経済産業省
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政策を知る 製造産業局

企業の枠を超えて ~ ものづくり支援の現場から ~

執筆者
平松淳:平成20年入省 自動車課 課長補佐
和田有平:平成21年入省 化学課 課長補佐
八木春香:平成23年入省 紙業課 係長

市場経済の下で個々の企業がしのぎを削る中で、産業政策の役割とは何なのだろうか?日本のものづくりを所管している我々は常にこうした命題に直面しています。

時として市場は失敗します。現場レベルでこうした市場の失敗を補正し、経済システムをデザインする、これが我々のミッションです。例えば、グローバル化が進展し、国際競争が激しさを増す中で、日本の国際競争力を最大化するために、政府が、企業が互いに協調すべき領域を見極め、企業の枠を超えたあるべき未来を描き、率先して社会を変革していくことが必要になります。我々は、常に現場の声に耳を傾けながら日本のものづくりのあるべき姿を考え、その実現のために日々チャレンジを続けています。

オールジャパンで世界を変える

車が自ら状況を判断し的確な走行で目的地へ向かう「自動走行」。CMなどでお馴染みの人も多いのではないでしょうか?快適な移動を実現するだけでなく、渋滞の緩和、省エネ・CO2の低減、何より交通事故の削減といった社会問題を解決する技術として大きな期待が寄せられています。

日本の自動車メーカーは、各社、様々な研究開発を進め、世界をリードしています。一方、画像認識、セキュリティ、高精度の地図の作成など技術領域は広範、国際標準の策定や市民の理解醸成、交通ルールなどの課題も山積み。1社だけでは到底対応することができない状況です。自動走行の取組が極めて活発な欧米勢に対抗するためには、自動車業界内の連携はもちろん、異業種や大学等との連携も含めて、オールジャパンで体制を組んでいく必要があります。

目下、私たちは、自動車メーカーの担当者や大学教授等と「何が競争領域で、何が協調領域なのか?」喧々諤々議論をしています。当然、各社の取組の延長線上にはビジネスがありますから、協調すべき分野を特定するのは簡単ではありませんが、日本が引き続き世界をリードするために必要なチャレンジです。

世界では毎年120万人以上の方が交通事故で命を落とし、事故原因の9割以上が人為的ミスと言われています。私たちが進めているオールジャパンの取組が交通事故のない世界への一歩になる確信しています。

国益を見据え、業界を全体最適に導く

私の担当する石油化学産業は、自動車やエレクトロニクスといった競争力のある産業に高品質な素材を提供し、日本のものづくりを支えていますが、将来を見通すと、内需の減少に加え、シェールガス由来の安価な素材がアジア市場へ流入することが見込まれるなど、非常に厳しい状況です。また、製造設備は、戦後1960年代に建設されたものが多く、古くて規模が小さいため、韓国や中国の製造設備と比べても見劣りします。このままでは、日本の石油化学産業が競争力を失い、日本のものづくり全体を揺るがし、国益を損なうおそれがあります。

そこで、私は、日本の石油化学産業が危機に陥る恐れがあるという調査結果を取りまとめて公表するとともに、国際競争力を確保するために重要なポイントである省エネに対して支援策の拡充を図りました。また、業界や金融機関、石油化学コンビナートが立地する地方自治体といったステークホルダーに対しても状況を正確に認識してもらい、一体となって支援策を構築する動きを始めています。ある地方自治体は、立地企業の競争力を高めるべく、岩盤規制の合理化を提案するなどの行動に出ており、私の関わった政策で、日本のものづくりが全体最適に向かって歩み始めたことを、肌身を持って感じています。

素材革命・セルロースナノファイバー

セルロースナノファイバーは、植物を原材料とする、鉄の5倍の強さで5分の1の軽さの新素材です。この素材は、国土の7割が森林である日本にとって、非常に優位性が高い。

セルロースナノファイバーで世界にイノベーションを起こすため、まず私たちは、製紙業界の利害を調整し、ロードマップを作成し、国として進むべき方向を示しました。

次に私たちは、オールジャパン体制でのコンソーシアムを政府主導で設立しました。「素材は、いくら技術が優れていても、使い道がなければ世に出て行かない」。本コンソーシアムでは、製紙業界をはじめとする素材提供側に加え、自動車・家電等の素材使用側の参加を得て、企業間のマッチング等を実施しました。産業界にも意義が認められ、設立後1年で140社以上が参加する非常に大きな組織に急成長しました。

現在、私たちは、さらにセルロースナノファイバーを世界へ普及させるため、国際標準化等の仕組みづくりを戦略的に仕掛けているところです。

これらの政策は、机の上ではなく、全国の工場や研究所に足を運び、大学の教授陣や企業トップと、日々熱い議論を交わすことで生み出されてきました。セルロースナノファイバーで日本発のイノベーションを起こせるよう、これからも私たちは挑戦を続けます。

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