き商店街の中に活路を見出していこうとする動きもうかがえる(第2-3-36図)。他方,商店街の抱えている問題点の上位としては,逆に「商店街としての顧客吸引力・魅力のなさ」が45%に上っているほか,「駐車場の不足」「空き店舗が発生している」等があげられる(第2-3-37図)。

B 深刻化する空き店舗問題

 前述の商店街の抱える問題点としてあげた大きな問題の1つとして「空き店舗問題」がある。空き店舗問題は,単に1商店が休廃業することに止まらず,商店街全体の品揃えを欠落させる等,その進展によっては商業集積の崩壊の懸念にまでつながりかねず,その影響は大きいものと考えられる。
 全商店街のうち空き店舗のある商店街は85%を占めており,1商店街当たりの空き店舗比率は8.8%(店舗数にして約5店),空き店舗が1割を超える商店街は全商店街のうちの約1/3にのぼっている。しかも,現在の空き店舗の7割以上が平成3年以前に発生したものであり,既存商店街において,3年以上もの間,同一の空き店舗が存在している結果となっている。空き店舗が商店街に与える影響としては,「空き店舗のところが寂しい」「さびれた感じとなった」といった回答が多く,空き店舗が商店街のにぎわい感を失わせるとともに,その他「必要な業種が揃わなくなった」「通行量が減った」といったマイナスの影響を強く与えていることが分かる(第2-3-38図)。実際,「繁栄している」と答えた商店街の平均空き店舗比率が2%なのに対し,「衰退している」と答えた商店街のそれは12%と高くなっている。
 こうした状況の下,空き店舗の利用状況を見ると,「全くの空き店舗」が半分,「住まいとして」が1/4を占めている(第2-3-39図)。また,望ましい空き店舗対策として,その過半を占めるのが,「商店街に不足している業種,集客に結びつく必要業種にきてもらう」であるのに対して,現実には,店舗誘致における問題点として「商店街に魅力がなく,誘致そのものがやりにくい」「誘致のために一生懸命に働く人がいない」「入店を希望する人がどこにいるのかわからない」を挙げる小売業が多く,現実の対応がなかなか難しいことが分かる(第2-3-40図)。こうした現実を反映して,自社の立地する商店街の将来性に対しては,「衰退する」「やや衰退する」と回答した暗い見通しを持っている者が,「おおいに発展する」「やや発展する」と回答した明るい見通しを持っている者の2倍の約4割となっている(第2-3-41図)。
 以上,小売業を取り巻く激しい環境変化により,小規模企業を中心に小売業の経営は厳しさを増してる。しかし,小売業全体としては効率化への動きがうかがえ,こうした厳しい環境変化に必死に対応を図っている企業の努力が表れつつあるとも言うことが出来る。

3 中小卸売業

(1) 中小卸売業の動向

 ここでは,中小卸売業に関する各種指標を見ることによって中小卸売業の厳しい現状を明らかにする。

@ 回復の鈍い中小卸売業の業況

 中小卸売業の業況は,平成3年10〜12月期以降厳しい状況であり,平成5年10月以降の緩やかな景気回復局面においても中小卸売業の回復の遅れは目立っている。特に平成6年10〜12月期以降は,足踏みから弱含みの動きが見られている。この背景としては,前述した中小小売業と同様に,商品の低価格化に伴って仕入単価の低下以上に売上単価が一段と低下していることが中小卸売業の利潤を圧迫していることが考えられる(第2-3-42図)。

A 減少に転じた販売額

 通商産業省「商業統計表」によると,卸売業の実質販売額(卸売物価指数を用いた実質値)は,全体としては実質値のとれる昭和49年以来増加を続けていたものの,平成3年から平成6年の間にマイナス3.9%(名目値では同マイナス10%と昭和33年の年間販売額の調査開始以来初めての減少)と初めて減少に転じた(第2-3-43図)。この時期の卸売業の実質販売額の変化を規模別にとらえて見ると,小売業とは違いすべての規模で売上は減少している(第2-3-44図)。
 最近の卸売業の規模別の販売額の動きを通商産業省「商業動態統計」によって見てみると(前掲第1-1-11図),まず,大規模卸売業の販売額は,平成3年7〜9月期以降平成7年10〜12月期まで,若干の回復傾向は見られるものの,低迷を続けている。一方,中小卸売業の販売額は,平成4年4〜6月期以降平成6年前半まで低迷を続けていたものの,平成6年7〜9月期に対前年同期比伸び率がプラスに転じて以降プラスで推移している。ただし,平成7年7〜9月期はプラス幅が大幅に減少しているなど,その足取りは力強さを欠くものと言える。

B 中小卸売業の収益動向

(ア) 低価格化の中で対応に遅れの目立つ中小卸売業

 中小卸売業の粗利益率は,昭和50年代には14%前後で安定的に推移していた。また,昭和60年度以降中小卸売業は,基本的に販売管理費の増加分を粗利益率を増加させることにより吸収し,自社の利益率を確保し得ていた。ただし,平成4年以降は,販売管理費率(対売上高販売管理費率)の上昇ほど粗利益率を上昇させることができず,営業利益率は基本的に減少傾向にある(第2-3-45図)。この平成3年以降の販売管理費率の上昇の主要な要因は,人件費率等の経費率の上昇と考えられ,売上高の減少に人件費を中心とした経費の削減が追いついていないことがうかがえる。
 一方,この時期の大規模卸売業の粗利益率の動きを見ると,販売管理費率の上昇ほど粗利益率を上昇させることができず,営業利益率はわずかながら減少傾向にある。ただし,平成6年度は,販売管理費率を前年並みに押さえることにより,粗利益率も押さえ,前年並みの営業利益率を確保し得ている(第2-3-46図)。すなわち,前述の小売業のケースと同様,卸売業においても,大規模卸売業が,現在の低価格化の流れに合わせて,中小卸売業に先駆けてローコストオペレーションに取り組んでいるものと考えられる。これに対して中小卸売業は,ローコストオペレーションへの取り組みが遅れており,現在のような粗利益率の引き上げによる自社利潤の確保は,早晩限界がくるものと考えられ,早急な対応が望まれるところである。

(イ) 規模が小さくなるほど高くなる対売上高経費率

 また,規模別の採算を見ると(第2-3-47図),前述の小売業のケースよりも鮮明に,小規模卸売業ほど販売管理費率が高くなっており,このため粗利益率も高くならざるを得ない状態となっていると考えられる。このことからも,前述の小売業同様に規模の利益を享受し得ない小規模卸売業ほど,低価格競争の中で不利な状況に置かれるケースが多いことがうかがえる。特に,資本金2百万円以下の卸売業においては,営業利益率がマイナスとなっており,低価格化が進展する中,小売業同様に,このままでは小規模卸売業を中心として厳しい状況に追い込まれる事業者が増加する懸念があるものと考えられる。

(ウ) 上昇傾向の続く卸売業の損益分岐点比率

 卸売業の損益分岐点比率の動きを見てみると,大規模卸売業,中小卸売業とともに近年上昇傾向を示しており,経営状況の厳しさが増していることを示している。特に,平成6年度には大規模卸売業の比率が若干減少して利益の改善が見られるのに対して,中小卸売業の比率は引き続き増加しており,経営状況の厳しさが増していることがうかがわれる(第2-3-48図)。

(2) 効率化の兆候が見られる中小卸売業

@ 短縮化の動きが見られる流通経路

 日本の流通の非効率性を示すものとして,商品がメーカーから小売業者に届くまでの流通経路の多段階性がしばしば指摘される。流通経路の段階数の推移を見るための指標として用いられるW/R比率(卸売業の販売額と小売業の販売額の比率を表したもの)を見ると,米国に比べて非常に高くなっている。ただし,昭和57年以降低下傾向がみられ,流通経路の短縮化の動きが考えられる(第2-3-49図)。また,流通の多段階性について,卸売業者の総販売額のうち卸売業や小売業に対する販売額の比重の推移を見ると,消費財を中心に卸売業者向けの比重が減少し,小売業者(生産財及び投資財においては産業用使用者)の比重が増加しており,この面からも流通経路の短縮化の傾向がうかがえる(第2-3-50図,第2-3-51図,第2-3-52図)。この動きは,商品がメーカーから小売業者へ渡るまでの間に経由する仲卸の数について,小売業者,卸売業者ともに「最近減少している」と感じている企業が多く存在していること(第2-3-53図),また,メーカーにおいて販売・流通の効率化のため,取引問屋を集約化する動きが見られること(前掲第2-3-19図)からもうかがえる。

A 1店当たり販売額及び1人当たりの販売額等に見られる効率化への動き

 また,卸売業の商店数は,昭和54年から平成3年まで総じて増加していたものの,平成6年には減少に転じている(第2-3-54図)。卸売業の商店数の変化を規模別にとらえると,大規模卸売業は一貫して増加しているものの,平成6年は平成3年に比べて微増に止まっている。一方,中小卸売業は平成3年までは大規模卸売業同様に増加していたものの,平成6年は減少に転じており,特に,小規模卸売業は,減少幅が大きくなっている(第2-3-55図)。このことから,近年の競争激化の中で小売業同様,中小卸売業者は小規模卸売業を中心に厳しい状況に追い込まれていることがうかがえる。
 ここで,1店当たりの実質販売額を規模別に見てみると,まず中小卸売業の1店当たりの実質販売額は,平成3年から6年の間には景気回復の遅れによる消費の低迷等に伴い,横ばいに推移しているものの,長期的に見ると増加傾向となっている(第2-3-56図)。一方,大規模卸売業の1店当たりの実質販売額は,昭和60年以降その伸びが止まっている。
 一方,卸売業全体の従業者数は,商店数の動きと同様に,従来は増加傾向を示していたものの,平成6年は減少に転じている(第2-3-57図)。卸売業の従業者の変化を規模別に見ると,前述の商店数の動きとほぼ同様の動きとなっている(第2-3-58図)。
 ここで,従業者1人当たりの実質販売額で見ると,1店当たりの実質販売額の動きとほぼ同様の動きとなっており,卸売業全体としてみると中小卸売業を中心とした効率化の動きがうかがえる(第2-3-59図)。しかしながら,絶対水準を比較すると,平成6年においても中小卸売業の1人当たり販売額は,大規模卸売業の2割(小規模は同15%弱)程度しかなく,既述の小売業同様に提供するサービスの質の違いによる要因もあり一概には言えないものの,まだまだその生産性の差は大きいのが現実である(通商産業省「商業統計表」)。
 以上,卸売業を取り巻く激しい環境変化により,中小卸売業の経営は厳しい状況におかれている。ただし,一方では,卸売業全体では効率化に向けた動きも見られ,見方を変えると,このような状況は流通業の構造変化の過程における一時的な痛みの表れであるともいえる。
 なお,中小小売業及び中小卸売業の今後の展望については,第3部第2章「中小流通業の将来展望」において述べるものとする。
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