キャッシュされたコピー http://www.meti.go.jp/committee/chuki/pdf/021_07_02.pdf.

事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会 中間報告
Page 1
事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会
中間報告
平成26年7月
事業承継を中心とする
事業活性化に関する検討会
【資料7-2】

Page 2
2
目次
序章 .......................................................................... 3
第一章 事業承継等をめぐる現状 ................................................ 4
1.中小企業・小規模事業者における事業承継の重要性 .......................... 4
(1)中小企業・小規模事業者の意義 ........................................ 4
(2)個人事業主の意義 .................................................... 7
(3)事業承継の重要性 .................................................... 8
2.事業承継施策のこれまでの展開と最近の動向 ................................ 9
(1)相続税・贈与税の負担軽減のための施策の変遷 .......................... 9
(2)経営承継円滑化法の制定、施行状況 ................................... 10
①遺留分に関する民法の特例 ............................................. 10
②金融支援措置 ......................................................... 14
事業承継税制 ......................................................... 17
(3)事業引継ぎ支援事業 ................................................. 24
(4)第2創業支援 ....................................................... 26
(5)廃業円滑化 ......................................................... 28
3.経営者の高齢化と後継ぎの多様化 ......................................... 30
(1)経営者の交代率の低迷と平均年齢の上昇 ............................... 30
(2)後継者不足問題 ..................................................... 32
(3)事業承継の形態の多様化 ............................................. 33
①親族内承継の課題 ..................................................... 35
②親族外承継の課題 ..................................................... 36
③個人事業主の課題 ..................................................... 38
④事業引継ぎの課題 ..................................................... 40
⑤第2創業の課題 ....................................................... 41
⑥廃業の課題 ........................................................... 42
第二章 検討会で提起された事業承継施策の論点 ................................. 43
1.中小会社 ............................................................... 43
2.個人事業主 ............................................................. 52
3.事業引継ぎ ............................................................. 53
4.第2創業支援 ........................................................... 55
5.廃業円滑化 ............................................................. 57
第三章 本検討会での議論を踏まえた今後の対応の方向性について ................. 58
おわりに ..................................................................... 62

Page 3
3
序章
中小企業・小規模事業者(注)の経営者の高齢化が進展している。中小企業・小規
模事業者の事業承継の円滑化は、事業の継続・発展を通じた地域経済の活力の維持
や雇用の確保等に資するものであり、極めて重要な政策課題である。
これまで、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(平成 20 年法律
第 33 号。以下「経営承継円滑化法」という。)の制定、非上場株式等についての相
続税・贈与税の納税猶予制度(以下「事業承継税制」という。)の創設(平成 21 年
度税制改正)など、事業承継の円滑化を支援する様々な措置が講じられてきたとこ
ろである。最近では、平成 25 年度税制改正において事業承継税制の要件について
相当な見直しが行われ、平成 27 年1月1日に施行される。
他方、経営承継円滑化法は附則第3条において、「施行後5年を経過した段階(平
成 25 年 10 月(一部は平成 26 年3月))で、経営承継円滑化法の施行状況につい
て検討を加え、必要があるときは所要の措置を講ずること」とされているところで
ある。
このため、最近の事業承継をめぐる状況の変化を踏まえつつ、事業承継の時期を
迎えている中小企業・小規模事業者の経営者が取り得る多様な選択肢について幅広
く検討し、事業承継円滑化のために講ずべき法律、税、その他の支援の在り方を討
議する「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会」を開催し、中小企業・
小規模事業者の事業承継に関する問題について、総合的な検討を行った。
本中間報告は、平成 26 年3月以降、4回にわたる検討の成果をまとめたもので
あり、今後の更なる検討の深化に向けての基礎となることを期待するものである。
(注)中小企業・小規模事業者の定義
中小企業基本法第2条
経営承継円滑化法政令
により拡大(※)
中小企業者
小規模企業者
資本金
従業員
従業員
資本金
従業員
製造業その他
3億円以下
300 人以下
20 人以下
3億円以下 900 人以下
卸売業
1億円以下
100 人以下
5人以下
小売業
5千万円以下
50 人以下
3億円以下 300 人以下
サービス業
100 人以下
5千万円以下 200 人以下
(※)下線部分を拡大。
又は
又は

Page 4
4
第一章 事業承継等をめぐる現状
1.中小企業・小規模事業者における事業承継の重要性
(1)中小企業・小規模事業者の意義
中小企業・小規模事業者の数は約 385 万社で我が国企業の 99.7%を占め、中
小企業の従業員数は約 3,216 万人で我が国雇用の約7割を占めている(注1)
また、国民総生産の約2割を占める製造業においても、中小企業・小規模事
業者は 40.6 兆円(注2)と製造業付加価値の5割を超えており、我が国経済を支
える存在である。
とりわけ、地方経済において中小企業・小規模事業者の果たす役割は大きく
なっており、企業規模別の雇用者数を三大都市圏と三大都市圏以外の地域で比
較すると、三大都市圏以外の地域において、雇用者数における中小企業比率が
高くなっている(図1参照)。
図1:三大都市圏中心市が所在しない道県とそれ以外の都府県における規模別の常用
雇用者・従業者割合の比較
(出典)経済センサス-基礎調査(2009)
(備考)三大都市圏を関東大都市圏、中京大都市圏、京阪神大都市圏、三大都市圏中心市が所
在する都府県を埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県としてい
る。常用雇用者・従業者の数は、本社の所在する都道府県に計上している。
また、小規模事業者の商品の販売地域は、同一市町村から同一県内が5割以
上を占めており、中小企業・小規模事業者は、地域の雇用と需要を担い、その
生活基盤を支える役割を担っていることがうかがえる(図2参照)。
(注1)経済センサス-活動調査(2014 年)
(注2)2010 年工業統計表
29.9
15.4
53.9
38.5
16.2
46.1
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
三大都市圏中心市が所在しない道県
三大都市圏中心市が所在する都府県
(%)
小規模事業者
中規模企業
大企業
1,733万人
2,564万人

Page 5
5
図2:商品の販売地域
(出典)平成 24 年度中小企業基本実態調査
(備考)主な販売先を1つ選択する形式の設問に対して回答を求め、
当該回答をした企業の構成比を示している。
他方、中小企業・小規模事業者の数は減少しているため、雇用の場が失われ、各
地で進行する雇用者数の減少や地域経済の疲弊等に歯止めをかけることができず、
我が国経済全体が悪循環に陥ることも懸念される(図3参照)。
図3:中小企業の数の動向
(出典)中小企業政策審議会小規模企業基本政策小委員会第1回資料、
経済センサス-活動基本調査(2012)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
5人以下
6~20人 21~50人 51人以上
同一市町村
近隣市町村
同一県内
近隣都道府県
国内全域
海外
国内・海外問わず
0
300
600
1999年 2001年 2004年 2006年 2009年 2012年
小規模企業
小規模企業以外
(万社)
1999 年→2012 年
▲98.4 万社(▲20.4%)

Page 6
6
中小企業・小規模事業者を規模別・形態別にみると、中小会社の割合は全体の
42.1%、中小の個人事業主は 57.6%となっている(図4参照)。
雇用者数をみると、49.7%が中小会社に雇用され、16.4%が中小の個人事業主に
雇用されている(図5参照)。
図4:我が国の規模・形態別企業数 図5:我が国の規模・形態別雇用者数
(出典)中小企業白書 2013
(原出典)平成 21 年経済センサス-基礎調査、再編加工
(備考)非一次産業の企業ベースで集計、雇用者数は、会社
の常用雇用者数と個人事業主の従業者の合算。

Page 7
7
(2)個人事業主の意義
我が国の企業のうち、57.6%を個人事業主が占めるが、常用雇用者(主に正
社員・正職員)に占める割合は約 8.7%。個人事業主の数は減少傾向にあり、
2009 年では、1999 年と比べて約 77 万者(約 24%)減少しているものの(図
6参照)、小規模企業の約6割(63%)は個人事業主であり、我が国における
経済主体の重要な一翼を担う。特に雇用については、パート・アルバイト等を
含めた従業員数では、個人事業主の雇用の貢献度合いは高い。すなわち、個人
事業主は若者や女性を含む多様な人材に対して様々な価値観に基づく働き方を
提供し、地域社会における雇用を維持していると言える。こうしたことから、
個人事業主の経営の維持自体に、地域の生活基盤を支えるという社会的意義が
あると考えられる。
個人事業主の直面する事業経営上の課題は多岐にわたっているが、アンケー
トによれば、需要の停滞(売上の停滞・減少)、競争激化、後継者難が主に挙げ
られている。
小規模企業の6割を個人事業主が占めている中で、平成 26 年2月にとりま
とめられた「小規模企業の振興を図るための施策のあり方について」(小規模企
業基本政策小委員会報告書)においては、小規模事業者には、①国内外の新た
な需要の開拓、②創業等を通じた個人の能力の発揮、③地域経済への貢献、の
3つの役割があり、これらの企業にも光をあて、政策を届けていくことに重点
を置くことが必要であるとされている。また、こうした考え方に基づいて、第
186回通常国会において「小規模企業振興基本法」が成立し、今後、一層、
個人事業主を含む小規模事業者への政策支援が求められているところである。
図6:個人事業主の数の推移と個人事業主の減少割合
(者)
3,191,610
3,094,116
2,817,596
2,704,461
2,425,953
100.00%
96.95%
88.28%
84.74%
76.01%
0.00%
10.00%
20.00%
30.00%
40.00%
50.00%
60.00%
70.00%
80.00%
90.00%
100.00%
0
500,000
1,000,000
1,500,000
2,000,000
2,500,000
3,000,000
3,500,000
1999年
2001年
2004年
2006年
2009年
(出典)事業所・企業統計調査
平成21年経済センサス-基礎調査
(備考)非一次産業の企業ベースで集計。
1999年を100%として,各年度の
減少割合を算出。

Page 8
8
(3)事業承継の重要性
中小企業・小規模事業者は、地域での雇用を担うとともに、顧客や取引先と
の信頼関係を構築し、社会のニーズにきめ細かく応える商品やサービスの提供
を行うといった社会的な価値を生み出している。この価値を持続させていくた
めには、事業が円滑に次世代にバトンタッチされていくことが極めて重要であ
る。
創業 100 年を超える老舗企業の強みとして挙げられている「信用」、「伝統」、
「知名度」は、事業承継を重ね、事業を継続してきたからこそ培われているも
のであり、事業承継の重要性がうかがえる(図7参照)。
事業承継による経営者の世代交代によって、地域や社会に良い影響があった
と回答する中小企業・小規模事業者は6割を超えており、事業承継の意義は、
企業の存続はもとより、新たな経営者の手によって地域や社会と一層強く結び
ついていくことにあると考えられる(図8参照)。
図7:老舗企業の強み
(出典)帝国データバンク「百年続く企業の条件」(2009 年 9 月、朝日新聞出版)
図8:経営者の交代による地域・社会への影響
62.5%
37.5%
良い影響が
あった
良い影響は
なかった
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
地域の安心安全、福祉医療の充実
地域のコミュニティづくりや伝統文化の
継承
地域で生活する人々の生活の充足や質
の向上
地域産業の発展に貢献する財・サービ
ス・ノウハウの提供
事業利益の地域への還元
やりがいのある就業機会の提供
(出典)中小企業白書 2013 再編加工

Page 9
9
2.事業承継施策のこれまでの展開と最近の動向
中小企業・小規模事業者の事業承継円滑化については、これまで様々な施策が
講じられてきた。以下ではこれまでの取組の概略を振り返る。
(1)相続税・贈与税の負担軽減のための施策の変遷
会社形態を採用する我が国の中小企業・小規模事業者の多くは、所有と経営
が一致する同族会社であり、このような会社の事業承継は経営権の移転だけで
なく自社株式の移転を伴うことになる。このため、後継者が自社株式を取得し
た際に課される相続税・贈与税の負担が重いことが事業承継のボトルネックに
なりかねないことから、負担の軽減のために様々な税制措置等が講じられてき
た。
ここ 30 年の間でも、取引相場のない非上場株式の評価方法が数度にわたり
改正されたほか、平成 14 年には自社株式の相続税軽減の特例措置が実現し、
さらに平成 21 年度税制改正において「事業承継税制」が創設され、現在に至
っている(図9参照)。
図9:中小企業における事業承継に関連する措置

Page 10
10
(2)経営承継円滑化法の制定、施行状況
経営承継円滑化法は、①遺留分に関する民法の特例、②事業承継時の金融支
援措置、③事業承継税制の基本的枠組みを盛り込んだ事業承継円滑化に向けた
総合的支援策の基礎となる法律で、平成 20 年5月9日に国会において可決・
成立し、同年 10 月1日(遺留分に関する民法の特例に係る規定については平
成 21 年3月1日)から施行された。
以下では三つの支援策ごとに、その施行状況を概観する。
①遺留分に関する民法の特例(経営承継円滑化法第3~11条)
《制度の概要》
後継者が、遺留分権利者全員との合意の後、経済産業大臣の確認及び家庭裁判
所の許可を得ることを前提に、以下の2種類のいずれか一方又は双方(株式の一
部を除外合意し、残りを固定合意する)の民法特例の適用を受けることができる。
○生前贈与株式等を遺留分算定基礎財産から除外できる制度(除外合意)
先代経営者の生前に、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者
全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、先代経営者から
後継者へ贈与された自社株式その他一定の財産について、遺留分算定の基礎財
産から除外することができる。
これにより、事業継続に不可欠な自社株式等に係る遺留分減殺請求を未然に
防止することが可能になるとともに、後継者単独で家庭裁判所に申し立てるこ
とになるため、遺留分放棄制度と比べて後継者以外の者の手続は簡素化される。
図10:除外合意の例

Page 11
11
○生前贈与株式の評価額を予め固定できる制度(固定合意)
生前贈与後に株式価値が後継者の貢献により上昇した場合でも、遺留分の算
定に際しては相続開始時点の上昇後の評価で計算されてしまう。このため、経
済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について
家庭裁判所の許可を受けることで、遺留分の算定に際して、生前贈与株式の価
額を当該合意時の評価額で予め固定することができる。
これにより、後継者が株式価値の上昇分を保持できることになり、経営意欲
の阻害要因が排除できる。
図11:固定合意の例
図12:民法特例制度と遺留分放棄制度の比較

Page 12
12
《制度の利用状況》
民法特例の利用件数は 70 件となっている(2014 年3月末時点、全て除外合意)。
民法特例を利用した中小企業・小規模事業者は、従業員数 20 人超の会社が
7割を超えており、中規模企業の利用が中心となっている(図13参照)。
図13:民法特例確認企業の従業員数
図14:民法特例確認企業の資本金額
民法特例を利用した会社の特徴として、株式評価の一つの基準である純資産額
が合意後に増加する傾向がみられることから、将来の株式評価額の上昇を予想し
て民法特例を利用した可能性が考えられる(図15参照)。
しかし、他の推定相続人との間で株式等を除外することが合意できる場合であ
れば、当該株式等の全てが遺留分算定基礎財産に算入されないことから、除外合
意の利用が進んでおり、固定合意については現状では利用実績がない。

Page 13
13
図15:民法特例の確認を受けた企業の資産・純資産上昇割合
民法特例を利用した会社の所在地については、東京都に所在する会社が 24 件
と最も多くなっており、利用会社全体の3割超を占めている一方、利用件数が未
だにない県も 25 県存在している(図16参照)。
図16:民法特例の確認を受けた会社の所在都道府県
確認件数
確認件数
北海道
5
滋賀県
0
青森県
0
京都府
1
秋田県
0
大阪府
3
岩手県
0
兵庫県
4
山形県
0
奈良県
0
宮城県
0
和歌山県
0
福島県
2
岡山県
0
茨城県
2
広島県
0
栃木県
1
鳥取県
0
群馬県
2
島根県
0
埼玉県
3
山口県
1
千葉県
1
香川県
0
東京都
24
徳島県
0
神奈川県
3
愛媛県
1
新潟県
1
高知県
0
山梨県
1
福岡県
1
長野県
0
佐賀県
0
静岡県
2
熊本県
0
愛知県
8
長崎県
1
岐阜県
0
大分県
0
三重県
1
宮崎県
0
富山県
0
鹿児島県
2
石川県
0
沖縄県
0
福井県
0
合計
70

Page 14
14
②金融支援措置(経営承継円滑化法第12~14条)
《制度の概要》
代表者の死亡等に起因する経営の承継に伴う様々な資金需要が発生し、当該
資金需要に応えられない場合、事業の継続に支障が生じるおそれがあることか
ら、経済産業大臣の認定を受けた中小企業者及び当該認定を受けた中小企業者
の代表者個人に対して以下の金融支援措置を講じている。
○中小企業信用保険法の特例
事業承継により緊急的に発生する多額の資金需要に対応するため、経済産業
大臣の認定を受けた中小企業者における事業資金に係る信用保険枠を別枠化し
ている。
図17:「通常」+「拡大(別枠化)」の図
○株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発公庫法の特例
原則として、日本政策金融公庫等から、代表者個人が融資を受けることはで
きないが、事業承継の局面においては、後継者個人に発生する資金需要であっ
て、会社の事業資金とは整理できないものの、会社が事業活動を継続していく
ために必要かつ不可欠な資金需要が存在する。
このため、当該資金需要に対応すべく、特例により日本政策金融公庫等の融
資対象に後継者個人を加えることとしている。
《制度の利用状況》
金融支援措置についての経済産業大臣の認定件数は 85 件となっている
(2014 年3月末時点)。
認定を受けた中小企業・小規模事業者は、従業員数 20 人以下の小規模企業
が半数を超えている(図18参照)。

Page 15
15
図18:金融支援認定企業の従業員数
図19:金融支援確認企業の資本金額

Page 16
16
金融支援の認定を受けた会社の所在地についても、民法特例と同様、東京都に
所在する会社が 25 件と最も多くなっており、認定会社全体の3割を占めている
一方、利用件数が未だにない県も 23 県存在している(図20参照)。
図20:金融支援の認定を受けた会社の所在都道府県
認定件数
認定件数
北海道
7
滋賀県
1
青森県
0
京都府
2
秋田県
0
大阪府
2
岩手県
1
兵庫県
2
山形県
0
奈良県
1
宮城県
3
和歌山県
0
福島県
0
岡山県
2
茨城県
1
広島県
2
栃木県
0
鳥取県
0
群馬県
0
島根県
0
埼玉県
3
山口県
0
千葉県
3
香川県
1
東京都
25
徳島県
0
神奈川県
9
愛媛県
0
新潟県
1
高知県
0
山梨県
0
福岡県
3
長野県
0
佐賀県
0
静岡県
2
熊本県
3
愛知県
3
長崎県
0
岐阜県
0
大分県
0
三重県
0
宮崎県
2
富山県
0
鹿児島県
4
石川県
2
沖縄県
0
福井県
0
合計
85

Page 17
17
事業承継税制(経営承継円滑化法第12条)
《制度の概要》
事業承継の際には後継者に相続税・贈与税が課されるが、キャッシュフロー
の乏しい中小企業・小規模事業者にとってはその負担が重く、株式を分散させ
て相続・贈与する誘因が働くことになる。こうした対応は、中小・小規模事業
者の経営の安定を損ね、ひいては中小企業・小規模事業者が支えている地域の
雇用や経済の活力にも支障を与えるおそれがある。したがって、後継者が、経
済産業大臣の認定を受けた非上場会社の株式等を現経営者から相続又は贈与に
より取得した場合には、相続税・贈与税の納税を猶予する特例制度として事業
承継税制が創設された。
後継者の要件として、後継者と後継者の親族などとで総議決権株式の過半数
を保有し、かつこれらの者の中で筆頭株主であることなどが課せられており、
事業承継税制の対象となる後継者は事実上1人に限られている。
○相続税の納税猶予特例
後継者が納付すべき相続税のうち、相続により取得した非上場株式(相続
前から後継者が既に保有していた議決権株式等を含め、発行済議決権株式総
数の三分の二に達するまでの部分に限る。)に係る課税価格の 80%に対応す
る額が納税猶予される。
○贈与税の納税猶予特例
後継者が納付すべき贈与税のうち、相続により取得した非上場株式(贈与
前から後継者が既に保有していた議決権株式等を含め、発行済議決権株式総
数の三分の二に達するまでの部分に限る。)に係る課税価格の全額に対応する
額が納税猶予される。
上記の相続税・贈与税の納税猶予特例の適用を受けるためには、相続税・贈
与税の申告期限から5年間は以下のような要件を満たして事業を継続すること
が必要である。
①雇用の8割以上を毎年維持すること
②後継者が代表を継続すること
③先代経営者が役員(有給)を退任すること(贈与税の場合)
④対象株式を継続して保有すること
⑤上場会社、資産管理会社、風俗関連事業を行う会社に該当しないこと 等
なお、要件を満たせなかった場合は全額納付(5年経過後は譲渡した株式の
割合分だけ納付)となるが、後継者が死亡した場合は全額免除となる。
事業承継税制は平成 25 年度税制改正の要件について相当な見直しを行い、平
成 27 年1月から施行される。主な見直しの内容は次ページのとおり。

Page 18
18
(参考)平成 25 年度税制改正における事業承継税制の見直し内容
① 親族外承継の対象化 ~親族に限らず適任者を後継者に~
《改正前》後継者は先代経営者の親族に限定
《改正後》親族外承継を対象化
② 雇用確保要件の緩和 ~毎年の景気変動に配慮~
《改正前》雇用の8割以上を「5年間毎年」維持
《改正後》雇用の8割以上を「5年間平均」で評価
③ 納税猶予打切りリスクの緩和 ~利子税負担軽減、事業の再出発に配慮~
《改正前》要件を満たせず納税猶予打切りの際は、納税猶予額に加え利子税の
支払いが必要
《改正後》利子税率の引下げ(2.1%→0.9%)※平成 26 年 1 月 1 日より
承継5年超で、5年間の利子税を免除
《改正前》相続・贈与から5年後以降は、後継者の死亡又は会社倒産により納
税免除
《改正後》民事再生、会社さ生、中小企業再生支援協議会での事業再生の際に
は、納税猶予額を再計算し、一部免除
④ 役員退任要件の緩和 ~先代経営者の信用力を活用~
《改正前》先代経営者は、贈与時に役員を退任
《改正後》贈与時の役員退任要件を代表者退任要件に
(有給役員として残留可)

Page 19
19
⑤ 事前確認の認定要件からの除外 ~手続の簡素化~
《改正前》制度利用に当たり、経済産業大臣の「認定」を受ける前に「事前確
認」を受けておく必要あり
《改正後》「事前確認」を受けなくても経済産業大臣の「認定」を受けること
が可能に。(平成 25 年 4 月 1 日以後の認定申請から適用)
⑥ 債務控除方式の変更 ~債務の相続があっても株式の納税猶予をフル活用
できるように~
《改正前》猶予税額の計算で先代経営者の個人債務・葬式費用を株式から控除
するため、猶予税額が少なく算出
《改正後》先代経営者の個人債務・葬式費用を株式以外の相続財産から控除
⑦ 株券不発行会社への適用拡充 ~定款変更、株券発行が不要に~
《改正前》認定承継会社の株券が発行されていない場合は、担保提供に当たっ
て株券を発行する必要
《改正後》株券不発行会社は、株券のかわりに質権設定承諾書等を提出すれば
よいことに
⑧ 税務署への提出書類の簡素化 ~手続の簡素化~
《改正前》申告書、継続届出書の添付書類の中には、認定の添付書類と同一の
もの(登記事項証明書、決算書など)が存在
《改正後》認定の書類と重複する一定の書類は提出を要しないことに
⑨ 雇用要件未達の場合の延納・物納 ~一括納付リスクの緩和~
《改正前》雇用要件未達の場合には納税猶予は打切りとなり、猶予税額を金銭
で一括納付しなければならない
《改正後》雇用要件未達時に金銭での一括納付が困難な場合には、延納(割賦
支払い)又は物納(相続財産で納付)が選択可能に

Page 20
20
⑩ 資産保有・運用型会社の猶予税額計算
《改正前》認定会社の保有する上場会社の株式も納税猶予税額の計算の対象
《改正後》資産保有・運用型会社が、上場会社等の発行済株式総数の3%以上
を保有している場合には、資産保有・運用型会社の納税猶予税額の
計算上、当該会社がその上場株式等を有していなかったものとし
て、猶予対象株式等の価額を計算する
⑪ 資産保有・運用型非該当の事業実態要件の制限
《改正前》資産保有・運用型会社であっても、3つの事業実態要件(※)を満
たせば納税猶予の適用が可能
(※)・常時使用従業員5人以上(従業員は経営承継相続人等の同
一生計親族でも可)
・3年以上にわたり商品の販売・資産の貸付け等を行ってい
る(経営承継相続人等の同一生計親族への貸付けでも可)
・事務所等の所有または賃貸
《改正後》常時使用従業員5人以上の要件は、経営承継相続人等の同一生計親
族を除いて判定
商品の販売・貸付け等の要件は、経営承継相続人等の同族関係者等
に対する貸付けを除いて判定
⑫ 総収入金額の制限
《改正前》認定会社の総収入金額がゼロになると納税猶予打切りとなる
《改正後》総収入金額の範囲から営業外収益及び特別利益を除外

Page 21
21
《制度の利用状況》
事業承継税制についての経済産業大臣の認定件数は 846 件(相続税 539 件、
贈与税 307 件)となっている(2014 年3月末時点)。
相続税の納税猶予の認定を受けた中小企業・小規模事業者は、従業員数 20
人以下が 49%、21 人以上が 51%となっており、小規模・中規模ともに利用し
ている(図21参照)。
また、贈与税の納税猶予の認定を受けた中小企業・小規模事業者は、従業員
数 20 人以下が 44%、21 人以上が 56%となっており、小規模・中規模ともに利
用している(図22参照)。
図21:相続税認定企業の従業員数、資本金額
図22:贈与税認定企業の従業員数、資本金額

Page 22
22
認定を受けた企業のうち、相続税・贈与税の申告期限から1年後の時点に
おける認定企業の雇用状況をみると、相続・贈与ともに 90%以上が雇用を確
保している(図23参照)。
図23:認定企業の雇用維持状況
(出典)中小企業庁調べ
(分析対象期間:平成 20 年 10 月~平成 26 年 1 月)

Page 23
23
事業承継税制の認定を受けた会社の所在地をみると、東京都に所在する会社が
177 件と最も多くなっており、認定会社全体の 2 割超を占めている一方、鳥取県
(1件)、高知県(2件)をはじめ、認定件数が一桁に留まっている県が 25 県存
在している(図24参照)。
図24:事業承継税制の認定を受けた会社の所在都道府県
相続
認定
贈与
認定
合計
相続
認定
贈与
認定
合計
北海道
20
21
41
滋賀県
5
3
8
青森県
4
3
7
京都府
14
8
22
秋田県
5
0
5
大阪府
42
21
63
岩手県
6
2
8
兵庫県
18
6
24
山形県
5
0
5
奈良県
2
1
3
宮城県
14
6
20
和歌山県
4
1
5
福島県
4
5
9
岡山県
4
3
7
茨城県
11
9
20
広島県
13
6
19
栃木県
4
12
16
鳥取県
0
1
1
群馬県
11
5
16
島根県
3
3
6
埼玉県
18
15
33
山口県
5
4
9
千葉県
14
10
24
香川県
6
5
11
東京都
98
79
177
徳島県
3
0
3
神奈川県
27
12
39
愛媛県
11
2
13
新潟県
11
3
14
高知県
2
0
2
山梨県
2
1
3
福岡県
14
4
18
長野県
14
7
21
佐賀県
3
2
5
静岡県
21
6
27
熊本県
6
3
9
愛知県
39
21
60
長崎県
2
2
4
岐阜県
12
2
14
大分県
7
0
7
三重県
1
3
4
宮崎県
6
0
6
富山県
8
1
9
鹿児島県
11
5
16
石川県
5
1
6
沖縄県
2
1
3
福井県
2
2
4
合計
539
307
846

Page 24
24
(3)事業引継ぎ支援事業
中小企業・小規模事業者のM&A活用を促進するために、平成 23 年5月の
産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(平成 11 年法律第 131
号)の一部改正に基づき、認定を受けた全国 47 都道府県の商工会議所等の支
援機関に「事業引継ぎ相談窓口」が設置された。
事業引継ぎ支援の需要が多く、支援体制が整った地域については「事業引継
ぎ支援センター」を設置し、事業引継ぎに関するより専門的な支援を実施して
いる。
昨年の臨時国会で成立した産業競争力強化法(平成 25 年法律第 98 号)に基
づき、地域をまたがる広域的なM&Aマッチングの強化等を図るため、独立行
政法人中小企業基盤整備機構に平成 26 年4月1日より「全国本部」を設置し、
「事業引継ぎ相談窓口」及び「事業引継ぎ支援センター」に対する指導、助言
等の支援業務を行っている。
図25:事業引継ぎ支援体制図

Page 25
25
平成 25 年6月 14 日に閣議決定された日本再興戦略においては、「現存7カ
所の設置に留まっている事業引継ぎや事業承継等のワンストップ窓口である
「事業引継ぎ支援センター」を全国展開し、地域金融機関等との連携を通じた
事業引継ぎのマッチング等を促進する。」と記載されている。
現在、事業引継ぎ支援センターは、北海道、宮城、秋田、東京、長野、静岡、
愛知、三重、大阪、岡山、広島、愛媛、福岡、沖縄の合計 14 カ所に設置済み
である。このうち、秋田、長野、三重、岡山、広島、愛媛、沖縄の7カ所は、
日本再興戦略の閣議決定後に設置されたものである。
図26:事業引継ぎ支援センターの設置状況

Page 26
26
(4)第2創業支援
事業承継をした企業は、経営革新を行う傾向にあり、また、経営革新を行
っている企業は、行っていない企業と比較して、業績が改善したと回答する
割合が高い(図27参照)。
図27:経営革新への取組状況別の事業承継後の業績

Page 27
27
経営革新に対する主な国の支援措置は次のとおり。
①予算
・創業促進補助金
地域活性化や海外需要の獲得を目指す創業(第2創業含む)へのチャレ
ンジを支援。チャレンジ精神あふれる若い経営者やしっかりと事前準備に
取り組んだ経営者等の第2創業の取組に更に手厚い措置を検討。
《対象経費》店舗借入金、設備費(内装・外装工事含む)、人件費、マー
ケティング調査費、広報費、旅費、謝金等
《補助上限額》200万円
《補助率》 3分の2
②資金調達支援
・新事業活動促進資金
日本政策金融公庫が、経営多角化、事業転換などにより、第2創業を図
る事業者の設備資金及び運転資金に対する融資を実施。
・中小企業信用保険法の特例
事業承継により緊急的に発生する多額の資金需要に対応するため、経済
産業大臣の認定を受けた中小企業者における事業資金に係る信用保証枠
を別枠化。
③税制
・中小企業投資促進税制
生産性向上に資する設備を購入した際、特別償却又は税額控除が可能。
・商業・サービス業等活性化税制
商業・サービス業を営む事業者が支援機関の助言を受けて投資をした設
備について、特別償却又は税額控除が可能。
・雇用促進税制
ハローワークに新しく従業員を雇う計画を提出し、従業員を雇うと税額
控除が可能。
④ソフト支援
・地域創業促進事業(創業スクール)
各地域の商工会、商工会議所などの支援機関や産業競争力強化法に基づ
き認定を受けた創業支援事業者が、創業に必要な基本的知識からビジネス
プランの作成支援までを実施。

Page 28
28
(5)廃業円滑化
売上げの減少など先行きが不透明であること等を理由として廃業を希望す
るケースが増えており、また、廃業相談は、家族・親族が多く、誰にも相談し
ない事業者も存在。
廃業にあたっての障害を緩和するセーフティネットを講ずることや、相談窓
口を設置すること等により、円滑な廃業等の下支えや、経営者の再企業(再チ
ャレンジ)を含めた新陳代謝の促進を図る必要がある。
①小規模企業共済制度
経営者の将来の不安を解消し、安心して事業活動に注力できる環境を整
備するために、特に経営基盤が脆弱で、経済環境の変化を受けやすい小規
模事業者の廃業・引退後の生活資金等の確保を図るための共済制度として、
小規模企業共済制度が設けられている。
図28:小規模企業共済制度の概要
小規模企業者(共済契約者)
加入・掛金納付・
共済金の請求
●加入資格
:小規模企業の個人事業主、共同経営者又は会社役員
●制度開始
:1965年12月
●在籍者数
:122万人(全小規模企業者の約4割が加入)(平成25年3月末現在)
●共済金等支給額:6,417億円(平成24年度)
●資産総額
:8兆882億円(平成24年度末現在)
共済金等の支給
制度趣旨:小規模企業者の廃業等の事態に備えるための共済制度(いわゆる小規模企業者のための退職金制度)
中小企業基盤整備機構
※納付された掛金及びこの運用益は全額を共済金又は解約手当金に充て、
制度運営に係る事務経費は国の一般会計から手当て
②「経営安定特別相談室」
経営が悪化した場合の専門的なアドバイスを受けるための相談窓口とし
て、主要商工会議所・都道府県商工会連合会に「経営安定特別相談室」が設
置されており、廃業にかかる相談も可能となっている。
図29:経営安定特別相談室の概要
概要
・様々な理由により経営難に直面している中小企業・小規模事業者が、弁
護士や税理士等の専門家から、経営の立て直しや廃業等の相談を無料で
受けることが可能。
支援内容
・財務分析、事業転換などの指導、受注あっせん、倒産関係法律の手続き等
の相談に応じ、問題の解決を支援。
相談等実績(平成25年度)
・受付件数:2,064件
・相談回数:4,541回
経営安定特別相談室

Page 29
29
③「経営者保証ガイドライン」
廃業の円滑化については、廃業時に廃業者が一定の生活費の確保や、華
美でない自宅に住み続けられるよう、昨年 12 月に「経営者保証ガイドライ
ン」を策定したところであり、本年2月より施行されている。
(参考)「経営者保証ガイドライン」の概要
経営者保証に関するガイドラインは、経営者の個人保証について、
・法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求
めないこと
・多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に
一定の生活費等(従来の自由財産 99 万円に加え、年齢等に応じて 100
万円~360 万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられるこ
となどを検討すること
・保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること
などを定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思
い切った事業展開や、早期事業再生等を応援します。

Page 30
30
3.経営者の高齢化と後継ぎの多様化
(1)経営者の交代率の低迷と平均年齢の上昇
経営者の高齢化が進んでいる。株式会社帝国データバンクの調査によれば、
経営者の交代率は昭和 50 年代の平均5%に比べて、足下約 10 年間の平均では
3.5%、2011 年では 2.46%と低迷しており、経営者の交代率の低迷に伴い、経
営者の平均年齢も上昇傾向にあり、2011 年には 59 歳9ヶ月まで上昇している
(図30参照)。
また、平均年齢の上昇に伴い、平均引退年齢も上昇傾向にある。直近の経営
者の平均引退年齢は、中規模企業で 67.7 歳、小規模事業者では 70.5 歳となっ
ている(図31参照)。
こうした中で、60 歳以上の経営者の割合は 20 年前の 29.8%に対して、2012
年には 51.8%にまで増えている。今後 10 年間で、5割を超える現経営者が平
均引退年齢にさしかかり、事業承継のタイミングを迎えることになると予想さ
れる(図32参照)。
図30:経営者の交代率の低迷と経営者の平均年齢の上昇
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
6
6.5
7
1978
1983
1988
1993
1998
2003
2008
(%)
(歳)
平均年齢(右軸)
経営者交代率
1975年~1985年平均 4.97%
2000年~2011年平均 3.48%
(出典)帝国データバンク「全国社長分析」(2012)
(備考)「全国社長分析」では 2012 年調査までは個人経営の代表を含んだ調査、
2013 年調査からは株式会社、有限会社に限定した調査となっており、
株式会社、有限会社に限定した場合、2013 年の経営者の交代率は 3.67%、
経営者平均年齢は 58.9 歳。

Page 31
31
図31:規模別・事業承継時期別の平均引退年齢の推移
(出典)中小企業白書 2013
中小企業庁委託「中小企業の事業承継に関するアンケート調査」
(2012 年 11 月、(株)野村総合研究所)
図32:経営者の年齢階層別内訳
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
0
200,000
400,000
600,000
800,000
1,000,000
1,200,000
1990
1995
2000
2005
2010
60歳以上の経営者の割合(右軸)
60歳以上
40歳以上60歳未満
40歳未満
(出典)帝国データバンク「全国社長分析」(2012)
(備考)株式会社、有限会社の経営者の年代別構成。

Page 32
32
(2)後継者不足問題
中小企業庁が行った調査によれば、経営者が引退した後の事業の継続意向に
ついて、「まだ決めていない」と回答した中小企業が約3割、事業をやめたい
と回答した中小企業も約1割存在している。
「事業をやめたい」と回答した中小企業のうち、後継者不足に関連する理由
をあげた中小企業は5割を超えている。さらに、後継者不足を理由にあげた企
業のうち、就業の多様化や少子化を背景に、親族である息子・娘に継がせられ
ないと回答した中小企業が約6割となっている。
「まだ決めていない」と回答した中小企業のうち、「後継者を確保できるか
分からない」ことを理由とする中小企業が約 3 割となっている。
こうしたことから、少子化等を背景とした親族内承継の難しさによる後継者
不足問題で、廃業を余儀なくされる中小企業や、事業継続の意向が決まらない
背景として後継者が確保できるかどうかが分からないとする中小企業が、全体
の約1割強を占めていることがわかる。
図33:経営者を引退した後の事業継続の意向とその理由

Page 33
33
(3)事業承継の形態の多様化
中小企業庁が行ったアンケート調査によれば、直近 10 年間に行われた事業
承継のうち、親族内承継の割合は約6割となっている(図34参照)。
他方、過去(20 年以上前)は後継者候補として親族を挙げる中小企業が約
9割となっていたことと比べ、足下では、少子化等も背景に親族外承継も視野
に入れて後継者を検討する企業の経営者が4割を超えている。実際、過去と比
較して親族外承継をした中小企業の割合は増加傾向にある。
後継者の選び方として、親族であることを優先するよりも、実力のある人材
であるかを重視する経営者が増えているとの調査結果もある(図35参照)。
また、後継者への承継だけでなく、事業売却を行う事例も増えてきている。
未上場企業間のM&Aの件数は、リーマンショック後に減少傾向がみられたも
のの再び増加傾向にある(図36参照)。
我が国における事業承継は、依然として親族内の承継が中心ではあるものの、
親族外への承継や事業売却など、形態が多様化している。このため、企業の事
業を円滑に次世代にバトンタッチしていくためには、多様化する事業承継の形
態に対応した施策を検討することが必要である。
以下では多様化している事業承継の形態別に、その課題を整理する。
図34:事業承継時期別の現経営者と先代経営者との関係

Page 34
34
図35:経営者として望む後継者像
図36:日本M&AセンターによるM&A成約組数の推移

Page 35
35
①親族内承継の課題
中小企業庁が行った調査によれば、親族内の事業承継の際に問題があると
回答した中小企業は約7割にのぼっている。具体的な問題点としては、第一
に経営者としての資質や能力の不足の問題、続いて、相続税・贈与税の負担
が挙げられている(図37参照)。
資質や能力の不足については、事業承継の準備をしている中小企業の具体
的な準備内容として、後継者の資質・能力の向上に取り組んでいるとの回答
が最も多かったことからも、問題として認識され、実際に取組が進められて
いると考えられる(図38参照)。
図37:事業を引き継ぐ際の問題、具体的な問題(複数回答)
図38:事業承継の準備をしている企業の具体的な準備内容(複数回答)
(出典)中小企業庁委託調査「中小企業の事業承継に関する調査に係る委託事業報告書」(2012 年 11 月)
株式会社野村総合研究所 再編加工

Page 36
36
②親族外承継の課題
近年、増加傾向にある親族外承継でも、事業承継の際に問題があると回答
した中小企業は約6割にのぼる。具体的な問題点としては、第一に借入金の
個人保証の引継ぎ、続いて自社株式や事業用資産の買取りが困難であること
が挙げられている(図39参照)。
借入金の個人保証については、2014 年2月から適用されている「経営者保
証に関するガイドライン」(29ページ参照)において、事業承継時には、主
債務者や保証人は、経営者交代の事業への影響を説明するなど債権者の情報
開示要請に適切に対応すること、債権者は後継者に当然に保証債務を引き継
がせず、必要性を改めて検証することとし、前経営者との保証契約の解除に
ついても適切に判断することとされたところである。
また、自社株式や事業用資産の買取りが困難な状況の中で、現経営者から
後継者へ自社株式や事業用資産を無償で譲り渡しても良いとするケースがあ
るものの、贈与税の問題は残る。
図39:事業を引き継ぐ際の問題、具体的な問題(複数回答)

Page 37
37
図40:親族外承継時の株式移転方法
【コラム】:親族外の者に株式の贈与を検討している例
【親族外の者に株式の贈与を検討している例】
○従業員5名、年商1億円の卸売業では、息子がいないため、従業員への事業承継を検討して
いる。
○もし事業を継いでくれるのであれば、時価とか低額ではなく、無償で株式を渡してもよいと
考えている。

Page 38
38
③個人事業主の課題
個人事業主の事業承継の現状については、二代目以降となる個人事業主の先
代の個人事業主との関係は、親族内が 97.4%となっており、個人事業主はこれ
まで親族内で承継してきた傾向がうかがえる。
また、今後について 60 歳以上の個人事業主の将来の事業承継の意向をみて
も、親族外承継(従業員、社外の者への承継)が 9%、他社への売却が 3.6%と、
後継者難等を背景として、親族外承継等も視野に入ってきていると考えられる
が、依然として親族内承継の意向が強いと考えられる。
個人事業主の親族内承継の課題としては、会社と変わらず、後継者の資質・
能力の不足、相続税・贈与税の負担が上位に挙げられる。
このうち、相続税・贈与税負担の軽減に関し、個人事業主については、これ
まで、経営承継円滑化法に基づく金融支援や小規模宅地等の特例を講じてきた。
個人事業主の更なる相続税・贈与税の負担軽減については、個人事業主が法
人成りして、事業承継税制を活用すれば良いという考え方も存在する。しかし
ながら、起業時の事業形態として会社(法人)を選択する者は「社会的信用が
得られ、資金調達や販路拡大等が容易」であることが主な理由であるのに対し、
個人事業主については事業拡大意向を持つ個人事業主は少ない。実際、法人化
の予定がある割合も約1%にとどまる。したがって、個人事業主そのものの事
業承継に係る支援を検討することが必要である。
具体的には、従来は個人事業主の課税資産は主として土地であるとの考え方
から小規模宅地等の特例(相続土地の 80%評価減)が設けられてきたところで
あるが、実際には純資産 4,800 万円(注)超の個人事業主の事業用資産の約 6 割
を占める不動産のうち、更にその 4 割は建物が占めている(図41参照)。事業
用建物等の固定資産については、財産価値の評価が算定される(さらに、評価
額は固定資産税の評価額で算定される)一方、今後の事業の継続のために必要
な資産であることや、納税資金を別に確保する必要があることから、相続税を
納付する担税力も低い。さらに、個人事業主は、生活の糧を得るために、生活
用財産とは別に事業用資産を有しており、こうしたことから、既に措置が講じ
られている小規模宅地等の特例(事業用土地)だけでは個人事業主の事業継続
に十分な措置が講じられているとはいえない。
(注)共同相続人が3人(妻、子供3人)と仮定した場合、当該相続財産に係る相続税の基礎控除額

Page 39
39
図41:純資産 4800 万円超の個人事業主の事業用資産の資産別の構成
土地
39.9%
建物
25.6%
機械・器具
備品
4.8%
商品・製品・
原材料等
6.8%
事業用債権
5.3%
その他事業
用資産
3.1%
有価証券
2.4%
現預金
12.1%
図42:相続税の課税資産の内訳(2011 年)
土地, 45.9%
家屋・構築
物, 5.7%
事業用資産,
0.4%
有価証券,
13.0%
現金・預貯
金等, 24.4%
家庭用財産,
0.1%
その他の財
産, 10.4%
(出典)中小企業庁委託調査「中小企業における事業承継に関する調査」(2014 年 2 月)
株式会社野村総合研究所、独立行政法人中小企業基盤整備機構「事業承継の取り組みに関するアンケート調査」
(2014 年 3 月) 再編加工。
(備考)帳簿価格ベースで、それぞれの資産ごとにデータ全体の上限下限 5%を除いた上で、残りのデータを平均した
ことによる構成比。
(出典)国税庁統計年報 2011 年

Page 40
40
④事業引継ぎの課題
増加傾向にある事業売却については、第一にそもそも買い手企業を見つけ
ることが難しいことや、適正な売却価格を算定することが難しいといった声
が多い。
買い手企業を見つけるマッチングについては、比較的規模の大きな会社で
あれば、金融機関や証券会社、M&Aの専門会社など民間の担い手が存在し
ているが、小規模な会社になると手数料が小さくなることもあり、民間の担
い手が必ずしも充実しているとはいえない。
このため、平成 23 年から事業引継ぎの支援体制を整備しており、47 都道
府県に、事業引継ぎ等に関する情報提供・助言等を行う「事業引継ぎ相談窓
口」を設置しているほか、事業引継ぎ支援の需要が多く、支援体制が整った
地域に「事業引継ぎ支援センター」を設置し、事業引継ぎに関するより専門
的な支援を実施している(24、25ページ参照)。

Page 41
41
⑤第2創業の課題
事業承継の際に経営革新を行ったときの課題としては、小規模企業では資
金の調達や従業員の協力を得ること、中規模企業では従業員の協力を得るこ
とや必要なスキルを持った従業員の確保することに苦労したという回答が
最も多くなっている(図43参照)。
図43:経営革新に取り組む上で苦労した課題
この点については、予算、資金調達支援、税制及びソフト支援等の施策メ
ニューによる支援を行っているが(27ページ参照)、例えば、創業促進補助金
は、後継者が不採算部門から撤退し新分野に挑戦する等の第2創業を行う際に
既存事業の設備廃棄等に係る費用が補助対象となっておらず、また、日本政策
金融公庫の新事業活動促進資金の利率引き下げや「経営承継安定関連保証」に
おける廃業資金の対象化など、更なる利便性の向上が必要であると考えられる。

Page 42
42
⑥廃業の課題
後継者が見つからず、事業売却も困難な場合には、事業継続を断念し廃業
を選択することになるが、タイミングを逸した廃業はダメージが大きくなる
ことから、円滑な廃業を促す支援の例として、早い時期の自主廃業を後押し
するための事業整理支援ローンの取扱いをしている地方銀行も一部に存在し
ている。
他方、中小企業の廃業に当たっての相談については、家族や親族への相談
や、誰にも相談していないケースが多いことから、廃業に関して十分な支援
がなされていないと思われる。特に、廃業を予定している中小企業において、
実際に廃業する場合に心配な点として、「廃業後の生活費の確保」と回答する
経営者は5割を超えている(図44参照)。
この点については、小規模企業共済制度(28ページ参照)が設けられて
いるが、加入率が約4割に留まっていること、親族外承継で事業廃止する場
合と親族内承継で事業譲渡した場合で共済金額が異なる等の課題がある。
図44:廃業する場合の不安

Page 43
43
第二章 検討会で提起された事業承継施策の論点
事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会では、前章で述べた中小企業・
小規模事業者における事業承継等の現状や、事業承継円滑化のための支援施策の施
行状況等を踏まえ、今後、中小企業・小規模事業者の事業承継等の更なる円滑化を
実現していくため、中小会社、個人事業主、事業引継ぎ、第2創業支援等、及び廃
業に係る課題について、検討を行った。
1.中小会社
(1)雇用維持要件の代替として、売上等の指標を要件にすることについて
①抽出された課題
雇用維持要件については、平成 25 年度税制改正において、5年間毎年8
割以上を維持するとの要件が、5年間平均8割以上の確保を求める要件に
緩和された(平成 27 年1月施行)。
しかし、従業員数の少ない小規模企業にとって8割という水準は、数人
減っただけで簡単に下回ってしまうものであることから、依然として要件
を満たすことが難しいといわれている。
②検討会での議論
<肯定的な意見>
・中小会社は雇用の確保を通じて地域経済の活力を維持しているが、地
域の需要の担い手でもあり、また、昨今の人手不足問題や労働生産性
の向上に対する要請に応える必要があるため、例えば、雇用維持の要
件と「売上」の維持のいずれかの選択制としてもいいのではないか
・中小会社は生産性の向上を図るため、雇用を減らすなどリストラを実
施しているものの売上が上がらないということもあるため雇用要件を
無くしてしまってはどうか
<否定的な意見>
・売上は経営努力の及ばない経営環境変化の影響を大きく受けやすいた
め、また、社員の給料を確保し雇用を維持している経営者に焦点が当
たらなくなるおそれがあるため、売上を要件とすることには慎重であ
るべきではないか
<その他の意見>
・政策目的である雇用の確保という柱は残しておくべきではないか
・正規社員に加えてパートやアルバイト等を含めてもよいのではないか

Page 44
44
(2)後継者を 1 人から複数(兄弟での承継等)に緩和することについて
①抽出された課題
現行の事業承継税制には、後継者への株式の集中を促すことにより経営
の安定化を図ることが重要との考え方の下、事業承継税制の適用を受ける
後継者と後継者の親族などとで総議決権株式の過半数を保有し、かつこれ
らの者の中で筆頭株主であることなどの要件が課せられている。
このため、兄弟等2人以上の後継者に株式を分散して事業承継すること
は出来ても、事業承継税制の納税猶予の対象となる後継者は事実上1人に
限られている。
②検討会での議論
<肯定的な意見>
・現経営者が複数の子供に継がせたいというニーズが存在しているため、
一定の範囲内で複数後継者への承継を認めてもいいのではないか
・株式の分散リスクの結果責任は経営者が負うことになるため、経営者
の選択に任せるべきではないか
<否定的な意見>
・株式の分散は、承継の割合を決める時点や承継後に感情的な紛争とし
て顕在化するリスクがある
・後継者は株式を集中したいと考えているため、現経営者ではなく、後
継者に焦点を当てるべき
事業承継ではなく節税のツールとして利用されるリスクがある
<その他の意見>
・複数後継者を認める場合には、経営権を持つ後継者だけに株式を集中
すればよいのではないか
・株式を分散する場合は議決権なし株式と譲渡制限株式を活用すること
により議決権を持つ後継者を1人に絞ればよいのではないか
・一旦分割した株式を集中したくても税金の関係で親族の協力が得られ
ないケースがあるため経営の安定化を阻害する
・分散した株式を集中するための財政、税制、法制の検討ができないか

Page 45
45
(3)贈与税猶予措置を受けている者が、更に贈与すること(贈与から贈与)に
ついて
①抽出された課題
投資育成会社の投資対象会社における事業承継のうち、親族外承継の事
例をみると、先代の退任年齢は平均 65.8 歳、後継者の就任年齢は平均 57.7
歳となっている。本数値は、同じ経営者の就任時と退任時の年齢ではない
ため、これをもって単純に在任期間を計算することは適当でないが、仮に
これが同一の経営者であったと仮定すると、在任期間は、親族外承継は約 8
年と、親族内承継の約 22 年に比較して短くなっている。
したがって、先代(初代)が存命である時期に、後継者(二代目)が次
世代(三代目)への事業承継を検討するタイミングを迎える可能性が高く
なると考えられる。
このような場合において、後継者(二代目)が更に次の後継者(三代目)
に株式を贈与したくても、先代(初代)が存命の場合には、贈与税の納税
猶予が打ち切りとなってしまうことになる。
この結果、先代が死亡するまでの間、後継者(二代目)が次世代(三代
目)に経営を承継させることなくそのまま経営を継続して、事業の若返り
を阻害する要因となる、又は後継者(二代目)が株式を保有したままで経
営権だけを次世代(三代目)に譲るといった、所有と経営が一体であるこ
との経営上のメリットを活かせなくなることが考えられ、いずれにせよ円
滑な事業承継が行われない可能性がある。
図45:贈与税納税猶予の流れ、先代経営者が健在の場合

Page 46
46
②検討会での議論
検討会では、事業承継に贈与を活用する場合において、後継者(二代目)
の年齢が先代(初代)に近い状況で贈与税の納税猶予制度を適用すると、
後継者からその次世代(三代目)へ株式を贈与する際、先代が存命するこ
とが多いため、贈与税の納税猶予が適用できないとの意見や、今後、贈与
税の納税猶予制度の利用が増加していけば、猶予制度適用後の贈与につい
て、納税猶予ができないことが円滑な事業承継のネックとなるため、税制
改正を検討すべきとの意見があった。
(4)猶予される相続税・贈与税の範囲(発行株式の2/3、課税価格の80%)
の拡大について
①抽出された課題
現行の事業承継税制については、特例の対象とする非上場株式等につい
て、後継者が相続・贈与前から既に保有していた議決権株式等を含め、発
行済議決権株式等総数の3分の2に達するまでの部分に限定されている。
また、納税猶予されるのは、対象となる非上場株式等に係る課税価格の
80%に対応する額(相続税)となる。さらに、本特例はあくまでも納税の
猶予が継続するものであり、一定期間で一律免除される仕組みはとられて
いない。
②検討会での議論
検討会では、株式総数の3分の2まで、課税価格の 80%までが猶予の範
囲にとどまっていることは事業承継の実態と合っていない、結局 53%程度
しか納税猶予とならないことから猶予の効果が薄く、事業承継税制の利用
が進んでいないのではないとの意見が強くあった。その一方で平成 25 年度
改正の税制がまだ施行されていない中、時宜を踏まえつつ、まずは新制度
が施行された後の事業者のニーズ等を把握すべきではないかとの意見があ
った。他方で、経営者の高齢化は急速に進んでおり、事業承継関連の施策
は「待ったなし」の状況にあることから、新税制の施行を待たずに直ちに
税制改正要望を行うべきとの強い要望もあった。
また、5年経っても納税猶予の適用を受けている後継者が亡くなるまで
ずっと猶予が続くという税制について、更なる緩和を検討すべきとの意見
があった。
さらに、近年、事業承継時に株式の信託を活用した事例が認められつつ
あるが、小規模宅地等の特例においては信託受益権も特例の対象となって
いる。こうした例も踏まえ、事業承継税制においても信託受益権を納税猶
予の対象にするべきではないかといった意見があった。その一方で、信託
制度は遺留分が存しない英米法系で発展したものであり、フランス民法を
模範とする我が国の相続法体系との整理が難しいのではないかとの意見も
あった。

Page 47
47
(5)納税猶予取消し後に相続時精算課税制度を適用させることについて
①抽出された課題
贈与税の納税猶予制度の利用者が、要件未達のために認定取消し・猶予
税額の全額納付とされた場合、相続時精算課税制度を適用することができ
れば、納税猶予制度の打切りリスクの緩和につながり、事業承継税制の利
用を促す可能性があるとの意見があった。
②検討会での議論
検討会では、例えば、雇用要件の充足が困難となった場合などに相続時
精算課税を選択することを認めてはどうかとの意見があったが、その一方
で、政策目的達成のための要件を満たそうと努力しながら事業活動を続け
ている経営者に対するモラルハザードとなる可能性があるとの意見もあっ
た。
(6)経済産業局と税務署の二重手続の一本化について
①抽出された課題
現行の事業承継税制の適用に当たっては、各地域の経済産業局と税務署
への二重の手続が煩わしく、事業承継税制の利用が躊躇されている可能性
がある。
②検討会での議論
検討会では、経済産業局と税務署の手続が両方あることが必ずしもボトル
ネックとは言えないとの意見があった一方で、認定申請書のフォーマット
が全てワードファイルで作られているため、電卓での計算が必要となるが、
エクセルファイルになっていれば数字を入力するだけで容易に記入できる
ことから、書類の簡素化の余地があるのではないかという意見があった。

Page 48
48
(7)非上場株式の評価方法について
①抽出された課題
取引相場のない非上場株式の評価については、財産評価基本通達におい
て定めがあるが、時価の算出方法として妥当であるかについて、例えば議
決権のある株式と議決権のない株式での違いをどのように考えるか、同族
会社の判定方法を見直す必要があるか、大中小会社の判定方法は適切か、
類似業種比準価額方式における利益を3倍で計算することをどう考えるか
等、様々な論点がある。
②検討会での議論
<肯定的な意見>
・経営者は株の評価が高いのではないかとの疑念・不満を持っているこ
とから、通達を変えるのはハードルが高いものの、ぜひチャレンジす
べき
・親族外承継の場合に、安価な価格で株式を売った場合にみなし贈与課
税が発生するが、その元は株の評価の問題であり、事業承継に絡んだ
特別の評価方法なり、原則的評価方法、例外をどう設けたらいいかと
いうことを検討してはどうか
<その他の意見>
・株式の評価の問題は相当技術的で複雑なものであることから、別の機
会を設けて相当時間をかけて議論すべきではないか
・株式の評価そのものではないが、後継者が株式を受け継ぐときに会社
に借入れがある場合には個人保証が実務上求められることになり、会
社に対する求償権があっても会社に財務力がなく、大変な負担になっ
ているため、このことについて措置しないと負担ばかりが重いという
ことになるのではないか
・評価そのものに関する議論とは別に、同族関係者を判定するために、
民法第 725 条で規定する親族の範囲(6親等血族、3親等姻族)すべ
てを調査・記載させることについては、現状の社会、家族のあり方と
合致しておらず、コストが多大になっている

Page 49
49
(8)民法特例の見直し
①抽出された課題
我が国における事業承継の形態は、親族内承継が依然として主流ではあ
るものの、以前に比べて親族外承継の割合が高まっている(33ページ図
34参照)。経営者としての実力を兼ね備えていれば、親族以外の者であっ
ても会社の経営を任せようと考える経営者が増えている。
このような状況に対応するため、税制については平成 25 年度税制改正に
おいて、親族内承継のみを対象とする事業承継税制を見直すこととし、平
成 27 年 1 月からは親族外承継についても事業承継税制の対象とすることに
なったところである。
他方、経営承継円滑化法の遺留分に関する民法特例については、後継者
は現経営者の推定相続人であることとされており(経営承継円滑化法第3
条第3項)、親族外の第三者が後継者となる場合の事業承継については、本
特例の適用を受けることができない。
②検討会での議論
事業承継税制では平成25年度改正において親族外承継が認められたこと
により民法特例と税制の乖離ができているため、この整理が必要との意見
や、親族外の者に株式を贈与で承継させた場合、財産分与だけが目的で会
社経営に無関心の親族から遺留分減殺請求をされトラブルが起こる可能性
があるため、しっかり手当すべきとの意見があった。

Page 50
50
(9)早期の計画的取組の促進策
①抽出された課題
事業承継を円滑に進めるためには、早期の計画的な取組が不可欠である
が、60 歳以上の経営者の中小企業における事業承継の準備状況をみると、
事業承継の準備をしていると回答する中小企業は約6割に過ぎない。
また、具体的な準備状況をみると、後継者の資質向上や後継者を支える
人材育成の面での取組を行っている中小企業は比較的多いものの、早期か
らの計画的な取組が必要な相続税・贈与税への対応の検討や、自社株式の
後継者への移転方法、親族間の相続問題の調整の取組を行っている中小企
業の割合は相対的に低くなっている。
平成25年度税制改正において、事前確認の取得が認定要件から外れたが、
改正前は事前確認を取得すること自体が計画的な取組を進める契機となっ
ていたことから、事前確認制度に代わる「計画的な取組の促進」の仕組み
作りが課題となっている。
②検討会での議論
事業承継の取組が進むかどうかは先代経営者の意識に大きく左右される
ことから、先代経営者に対して事業承継の重要性を意識してもらうための
活動が必要との意見があった。また、計画的取組の促進策や金融機関等の
支援機関による定期的なチェックを導入すべきとの意見があった。
こうした意見等を踏まえ、計画的な取組を促していくため、中小企業・
小規模事業者の経営者に寄り添う支援機関(商工会や商工会議所の経営指
導員等)による普及啓発、後継者が計画的取組の一環として取り組む「第
2創業」への支援等が提案された。

Page 51
51
(10)事業承継ガイドラインの改定及び内容の周知
①抽出された課題
事業承継の計画的な取組を促すに当たっては、事業承継対策の大切さに
ついて中小企業・小規模事業者の経営者の理解を深めてもらうとともに、
事業承継計画の作成方法など、具体的な進め方の指針を示していくことが
重要となる。
平成 18 年6月に「事業承継協議会事業承継ガイドライン検討委員会」に
おいて「事業承継ガイドライン~中小企業の円滑な事業承継のための手引
き~」が作成され公表されているが、経営者とより多く接していると考え
られる税理士に対して、税理士会を通じた広報を強化していくことの必要
性や、税制面での研修は各地で行われていても、そもそも論の事業承継
重要性や、民法の遺留分の問題などについての普及啓発が不足しており、
一体となった広報活動が必要となっている。
②検討会での議論
事業承継等の形態の割合が変化してきていることなど、最近の事業承継
等をめぐる状況の変化を踏まえ、平成 18 年に公表した事業承継ガイドライ
ンの改定を検討するとともに、独立行政法人中小企業基盤整備機構などが
各地で行っている事業承継セミナー等の場を通じて改定後の事業承継ガイ
ドラインの普及啓発に努めていくこと等が提案された。
なお、事業承継ガイドラインの改定にあたっては、本ガイドラインが様々
な実務書のベースになっていることを踏まえ、現在のガイドラインとの継
続性に配慮するとともに、一般の経営者にとってのわかりやすさも意識し
たものにすべきとの意見があった。

Page 52
52
2.個人事業主
(1)事業用建物等についての相続税等の負担軽減措置の検討
①抽出された課題
我が国における個人事業主の事業用資産のうち、相続税の負担が重いと
されていたのは主に土地であったため、事業承継の支援策として小規模宅
地等の特例が整備されている。
しかしながら、相続税の(平成 27 年 1 月以降の)基礎控除額である 4,800
万円(法定相続人3名と仮定)超を保有する個人事業主の事業用資産の構
成を調査したところ、土地が 39.9%に対して建物が 25.6%となっており、
建物も一定の割合を占めている。
②検討会での議論
<肯定的な意見>
・事業用の土地については一定の減額評価が行われているものの、個人
事業主も工場などの建物や棚卸資産等を持っているので、それを居住
用の資産と合わせて相続税の対象とするのではなく、軽減措置を設け
るなど一定の配慮が必要ではないか
・地方においては小規模事業者が多く、中でも個人事業主の減り方が大
きいことが懸念されている。個人事業主は経営者という立場だけでな
く技術者という観点からも貴重な存在であり、廃業によって技術やノ
ウハウが亡失されてしまうことを考えると、何らかの形で個人事業の
継続を支援する施策を検討していく必要が大きいのではないか
<その他の意見>
・小規模宅地等の特例は、事業承継税制のような 80%評価減や事業継続
要件がないため法人より有利であり、このバランスをどうみるべきか
(2)早期の計画的取組の促進策【再掲】

Page 53
53
3.事業引継ぎ
(1)事業引継ぎ支援体制の強化
①抽出された課題
60 歳以上の経営者の割合が 2012 年には 51.8%になったとのデータもあ
り、今後 10 年間で5割を超える現経営者は平均引退年齢にさしかかると考
えられる。このうち中小法人は 168 万社であり、10 年間の平均で毎年8万
7千社が経営交代や廃業のタイミングを迎えることになる。
こうした潜在的ニーズの大きさに比べて、未上場企業間全体のM&Aの
成約件数については年間 597 件、事業引継ぎ支援センターの 2013 年度の成
約件数は 33 件となっている。
中小企業・小規模事業者の潜在ニーズに対して成約件数が少ない理由は、
譲渡企業、仲介事業者のそれぞれに以下の課題が存在することによる。
(ⅰ)譲渡企業
・相談件数が少ない
(理由・背景としては、M&Aに抵抗感があること、取引先との関係の
維持が懸念されること、情報漏洩や信用力の低下が懸念されること、金
融機関との関係を維持しにくいことが挙げられる。)
(ⅱ)仲介事業者
・小規模な案件を対象とした実績のある仲介事業者の数が少ない
・適正な売却価格の算定が煩雑
・情報の厚みが乏しく、マッチングが難しい
②検討会での議論
(ⅰ)事業引継ぎ支援事業の強化
独立行政法人中小企業基盤整備機構内に平成 26 年4月1日に設置した
「全国本部」において、情報の厚みを増すための対策、効率的なマッチン
グのための方策を行うことで、事業引継ぎ支援センターのM&Aの成約率
の向上、成約件数の増加を図ることが提案された。
具体的には、以下の2点があげられた。
・「情報の厚みを増すための対策」として、地域を巡回している全国 514
の商工会議所、1,679 の商工会の経営指導員が事業周知等を実施し、
事業者より相談があった場合に事業引継ぎ支援センターや事業引継
ぎ相談窓口を紹介する。事業引継ぎ支援センター等は全国から寄せら
れる情報を「全国本部」内にあるデータベースに登録し、全国レベル
で情報を集約。
・「効率的なマッチングのための方策」として、地域をまたがる
M&Aについては、「全国本部」が全国レベルで適切なマッチング
を実施。

Page 54
54
(ⅱ)M&Aガイドラインの策定
中小企業・小規模事業者にとって、M&Aの手法は現状では認知度が
低く、また、M&A後に事前に想定していなかった様々な問題が発生す
るおそれもある。したがって、中小企業・小規模事業者や仲介事業者等
の関係者がM&Aを正しい知識・理解のもとでうまく活用できるように
するため、M&Aを行う際のノウハウを集約した「M&Aガイドライン」
を作成することが提案された。
(ⅲ)後継者人材バンクの展開
個人事業主をはじめとして、後継者難の事業者と、創業を希望する者
のマッチングを促進する交流の場を設けるべきという意見が出され、こ
れを受けて、事業者と創業意欲あふれる人材をマッチングする「後継者
人材バンク」を全国に展開することが提案された

Page 55
55
4.第2創業支援
(1)意欲ある後継者の取組に対する支援
①抽出された課題
事業承継をした企業では経営革新が行われる傾向にあり、小規模企業、
中規模企業いずれであっても、経営革新を行っている中小企業の方が業績
が改善する割合が高くなっている(26ページ図27)。このことから、事
業承継は経営革新、新事業展開に取り組む好機になるといえる。
しかし、実際の事業承継の際の経営革新には苦労も多い。具体的には、
小規模企業では資金調達や従業員の協力を得ること、中規模企業では従業
員の協力を得ることや必要なスキルを持った従業員の確保に苦労したとす
るアンケートの回答もある。資金調達や従業員の協力には、いずれも事前
事業承継計画の策定や、金融機関等との調整が必要となる。
特に資金調達については様々な要因があり、既存事業のスクラップ等に
より設備廃棄等を行う場合も含まれる。また、第2創業時に既存事業の見
直しを伴うような場合には、資金調達で苦労する局面が多くなると考えら
れる。
【参考】事例1 不採算部門からの撤退
<A社>(鶏卵販売業)
先代社長が過剰投資により経営が悪化。鶏卵業の不振により、経営破綻の危機に。
2009 年に事業承継したのを機に、現経営者が鶏卵販売業からの撤退(設備廃棄、
再生コンサルへの依頼、取引清算)を英断。
雇用維持の観点から、既存ノウハウを活かし、他食品の卸売・物流業に集約し、
経営再建に成功。
【参考】事例2 事業承継を機とした設備投資
<B社>(食品小売会社)
先代と息子で事業を営んでいたが、先代が病気になったことを機に、息子に事業
承継。後継者である息子は事業承継後、新商品の開発やホームページの作成、売れ
行きのよくない商品の整理などで経営努力をする一方、300 万円ほどかけ店の内装
を変えるとともに、商品の陳列棚もより商品が見やすいものに変えた。

Page 56
56
②検討会での議論
後継者が事業承継を契機とした経営革新を行うにはリスクが伴うため、
予算や金融支援等の施策メニューの更なる充実化や、計画的な事業承継
更に促進する観点からのインセンティブという側面に留意すべきとの問題
意識の下、以下のような取組が提案された。
(ⅰ)創業促進補助金の拡充
後継者が不採算部門から撤退する際、既存事業の設備廃棄等にかる費
用を創業促進補助金の対象に追加。
(ⅱ)新事業活動促進資金等の拡充
日本政策金融公庫の「新事業活動促進資金」における第2創業関連融
資等への利率の引下げや、事業承継を契機とする既存事業での新たな取
組に対する融資制度・補助金等の拡充。
(ⅲ)後継者人材バンクの開設拡大
創業希望者をプールした「後継者人材バンク」が本年4月より静岡県
事業引継ぎ支援センターにおいて創設されたが、これを全国に拡大し、
やる気のある新経営者による事業承継を後押し。
図46:後継者人材バンクのスキーム図

Page 57
57
5.廃業円滑化
(1)小規模企業共済制度の見直し
①抽出された課題
廃業する場合の不安としては、生活資金の確保に次いで設備廃棄等の廃
棄コストの負担も挙げられているが、小規模企業共済制度においては、廃
業後の生活資金の手当が中心であり、廃業前の支援が用意されていない。
②検討会での議論
小規模企業共済制度は、廃業後の生活支援として機能する一方、加入者
は小規模企業の約4割に留まっていることから、より多くの経営者に本制
度を利用してもらうよう、加入手続簡素化(インターネット加入等)等が
提案された。
また、現行の小規模企業共済制度では、個人事業主が、親族外承継等に
より廃業する場合は共済金が満額支給(A共済)される一方、親族内承継
時(いわゆる隠居)には、後継者からの生活支援が期待できるため、支給
金額が低い(準共済)状況となっている。個人事業主の多くは親族内承継
の意向が強いことを踏まえ、親族内承継時の支給金額引き上げ等が提案さ
れた。
さらに、廃業コスト負担への対応として、小規模企業共済制度において、
掛金の一定程度を上限に、加入者に低利で融資する「契約者貸付制度」を
改正し、大垣共立銀行の事業整理支援ローン(カーテンコール融資)のよ
うな「廃業円滑化貸付」を行うことも提案された。
以上の制度面での見直しに加え、廃業については、今後「よろず支援拠
点」や「経営革新等支援機関」等の中小企業支援機関においても、全国津々
浦々の中小企業・小規模事業者の廃業を含む、幅広い相談に対応するため
の体制の構築等が提案された。

Page 58
58
第三章 本検討会での議論を踏まえた今後の対応の方向性について
本検討会での議論において、事業承継等をめぐる現状、事業承継等施策のこれま
での展開と最近の動向、そしてそれらを踏まえた論点の提起、各論点に関する活発
な議論や提案が行われた。
以下、第三章においては、本検討会での議論の結果を踏まえ、今後の対応の方向
性について提言する。なお、既に法人の円滑な事業承継への対応として、事業承継
税制適用の要件について平成 25 年度税制改正(平成 27 年1月施行)に相当な見
直しが行われており、こうした直近の施策も含めて整理することとする。
すなわち、第三章においては、これまでに掲げられた論点等について、既に着手
した施策を「第一段階の対応」として整理した上で、事業承継等の形態の変化等に
対応した「第二段階の対応」、そして今後の政策課題としての「第三段階の対応」
に分けて整理し、速やかな政策対応の着手や、更なる検討の深化を期待することと
したい。
(1)第1段階の対応
・法人の円滑な事業承継については、平成 21 年度に事業承継税制が創設され、
その活用が大いに期待されたが、使い勝手の悪さなどから必ずしも利用が進ま
ず、件数もそれほど伸びているとはいえない。
・このため、平成 25 年度税制改正で相当な見直しが行われ使い勝手が改善した
ため、平成 27 年1月から施行される新税制は評価・期待も高く、その活用が大
いに期待されるところである。
・したがって、政府においては、本制度が広く全国津々浦々の中小企業・小規模
事業者に浸透するよう、施行に向けて着実な広報・普及を行うことが必要であ
る。
(2)第2段階の対応
・他方、本検討会での議論において、近年における事業承継等をめぐる大きな状
況変化が明らかにされた。
まず第一に、中小企業・小規模事業者の経営者が高齢化し、今後数年で引退
にさしかかることに伴い、多くの経営者にとって事業承継が重要な経営課題と
なっている点である。例えば、60 歳以上の経営者の割合は 20 年前の 29.8%に
対して、2012 年には 51.8%にまで増えており、小規模事業者の平均引退年齢が
70.5 歳であることを踏まえれば、今後 10 年間で5割を超える現経営者が平均
引退年齢にさしかかり、事業承継のタイミングを迎えることになると予想され
る。

Page 59
59
第二に、深刻な後継者不足により、後継者を親族内では見付けられず、親族
外の第三者、更には他企業(事業の売却)に求めるケースが増えているという
点である。この変化に伴い、親族内承継では比較的容易であった事業用資産等
の財産の移転や、債権・債務関係の整理等の調整を要することとなるため、専
門家等の第3者の支援や、ガイドライン策定等を通じた事業承継関連の法務・
税務等の知識の普及が求められている。
第三に、廃業をめぐる状況変化である。経営者の高齢化に伴い、事業の先行
きの見通しが暗い場合などには、債務超過となり「辞めるに辞められない」状
況に陥る前に廃業を選択するケースが増えている点である。具体的には、企業
の倒産件数は平成 18 年の約 9,600 件から平成 25 年は約1万件と横ばいである
のに対し、休廃業・解散件数は平成 18 年に約2万件であったのが平成 25 年は
約2万9千件と大幅に伸びている。
こうした廃業件数の増加に伴い、廃業の円滑化に向けた支援(廃業に必要な
コストに対する融資等の金融支援、廃業後の生活資金確保への支援)が求めら
れている。
第四に、小規模企業振興基本法の成立等に見られるように、小規模事業者の
我が国経済社会における積極的な評価がなされ、その持続的な事業活動を可能
とする環境整備が求められている点である。この中で、政策当局は、中小会社
事業承継等の円滑化に向けて政策的枠組を構築してきたところであるが、小
規模企業の約6割を個人事業主が占めることを踏まえれば、個人事業主の事業
承継等を円滑化するための政策の検討が求められている。
・以上、4点の変化を示したが、こうした事業承継等の形態の変化について、「第
一段階の対応」として述べた事業承継税制の見直しのみで対応ができていると
は言えない。このため、上記の形態変化に対応する施策として、以下のような
ものを検討することが必要と考えられる。
第一に記載した経営者の高齢化への対応としては、各経営者に事業承継を計
画的に取り組んでもらえるよう、税理士、弁護士、中小企業関係団体、金融機
関等の関係諸機関と緊密な連携を図りつつ、事業承継ガイドライン等の普及促
進や、経営指導員の強化等を通じたきめ細かい支援の提供や、後継者とともに
計画的に事業承継に取り組み、承継後に第2創業等に挑戦する取組等を支援し
ていくことが考えられる。
事業承継の一層の普及啓発のための計画的な取組の仕組みづくり、事業承継
ガイドラインの改訂、事業承継を契機とする第 2 創業や既存事業での新たな
取組等に対する制度融資・補助金等の拡充
事業承継を円滑化するための贈与税猶予措置の要件緩和

Page 60
60
第二に記載した後継者を親族内で見つけることができないことへの対応と
しては、近年増加傾向にある親族外承継やM&A等の促進を図るため、次の施
策について検討を行う。
③第三者への事業承継を円滑化するための民法特例における親族外承継の対
象化
④事業引継ぎ支援のための事業引継ぎ支援センターの全国展開・機能強化(後
継者人材バンク)・M&Aガイドラインの策定
第三に記載した廃業への対応については、廃業に係るコストや、廃業後の生
活資金確保のため、次の施策について検討を行う。
⑤廃業円滑化のため、小規模企業共済制度を拡充し、自主廃業までに必要な事
業整理資金に対する契約者貸付制度の創設、事業承継時の共済金引上げ等を
実施
⑥廃業を含む幅広い相談に対応するための体制構築
第四に記載した小規模事業主の事業承継等の円滑化への対応については、個
人事業主の事業用資産における建物等の事業用資産の比率が高まっていること
を踏まえ、次の施策について検討を行う。
⑦個人事業者の事業承継円滑化のため、土地以外の事業用資産についても相続
税を軽減する制度の創設
また、事業承継税制の適用に係る手続きが煩雑であるため、次の施策を速や
かに実施する。
⑧申請者の負担を軽減するための申請書のエクセルファイル化
以上の点について、中小企業庁においては、今後速やかに所要の政策措置の
詳細設計及び要求・制度改正準備を進めるとともに、各種ガイドラインの制
定・改正など新たに検討の場を設ける必要がある論点については、そうした場
の設置も含めて対応すべきである。また、施策の広報・普及については、多く
の委員からその重要性が指摘された。「よろず支援拠点」、「経営革新等支援機
関」等の中小企業支援機関への施策の普及に加え、中小企業団体、金融機関、
市町村等の関係機関の人材、ノウハウやネットワークも活用しながら、効果的
な広報・普及を行う必要がある。

Page 61
61
(3)第3段階の対応
・上記の「第1段階の対応」、「第2段階の対応」によって、事業承継等施策の
一層の充実が実現すると考えられるが、事業承継をめぐる状況は刻一刻と変
化するものであり、「第2段階の対応」で手当した施策の着実な評価を実施し
つつ、変化にも対応した「第3段階の対応」を、政策当局は常に意識してお
くことが必要である。
・具体的に、まず税制については、本検討会で提起された①猶予される相続税・
贈与税の範囲(発行株式の 2/3、課税価格の 80%)の拡大(注)や、②非上場
株式の評価方法について再点検を行うこと、③雇用確保要件の緩和等につい
ては、政策当局において引き続き精緻な検討を進めるとともに、平成 27 年1
月の事業承継税制の改正後直ちに、その利用状況、評価等の実態を把握し、
更なる事業者等からのニーズを踏まえつつ、税制改正の必要性が確認された
場合には速やかに制度改正要望を行うことが期待される。その際、税理士、
弁護士、中小企業関係団体、金融機関等の関係諸機関も、相互に連携しつつ、
更なる税制改正ニーズの積極的・継続的な把握に努めるべきである。・また、
その他の論点として、①後継者を一人から複数へ緩和することや、②贈与の
納税猶予措置と相続時精算課税制度の併用、③分散した株式を再び集中させ
るための対策案の検討、④信託の活用等が挙げられたが、これらについても
検討会で意見が分かれた点も含め、今後更に検討を深めていくことが期待さ
れる。
・さらに、税制以外の法制度・ガイドライン、予算措置、関係諸機関の連携の
在り方、政府の広報等についても、不断の見直しにより、事業承継が一層円
滑に進むよう、適時、必要な措置を講ずべきである。
(注)この①については「第2段階の対応」に含めて、直ちに税制改正要望を行うべきとの事業者委員から強
い要望が示された。

Page 62
62
おわりに
本中間報告は、経営承継円滑化法の施行から5年が経過したことも踏まえ、経
営者の高齢化が進む我が国中小企業・小規模事業者の事業承継等の更なる円滑化を
図り、事業の活性化に繋げていく観点から、現時点での課題を抽出し、今後の対応
の方向性をまとめたものである。
我が国中小企業・小規模事業者の事業承継の円滑化を実現していくためには、経
営者による事業承継へ向けた早めの計画的な取組が重要となる。「現状で手一杯で
先々のことを考える余裕がない」「まだ先のことだから」といって事業承継対策を
先送りすれば、いざ事業承継となった時に、相続をめぐるトラブルになったり、後
継者が取引先や従業員の信頼を得られない等の様々な問題が発生し、最悪の場合、
廃業に至ることになりかねない。そのような事態にならないよう、後継者の候補者
を選定し、育成し、徐々に経営権を移していくといった早めの取組が大切である。
中小企業庁をはじめ、中小企業・小規模事業者を支援する立場の関係者が、今後も
粘り強く事業承継の重要性について普及啓発に努めていくことが必要である。
また、近年の事業承継等の形態の割合が変化していることや、平成 25 年度税制
改正による事業承継税制の新制度が平成 27 年1月からスタートするなど、事業承
継等をめぐる状況や制度が変化していることも踏まえ、事業承継等の円滑化に向け
た課題の抽出及び検討を今後も継続的に行っていくことが必要である。
本中間報告でまとめられた対応の方向性について、全国の中小企業・小規模事業
者の事業承継の円滑化を更に促進していくため、中小企業庁をはじめ各関係団体等
が必要な取組を行うとともに、引き続き検討を深めることとされた事項についても、
継続的に鋭意検討が行われることが重要である。

Page 63
63
事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会 名簿
(五十音順・敬称略)
荒井 恒一 日本商工会議所 理事・産業政策第一部長
飯野 一宏 株式会社日本M&Aセンター 上席執行役員
池田 雅一 株式会社三菱東京 UFJ 銀行 執行役員 法人業務部長
後 宏治 税理士・公認会計士(税理士法人 UAP)
及川 勝 全国中小企業団体中央会 政策推進部長
大山 雅己 独立行政法人中小企業基盤整備機構 経営支援部事業
承継コーディネーター
苧野 恭成 全国商工会連合会 企業支援部 部長
城所 弘明 公認会計士(城所会計事務所所長)
座長 品川 芳宜 筑波大学名誉教授
渋谷 雅弘 東北大学法学研究科教授
鈴木 弘 株式会社商工組合中央金庫 ソリューション事業部長
鈴木 康祥 公益財団法人全国法人会総連合 事業部次長
髙井 章光 弁護士(日弁連中小企業法律支援センター 事務局長)
竹本 雅則 東京中小企業投資育成株式会社 取締役
玉越 賢治 税理士(タクトコンサルティング代表)
長島 剛 多摩信用金庫 価値創造事業部 部長
西山 由美 明治学院大学経済学部教授
浜野 光淑 全国商店街振興組合連合会 総務部 総務課長
平川 忠雄 税理士(平川会計パートナーズ代表)
水野 紀子 東北大学法学研究科教授
宗友 輝夫 株式会社日本政策金融公庫 国民生活事業本部
融資企画部 部長
幸村 俊哉 弁護士(第二東京弁護士会 弁護士業務センター委員長)
吉岡 毅 弁護士(日本弁護士連合会 事務次長)
綿貫 豊 一般社団法人全国青色申告会総連合 理事・事務局長