外部有識者からの経済産業省へのメッセージ
京都大学 松本 紘総長
経済産業省の新規入省者に対するメッセージ
(松本 紘 京都大学総長)
地球規模的な課題と、行政の役割
人類は、地球規模的な課題に直面。その原因は、科学技術の暴走ではなく、人間の欲の暴走。問題の共通点は3つ:
1.問題が複合的であること
2.犯人不在。複合的である故、誰が犯人なのか、何が原因なのかがわからない。
3.地球規模
こうした問題は、一人一人が自覚(一切即一)と責任(自鍛自恃)を持つことが必要。欲の暴走を押さえる「科学技術」と「こころ・精神文化」の調和が必要。「日本的調和のMMKのこころと共生(ともいき)の哲学」が重要。
※MMKのこころ
Mottaiーnai 節約 eco
Mittomoーnai 矜恃、知恥 pride
Katajikeーnai 感謝 appreciation
俯瞰的にみて複合的なアプローチで解決に導けるのが行政。特に、産業と科学技術を司る経済産業行政の役割は大きい。このような自覚を持って仕事に取り組んでもらいたい。
行政の心構え
科学技術・経済・政治は以下のようなアプローチの違いがある。
“Science& Technology” tells us what we can do.(何ができるかを示す)
“Economics” tells us on what we should invest.(何に投資したらよいかを示す)
“Politics & Strategy” tells us what we will do.(何を行うかの決意を示す)
行政はwillというところをしっかり支えてほしい。強い意思が感じられなければならない。政治家は方向を決めるが、しっかりとした官僚機構がなければ動かない。
最澄のことばに
● 能く言ひて、行なふこと能わざるは国の師なり
● 能く行ひて、言ふこと能わざるは国の用なり
● 能く行ひて、能く言ふは国の寶なり
とある。多くの行政府の人々は「能く行ひて、言ふこと能わざるは」かもしれないが、みなさんには、「能く行ひて、能く言ふ」となってもらいたい。
また、「自鍛自恃」を旨として、試練や困難に出会った時、困難を厭わず、乗り越えて、自らを鍛えるチャンスと捉え、「誇り高き人」を目標としてほしい。
まず意思を持ち 心を磨き、志を立てる。目標を定めたら、全力で進む。やり遂げようとする気迫と知力、それに耐えうる体力を身につけてもらいたい。
国際社会では、主張を論理的に組み立て、様々な人を説得しなければならない。その力を決めるのは、基礎的な能力と人間としての裾野の広さ。
最後に、「礌礌落落、日月皎然 」(人が事業をなそうとするときは、大きな心を持って、小さなことにくよくよせず、太陽や月のように後ろ暗い所なく、明るく潔い態度で臨むべし)という『晋書』の言葉を贈りたい。
