2.為 替



 1.ポンド相場の裁定
 1951年12月のロンドン為替市場の再開により,ポンドの相場は従来の1ポンド2ドル80
セントの固定相場から2ドル78セント〜 2ドル82セントの間を自由に変動しうる屈伸レー
トに移った。その後ポンドの対ドル相場は軟調を続けたが,53年に入リイギリスの国際収 支の改善とともに強調を示すようになった。
 一方わが国の対ポンド貿易は53年に大巾の逆調を示し,円のボンドに対する過大評価が
間題とされるにいたった。そこで,それまで円の対ポンド裁定相場は英蘭銀行の定める対 米ドル公定相場,すなわち1ボンド2ドル80セントをもととして1ボンド1008円に固定さ れていたが,54年1月の日英支払協定にもとづき,その後ロンドン市場におけるポンドの 対米ドル仲値相場をもととして1ポンド1000.8円から1015.2円の間を変動することと なった。
 円の裁定相場は,ポンドの対米ドルロンドン仲値相場の変動により自動的に変動するも
のではなく,その仲値相場にいちじるしい変動があり,かつこの変動した相場がある程度 永続するものであって,それにしたがって円の対ポンド裁定相場を変更する必要があると 認められる場合になされるのである。また売買相場については裁定相場を中心として上下 に従来と同じ幅をもって定められる。
 このような円の対ポンド屈伸レートの採用は為替取引正常化への第一歩として意味があ
るが,同時に屈伸レートとはいえ裁定相場がロンドン仲値相場より遅れてしかも固定的に 変動するので投機的要因を含んでおり,相場変動による損失はすべて大蔵大臣勘定が負う ことは問題とされていた。しかしながら後述するごとき55年3月22日の改正によるこの問 題は緩和された。

 裁定相場 クロスレート
 円銭 米ドル セント
 1954 1. 25 1,011.60 2.81
 3. 22 1,013.40 2.81 1/2
 9. 4 1,011.60 2.81
 9. 24 1,009.80 2.80 1/2
 9. 30 1,008.00 2.80
 11. 26 1,006.20 2.79 1/2
 12. 4 1,004.40 2.79

 1955 2. 8 1,002.60 2.78 1/2
 3. 9 1,004.40 2.79
 3. 18 1,005.75 2.79 3/8

2.指定通貨の拡大  従来指定通貨として認められていたのは米ドルおよび英ポンドであったが,カナダドル
およびスイスフランがそれぞれ1954年7月1日および同年8月1日より指定通貨として認 められ,それによる決済はおのおのカナダおよびスイス連邦との決済について標準決準と なった。この措置は為替取引の正常化という点で意味を有する。
 両通貨に対する円の裁定相場は,カナダドルについてはニューヨーク市場におけるその
対米ドル仲値相場をもととし,スイスフランについてはチユーリツヒ市場におけるその対 米ドル仲値相場を基礎として定められるが,その変更については前記英ポンドにおけると 同様である。また売買相場については,両者とも上限と下限が定められその間を自由に変 動しうるようになっており,これは米ドルおよび英ポンドの売買相場がすべて基準相場ま たは裁定相場に対して一定の開きをもって固定されているのに対し,為替取引を一層自由 化,正常化したものといえよう。
 裁定相場 クロスレート
 円銭 米ドル セント
(カナダドル) 1954.7.1 367.99 1.02 14/64  7.14 369.39 1.02 39/64
 8.7 370.97 1.03 3/64
 1955. 1. 6 373.05 1.03 40/64
 2. 3 371.08 1.03 5/64
 2.17 368.16 1.02 17/64
 2.21 366.47 1.01 51/64
 2.26 364.56 1.01 17/64
 3.10 366.47 1.01 51/64
 (スイス・フラン) 1954. 8. 1 83.95 4.28 13/16



 3.日独清算勘定協定の分散支払方式化
 わが国では清算勘定協定国との決済はすべて中央銀行の保持する勘定を通じて行われ,
為替銀行の活動する余地は少かったが,為替取引の正常化という見地から1954年6月1日 よりドイツとの決済について分散支払方式を採用することになった。これにより,両国の 為替銀行は互にコルレス契約を結び,個々の決済はコルレス勘定を通じて行われることと なった。もちろん勘定は清算勘定ドル建てあって,現金取引ではないが,米ドルおよび英 ポンドと同様の為替取引が認められ,中央銀行の勘定は,為替銀行の依頼によるカヴアー 送金のみ用いられることとなった。
 4.裁定相場および外国為替売買相場の改正
 前述したごとく,54年にはボンド相場の裁定,指定通貨の拡大および日独清算勘定の分
散支払方式化等,為替取引に関し幾多の注目すべき措置がとられたが,為替取引の自由 化,正常化の見地から55年に入りさらに裁定相場および売買相場の改正が行われ,3月22 日より実施されることとなった。
 改正の要点は,第1に英ポンド,カナダドルおよびスイスフランの裁定相場を変更する
際,その変更の巾を従来より狭めることによって,それら通貨のロンドン,ニューヨー ク,チユーリツヒ市場におけるおのおのの相場変動をより鋭敏に反映せしめるようにした ことであり,第2に売買相場に関しては,従来公定されていたのを,今後は日本ドイツ清 算勘定ドルをふくめて輸入手形決済相場および一覧払手形買相場については一定の範囲内 で銀行の自由建値にまかせるとともに,期限付手形買相場については全く銀行の自由に一 任することとした点である。
 この結果その後の売買相場には為替銀行間の自由競争の影響が表れてきている。55年3
月22日現在における各通貨の裁定相場は次のごとくであり,その後スイスフランをのぞき 数回にわたり改訂されている。

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