1.日 時:平成13年7月24日(火) 14:00~16:30
2.場 所:経済産業省本館17階 国際会議室
3.議 題:雇用システム改革について
新成長政策部会中間とりまとめ(案)について
【雇用システム改革について】
○ 資料3について、持永産業人材政策室長より説明。
【委員からのご意見】
○ 「労働者個人がその希望に応じて適切な仕事を選択する」という表現があるが、
日本の外部労働市場においては、未だ「職種」「職業」というものに対する共通認
識ができていない。適切な仕事を選択するといっても、そもそも仕事の中身の概
念がはっきりしていないので、まず、「職種」、「職業」を社会的に定義付けること
が必要である。「職業」の定義がはっきりしなければ、必要とされている能力がわ
からないため、個人レベルでの能力開発はままならない。
外部労働市場で強く求められる「実務経験」にしても、「実務経験」という名で
企業が求めている能力が具体的に何であるかを社会的に明確化し、そのような能
力を育成するシステムをつくっていくべきではないか。
○ 社会人大学院による社会人の再教育機能は、現状ではキャパシティが小さいし、
インフラも整備されていない。社会人教育のためのプロフェッショナルも不足し
ており、現状の深刻さを認識してほしい。
○ 自分のキャリアを高めたい、高度な能力を身につけたいということで社会人大
学に来る人だけでなく、自分の働く目的を探したり、今後の職業設計を考えるた
めに大学に来る社会人がいる。専門的な能力を身につけさせるという機能以外に
も、社会人大学に求められている機能があると考える。
各労働者の持つ知識や言葉にならない暗黙知などの「実務経験」や、対人関係
のマネージ能力についてのナレッジマネージメント(「ディープ・ナレッジマネー
ジメント」)が重要である。また、専門学校などで教育を受け、知識を身につけて
も、知識は3年もすれば陳腐化してしまう。社会人教育の際は、必要とされる能
力の変化に従い、高い知識を次々と獲得することができる能力を身につけさせる
「メタ・ナレッジ」も大切である。
コンピューターの使い方を学ぶのも重要だが、コンピューターでは置きかえら
れない機能を人間が担っていかなくてはならない。
コーポレートユニバーシティなど、人材育成面での産学連携も今後重要である。
○ 現在就いている職業における熟練度を高める努力を継続的に続けることが重要
である。それを支援するためには、個人が能力向上のために使ったお金は全額課
税控除にすることが重要である。また、市民意識の向上という観点からも、税金
の自己申告制の導入が求められるのではないか。
確定拠出型年金制度は個々人の生活設計や雇用制度とも密接に関連しており、
制度の内容についてもっと議論を行ったほうがよいのではないか。また、現状の
退職金制度では、途中退職した際の退職金がどれくらいになるのかが明示されて
いないが、能力開発や転職など、個々人の人生設計を立て易くするためにも、途
中退職時の退職金額を明示するシステムを導入するべきである。
現在の日本の競争力の欠如の一因は、個々人の能力開発のための向上心を育て
るよりは、環境に調和・従属していくような社会になっており、税・年金・退職
金などの制度面で、向上心を育てる方向に変えていくべきではないか。
○ 労働者がスキルを獲得する機関として、専門学校についても触れるべきではな
いか。また、米国のコミュニティカレッジのように、ITリテラシーのように迅速
な供給がもとめられる能力を持った人材を、1ヶ月などの短い期間で集中的に育
成するような機能を大学等に持たせることを検討してはどうか。
○ 長期常用雇用などのこれまでの雇用システムは合理性を失い変化しつつあるが、
今後どのような形になるのかというビジョンが描かれていない。
個人の能力が日本の組織の中できちんと評価されているのか、また能力が活用
されるような仕事についているのかどうかが疑問であり、たとえ個人が技術や専
門能力を身につけてもそれが報われないのではないか。
雇用の流動化が進むと、長期雇用の枠組みに入る人と、専門能力を身につけて
長期雇用の枠組みに入らない人との二極分化が生じると考えられる。現在の日本
のシステムでは、同じ仕事をしている人でも正規雇用と非正規雇用で処遇が違う
ため、流動化が進むと、人件費の安い非正規雇用が増えてしまい、また企業の中
の人材が活用されなくなってしまうのではないかと懸念している。
外国人労働者の活用も含めて、国籍や性別に関係なく個人の能力が活用される
ような雇用システムをどう構築していくのかを議論すべきではないか。
【新成長長政策部会 中間とりまとめ(案)について】
○資料4について、石黒産業構造課長より説明。
【委員からの意見】
○ 報告書の最初に、「イノベーション」の定義が必要。「技術革新」がうまくいっ
て需要が喚起されたものが「イノベーション」であるというトートロジーになっ
てしまうかもしれないが。
行政サイドの需要創造政策としては規制緩和しか打ち出されていないが、需要
開拓のために苦労している民間企業をどう支援するのかもはっきりと記述するべ
き。
地域振興については全体にもう少し書いてほしいが、今回書かれている高齢者
を地域ごとに支えようというのはおもしろいアイデア。地域が高齢者を支えられ
るように、金銭面を含めて分担の仕組みを考えたらどうか。
また、現状の制度では、各県横並びが基本となっているが、県同士が競争する
ような考え方を、報告書のどこかに盛り込んでもよいのではないか。
○ ストーリーの書き方として、問題点があってそれに対応するための対策を提示
するという流れになっており、全体としてどのような社会にしたいのかという将
来像が見えないことに疑問を覚える。例えば、「家が郊外にあり、毎日都心に通勤
したくないので、ITを駆使して週3日は在宅勤務に変える。」といった若い人が
共感するようなビジョンの提示が求められているのではないか。
雇用改革についてコメントすると、現在の日本でも、社内での異動が概ね2~
3年単位で行われることからもわかるとおり、「仕事」を変えるのは簡単であり、
余人を持って代え難い仕事はほとんどない。つまり、他企業に転職しても「仕
事」はできるはずであるが、我々の中にできないという思い込みがあるために労
働市場の可動性が低い現状となっているのではないか。国が、同じ仕事に就いて
いる人をその就業形態や年齢、性別などで差別してはいけないという制度をつく
れば、可動性は上がるのではないか。
これからの時代は、モノではなく、サービスを消費して満足を得ることになる
が、そのためには自由に使える時間が必要である。現在の長期常用雇用や長時間
労働の慣習がある状況では、自由になる時間がないためにサービスに対してお金
を使うことができない。
○ イノベーションと需要の好循環をつくるためのクリティカル・サクセス・ファ
クターが何であるかを明示的に示したほうがいい。
大学を卒業して10年くらい経過した30代前半が、一番クリエイティブで良
く働く時期である。80年代の米国は、大学等における情報科学関係の定員が大
幅に増えた時期であり、そのときに教育を受けた人達が、30代になって90年
代のIT好景気を支えたという分析がある。好循環メカニズムの形成のためには、
産業分野毎に、必要とされる人材の質と量を予測して、5年後、10年後の人材
供給プログラムをつくるということが必要である。
○ アメリカの大学は時代を先取りする教育・研究を行っているが、競争的に資金
を得ているという環境の影響が大きい。報告書にも提言されているが、競争的資
金の拡充、国立大学改革などの施策は、長期的に見て重要である。
短期的な需要拡大策を考えると、国・地方の電子政府化の推進などが重要では
ないか。公共事業としては、都市環境や住宅投資を喚起するような施策が必要。
日本はモノで満ちており消費が飽和していると言われているが、単に家が狭くて
これ以上モノを置けないだけである。住宅の広さに対するニーズなど、もっと豊
かな生活をしたいという思いがあるはずであり、政府が効率的なインフラ整備を
すれば喚起できる需要がある。長期的な施策だけでなく短期的な景気回復を考え
た、効果のある施策についても目配りをしてよいのではないか。
また貿易についても、少子高齢化が進みISギャップの拡大が予想される中で、
経常黒字が増えざるを得ないという視点が必要。
○ イノベーションに対してどのようにファイナンスするのか、トータルの戦略が
ほしい。大学の技術・研究でも、企業化できる段階に達したものであれば、民間
の資金が入るメカニズムを作れるし、純粋にサイエンスとして研究の価値がある
ものであれば、大学の研究費でまかなえる。しかし、ちょうどその中間の、技術
として面白いが具体的な事業化への道が分からないといったものをファイナンス
する手段が現状ではないため、それを埋めるものとして大学に対する寄附を促進
する税制があるとよいのではないか。
ITの部分について、ロケット開発などの記述があってブロードバンドについ
て記述が少ないのはバランスが悪い。
○ 雇用をどう保証するか、企業はどう活力を維持するかといった、マクロ的な視
点で見た考え方で報告書は書かれているが、個々人の生き方をどうするのかと
いった、個の目から見た未来像が描かれた部分があってもよい。報告書の最後に、
いくつかの未来の「物語」をつけてはどうか。
他の委員の指摘にもあったが、イノベーションの定義の明確化は必要である。
おそらくイノベーションとは「起こすもの」ではなく「起きるもの」だと思うが、
起きるための条件・環境を用意することはできる。ただし、全ての条件が整って
も、最後に国民がそれをやろうと思わなければ、結局イノベーションは起きない。
高度成長期の「所得倍増」のように分かりやすい将来像を分かりやすい言葉で国
民に伝えることにより、人々のやる気を起せるかどうかがポイントである。
○ 産業の競争力があっても需要がなければ企業にとっては意味がない。しかし、
報告書で示されている「安心感」、「健康」という切り口だけで、十分に国民を惹
きつけ、需要を拡大することができるのかどうかは疑問。他の委員から指摘の
あったように、「夢を持てる」生活の将来像を示すべき。
○ ベンチャー支援のためのシステムは相当整備されたが、未だうまく働いていな
い。創業を支援するための人材の不足や手本とすべき成功例がないことなどが原
因であり、「大学発ベンチャー」を成功させるためには、システマティックなサ
ポート体制が必要であり、例えば詳細なマニュアルを作るなどの徹底した施策を
実施するべきである。
○ 大学に対する社会の期待を、大学が積極的に受け止めることが必要である。個
人が能力向上のために再教育を受けたいと思っても、イブニングコースの未整備
などのため、現在の大学では社会のニーズに応えられない。大学に期待される社
会のニーズを具体的に詰めていくことが必要である。
|