第3節 資源間遠の深刻化と対応の方向
(要 旨)
1 今日における資源をめぐる国際環境は,世界資源消費の急速な増大による需給
ひっ迫化の懸念,資源保有国におけるナショナリズムの高まりとそれに伴う国際
大資本の地位と役割の変化,あるいはアメリカのエネルギー危機の深刻化等によ
り,きわめて複雑かつ流動的な様相を呈している。
2 また,わが国においては,いまや資源の大消費国として世界の資源需給に大き
な影響力を持つに至っており,加えて国内面では資源肖費に伴う環境への悪影響
等,新たな角度からの問題が提起されてきている。
3 わが国における資源問題は,従来,必要量の低廉安定的な確保に重点がおかれ
てきたが,今後は以上のような情勢変化に適応した新たな取り組み方が要請され
るに至っている。すなわち,まず必要資源の長期安定的確保の見地からは,@海
外資源開発の促進,A資源の現地加工化の推進,B資源保有国,国際大資本およ
び他の消費国との協調関係の維持推進,C備蓄政策,D資源供給源の分散化,E
新規資源の研究開発,等が重要と考えられ,また,国内における環境面への対応
としては,@低公害,無公害資源の確保,A省資源技術,資源処理技術の開発,
B資源の現地加工化,輸入の高加工度化の促進等が必要であろう。
さらに以上の対応に加えて,より長期的な観点からは,わが国の産業構造自体
をより省資源,省エネルギー型の産業構造へと転換していくことが必要である。
1.資源をめぐる国際環境の変化
戦後の世界における経済成長の加速化と規模拡大に伴って,主要な天然資源
に対する世界需要は増大の一途をたどっている。最近ではそのスピードが余り
にも速いため,資瀕の枯渇に対する懸念が深まりつつあり,とくに資済多消費
型経済活動に慣らされてきた先進工業国にとっては,必要資源の安定的確保が
大きな関心事となってきている。
同時に資源の供給の側面においても,OPEC諸国の動きに象徴されるナシ
ョナリズムの台頭およびこれに伴う国際大資本の地位と役割の変化が生じつつ
あり,世界の資源供給事情はきわめて流動的になってきている。
さらに以上のような需要両面の情勢変化に加え,新たに資源開発および資源
消費のもたらす環境破壊の問題が提起されるに至っている。
このように資源をめぐる国際環境はとみに厳しさを加えつつあるが,資源の
大量消費国でありながら必要資源のほとんどを海外からの供給に依存している
わが国にとっては,これらの情勢変化にいかに対応するかが大きな問題となっ
ている。
(1)資源の世界的需給動向
1960年代における世界の資源消費は人口の増加,順調な経済発展などを背景
として急速度に増大した。世界の主要資源の消費推移を61年から70年までの年
平均の伸び率でみると,銅,鉛,亜鉛で3〜4%,粗鋼で6%,アルミニウム,
石油は8%以上の消費伸び率を示している。
次にこのような資源消費の主要国別内訳を第U−1−36図でみると,少数の国
にかたよった消費構造となっている。たとえば71年時点において銅はアメリカ
が25%,ソ連が14%,日本が12%と3カ国で世界の消費の51%を占め,またア
ルミニウムについてはアメリカ37%,ソ連13%,日本9%で3カ国で59%に達
している。石油についてもアメリカおよびわが国の消費シェアが顕著であり,
この2カ国で世界の全消費量の39%を占めている。
他方,主要消費国の消費状況を65年と71年において比較してみると,先発工
業国のアメリカ,イギリス等は近年において資源消費の伸び率が鈍化してきた
ため,その消費シェアを
徐々に抵下させている
が,これら各国に比べ後
発工業国であるわが国の
消費伸び率は目覚しいも
のがあり,世界に占める
わが国のシェアは年々急
速な拡大を示している。
について1人当りのエネ
ルギー資源消費量の推移
を61年を基準として指数
で示したものであるが,
主要先進諸国に比較して
もわが国の消費の伸びは
きわだっている。
このような資瀬消費シェアの高まりにつれて,わが国はいまや単なる多数の
なかの一購入国としての立場にとどまるものではなく,わが国の政策や企業の
行動が直接資源保有国,他の消費国あるいは生産者に大きな影響を与える立場
に変ってきている。
他方,供給面については,これまでのところ比較的順調な伸びを示してき
た。
しかし最近では,資源消費の増加ペースの余りの速さに,近い将来資源が枯
渇状態に陥るのではないかとの危惧が一部で表明されるに至っている。資源埋
蔵量には不確定要素が多く,また技術革新等による解決が十分期待されるもの
の,こうした懸念もあながち杞憂とは言い得ず,その時期と軽度はともかく,
いずれあり得べき問題との想定のもとに今から真剣に取り組んでおく必要があ
ろう。
次に,主要国の各種粗原料資瀬生産量の世界生産に占めるシェアをみてみる
と,第U−1−18表のとおり粗原料資源の生産は特定国に集中して行なわれてお
り,アメリカ,ソ連,カナダ,オーストラリアとともに,かなりの数の発展途
上国が上位を占めている。他方,製品資源の生産については,やはり特定国へ
の集中がみられるものの,粗原料資源の場合とは異なりアメリカ,ソ連,日
本,西ドイツ等の先進諸国が生産の中心をなしている(第U−1−19表)。
このように粗原料資源の生産において発展途上国が大きなシェアを占めてい
るにもかかわらず,資源の加工が少数の先進国に集中し,かつ前述のように資
済の消費においても同様の傾向がみられるという非対照性が,資源保有国と資
瀦消費国との間に種々のあつれきを生じさせ,また最近における資源保有国の
ナショナリズムの台頭をもたらした一つの大きな背景をなしているものといえ
よう。、
(2)資源保有国と国際大資本
これまで資源保有国たる発展途上国は,国際大資本の持つ優れた技術と資本
力に自国の資源開発を委ね,自らは利権料を受取るという立場に甘んじてき
た。
しかし,近年の発展途上国における経済ナショナリズムの高まりは,従来の
ような国際大資本との関係を不満とし,利潤分配率の引上げ,事業参加あるい
は国有化などへの要請を強めてきた。こうした様々の主張は,自国の開発の利
益のためにその天然資源に対する主権を行使することは不可譲の権利であるこ
とをうたった1962年の国連における恒久主権の宣言を重要なよりどころとして
いる。このような主張は資源保有国間に幅広い共感を呼び,1960年のOPEC
(石油輸出国機構)の結成,1968年のCIPEC(銅輸出国政府同協議会)の
結成等にみられる資源ごとの組織的な連携を強化するとともに,国連,UNC
TAD等国際機関の場において協同歩調をとりつつ先進国に対抗する等の動き
が顕著になってきている。このように60年代に本格化した資源保有国の攻勢
は,60年代末から70年代初頭にかけてチリにおける銅山の国有化(70年),テヘ
ラン協定およびトリポリ協定の締結(71年)等の形で着実に実を結びつつあ
り,それに伴って資源保有国の要請も引取り価格の引上げ,生産調整,現地加
工化,事業参加,国有化などへと一層多様化してきている。これらの動きは,
発展途上国が自ら保有する資源を経済の自立的発展にとって最大の戦略的資産
と考え,その計画的かつ効果的な利用のために,長期にわたって保存し管理し
ようと意図していることの現れにほかならない。
一方,これまで国際寡占体制に依拠しつつ強大化の一途をたどってきた国際
大資本の側にも,このような資済保有国の攻勢の激化に対応してその地位に変
化の兆しが生じつつある。
その第1は,資源生産シェアに象徴される支配カの変化である。国際大資本
の世界生産に占めるシェアの推移をみると,従来,強大なシェアを誇ってきた
が,近年に至り資源保有国の国有化等により低下の兆しが現われつつある。
すなわち,第U−1−20表に示すとおり銅においては67年の41.8%から71年の
36.2%へ,アルミニウムにおいても65年の72.6%から71年の65.9%へと,それ
ぞれその生産シェアを低下させている.また石油については,いまだ大きなシ
ェアの低下はみられないものの,70年代に入ってアルジェリアの対英米系資本
およびCFP(フランス石油),リビアの対BP くブリティシュ・ペトロリア
ム),イラクの対IPC(イラク石油)に対する参入等が具体化しており,今後
国際大資本の生産シェアは低下していくものと考えられる。
国際大資本の地位の変化の第2の兆侯としては収益力の低下があげられる。
係のアメリカ5社が平均で70年にやや好転したのを例外として,ほとんどの国
際大資本についてその低下がみられる。これは資源保有国の利権料や税率の引
上げ等により,資源保有
国側の利益配分が増加レ
たことによるところが大
きいと着えられる。
以上の変化に加えて
最近では国際大資本が投
資態度を変化させてきて
いることが注目される。
すなわち,一方ではテヘ
ラン協定にみられるよう
に資済保有国の採掘部門
における利益分配率引上
げ要求により,従来のよ
うな高い利益が期待でき
なくなった結果,国際大資本は投資の重点を精製・加工・販売部門へ移行させ
る傾向にあり,また他方では資源の有限性,エネルギー需要の多様化等の要因
も加わって,対象資源の多様化を図る動きがみられる。
以上のような資源保有国の台頭に伴う国際大資本の地位の変化は,世界の資
源供給体制を流動化させる要因をはらむものであり,特に海外からの長期安定
的な資源供給の確保を重要課題とするわが国としては,これに対する適切な対
処が急務となっている。
2.わが西の当面する課題と対応
最近に至るまでわが国における資源問題の核心は,必要量の確保および低廉
性の維持というもっぱら供給面からする要請に集約されていた。これは,これ
までのわが国の資源消費国としての地位や,国際資済情勢にてらして,ある意
味では合理性をもっていたといえるが,近年における内外情勢の推移は資源に
関する問題への対応をより多面的なものとする必要性を高めつつある。すなわ
ち,まず第1に供給面については,わが国の資源消費シェアの高まりおよび世
界的資源情勢の流動化により,低廉安定的必要量の確保というわが国中心の間
題意識のみでは不十分となり,資源の安定的確保が依然重要な課題であること
にかわりはないにしても,他面,諸外国の要請にいかに応え,また諸外国に与
えるイクパクトをいかに緩和するかといった資源供給国および他の消費国への
配慮をも伴った調達方式が要請されるに至っている。
また第2には,これまで資瀕問題のいわば与件とされていた需要面,消費面
の問題についても,その規模および資源肖費のあり方について,生活環境の保
全の観点から多面的な配慮が要請されている。
このようにわが国の資源問題は複雑化の度合を強めているが,以下では,国
際資源情勢への対応と国内環境問題への対応という2つの観点から,問題の所
在と対応の方向を探ってみることとする。
(1)流動化する国際資源情勢への対応
国内資済供給力の乏しいわが国は,経済発展に伴う資源需要の増大につれて
資源の海外依存度を著しく高めてきている。第U−1−21表にみるように71年度
においては,比較的国内供給力のある鉛,亜鉛においても50%をこえており,
とくに主たるエネルギー源である原油にあっては99.7%を海外に依存するに至
っている。
入依存度を61年と70年の2時点において比較したものであるが,これによれば
各国とも例外なく依存度を高めているなかで,とくにわが国の揚合依存度の上
昇スピードが速く,また70年の依存度は94.3%とずばぬけて高いことが目立っ
ている。その結果,世界の資源輸入に占めるわが国のシェアは急速に高まって
おり,またその輸入量も巨大化しつつあるが,とくに第U−1−23表にみられる
ように,発展途上国のうちにはその主要資源の供給先として輸出の大半をわが
国に依存している国が多く,このことは世界の資源市場におけるわが国の影響
力がいかに大きいかを示す反面,資源供給国側の動向いかんがわが国に与える
衝撃もまたきわめて大きいことを意味している。
次に,このような特色をもつわが国の資源調達に今後重大な影響を及ぼすと
考えられる国際情勢の進展状況についてみてみよう。
最近における国際資源情勢の流動化を示す事象としてまず第1にあげられる
のは,すでに述べたOPEC諸国の動向に象徴されるナショナリズムの台頭
と,それに伴う国際大資
本の相対的地位の低下で
ある。
石油の例にみられるよ
うに,わが国は資源輸入
のかなりの部分を国際大
資本からの供給に仰いで
いるが,それだけに最近
における国際大資本と資
源保有国との力関係の転
回は,資源の輸入価格上
昇や安定的供給の阻害等
の形で,わが国に少なからぬ影響を及ぼすものと思われる。
である。
近年アメリカではエネルギー資源の自給率の低下と,これに伴う海外への依
存度の上昇(特に石油)という傾向がみられ,先般の大統領エネルギー教書に
おいても原油の輸入数量制限の撤廃,国内自給度の向上等の諸措置がうたわれ
ているが,当面,アメリカが中近東への輸入依存度を高める方向に進むとすれ
ば,従来から中近東への依存度の高いわが国や西ヨーロッパ諸国あるいは最近
中東原油への接近をはかりつつあるソ連等との間に石油確保をめぐる競合関係
が生ずる懸念もないとは言えない。
このような国際資源環境の推移に対してわが国はいかに行動すべきであろう
か。以下に今後必要と考えられる対処の方向を示してみよう。
まず第1には,わが国自らも資源開発に伴うリスクを負担しつつ融資開発,
開発輸入を積極的に推進することにより,世界の資源供給力の拡大に寄与すぺ
きである。 .
従来,わが国の資源確保はいわゆる単純買鉱方式を主体としてきたが,資源
輸入の規模が著しく巨大化した今日,このような方式のみに依存していては安
定的供給は望み得ず,また,すでに述べたような世界情勢の下では,開発リス
クを他国まかせにしたままその成果を享受するという行き方は到底容認される
ところではない。
このような観点からわが国においても既に60年代後半以降,鉱業部門への海
外投資が活発化しはじめ,71年には全海外投資残高の30%を占めるに至ってい
る。
ただ開発地点の奥地化,開発受入れ国のインフラストラクチヤー整備の要請
等により,最近,海外資源開発に要する資金は一層巨額化する傾向にあり,今
後,必要な安定的資金を確保することが重要な課題となろう。
近年,発展途上国のみ
ならずカナダ,オースト
ラリア等先進国も含めた
資源保有国では,現地に
おける工業化の推進,雇
用および所得の増大など
の観点からわが国をはじ
め主要資源輸入国に対
し,現地加工化の要請を
高めつつある。
これに対しわが国はこ
れまでのところ第U−1−
24表にみられるようにア
ルミニウムを除き,ほと
んどの主要鉱物資源につ
いて5割以上を鉱石で輸
入しており,アメリカ,
西ドイツ,フランス等他の先進工業国に比べ粗原料輸入,国内加工というパタ
ーンが特に顕著となっている。また,わが国自身の問題としても,国内立地上
の制約等から資源輸入の高加工度化が要請されているところであり,今後はこ
うした資源保有国の現地加工化の要請に前向きに対処していく必要があろう。
の協調関係の維持と推進である。
まず資源保有国との関係においては,従来のような低廉安定供給の確保とい
った視点のみにとどまらず,わが国の行動が現地国の経済に及ぼす影響につい
ても十分な配慮を払い,わが国の景気変動に伴う輸入規模の乱高下を防ぐとと
もに,極力現地加工に努めて,現地での付加価値の増大,雇用機会の拡大に協
力すべきであろう。また資源保有国に対する開発投資を行なうに際しては,現
地資本との共同開発方式をとるなど開発成果の現地への還元をはかり,あわせ
てインフラストラクチヤーの整備に対する要請にもできるだけ応えて行く必要
があろう。
また今後とも資源供給者として重要な地位を占めると予想される国際大資本
との関係においては,海外資源開発推進のパートナーとしてこれまでの協調関
係を維持していく必要があることには変りないが,他方,ソ連等社会主義諸国
における共同開発等を通じて購入先の分散化をはかり,国際大資本に対する交
渉力を強める努力を払っていくべきであろう。
また資源消費国との関係においては,必要資源の長期安定確保は独りわが国
のみならず先進工業国共通の課題であることを考えれば,今後OECD等の場
で相互の話合いの機会をふやしていくことが必要であろう。また資源開発に際
して他の消費国との共同開発方式を目指すことは,競合を避け協調関係を維持
増進させていく上で効果が大きいと考えられる。
属など一部の資源価格は世界需給の変動に敏感であるが,これら資源の国際市
況高騰に伴う国内物価への影響は著しく大きい。また国際情勢の動向いかんで
は供給が一時的に混乱する可能性もないとはいえず,この意味からも備蓄の推
進が必要である。さらに適切な備蓄対策の推進は,わが国景気動向に伴う資源
輸入量の大幅な変動をある程度緩和し,資源輸出国の経済に不当な悪影響を及
ぱすことを防ぐ上でも有効であろう。
すでにみたようにわが国の場合,主要資源の供給を特定地域に集中して依存
している状況にあるが,このような状態はかねてからわが国資源供給の安定確
保の見地から改善を迫られており,また資源保有国側からみてもわが国が特定
地域にあまりに多くの資源供給を仰ぐことは経済の一国偏重をもたらすなど好
ましくない影響を及ぼすと考えられる。
したがって今後は新規輸入先の開拓に努めるとともに,海外資源開発を行な、
うに際して供給源の分散という要請に十分な配慮を払う必要があろう。とくに
従来資源依存度の低かったソ連,中国については,開発資材の供給,技術協力,
開発事業への参加等を通じてこれらの国の資源開発政策に貢献しつつ,新たな
供給源としての可能性を高めていくべきであろう。
例えば,海底に賦存するマンガン瘤の開発,エネルギー資源については,原
子力利用の促進,大陽熱・地熱の研究開発利用,オイルシュール,タールサン
ドの開発利用等があげられ,現在,いくっかのものは実用化段階に入りつつあ
る。
これらの研究投資,初期投資には大きな資金が必要であるが,資済の供給力
増大の観点から研究開発の助成,推進が必要であろう。
(2)環境問題への対応
わが国における経済の高度成長と産業構造の重化学工業化の進展は,すでに
述べたようにわが国の資源消費量の急速な増大をもたらし,これがわが国の高
密度社会という環境下において深刻な立地環境問題を引き起す結果となった。
具体的には,資源の生産段階から生ずる地盤沈下,廃滓の流出や大気,水質の
汚染を引き起しており,とくに硫黄酸化物による大気汚染の問題は資源需要の
量的拡大に加えて大型コンビナートの出現による資源の集中的な消費などによ
り,いまや重大な社会問題となっている。
このような環境問題の深刻化の反面,資源消費の絶対量は,経済発展と国民
生活水準の維持向上のためにますます増大していくものと思われる。このよう
ななかで良好な環境を保持して行くためにはどのような対応が必要であろう
か。
その第1は低公害,無公害資源の確保である。とくにエネルギー資深の低硫
黄化に積極的に努める必要があり,その手段としては,@低硫黄原重油の使用,
A直接脱硫装置,間接脱硫装置等の設置,B天然ガスの導入等があげられる。
これらの中で低硫黄原油の確保のためには,その積極的な開発を推進していく
必要がある。第U−1−25表は硫黄含有率別にみた世界原油埋蔵量を示したもの
である。これによれば低硫黄原油は世界の原油埋蔵量の3割程度を占めている
にすぎない。また原油埋蔵量の約6割を占め,わが国輸入原油の60%程度を依
存している中東地域における低硫黄原油の埋蔵量は総量のわずか9%程度を占
めているにすぎない。
このようななかで,今後わが国が低硫黄原油の開発を推進するにあたって有
望とみられる地域としては,西アフリカ,インドネシアを中心とする東南アジ
ア,オセアニア等があげられる。
しかしながら,世界的な環境問題の深刻化に伴い,低硫黄原油の開発には諸
外国との競合関係が生ずる等の困難も予想されるところであり,わが国としで
は諸外国との国際協調にも十分配慮しつつ開発を進める努力が必要であろう。
このように燃料供給の段階において積極的な努力が必要であるが,供給面で
の低硫黄化には自から限界があるので,今後消費段階においても排脱硫の強化
を図ることが重要であろう。この面では,重油の脱硫黄化装置が67年度から使
用されており,第U−1−26表に示すように71年度末におけるわが国の脱硫能力
は1日当り約50万バーレルに達しており,73年度末には1日当り80万バーレル
になるものと見込まれている。
また天然ガスについては,公害規制の強化,他の低硫黄化手段とのコスト比
較の推移などとの関連において,今後無公害エネルギー資源の一つとして需要
が増大して行くと予想されるが現状においては輸送の困難性,低硫黄化原油な
どとの比較コスト等の問題のため,エネルギー資源として十分活用されている
とはいえず,今後LNG(液化天然ガス)タンカー輸送コストの低減等のため
の技術開発の促進,スケールメリットを享受し得るに十分な供給体制の整備を
図るなどLNGの開発,導入体制の確立に努める必要があろう。
その他,環境問題への対応として基本的に重要なのは技術開発の推進であ
る。
世界有数の高密度社会という特異な環境の下にあるわが国としては,自らの
イニシアティブにおいて,世界にさきがけて新しい無公害エネルギーの開発,
省資源技術,資源処理技術等の開発に格段の努力を傾注すべきであろう。
なお,資源の現地加工化と輸入の高加度化の促進が経済協力および合理的な
国際分業の観点から必要であることについては先にふれたとおりであるが,国
内の環境問題への対応としてもこれを促進する必要があろう。
以上資源供給の安定的確保および環境問題に対するわが国の対応を述べた
が,より基本的な問題としては,これまでのわが国の産業構造が資源多消費型
であることが指摘されよう。
たわが国の産業横造をアメリカ,西ドイツと比較したものである。これによれ
ば,わが国の産業構造はアメリカ,西ドイツに比べ,資源多消費型産業のウェ
イトが高く,資涙少消費型産業のウェイトが低い産業構造となっている。
したがって,今後わが国が内外の資源問題に適切に対処して行くためには,
これまで述べた個々の対応を進めると同時に,各産業における生産工程の改
善,加工度の引上げなどによって一層の資源節約に努めることが重要であり,
また,より長期的には,産業構造自体についても加工度の高い最終財産業等を
中心とする資源少消費型産業のウェイトを高める方向に転換させていくことが
必要であろう。