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政策を知る 特許庁

誰がための“知財”か

執筆者
永井翔吾:平成25年入省 特許庁制度審議室 法令企画係長

世界最高の知財立国

平成14年2月、小泉内閣総理大臣(当時)の施政方針演説において「知財立国宣言」がなされました。特許庁は、「世界最高の知財立国」の実現を目指し、全力を挙げて取り組んでおり、専売特許条例(現行の特許法)が制定されてから130年という節目の本年、その決意を新たにしているところです。

「世界最高の知財立国」を実現するためには、イノベーションを促進する知財政策の策定と的確な権利を迅速に付与するための審査体制を強化することが必要不可欠です。知財政策の策定と審査体制の強化、これが特許庁の二大ミッションといえます。

新たなるブランド戦略の策定

平成27年4月1日、「音」や「色彩のみ」といった新たなる商標権の出願が開始されました。当室が準備を進めてきた「特許法等の一部を改正する法律(平成26年法律第36号)」が施行を迎え、この世に産声を上げたのです。

近時、アップルやグーグルに代表されるように、技術や商品そのものだけでなく、企業イメージを強化・向上させるブランド戦略が肝要となっていることに疑いはないでしょう。こうした世界的な潮流を踏まえ、我が国企業がより柔軟で大胆なブランド戦略を描き、グローバル競争で打ち勝っていく一助とすべく、「音」や「色彩のみ」についても権利化、マーケティングに活用できるようにしたのが、この改正です。

施行初日だけで数百件にも及ぶ出願がなされたことや多くのメディアで報道されたことから分かるように、この改正は大いなる期待をもって迎えられ、今まさに、我が国企業の新たなブランド戦略の一翼を担おうとしています。

世界をリードする我が国の審査体制

平成26年3月、特許庁は、特許審査着手までの平均期間を11か月にまで短縮し、特許審査の速さは世界最速レベルとなりました。また、日本の提案で2006年に日米間で開始された特許審査ハイウェイ(各国間での特許審査を簡便かつ迅速に行う枠組み)も、本年では30カ国を巻き込むまでになり、特許審査制度におけるプレゼンスを発揮しています。

各国ごとに審査体制が異なる特許制度ですが、我が国特許庁が世界の審査体制をリードし、ジャパンスタンダードを作ることで、グローバルに活動する我が国企業の国際事業展開を強力に支援しています。

誰がための“知財”か

「世界最高の知財立国」を実現するための知財政策の策定と審査体制の強化、この二大ミッションの重要性に疑いの余地はないでしょう。しかし、ほんとうに“知的財産権はイノベーションを促進しているのでしょうか。経済成長に貢献しているのでしょうか。”。実は、知的財産権とイノベーション促進との因果関係を明快に分析した研究結果は見当たりません。特許権を強化すればするほどパテントトロール(特許制度を悪用する人々や企業)が利益を得て増大していくでしょう。他方で、単に特許を大量に取得しているだけでイノベーティブな企業になれる訳ではないでしょう。

“誰がための知財か”。至極明快なようで実は最も難しく本質的な問いです。すぐに答えは出ないかもしれませんし、時代によってその答えも変わるでしょう。特許庁では、知財政策の最前線で奔走しながらも、こうした自問自答を常に繰り返して日本経済のグラウンドデザインを描いています。

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