経済産業省
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人を知る(総合職)職員を知る:松田 洋平

松田 洋平

総合職

入省:平成13年入省
所属:経済産業政策局 企業行動課

成長戦略の根幹を
成す法人税改革

日本経済を成長軌道に乗せるために。

松田 洋平 写真1

「終わった国」?をもう一度、成長する国へ

留学中、英国および中国の大学院で「安全保障政策と経済政策のリンケージ」の研究をするなかで、国際社会での日本の評価が、深刻なレベルにまで凋落している現実を幾度となく突きつけられました。アングロサクソンの流儀で言えば、日本は経済・安全保障を動かす基本的ロジックを無視した非合理的な政策選択を続ける国として、「超大国化」に邁進する中国と比較し、完全に「終わった国」として扱われていました。しかし、こうした日本に対する認識に少しずつ変化をもたらしたのは、「アベノミクス」と言われる一連の経済政策でした。日本が本質的な問題に目を向け、果敢に経済の立て直しをしようとしているという認識が国際的にも広がり始めたのです。こうした中で、私は、アベノミクスの「3本目の矢」である成長戦略の一部である法人税の大改革に携わる機会を与えられました。

先輩たちのバトンをつなぐ仕事

時代の状況に応じて、ミクロの企業行動を変革しうる税制度を措置し、それを産業・経済全体への成長につなげるべく、「志」と「実現力」溢れた先輩たちが、これまでも優れた税制度を作り上げてきました。例えば、製造業の空洞化が叫ばれる中、日本に研究拠点やマザー工場を立地させ、日本をイノベーション拠点として強化する研究開発税制。また、日本企業が海外で稼いだ金を日本に還流させ、GNIを高めていく海外子会社受取配当益金不算入制度など。こうした制度は、すべて短期間で実現したものではありません。企業行動課の諸先輩が、調査・企画をし、世の中へ地道にその必要性を訴え、数年かけて、バトンを渡しながら実現してきたものです。私の課題は、経済がグローバル化する中で、企業が国内外のどこに立地するかの判断に大きな影響を与える法人実効税率の引き下げでした。欧州各国、アジア各国が引き下げを行う中で、日本の法人実効税率は約35%と高止まりしていました。加えて、アベノミクスに期待する内外の企業・投資家から法人実効税率の引き下げが、成長戦略に位置づけられるか否かが大きな鍵と認識されていました。

「骨太の方針」を巡るチームの総力戦

まず、携わったのは、2014年6月にとりまとめられた「骨太の方針」において、法人実効税率の引き下げを明記するための取り組みでした。通常年末に決定される税制改正について、6月の時点で、「骨太の方針」に明記されることは、異例中の異例であったこともあり、余計に国内外の注目が集まっていました。私は、こうした業務推進にあたって、先輩・仲間たちの戦略的思考力、政策実現性、チーム力の強さを実感することになりました。関係者のスタンスをくまなく把握し、ときに裏表で様々な働きかけを行い、一歩もひるまない省内幹部たちの姿勢、刻々と変化する政治情勢の中でデータに基づき世の中に説得を続ける上司の情熱。そして、苦しいときでも、少しでも正しく価値あるデータ・資料をまとめようとする課員の努力に囲まれ、私自身はどうすれば課、チームとしてのパフォーマンスを最大化し、政策実現につなげていけるのかを考え続ける毎日でした。今後の政府方針の根幹に関わる「骨太の方針」では最終局面まで、一言一句の調整が行われましたが、結果、「骨太の方針」本文に、「日本の立地競争力を強化等するため、法人実効税率を国際的に遜色ない水準に引き下げること、数年で20%台まで引き下げることを目指す。そのための財源は課税ベースの拡大等により確保する」という方針が盛り込まれました。経済成長というロジックと、財政健全化というロジックの双方が成立しうるラインで政府としての決定が成された瞬間でした。

  • 松田 洋平 写真2
  • 松田 洋平 写真3
 

税制改革を超えて、政策パッケージにつなげていく

次の山場は、「骨太の方針」で示された政府方針を実現する年末の与党税制改正大綱の決定に向けたプロセスです。ひとつ目は、財務省などとの折衝を通じ、できるだけ早期により高いレベルの法人実行税率の引き下げを実現することであり、ふたつ目は、役割を終えた政策減税の廃止・縮減を率先して行うことです。ときには一部企業に厳しい見直しも実行しました。こうしたなかで、ひとつ記憶に残る場面がありました。ある省庁の先輩と法人税改革の具体化に向けた議論をしているなかで、「法人実効税率引き下げが重要なのはよく分かる。ただ、税率を引き下げた結果、企業が本当に前向きな投資や賃上げを行って経済が良くなるまで、経済産業省が本当に汗をかくのかが試されている」と言われたことです。こうした政府・与党内にあった問題意識を受けて、経済産業省も関係省庁と連携し、法人税改革などによって企業が活動するための事業環境を整備する一方で、企業の稼ぐ力を高めるためのコーポレートガバナンスの強化や、政労使会議での取り組みを通じて、企業に積極的な設備投資や、賃上げを促す仕組みを構築していきました。いわば、法人税改革を起点として、政策パッケージが組まれ、これが、更なる経済の好循環を生み出すための駆動力になっていったのです。こうした政策パッケージが組まれていくことと並行し、年末の与党税制改正プロセスにおいて、2016年度には約3.3%引き下げ、さらに20%台までの引き下げを目指すなどの法人税改革の絵姿が決定されました。

 

未来を見据え、変化する現場を捉える

税制は国の姿を決めていくと言われています。他方で、経済・産業・社会の実態は、グローバル化、少子高齢化、アジア・新興国との競争など刻々と変化しています。そうした中で、経済産業省として、企業のあるべき税制の絵姿を描き実現していくという大きな役割はこれからも続いていくのだと思います。

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