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産業構造審議会知的財産政策部会不正競争防止小委員会(第5回) 議事録



1.開 会

○土肥小委員長 それでは、定刻になりましたので、産業構造審議会知的財産政策部会
第5回不正競争防止小委員会会合を開催いたします。
初めに、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。
○小宮知的財産政策室長 それでは、配布資料の確認をいたします。配布資料一覧にあ
りますように、資料1から4までございます。資料3が本日のメインの資料でございま
す。4が参考資料でございます。
それから、参考配布といたしまして、4回目の議事録をメインテーブルのみ配布させ
ていただいております。あわせて当省のホームページにも掲載しておりますので、恐縮
ながら、オブザーバーの方々は適宜ホームページをごらんいただきたいと思います。
資料の不足、落丁等がございましたら、事務局へ御連絡いただきたいと思います。
以上です。

2.事務局説明
民事的救済措置の強化及びネットワーク化への対応について(2)

○土肥小委員長 それでは、議事次第に従いまして委員会を進めさせていただきます。
本日は、民事的救済措置の強化及びネットワーク化への対応に関する第2回目の検討
を行うことといたしております。
それでは、小宮室長から資料に基づいて説明をお願いいたします。
○小宮知的財産政策室長 それでは、資料3に基づきまして、約30程度お時間をいただ
きまして御説明を申し上げたいと思います。
最初の柱書きのところにありますように、今回の課題というのは、民事的救済措置の
強化のうちの「逸失利益立証容易化規定の導入」でございます。これは前回の積み残し
の案件というふうに理解しております。
2番目がネットワーク化への対応に係る「商品」「使用」「譲渡」「引き渡し」の概
念の見直しでございます。
それでは、まず、民事的救済措置の強化の「逸失利益の立証容易化規定の導入」でご
ざいます。
まず、課題、枠囲みに書いてありますように、損害額の算定方法の1つである逸失利
益(侵害行為がなければ得られたであろう権利者の利益)の立証の容易化を図るため、
特許法第102条第1項等と同様、「被告の譲渡数量×原告の単位数量当たりの利益額」
を算定式とする規定を導入するかどうかというのが課題でございます。
参考とすべき平成10年改正特許法などの規定及び趣旨でございますけれども、ここに
ありますように、10年改正で新たに特許法にこの推定規定を導入したわけですが、下の
趣旨のところにありますように、改正以前におきましても、民法709条に基づきまして、
侵害行為がなければ得られたであろう利益の賠償を請求することが可能であったわけで
ございます。こうした請求に対する判例を見てみると、因果関係を十分に立証できた場
合にのみ逸失利益の賠償ができる。逆に言うと、ほかの場合には賠償は認められていな
い、それ以外の場合には、逸失利益の賠償は全く認められていない、つまりオール・オ
ア・ナッシングの認定が現状であったわけでございまして、こういう問題を解決するた
めに、10年改正におきまして102条1項を新設して、侵害者の営業努力や代替品の存在
等の事情が存在し、侵害品の譲渡数量すべてを権利者が販売し得たとは言えない場合で
も、それらの事情を考慮した妥当な逸失利益の賠償を可能とする損害額の算定ルールを
規定したわけでございます。
商標権、意匠権、実用新案権の場合も同様の問題があるということで、同様の規定を
置く改正を行っているわけでございます。
次に、②平成10年改正の運用状況、評価でございます。ここに裁判件数を表に整理し
てありますが、特に特許法において、この規定を活用して損害額が認定された件数が多
いということが見てとれるわけでございます。
3ページに評価が書いてあります。最初は三村先生の評価でございますけれども、非
常に利用価値の高い規定という積極的な評価がある反面、これは化学製品の場合という
特殊事情があるかもしれませんが、儲けているなという印象が与えられてしまうという
ことで、使いにくいかもしれないという御意見もあるわけでございます。
こういうことを踏まえながら、不正競争防止法への導入の是非の検討ということで、
考え方として、「改正しない」という考え方と、「同様の規定を置く」という考え方が
あるわけでございます。
まず、「来年度は改正しない」という考え方をとった場合の留意点ですが、実際上の
留意点としては、特許法における侵害行為の態様として「譲渡」行為のみが規定された
のは、当該行為が侵害行為のほとんどを占めるからとされている。しかしながら、不正
競争防止法における侵害行為の態様は、商品の「譲渡」は必ずしも多いわけではなく、
商品等表示の「使用」や商品等表示を使用した商品の「輸出」等さまざまなものが含ま
れる。
不正競争防止法において、逸失利益の立証容易化規定の適用が考えられるのは、
(ⅰ)他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡、(ⅱ)他人の商品等表示を使用した商
品の譲渡等の類型に限定されることから、規定を設ける必要性が乏しく、特許法102条
第1項や商標法第38条1項などの類推適用による対応でも可能と解し得る。
それから、理論上の留意点でございます。
特許法第102条1項は、判例上、排他的独占権という特許権の本質に基づき、特許権
を侵害する製品と特許権者の製品が市場において補完関係に立つという擬制のもとに設
けられた規定と解されている。
この判例に従うのであれば、不正競争防止法は行為規制法であり、そもそも特許権や
商標権などのように排他的独占権を付与されていないため、補完関係の擬制を前提とす
る規制の導入はなじまないとも考えられるわけでございます。
次に、商標法第38条1項については、判例上、商標権は特許権などの他の工業所有権
とは異なり、侵害があった場合に、市場において当然には相互補完関係が存在するとい
うことはできないとして、適用が否定された事案も存在するわけでございます。
不正競争防止法は、必ずしも補完関係が認められるわけではないことから、当該規定
の適用を否定する場面が多くなり、適切な規定といえるか、疑問の余地もあるわけでご
ざいます。
特許法第102条第1項但書の損害賠償額を控除すべき「特許権者又は専用実施権者が
販売することができないとする事情」とは、立法趣旨としては「侵害者の営業努力、市
場における代替品の存在等の事情」をいうものとされていた。しかしながら、判例は、
市場が補完関係に立つという擬制を前提に「侵害者の営業努力や、市場に侵害品以外の
代替品や競合品が存在したことなどをもって、当該事情に該当すると解することはでき
ない」と限定的に解釈するものもあるわけでございます。
不正競争防止法は、前述のとおり、必ずしも補完関係が認められるわけではないため、
このような限定的な但書の解釈を前提として、適切な損害額の調整を図ることは困難と
も思われるというのが、「改正しない」という立場に立った場合の留意点になるわけで
ございます。
他方、「同様の規定を置く」という立場に立った場合の留意点でございますが、まず、
実際上の留意点でございます。
不正競争防止法においても、他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等幾つかの行為
態様については、特許法第102条第1項と同様の逸失利益の立証容易化規定を活用でき
るものが存在する。
特許法第102条第1項の適用範囲については、立法者の解説として「「譲渡」以外の
場合についても、本規定の算定ルールが妥当する場合には、この考え方を参考にした損
害賠償額の算定が可能と考えられる」旨記載されており、不正競争防止法においても柔
軟に類推適用することが可能と解されるわけでございます。
逸失利益の立証容易化規定の導入により、不正競争防止法における損害賠償額の認定
が、特許法と同様に現行より高額のものとなることは容易に予想され、いわゆる「侵害
し得」と指摘されている状況の改善にも資するものと考えられるということでございま
す。
次に、理論上の留意点でございます。
平成5年の法改正の際、現行の5条1項の新設の際にも、排他的独占権である特許権
等について特許法等が設けた特則を不正競争行為による損害賠償請求に無条件に類推適
用できるか問題はあったわけですが、被害者保護の見地から政策的に導入された経緯が
ございます。今回の逸失利益の立証容易化規定についても政策的見地により、導入する
余地があると思われるということでございます。
次に、著作権に関する民事訴訟事件において、著作権法については、特許法第102条
第1項に対応する改正が行われていない等から、著作権法第114条第1項に基づいて、
同様の効果を求めることはできないとされた判例が存在しているわけでございます。こ
のような判例を踏まえて、現在、文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会におき
まして、当該制度の導入に向けた検討を行っているところであります。したがいまして、
不正競争防止法においても、上記問題点を認識の上、最終的には著作権法とも整合的な
解決を図ることが望ましいと思われるということが理論上の留意点として挙げられるわ
けでございます。
次に、不正競争防止法への導入に伴う問題点でございます。
検討事項といたしましては、仮に特許法と同様の算定式の逸失利益の立証容易化規定
を導入した場合に、いかなる不正競争行為が対象となり得るかということでございます。
これは類型別に議論してございます。
まず第1に、他人の商品等表示を使用した商品の譲渡(第1号、第2号、第15号)の
関係でございます。これについては「肯定的に考えることができる」のではないかと思
います。理由といたしましては、営業上の信用が化体した標識の冒用行為であり、かか
る冒用行為により冒用者の商品等を購入することによって、被冒用者の売り上げが減少
するという関係が成り立ち得るため、つまり競合関係が認められる場合であれば、逸失
利益の立証容易化規定を適用する余地があるのではないかということでございます。
次に、他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡(第3号)でございますけれども、こ
れも「肯定的に解される」のではないかと思います。理由としては、商品形態のデッド
コピーについては、商品における先行者が、他者が独自に商品化するまでの期間は、先
行者が新たに開発した部分に関して他者と競合することなく、事実上、独占的に商品の
販売を行うことができたはずであるわけですから、市場先行の利益を奪われる点におい
て、逸失利益の立証容易化規定が妥当するといえるのではないかということでございま
す。
次に、営業秘密を使用した商品の譲渡(第4号から第9号)の関係でございます。こ
れは「肯定的に解する余地もある」ということではないかと思います。理由といたしま
しては、不正使用の対象となった営業秘密の成果物を他者が市場で営業に用いることに
よって、営業秘密の保有者が当該市場において有する利益が減少するという競合関係が
存在する場合に限り、逸失利益の立証容易化規定が適用し得るということでございます。
次に、ドメイン名を使用した商品の譲渡(第12号)関係、それから、原産地、品質、
内容及び製造方法等を誤認させる表示を使用した商品の譲渡(第13号)関係ですが、こ
れは「否定的に解し得る」のではないかと考えます。理由といたしましては、かかる行
為は不公正な競争行為に該当するもので、他人の成果を冒用して製品を販売しているこ
とにより、権利者のシェアを奪っているものではないと考えられるからでございます。
最後は、その他の第10号、第11号、第14号ですが、これは「否定的に解し得る」ので
はないかということでございます。理由といたしましては、山本さんの書いた「要説不
正競争防止法第3版」において記述があるわけですが、5条2項のライセンス料相当額
について、「強いていえば、不正競争により営業上の利益を侵害された被害者たる事業
者の逸失利益のようなものといえよう。したがって、その逸失利益が一般的に観念しえ
ない第10号及び第11号、第13号、第14号の行為については、第5条第2項の各号の規定
するところとなっていない。」という記述があるわけでございます。
以上が、逸失利益の立証容易化規定に関する議論でございます。
引き続きまして、8ページ以降、ネットワーク化への対応について御説明をしたいと
思います。
情報技術の発展に伴いましてインターネットを利用した電子商取引が急速に拡大して、
ネットワークを利用した新たな商品流通もしくは広告というものが登場しているわけで
ございます。こういう観点から、今年の特許法等の改正におきましては、「物」や「譲
渡」などの定義規定、以下「概念規定」と言わさせていただきますが、これを社会のネ
ットワーク化の進展に対応できるよう明確化する措置がなされたわけでございます。
そこで、不正競争防止法につきましても、ネットワークを利用した無体物の取引行為
に対応するため、「商品」「使用」及び「譲渡」「引き渡し」の概念規定について改正
の是非を検討する必要があるものと思われるわけでございます。
ここにありますように、3つに分けて議論を進めたいと思います。
まず、「商品」の概念でございます。課題としては、コンピュータ・プログラムなど
の無体物は、「商品」に該当するかというものでございます。①として平成14年改正特
許法等の規定及び趣旨がありますが、注目していただきたいのは、特許法では改正いた
しましたけれども、商標法では改正をしなかったわけでございます。8ページの一番下
ですが、趣旨といたしましては、特許法は、「物」にプログラム等の無体物を含める改
正を行っているわけですが、「物」という用語については、民法上「物トハ有体物ヲ謂
ウ」という規定(民法第85条)が存在するため、民法の「物」にプログラムなどの無体
物が含まれることを法律上明確にするための改正であるわけでございます。
他方、商標法は、国際的に「商品」には無体物が含まれるという解釈もあること等か
ら、改正を行っていないわけでございます。
第2に、不正競争防止法に関するこれまでの議論でございます。
「商品」の解釈につきましては、有体物に限るとする立場と、有体物に限定されず無
体物まで含むとする立場、限定説と非限定説があるわけでございます。
限定説と非限定説の判例を書いてありますが、57年4月のタイポス書体事件の判例に
おきましては、「「商品」とは、取引市場における流通に置かれるべきものとして生産、
加工され、それ自身経済的価値を有すべき有体の動産ないし物件をいうものと解され、
したがって、少なくとも有体物であることを必要とし、無体物はこれに含まれないと解
されるから、特定の創作書体(タイポス45)は商品に該当しない。」という判例でご
ざいます。 他方、非限定説ですが、平成5年のモリサワタイプフェース事件でござい
ます。「不正競争防止法は、公正な取引秩序の維持、確立を目的とするものであるから、
取引の実情を踏まえ、その実情の中において、公正な取引秩序の維持、確立の観点に立
ち、同法が規定する前記の不正競争行為の類型に該当するか否かを検討すべきものとい
うべきである。この意味で、無体物であっても、その経済的価値が社会的に承認され、
独立して取引の対象とされている場合には、それが、不正競争防止法1条1項の規定す
る各不正競争行為のいずれかに該当するものである以上、これを前記の「商品」に該当
しないとして、同法の適用を否定することは、同法の目的及び右「商品」の意義を没却
するものである。」ということで、非常に広く解しているわけでございます。
このような議論を踏まえまして、不正競争防止法改正の是非の検討として、「改正す
る」という考え方と「改正しない」という考え方があるわけでございます。
「改正する」という考え方ですが、「商品」とは、通常の言葉の意味に従う限り、市
場における流通が予定されているものであるが、無体物にはそのような流通性が存在し
ない。また、無体物については、それ自体に表示を使用するということが不可能である。
不正競争防止法は、「商品」について、例えば「容器若しくはその包装」(第1号)、
「原産地、品質、内容、製品方法、用途若しくは数量」(第13号)という用語を用いて
おり、また、侵害行為に「譲渡、引渡し」を含めている。かかる用語法から、法が「商
品」として有体物を専ら念頭に置いていることが考えられるわけでございます。
他方、「改正しない」という考え方でございますが、「商品」を有体物に限るとして
いる上記のタイポス書体事件は、ネットワーク技術が発達する以前の流通形態を念頭に
置いたものであり、現在の情報社会においては無体物も有体物と同様、独立した取引の
対象として認知されていることから、「商品」に無体物を含めて解釈することが適当で
ある。
さらに、特許法は「物」と規定しており、民法上「物トハ有体物ヲ謂ウ」という規定
が存在するため、その意義について明確化する観点から改正を行ったわけですが、不正
競争防止法は、商標法と同様に「物」ではなく「商品」と規定していることから、その
ような必要性はない。不正競争防止法上は「商品」概念の定義規定はなく、「商品」に
該当するか否かは、同法の目的たる公正な取引秩序の維持、確立の観点に立って検討す
べきであることから、有体物と無体物で解釈を異にする必要はないと考えられるという
ことでございます。
次に、「使用」の概念について議論を進めたいと思います。
課題ですが、パソコンや携帯電話の画面上等ネットワーク上での他人の商標等の表示
の使用は、「使用」に該当するかという課題でございます。
これにつきましては、平成14年の商標法等の改正で、ここの趣旨にありますように、
商標法には、商標権の効力を明確化するため、標章の「使用」についての定義規定が置
かれているわけであります。かかる「使用」行為のうち、商品商標の使用行為である
「譲渡」や「引き渡し」行為に、プログラム等のインターネット上の送信行為等が含ま
れるか否かという疑義を払拭するために、例示として「電気通信回線を通じた提供」を
明記する改正を行ったわけでございます。
不正競争防止法に関するこれまでの議論でございますが、不正競争防止法における
「使用」概念につきましては、以下のドメイン名に係る各裁判例において、電子画面上
での商標の使用が不正競争防止法上の「使用」に該当することを正面から認めているわ
けでございます。
判例を2つ挙げてありますが、まず、平成13年4月のジェイフォン事件でございます。
「被告が本件ウェブサイト上に表示した本件表示は「J-PHONE」、「ジェイフ
ォン」、「J-フォン」を横書きにしたものであって、本件ウェブサイト上の前記「J
-PHONE」と同一ないし類似するものであるから、被告がこれらの表示を使用する
行為も、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「商品等表示」の使用に該当するも
のである。」としております。
もう1つが、平成12年12月のJACCS事件でございます。
「ホームページ上の営業活動に「JACCS」の表示を使用することが「商品等表
示」の「使用」に当たることは明らかであるから、被告が右ホームページ上で「JAC
CS」の表示を使用した行為は、不正競争防止法2条1項2号の不正競争行為に該当す
る。」、「被告は、そのホームページによる営業活動に、「JACCS」の表示を使用
してはならない。」という判例があるわけでございます。
これを踏まえまして、不正競争防止法改正の是非の検討ですが、我々の考え方として
は「改正をしない」というものでございます。
理由につきましては、ここにありますように、不正競争防止法の「使用」については、
商標法と異なり、「使用」の定義規定がない、使用態様及び性質についても特に限定を
付していないこと等から学説等によっても広く解釈されているわけでありまして、かつ、
最近のドメイン名に関する各裁判例は、電子画面上での商標の使用が不正競争防止法の
「使用」に該当することを正面から認めているということが理由でございます。
次に、「譲渡」「引き渡し」の概念でございます。課題としては、プログラムなどの
無体物を電気通信回線を通じて提供する行為は、「商品」の「譲渡」「引き渡し」に該
当するかどうかということでございます。
まず、今年の特許法などの規定及び趣旨でございますが、趣旨のところにありますよ
うに、特許法及び商標法については、ネットワークを介したプログラムなどの送信行為
が特許権の「実施」ないし商標権の「使用」に該当することを明確化するため、特許権
の「実施」ないし商標権の「使用」の一態様として、「(無体物)を電気通信回線を通
じて提供する行為」を加え、立法上の明確化を図ったわけでございます。
次に、不正競争防止法に関するこれまでの議論ですが、不正競争防止法における「譲
渡」「引き渡し」の意義については、以下のように考えられているわけですが、かかる
概念に無体物たる商品を電気通信回線を通じて提供する行為が含まれ得るのか、必ずし
も文言上は明確とはいえないわけでございます。
まず第1に、「譲渡」についてでございます。それぞれ本の引用を書いてありますが、
「譲渡とは所有権を移転することである。譲渡の典型が販売であるが、有償であると無
償であるとを問わないので、たとえば商品見本を無償で譲渡することも含まれる。」、
これは前出の「要説不正競争防止法第3版」でございます。
それから、田村先生が書かれた「不正競争防止法概説」からの引用ですが、「商品の
譲渡、引き渡しについては、有償、無償を問わず、一切の取引行為に加え、見本品の配
布をも含み、また、委託販売のように所有権の移転を伴わない占有の移転の他、倉庫業
者への寄託行為や、運送業者への引渡行為、博覧会への出品など、現実に占有が移転す
る行為の一切を含むと解すべきであろう。いずれも、新たな混同を引き起こす可能性が
ある行為であるからである。」というふうにしております。
次に、「引き渡し」についてでございます。
「引き渡しとは占有を移転することである。」、これも前出の「要説不正競争防止法
第3版」からの引用です。それから、「引き渡しとは、物に対する支配の現実的な移転
をいい……」、これは「知的財産侵害要論」から引用しております。
これらを踏まえまして、不正競争防止法改正の是非の検討ですが、これも2つありま
して、「改正しない」という考え方と「改正する」という考え方でございます。
「改正する」場合には、具体的には不正競争防止法第2条第1項第1号、第2号、第
13号、第15号等に関し、平成14年商標法改正にならい、別に「電気通信回線を通じて提
供する行為」を列挙することにより規制の明確化を図ることが考えられるわけでござい
ます。
まず、「改正しない」という考え方でございます。法律概念の相対性の見地から、電
気通信回線を通じて無体物を提供する行為も「譲渡」「引き渡し」に該当すると解釈す
る余地があるわけでございます。
平成14年改正特許法などにおきましては、特許法第102条第1項や商標法第38条第1
項などの逸失利益の立証容易化規定における「譲渡」概念について改正は行われていな
いわけでございまして、他方、定義規定において、「譲渡」の他に「電気通信回線を通
じて提供する行為」を規定した場合、当該提供行為は、「譲渡」行為を代表格としてい
る立証容易化規定の対象とはならないと解釈されるおそれもあるわけでございます。
次に、「改正する」という考え方に立った場合ですけれども、平成14年にネットワー
ク対応として特許法及び商標法が改正されているわけであります。不正競争防止法は必
ずしもこれらと平仄を合わせる必要はないわけですが、同様に、概念規定の明確化を図
ることが望ましいとも思われるわけであります。この点、標識法としての側面があると
いうこと、これまでも商標法の規定を踏まえた改正を行ってきたことなどから、商標法
と同様、規制の明確化を図る観点から、電気通信回線を通じて無体物を提供する行為に
ついて、「譲渡」とは別に規定することが考えられるわけでございます。
不正競争防止法第2条第1項第10号及び第11号は、「譲渡」の客体を機器や装置等の
有体物に限定し、プログラムなどの無体物については、「電気通信回線を通じて提供す
る行為」として別に列挙しているわけです。したがって、不正競争防止法の中での整合
性を図るため、「譲渡」とは別に規定すべきと考えることができるという論点でござい
ます。
以上、長くなりましたけれども、民事的救済措置の強化のうちの「逸失利益の立証容
易化規定の導入」、それからネットワーク化への対応に係る「商品」「使用」「譲渡」
「引き渡し」、それぞれの概念の見直しということについて御説明を申し上げました。
以上でございます。
○土肥小委員長 ありがとうございました。


3.討 議

○土肥小委員長 ただいまの説明にございましたように、本日皆様に御検討いただきま
す点は2点、民事的救済措置の強化といたしまして「逸失利益の立証容易化規定の導
入」の問題が1つ、もう1つは、ネットワーク化への対応として、細かくは3項目あり
ましたけれども、大きく言えばその2つでございます。
ただいまの説明につきまして、検討に先立って、もし御質問がございましたら、最初
にお出しいただければと思いますけれども、ございますでしょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、第1点の問題から入らせていただきたいと思います。民事的救済措置の強
化のうちの「逸失利益の立証容易化規定の導入」ということでございます。これは不競
法にもこの規定の導入が必要なのかどうかということが1つ、それから、その際に、ど
ういう形で損害額の認定、つまり割合的認定を可能にする規定であるという説明が特許
法等でされておりますけれども、そういった規定にするということの問題、それから、
もしそうする場合に、どの号数においてそれを行うか。先ほど御説明がございましたけ
れども、説明の中では、少し温度差といいますか、知財室としての考え方の一端が示さ
れておったかと思います。こうしたことについて御議論いただきたいと思います。筋か
らすると、恐らくこの規定を不競法に入れるかどうかということだと思いますので、こ
のあたりから御意見をいただけますでしょうか。
平成10年の特許法等の改正から3年近くたっております。先ほどの御紹介では12の裁
判例もあるやに伺ったわけですが、そういたしますと、紛争当事者、権利者側あるいは
被告側の観点から、この規定ができてどういう影響なり問題をお感じになっておるか、
こういったことから伺わせていただければよろしいかと思いますけれども、いかがでご
ざいましょうか。
押本委員、お願いいたします。
○押本委員 ただいま委員長が12件とおっしゃいましたけれども、まず、特許と商標と
は本質的に事案が異なると思うのです。そういう意味では、商標法に関して3件出てい
る。そのうち、認定された件数が2件で、否定された件数が1件ということになります。
この否定された1件に関して見ますと、高裁の方でさらに減額されているという状況に
あるかと思います。
その場合に、判決を見ますと、商品の代替制があるかないかということが非常に大き
な要素であって、特許の場合は独占権であるがために、ある意味で、独占権の部分はす
べて排他権がある。だから、逸失利益として自分の利益と数量という計算式が成り立つ。
商標とか不競法の場合、自分がやっている商品と、侵害者がやっている商品、その代替
関係というのが非常に大きな要素であって、それを考慮せずに、単純に「数量×利益」
というのはちょっといかがなものかなと思います。
今判例をいろいろ調べているのですが、38条2項関係の規定を見ましても、単純に
「数量×被告の利益」というものではなくて、いろいろさんしゃくされるものがある。
どんどん減殺されている。
あと、判例を見ますと、商品の代替性のない場合、ほとんどが38条3項という形で適
用されているものが多い。1項が適用されるのは、あくまでも代替性があって、それが
あるがために、権利者の商品が売れなかったというケースに限られる。そうすると、不
競法の3号ですと、まさにそれに該当するのかなと思うのですが、1号、2号がすべて
それに該当するとは思えないというふうに思います。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
今、御意見をいただきましたように、1号、2号のような商標法型、3号はどちらか
というと商品形態ですから、意匠法型と申しましょうか、4号から9号までは製造方法
の発明等、そういったものとつながるところがございますので、特許法型に近い。不正
競争防止法の場合には、そういう商標、意匠、特許、そういったものが入っておるのか
なと思います。ただいま御指摘があったところは1号、2号についての御指摘でござい
ますが、ほかにございませんでしょうか。
一色委員、お願いいたします。
○一色委員 私どもJEITAといたしましては、資料3の6ページから7ページにか
けまして、各不正競争行為ごとに適用の可能性というのを整理されている内容に賛成で
ございます。すなわち1号または2号でありましても、全く逸失利益の考え方が適用さ
れる余地がないということではない。例えば過去の事例でも、ルービックキューブの事
件においては、市場において、真正品と権利侵害品が競合関係にある。資料3によりま
すと、補完関係にあるということになりますが、そういう事例が実際にあったわけでご
ざいます。したがいまして、実際に適用される可能性がある不正競争行為については、
この逸失利益の規定を導入すべきであろうと考えております。
さらに、1点、付言いたしますと、特許法の社会におきましても、特許権者が実施し
ている製品と製品分野が異なる製品に、その特許権が実施され、したがって、市場にお
いて原告製品と被告製品との間に競合関係がないというケースもあるわけであります。
特許法においてすら適用不能なケースもあるわけでありまして、したがって、オール・
オア・ナッシングで考えるべきではない。多少でも適用の余地があれば導入しておくべ
きである。それによりまして、真正なる製品の事業を行うものの救済が手厚くなるとい
うことであれば非常によいことであろうと考えております。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
今、御紹介いただきました特許法においてすらそういう場合があるというのは、補完
関係がない場合が特許法においてもあるというふうにおっしゃったと思いますけれども、
そういう実際の例をお聞かせいただけますか。
○一色委員 例えばCD等の再生機構におきまして、半導体レーザーから出る光を基板
に当てまして、そこに書き込まれている情報を読み出すということに係る特許があった
とした場合に、原告は、それをCDプレイヤーにおいて実施しているということであっ
て、被告がそれをDVD等のほかの製品に実施しているという場合に、製品が異なるわ
けであります。したがって、被告の製品が売れたがゆえに原告の製品が売れなかったと
いう関係はほとんどないということでございます。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
今、お聞かせいただいたわけですが、権利者あるいは被告の側に立って、こういう変
化があったということで御意見、あるいは事例の御紹介をいただけませんでしょうか。
場合によっては当事者の一方かもしれませんけれども、裁判所といたしましてはどうな
のでしょうか。
○三村委員 特許法102条1項が新たに設けられた当初は、3ページの室伏さんの発言
のように、原告の側に自分の側の利益をあまり開示したくないという意識が働いて、あ
まり利用されないのではないかというふうな推測を裁判所の方ではしていたのです。し
かし、実際に改正法が施行された後の状況を見ますと、102条1項は非常に盛んに利用
されています。それは、市場において競合するような同業者の間では、お互いに利益率
についてはある程度共通の認識があるということで、開示することについてあまり抵抗
がないということがあるのだろうと思います。
室伏さんの発言については、製薬業界に特有のことで、あまり高率の利益率を開示し
たくないというのは、102条の1項であろうが、2項であろうが同じ問題が起きますの
で、これは1項に限っての問題ではない。むしろ製薬業界特有の問題というふうに理解
できると思います。
私は、3ページの上段で、「102条1項は非常に使いやすい規定として利用が拡大す
るでしょう」というふうに、確かにこの座談会の中では書いているのですが、その前提
としては、ちょっとコメントさせていただきますと、但書の関係で5ページの上にあり
ますが、これは私の部の判決ですが、代替品や競合品の存在、あるいは侵害者の営業努
力といったものを102条1項但書にいう「販売することができないとする事情」に含め
ないという限定的な解釈をした場合には、非常に使いやすい規定になる。そういう限定
のもとで102条1項というのは使いやすい規定ですという発言をしたつもりでございま
す。それは解釈の問題ですので、深入りはしません。
先ほど来いろいろ御発言がございましたけれども、確かに102条1項についてはまだ
いろいろと判例上固まっていない点があります。地裁の段階では幾つか判決が言い渡さ
れておりまして、一般論的な法理も随分と明らかにされているのですが、まだ、高裁段
階のものとか、もちろん最高裁のものもございません。そういう状況ですから、これか
ら裁判例の積み重ねによって、内容が固まっていく点というのは、あると思います。
今申し上げました102条1項但書の「販売することができないとする事情」とは何か
ということも、あります。そのほか、商標法38条についても同じように適用されるのか
という問題についても、先ほどのメープルシロップ事件の東京地裁判決は、高裁でも維
持されておりますので、東京高裁の段階までは同じような判断が出ているということが
できると思います。
そういうことで、内容的な創作的価値と、それに基づく市場における補完関係という
ものを基礎として考えられた規定だろうという意味では、先ほど押本委員から御発言が
ありましたように、本来的に言えば、特許法、実用新案法、意匠法に特有のというか、
典型的に当てはまる規定だろうと思っております。ただ、商標法38条という形で、商標
法という表示に関する法律の規定としても入っておりまして、そういう意味では、多少
基礎となる考え方が違うところがあるのですが、その場合であっても、ブランド品のよ
うに、マーク自体に価値を見出しているような商品もございますので、全く適用の余地
がないわけではないだろうと思いますし、そのあたりは但書の適用によって解決可能な
範囲にあるだろうと思います。
あともう1つ御指摘がございましたけれども、商標の場合には、特許法等以上に、い
わゆる寄与率という形で、商品の利益、売り上げの利益のうち、表示を付したことによ
るメリットというか、プラスの価値がどれだけついているかという点での、これは解釈
によるものですが、そういう形での限定がされております。このように、工業所有権関
係の4法の関係では、すんなり適用されるものと、多少裁判所の側で個別の事情を勘案
しなければならないものがありますけれども、そういう形で対象物が混在する中で、こ
の権利者の利益を基礎とした損害額の算定というのは適用されているという現状でござ
います。
ですから、今回の不正競争防止法の改正に当たりましても、3号の形態模倣とか、営
業秘密の中の技術ノウハウのように特許法に近いものもございますけれども、1号、2
号の場合のように商標に近いものもありまして、商標法の方で、実務で勘案しながら適
用が可能だということであれば、1号、2号についても設けたからといって、商標法と
同じような前提ということであれば、説明はつくだろうと思いますので、今の工業所有
権4法との関係からいえば、事務局で御指摘があるような条文について、権利者側の利
益を基準にした損害額の算定の規定を置くということは可能だろうと思っております。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
篠原委員、お願いいたします。
○篠原委員 どの類型が具体的に立証容易化規定を置くのにふさわしいか、また、該当
するかというのは、専門の先生方の御審議でお決めいただければと思いますけれども、
私ども中小企業の立場から意見を申し上げますと、法律というのは、読んだら、どうい
うペナルティがかかるかというイメージがわくような規定というのが望ましい。素人で
も読めば、こういうことをやれば、これだけ莫大な損害賠償が来るんだなということが、
国民レベルでわかる法律規定にしていただきたい。そういう意味で、この立証容易化規
定というものが置けるものはできるだけ置いてほしいということが第1点でございます。
第2点として、逸失利益の立証容易化規定を、全部でなくても、部分的にでも置くこ
とによって、抑止力効果というか、不正競争防止法違反で、民事損害賠償としてこれぐ
らい賠償をやらなければいけないぐらいの、これは経済的価値のある、保護すべき法益
であるということを法律上示すことによって抑止力効果が働くと思います。
第3点に、これから不正競争防止法みたいな紛争処理というのは、ADRの世界でこ
れから処理すべき分野であると思っております。専門の裁判官のもとで御審議いただく
場合は、逸失利益の立証容易化規定がなくてもいろいろな御議論ができると思いますけ
れども、ADRでやるときには、こういう根拠規定があった方がやりやすいということ
も考えられると思います。
以上です。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
10年法で102条1項型のようなものができまして、先ほどのお話から、訴訟の当事者
が、原告側が主張するということが多くなったのかなと思っておりますけれども、例え
ば仮に責められる側からした場合に、最近損害額が非常に高くなっておりますけれども、
そういうことについて何か御意見ありますか。
○篠原委員 立証容易化規定自体は、あくまで推定規定ですから、反論したい人は徹底
的に、幾らお金をかけてでも裁判所で反論すればいいと思います。
○土肥小委員長 松尾委員、お願いいたします。
○松尾委員 最後の点から言いますと、弁護士仲間では「やり損」というのはよくない。
しかし、ここまで高くなるということに対して、企業は、そこまではという恐れを抱い
ているということは聞いております。それは伝聞です。
私が申し上げたいのは、102条の規定が、今、委員がおっしゃいましたように、102条
1項を読んですぐわかるかというと、私は必ずしもそうではないと思っております。但
書の前は、「自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者が、その侵害の
行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量に、特許権者又は専用実施
権者がその侵害の行為がなければ販売することできた物の単位数量当たりの利益の額を
乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度に
おいて、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる」と。まず、
この「できる」という規定の仕方ですが、これは今までなかった書き方です。「推定」
とは書いてない。だけれども、「みなす」と書いてあるわけでもない。私は、この「で
きる」というのは、裁判所が判断する場合に、してもいい、しなくてもいい、事案に応
じて判断できるというふうに考えたわけです。それがそうかどうかというのはちょっと
問題があると思います。
次に、但書の方ですが、「譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専
用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数
量に応じた額を控除するものとする。」と、これは全部、一部ということがありますけ
れども、「販売することができないとする事情」というのはかなりいろいろなものを含
み得ると思いますけれども、「その事情に相当する数量に応じて」ということですから、
額のことだけを問題にしているのです。ここがどこまで入るかということで、この102
条の1項についてはいろいろ説が分かれております。
ここに特許法で6件、認められた判決があるという記載がありますけれども、この6
件というのは、全部裁判官の名前までチェックしませんでしたけれども、多分三村裁判
官の判決ですよね。
○三村委員 全部とは言いませんけれども、4件ぐらいは確認できます。
○松尾委員 そこで、三村裁判官の判決を見てみますと、先ほど一色委員の言われたこ
ととちょっと理解が違うのではないかと考えているのです。判決のその部分を読みます
と、「そもそも特許権は、技術を独占的に実施する権利であるから、当該技術を利用し
た製品は、特許権者しか販売できないはずであって、特許発明の実施品は、市場におい
て代替性を欠くものとしてとらえられるべきであり、このような考え方に基づき、侵害
品と権利者製品とは、市場において補完関係に立つという擬制のもとに同項は設けられ
たものである」と、ですから、補完関係でも擬制されたと解釈していらっしゃるのです。
そうなりますと、同じ判決があるのですが、先ほどの1項にありました実施能力です
が、これは抽象的に考えて、特許権の存続期間全部について問題にすることができるの
で、侵害品が出た期間との対応関係は不要であるということになります。そうなります
と、但書の「販売することができないとする事情があるときは」という「事情」ですが、
具体的には、侵害者の広告などの営業努力、市場開発努力や独自の販売形態、企業規模、
ブランドイメージ等が侵害品の販売促進に寄与したこと、侵害品の販売価格が低廉であ
ったこと、侵害品の性能が優れていたこと、侵害品において、当該特許発明の実施部分
以外に売り上げに結びつく特徴が存在したこと、市場に侵害品以外の代替品や競合品が
存在したこと、こういうものは販売することができない事情として考慮できない、そう
いうふうに限定すると。寄与率というのはここに入ってもいいという話でしたよね。
○三村委員 寄与率は、損害額の算定に当たって、減額要因として扱っていいです。
○松尾委員 というふうに、非常に減額されるものが少ないのです。
そういうわけで、損害賠償額、業界から少な過ぎると言われてきたので、低くしない
ことは102条の1項でできるのですが、逆に言えば、侵害者から見ると、自分の方の営
業努力とか、自分の方の商品の性能とかいろいろありましても、そういうものが原則と
して考慮されないということになって、使い方によっては危険だということになると思
います。
この同じ権利と侵害品との補完関係が擬制されていると、そこまで強く読むとすると、
38条の1項にありました2件の事件、1つは三村裁判官ですが、1つは裁判官が違うの
です。著作権でこういう規定はないからできないんだというのは、三村裁判官の意見で
あり、102条の1項を適用していなかったのは大阪の裁判所であって、裁判の数が非常
に少ないのですが、考え方の違いというのが結構はっきり出ているのではないかと私は
思うわけです。
そうなりますと、102条の1項は、先ほど読みましたように、「できる」とか、但書
の読み方によって、大きく分けても3つぐらい意見があると言われておりますので、そ
のどれをとるかによって、まず、理論的に不正競争防止法に適合するのかどうかという
のが問題であるのと同時に、これを適切に運営していただければいいのですが、単純に
権利品と侵害品との間の補完関係が擬制するからというふうに読んでしまう裁判官がい
らっしゃると非常に危険だなと思うわけです。
ついでにもう1つ、不正競争防止法のどれが一番特許法の問題と結びつけられるのか
といいますと、102条1項の3号、これは商品形態の模倣で、意匠とは限らず、すべて
そっくりですから、何でもかんでも酷似しているので、期間も3年だけですから、これ
だったら割合に補完関係にあるという考え方はとりやすい。ほかのものについては但書
に入るところが非常に大きいので、その但書に入るところが条文でうまく書けないと危
険だろうと思います。
先ほどの資料の中に、前に法律が改正されたときに不正競争にも入れたじゃないかと
いうのがありましたね、あの規定の方は、今で言う102条の2項ですか、あれは推定規
定なのです。ですから、今のような擬制とまで見る規定とは違うので、そこら辺は分け
て考えた方がいいと思います。
いろいろなことを言いましけれども、簡単には「はい、入れましょう」とは言えない
ということです。
○土肥小委員長 ありがとうございます。
そもそも102条1項なり商標法38条1項というのが、オール・オア・ナッシングにな
ってしまって、どちらかというとナッシングの方になってしまうということがあって、
それでは困るということもあり、割合的な損害額の認定ができるようにという形で改正
がなされたかと思いますけれども、松尾委員がおっしゃるのは、今度は逆にオールにな
るわけですか。
○松尾委員 なりやすい、おそれがあるということです。
○土肥小委員長 ということになるわけです。一応規定の上では但書のところできちん
と書いてあるわけですよね。
○松尾委員 その書き方によって、どういうふうに読み込むかによって意見が大分分か
れております。それは前段の方をどう読むかによって結論が変わってくると思うのです。
それが、みんなが読んでわかりやすく、合理的にできるようになっていないと危険だな
ということです。
○土肥小委員長 どうぞ、竹田委員、お願いいたします。
○竹田委員 まず、結論から言いますと、私は結論として、この立証容易化の規定を入
れることには賛成です。その上で幾つかの点について意見を申し上げます。
まず、工業所有権審議会で102条の現行1項のような規定を入れるかどうかというこ
とが議論された際には、立法趣旨としては、侵害者の行為と権利者が得べかりし利益を
喪失した、つまり行為と逸失利益との間の因果関係の立証が非常に難しいので、それを
容易化しようという趣旨の規定を設ける必要があるのではないかということから、この
規定を入れることが出発したわけです。その段階においては、少なくとも現在の東京地
裁の判決に出ているような侵害品と特許権者の製品の市場における補完関係に立つとい
う擬制のもとに設けられた規定という考え方はなかったのではないかと思います。
その意味で、その後の判例の言っていることは、少なくとも審議会で議論した段階と
は、規定の趣旨についての理解の仕方というのは変わってきていると思うのです。それ
は別に立法趣旨に拘束されるわけではありませんから、それはそれでいいとして、そこ
が出発点で、先ほど松尾委員が言われたような、但書の範囲が狭くなってくるという点
にも影響を及ぼしているということは間違いないところだろうと思います。
それから、不正競争防止法の場合に非常に問題なのは、不正競争防止法における不正
競争行為というのは非常に広い類型を含んでいるので、その取り扱いをどうするかとい
うことだろうと思います。この知財政策室が6ページ、7ページで挙げていることをよ
く見てみましても、「肯定的に解される」というのと、「肯定的に考えることができ
る」というのと、「肯定的に解する余地もある」と、「肯定的」も3つに分かれており
まして、それと「否定的に解し得る」という類型に分けているわけです。
「肯定的に解される」ものについては、この適用の必要性が出てくるという可能性が
あれば立法しておいたよいと私は思います。
あと、「否定的に解される」というのは、これからのいろいろな取引形態の変化など
によって、必ず否定的と言っていけるかどうかというところに若干問題があるかもしれ
ませんが、そうかと言って、今の段階で、全部の類型についてこの規定を設けるという
ことまでの必要性はかえって問題だと思いますので、そうであれば、「否定的に解され
る」ものを除いて立法化して、あとは、取引形態などの変化によってその点が違ってく
るならば、その段階で考えていけばよいのではないかと思います。
もう1つ、規定の仕方につきまして、先ほど松尾委員も言われましたけれども、工業
所有権審議会で、第1案で審議室が出してきた案の段階では、本文の関係で言えば、
「特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において」という
限定はなかったということ、それから、「損害の額とすることができる」ではなくて、
「損害の額と推定する」となっていたということ、3つ目に但書がなかった、そういう
原案から出発したわけです。
私は当時、東京高裁の判事でしたけれども、裁判所内でも議論して、「実施の能力に
応じた額を超えない限度」ということは入れる必要はあるのではないか。そこぐらいの
枠をはめておかないと不必要に損害の額が広がり過ぎるということで、この「限度」と
いう表現を入れることを提案しまして、結果的にはこれは入ったわけです。あとは、
「推定する」となっていましたし、但書もなかったのですが、その後の立法段階でこう
いうような規定になっていったわけです。
それは先ほど委員長が言ったように、「推定する」ではオール・オア・ナッシングと
いうことが起きるという点も考えられたのかもしれませんが、規定をもう一度よく見て
みると、確かに松尾委員が言うように、すごくわかりにくい規定で、こんなにくどくど
しく書かないとだめなのかなという点では疑問に思うということと、「推定」ならオー
ル・オア・ナッシングで、「できる」ならば割合的認定ができるということに本当にな
るのかという点も甚だ疑問であります。そういう点から言いますと、規定ぶりについて
は、これを不競法に持ち込む場合には、必ずしも特許法に右へ倣えにする必要はないの
で、その辺についてはもう少し工夫があってもいいかなと思っております。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
先ほどから規定ぶり、それから「推定する」、「できる」ということも出ておるので
すが、森田委員、今までの皆さんの御意見を伺っておられて、いかがでございましょう
か。つまりこういう規定ぶりにせざるを得ないということはあるわけでございますか。
○森田委員 規定ぶりにせざるを得ないという御質問の趣旨はどういうことでしょうか。
○土肥小委員長 つまり、先ほどから御意見として1つあるのが、非常に難しい規定ぶ
りになっているということがあるわけです。しかし、102条で申しますと、実施能力の
限度で縛りをかける、それは恐らく権利者の側で範囲内ということは立証するのだろう
と思うのですが、そこの額としてしまうと、今度は被告の側から、覆滅として、こうい
う事情を挙げて損害額を控除していって割合的な損害額を導く、そういう規定の立て方
だろうと思うのですが、これ以外に、例えば何かお考えがあればお聞かせいただきたい
と思います。
○森田委員 私も平成10年改正の際に特許法102条1項の立案に若干関与した関係から、
今まで議論があったいくつかの点について順番にご説明したいと思います。
まず、法律の条文は、いろいろな要素をすべて考慮したうえで条文に書きくだそうとし
ますと、一般の人が読んですぐわかるというような規定にするのは難しいと思います。
一般の人にわかりやすいというのは、法律家が、ある条文についてこれはこういう趣旨
ですよということを説明すればその内容がわかりやすいということであればよいのであ
って、そのレベル以上にわかりやすい、つまり、素人が読んでそのままわかるような規
定ぶりにするのはどのような法律であっても難しいところがあると思います。
次に、102条1項を立法したときのこの規定の趣旨がどういうものであったのかとい
うことに関係しますが、先ほどから「推定」と「擬制」という言葉が出ておりますが、
もともと立法したときには「推定」規定でもなく、また「擬制」の規定でもなかったの
であって、いずれの言葉で説明するのも適当ではないのではないかと私は思っておりま
す。当時の工業所有権審議会の損害賠償等小委員会報告書の段階では「推定する」とい
う言葉を用いていたわけでありますが、「推定する」と言うと、普通一般に思い浮かべ
ますのは、経験則に基づく「推定」であって、そのような経験則が成り立たないような
場合には推定が覆ることになります。そういう意味での「推定」を念頭に置きますと、
ここはそういう経験則に基づく「推定」という意味での「推定」を規定しようというこ
とではないので、その後の段階で、「推定」という言葉を用いるのはやめようというこ
とになったわけです。
102条1項の考え方は、その但書にありますように、最終的には、裁判官が、マーケッ
トに作用したさまざまな要因を考慮しまして適当な額を認定するというものであって、
裁判官の裁量的、創造的な損害の割合的認定ということを可能にする、そういう実体法
のルールとしてこの規定は書かれております。本文と但書のウエイトをどのように読む
かというのは次の解釈問題ですが、仮にこれが損害額の「擬制」だとしますと、但書の
働く余地がおよそないということになりますので、一般論としてそこまで行ってしまい
ますとやや強過ぎるのかなという気がしております。
当該判決を書かれた裁判官を横にしてその判決内容についてコメントするということ
はあまりないのですが、これについて私の理解を申し述べたいと思います。先ほどから
「補完関係」という言葉が出ていますが、これも一人歩きを始めますとかなり危険では
ないかと思います。つまり、102条1項は、「補完関係」がある場合には適用されるけ
れども、「補完関係」がない場合には適用されないという議論になりますと、これまた
別の意味でのオール・オア・ナッシングでありまして、問題があると思います。「補完
関係」、つまり市場における競合関係というのも程度問題があり、強い補完関係のある
場合から、弱い補完関係しかない場合もある。強い補完関係のある場合には、但書とい
うのはできるだけ限定的に解釈しておこうという解釈は成り立ちうる考え方だと思いま
す。しかし、弱い補完関係しかない場には、但書を活用して損害額を割り付けていかな
いと結果の妥当性が得られないと思います。
ある抽象的な内容の法律の規定、102条1項なら102条1項を前提に具体的な解釈論を展
開する場合には、何が問題になっているかということに即してもう少し類型化をしてい
くということをしませんと、裁判官の立場からみれば使いにくいということはあるだろ
うと思います。そのような類型化をしようという1つの試みとして、先にご指摘のあっ
たいくつかの判決は、102条1項の本文がぴったり当てはまるような、強い補完関係が
ある場合には、但書は限定的に解釈すべきだと、そういう考え方を表明されたものだと
いうふうに理解することができます。そのように理解しますと、それは102条1項の立
法趣旨に反するというよりは、むしろ、そういう強い補完関係がある場合については但
書は限定的に解釈するのが妥当であるというふうに、102条1項の解釈を類型化、具体
化したものだと理解することができるのではないかと思います。そして、もともと102
条1項の基本にある考え方は、裁判官の裁量的、創造的な損害額の割合的な認定を認め
る、つまり、裁判官を信頼して損害額の認定権限を与えようというのがこの趣旨であり
ますから、裁判官が解釈によってその趣旨を具体化することは102条1項が認めている
ことであるといえるでしょう。
ただ、先ほどの判決の一般論が一人歩きを始めますと本文のウエイトが強くなり過ぎ
る場合も出てきます。また、強い補完関係がないと102条1項は使えないということに
なりますと、弱い補完関係しかない場合には、損害額はゼロになってしまいますから、
本文の適用を認めた上で但書によって損害額を割合的に刻んでいくという解決が妥当で
ああるような場合が同条の対象から抜け落ちてしまうことになって問題があります。
いずれにせよ、これは102条1項を具体化する解釈の問題でありますから、最終的には
判例の積み重ねの中で、さまざまな類型が蓄積されていって、その中でおのずと解釈の
具体的な指針というのも明確化されてくるだろうというふうに考えております。したが
って、平成10年改正から4年ぐらいたったところで、ある判決でとられた解釈が適当で
ないから、102条1項の規定ぶりがおかしいということにはならないだろうと思います。
解釈の問題についてはもう少し長いスパンで考えていかなければいけないのではないか
というのが、私の基本的なスタンスであります。そういうふうに考えてきますと、特許
法102条1項のような規定を不競法に導入した上で、あとはその解釈によって調整して
いくというのが基本的には妥当な方向だろうと私は思います。
それから、平成5年の不競法改正との関係で、6ページには「政策的見地より、導入
する余地がある」という書きぶりになっておりますが、私の理解によると、政策的な見
地というよりは、むしろ同じようなルールを妥当するのが理論的に考えても妥当だとい
うふうに考えるべきであろうと思います。
よく言われますことに、不競法というのは、一種の不法行為法の特則であって、行為
規制の法律である、それに対して知財4法というのは何々権という排他的な権利を付与
する法律であるという対比があります。もっとも、排他的な権利といっても、他人があ
る行為をしてはいけないという、他人に対する禁止権にすぎないわけでありますから、
その意味では不競法のような行為規制法でも他人の一定の行為を禁止するという点では
同じことでありまして、権利という名前をつけたか、つけないかによって損害賠償の内
容に違いを設けるのはおかしいと考えられます。これが平成5年のときに、不競法に知
財4法と同じような損害賠償規定が導入された理由だと思いますので、それは政策的と
いうよりも、むしろ不競法の基本的な性格からして、損害賠償の局面では知財4法と異
なった扱いをすべき特別な理由はない、むしろ理論的には両者を同じように扱うべきで
あるというのがその基礎にある考え方だと思います。同じようなルールが妥当する場合
には同じような規定を置くというのが現行法の基本的なスタンスであるとしますと、不
競法の規定が知財4法と違っていると、かえって理論的に説明がしづらいことにになる
のではないかと思います。
そういうふうに考えますと、一色委員が最初に言われましたことに私も賛成でありま
して、結果的には、知財4法と同じようなルールを不競法にも導入した上で、あとは解
釈でさまざまな要因を考慮してやっていく。その妥当性の確保や類型化は判例の積み重
ねを待つというのがよいかと思います。
最後に、6ページから7ページにかけまして、「肯定的に考えることができる」、そ
れから「肯定的に解する余地もある」、「否定的に解し得る」ということが書かれてあ
ります。しかし、これも理論的にいえばややミスリーディングな書き方であって、「肯
定的に考えることができる」というのも「場合により」でありますし、「余地がある」
というのも「場合により」、それから「否定的に解し得る」として10号、11号が含まれ
ておりますが、私の考えでは10号、11号の場合でも同じようなルールが妥当するような
場合はあるわけでありますから、これも「肯定的に解する余地がある」と書くのが理論
的には妥当だとと思います。
そうしますと、これはどういう場合が逸失利益の算定ルールの射程に入ったか、入ら
ないかという「場合分け」は難しいわけですが、差しあたりは典型的な場合を念頭に規
定を置いていくというふうに考えますと、この原案でもよいのかという感じがいたして
おります。
ちょっと長くなりましたけれども、以上です。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
本来は、裁判官は釈明せずということだと思うのですが、ここでは一言お願いいたし
ます。
○三村委員 先ほど来出ております東京地裁の判決ですが、「擬制」という言葉を使い
ましたのは、損害額を擬制するという趣旨で判決では一切書いておりません。それは条
文のもとになった考え方というのが、侵害品と権利者製品との間に補完関係があるとい
うことを擬制して、それをもとにしておりますということで、「擬制」という言葉を使
っております。それは、たとえて言えば、交通事故の損害賠償のときに、年少者の死亡
事故の場合に、被害者は平均余命は生きるはずであったとか、賃金センサスにおける平
均賃金は稼ぐはずだったとか、そういう擬制を前提にして損害額を算定しているいうの
と同じような意味で、前提としての「擬制」という言葉を使っただけです。
我々実務家としては、102条1項の規定については、みなし規定だとも、推定規定だ
とも考えておりませんで、強いて言えば、損害額について減額することは可能なのです
が、この条文自体で定めている実施能力とか、但書に当たる事情がある場合に、初めて
それを使って、この条文の中で減額される、そういうことを定めた規定だろうというふ
うに解釈しております。
それから、判決について、102条1項が、結果的に損害を多く認め過ぎているという
印象を受けている業界も方もいらっしゃるということでしたけれども、それは恐らくパ
チスロの事件で遅延・損害金を含める90億円近い金額の賠償を認めたせいだろうと思い
ます。あれは102条1項のせいというよりも、むしろパチスロ業界が非常に儲けの多い
業界であったためであって、102条2項を適用しても、そう変わらない額の損害賠償額
の認定になっただろうと思いますので、そこは事案の特殊性ということで、条文の特殊
性ではないという理解をしておきたいと思っております。
また、営業努力とか、競合品の存在が102条1項但書にいう「販売することができ
ないとする事情」に当たらないというのは、理屈の上から言いますと、そういうものは
考慮しないということを前提にして102条1項はできているので、一回否定したものを
但書で使うというのは論理矛盾ではないかということを、言ったわけです。ただ、実際
上は、実務家の間の協議会等では、仮に営業努力とか、市場における競合品の存在とい
うのを但書の事情に含めたとしても、現に、被告はそれだけの営業努力をしているし、
そういう競合品の存在するもとで侵害品を売り上げている。そういうことが同じ業者で
ある原告にどうしてできないのかという意味では、それを過大に評価して減額要因にす
ることは、仮に但書に形式的には該当するとしてもできないのではないかという議論が
あります。実務家の間では、そういう意見も相当有力ですので、その点は指摘したいと
思います。
あと、102条1項や38条1項との書きぶりをどうするかという点ですが、実務的に言
いますと、少なくとも1号、2号の著名表示、周知表示の事件は、不正競争防止法と商
標法違反とが選択的併合、あるいは予備的併合になる事件がほとんどでございますので、
その場合に、両方の条文で書きぶりが違うということになりますと、不競法を適用する
か、商標法を適用するかによって損害額の額が変わってき得るということになりまして、
それは実務的には不都合なことになります。最終的には解釈に任せるにしても、その解
釈での結論がどちらの法律を使っても、同じ損害額に落ちつくということが可能になる
ような余地を、フリーハンドを残していただくという意味では、同じ形の条文にしてい
ただいた方がむしろ好ましいと思っております。
以上です。
○土肥小委員長 どうもありがとうございました。
各委員の御意見をちょうだいいたしましたけれども、御発言いただきました委員の
方々すべて、不競法にこういう規定を基本的に置くということについては御異論はなか
ったと思います。
また、先ほどから擬制、割合的認定というような議論が出ておりますけれども、これ
は言われておるところの損害額を擬制するという趣旨ではないということでございます
し、特許法等で導入されました趣旨のような規定を不競法に置いた場合に、やはりこう
いう割合的認定的を目途としたことは可能なのかなと思っております。
ただ、行為類型ごとにどうするかという問題がありますけれども、これは幾つかあり
ましたけれども、基本的には、各委員がおっしゃっていただいたところを預からせてい
ただきまして、どういう形で規定を考えていくかということは事務局で一度練らせてい
ただきたいと思っております。その際に、今日御発言いただきました各委員の御意見は
十分尊重させていただきたいと思います。
それでは、次の問題に行く前に、1の問題につきましてまだ御発言をしておられない
という方ございますでしょうか。もしおいでになりましたら、いただきたいと思います。
○押本委員 先ほど松尾委員がおっしゃったように、不正競争防止法の場合、裁判管轄
というのは全国津々浦々の地裁で行われるという形になって、商標事件が入りますと、
大阪、東京地裁を専門部として出訴できるという形になっております。不競法だけでや
られたときに、ある意味で実務家として不安があります。東京、大阪の地裁の裁判長の
ように、知財関係をよくやっていらっしゃる方は、寄与率とかそういうものをよく考え
て損害額を推定していただける。ところが、地方であると、条文どおり「数量×利益」
という形で単純に計算されると、被告の立場としては非常に危険があるなと。ですから、
裁判管轄の問題もちょっと考慮していただきたいと思っております。
○三村委員 前提に誤解があるのではないかと思うのですが、商標法については、民事
訴訟法6条の適用外になっておりますので、現時点では商標については、大阪と東京の
競合管轄はございません。今、法制審議会の方で知的財産権事件の管轄が議論されてお
りますが、それについても特許法等について専属管轄にするかという点がメインです。
確かに議論の対象の中には、商標法についても、現在の6条のような競合管轄を認めて
はどうかという提案はございますけれども、それについては今議論されている最中です
ので、それを前提にしての御議論というのは時期尚早ではないかと思っております。
○土肥小委員長 押本委員、よろしゅうございますか。
○押本委員 商標事件で訴えるときに、いわゆる原告が、東北であっても東京地裁に訴
えることができるという形にはなっているかと思います。
○三村委員 そういう形は、商標については民事訴訟法の特則はございませんので、単
に普通裁判籍ですので、もちろん応訴すれば応訴管轄は生じますが、それは、現行法で
は普通の不法行為と同じことになっております。
○土肥小委員長 舩山委員。
○舩山委員 日本知的財産協会でございます。結論といたしまして、こういった10年改
正のような規定を不競法に入れることについては大賛成でございます。例えば企業実務
といたしまして、訴訟戦略といいますか、訴額を考えるときにどれぐらいというときに
こういった規定があると使いやすいということがございます。
あと、請求が複数の場合、商標法とか不競法というのはほかの法律と一緒に使うこと
が多いのですが、そういったことからも、他の法律との整合性のとれた形での書きぶり
にしていただくと使い勝手がいいかなと考えております。
最後に、適用の範囲の問題もございましたが、この点、森田先生からお話がありまし
たけれども、10号、11号、14号も適用可能なケースもあるのであれば、使い勝手がいい
という観点からは、できる限り広げていってもよいのではないかと考えております。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
○三村委員 先ほど言い忘れましたが、書きぶりが共通した方がいいというのは、現行
改正が議論されています著作権法114条がもし同じ書きぶりになるのでありましたら、
特にゲームソフトとか、コンピュータ・プログラムの場合には、著作権法と不正競争防
止法1号あるいは2号がダブることになりますので、そこの条文の書き方はあわせてい
ただく必要があると思います。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
それでは、第2点目、ネットワーク化への対応の問題に入らせていただきたいと思い
ます。資料では8ページ以降でございます。この中に3つ問題が入っておりまして、概
念規定の整理ということで、「商品」概念、「使用」概念、それから「譲渡」「引き渡
し」、この3点になっております。
順番からまいりまして、「商品」という概念でございますけれども、平成14年の改正
ですと、特許法での手当て、商標法での手当て、分かれておるわけでございます。不競
法ではどういうふうにすればよろしいかというのが事務局からのお尋ねだと思います。
この点についての御意見をいただけますでしょうか。
先ほど申し上げましたように、不正競争防止法の場合には、いわゆる特許型、それか
ら意匠型、商標型といいましょうか、またがっておりますので、商品というもの1つと
ってみましても、1号、2号と、例えば3号は違う可能性はあり得るわけでございます。
いかがでございましょうか。
事務局からの提案でも両案書いてありまして、「改正する」「改正しない」という2
案出ておりますので、ここのところもどちらとも決めかねておるという段階かと思いま
す。
特許の場合は、「物」となっておりましたのでやむを得ないという状況もあったのか
と思います。商標のように「商品」と言っております不競法の場合は、一般的な議論か
らすると、商標法のように手を加えないというところかなと思います。あるいは「使
用」のところの概念の整理の問題、あるいは「譲渡」「引き渡し」のところでも結構で
ございます。どこからでも結構でございます。
三村委員、お願いいたします。
○三村委員 我々が現在、民事分野で、現行法を適用している感覚からしますと、「商
品」や「使用」については改正の必要はないだろうと思っております。また、「譲渡」
についても、現行法のもとで読めないことはないと個人的には思っているのですが、た
だ、罰則の対象になるということもありますし、「譲渡」については、同じような構造
の商標法が明確に規定を置いているということもありますので、この中でどれを改正す
るかと言えば、「譲渡」が一番改正する必要性はあるだろうと思っております。
その場合に、書きぶりを特許法のようにするか、商標法のようにするかでございます
けれども、102条1項類似の権利者利益に譲渡数量を掛けるという条文の書きぶりとの
対応になってくるのですが、「譲渡」という言葉を使って条文をあらわそうとするので
あれば、特許法と同じように、「電気通信回線等を通じた提供も譲渡」であるというふ
うに書く方が簡明な条文になると思います。そうでないと、102条1項型のも規定を設
けたときに、電気通信回線のものを譲渡以外のものだというふうに、仮に定義しておき
ますと、そこでまたもう1つ操作が必要になるということになりますので、そういう技
術的な点から言うと、特許法と同じような規定の方が簡明だろうと思います。
○土肥小委員長 もう1つその点に関してお尋ねさせていただければと思いますけれど
も、10号、11号でそこのところを書き分けておりますよね。そこのところ少し悩ましい
のですが、何か御意見ございますか。
○三村委員 その場合には2つ選択肢があって、10号、11号を、この際同じような形で
変えてしまうというのが1つの選択肢ですし、10号、11号をこのまま残すのであれば、
「この号において」という形で適用範囲を制限した形でこの条文を残しておく。あるい
は逆に、「譲渡」の方で「10号、11号を除いて」という形で外すという形になりますけ
れども、一般の人が見て非常にテクニカル過ぎてわかりにくい規定になるということは
否めないだろうと思います。一般の人からのわかりやすさということから見れば、10号、
11号も一緒に改正するというのが一番簡明であり、平易であると思います。
○土肥小委員長 ありがとうございました。
押本委員、どうぞ。
○押本委員 特許法では「譲渡等」という形になっているのですが、商標法は「譲渡」
という言葉と「電気通信回線を通じて提供する」というのと分けています。そうします
と、38条1項、2項の規定では、通信回線を通じた提供というのは譲渡に含まれないと
いうことになると、先ほど三村委員がおっしゃいました1号、2号を商標法と同等の規
定にしてほしいという趣旨からすると、商標法と同等に考えるならば、「譲渡」という
ものに関して、不競法だけが広げて、商標法だけが狭いということになって、アンバラ
ンスになってくるのではないかと思います。
○土肥小委員長 14年法のこのあたりのことにお詳しいのは、松尾委員はお詳しいので
はないでしょうか。
○松尾委員 2条の話はしましたけれども、38条まで気が行かなかったのではないでし
ょうか。
○土肥小委員長 竹田委員、何かお気づきの点ございますか。
○竹田委員 松尾委員がおっしゃったとおりで、この前、中山先生もおっしゃっており
ましたけれども、大体商標法に入るころには時間が非常に切迫してきますので、そこま
で突き詰めて議論しなかったというのが本当のところではないかと思います。
○土肥小委員長 今つけが来ているということになるわけですね。
三村委員、お願いいたします。
○三村委員 今、押本委員がおっしゃったように、そう書くと商標法とそごすることに
なるのですが、38条1項の方が、全体的に言うと、工業所有権4法の中でも、そういう
面では多少不備な規定だと思いますので、仮に38条1項で電気通信回線のものが来たと
きには、場合によっては解釈で補って、それも入るんだという解釈の余地もあり得ると
思うのです。ですから、不備な条文にならうことをあえてしなくてもよいのではないか
という気はしております。
○押本委員 私本人としましては、広げることには賛成です。ただ、商標法とのバラン
スという観点から行くとちょっとおかしくなる。ただ、今後発生するであろう不法行為
というのは、インターネットを介したものが非常に多くなる。そういうものを想定する
のであれば、「譲渡等」という形にしてある程度広げる必要はあるだろうと思います。
○土肥小委員長 今、概念規定でも「譲渡」のところでいろいろ御意見をいただいてお
るところでございますけれども、この点についてでも結構ですし、ほかの点でも結構で
すが、舩山委員、お願いいたします。
○舩山委員 産業界でございますけれども、まず、「商品」の概念については、「ブ
ツ」といいますか、「モノ」という言葉とは違った言葉でございますので、「商品」概
念の定義の解釈でいけるのであれば、あえて改正する必要はないであろうというふうに
考えております。
「使用」の概念につきましては、各裁判例等々で、ドメイン名に関して電子画面上で
の使用というものも「使用」概念に該当するという形で実務運用がされているというこ
とでございますので、それを尊重して、この辺も事務局案どおり、改正しないという考
え方でよろしいと考えております。
「譲渡」の方の問題ですが、まず、最低限、不正競争防止法の中での言葉の整合性を
図っていただきたいと思っておる次第でございます。ただ、そうしますと、電子機器通
信回線を通じて提供する行為というのが「譲渡」のところに加えられてしまって、「使
用」の方はそれが入っているんだということで、「使用」の概念と「譲渡」の概念で違
うのかという話も出てきてしまいますので、10号、11号の書きぶりが変えられるのであ
れば、そちらの方がベターかなという気もしております。
ざっくりですけれども、そういった感想を持っております。
○土肥小委員長 仮に今、商品を譲渡とか、商品を通信回線を通じて提供というふうに
なっていくと、下のところが変わってくると、上のところも変わるという可能性もあり
ます。つまりすべての号数のところでそういう手当てをしたとき、例えば3号のところ
は「商品」という概念を使っておりますけれども、舩山委員にお尋ねしたいと思うので
すが、これは有体物として考えていくということになりますか。3号は商品の形態と言
っておりますので、形態のところで無体物は落ちるということですか。
○舩山委員 「商品」概念の各号による解釈になると思いますけれども、3号は、基本
的には有体物を前提としていると思います。
○土肥小委員長 つまり「商品」という場合は、有体物、無体物両方含むけれども、3
号については形態という言葉があとについているから、そこで落ちると。
○舩山委員 そうですね。そういった解釈でよろしいと思います。
○土肥小委員長 それに伴って、三村委員のおっしゃるような、「譲渡」、括弧書きを
つけて手当てをする場合、号数についての御意見ございますでしょうか。つまり1号、
2号あるいは3号、そのあたりはいかがお考えでしょうか。
○三村委員 3号の場合には、先ほどおっしゃいましたように、「商品」は有体物、無
体物両方とも含んでいるけれども、3号については形があるものに限るという点で、形
態がある商品というところで有体物に限るということになると思います。ですから、3
号との関係から言えば、前段のところで、「商品」が有体物に限るので、電気通信回線
を通じての提供というものは物理的にないということで説明がつきますので、3号も含
めて、電気通信回線のものも含めて「譲渡」ですよという形で広く書いても、3号の適
用に当たって邪魔になるわけでもありませんし、3号があるからと言って、概念がおか
しくなるということはないだろうと思っております。
○小宮知的財産政策室長 私は、立法作業の方に真正面から参画したわけではないので、
知っている方があれば教えていただきたいのですが、特許法の方には、今まさに押本委
員が言われたように、「譲渡等」と書いてありまして、要するに、「譲渡」と「電気通
信回線を通じた提供」というのが分けて書いてあるわけで、実は括弧書きに入っていな
いわけです。つまり「譲渡」概念とは切り離されて、プラスアルファの形で定義されて
いる。したがって、現行の特許法の102条1項も、フラットに読むと、インターネット
を通じた提供というのは譲渡の外になるのではないかという感じがしております。した
がって、今の特許法も商標法も、実は「譲渡」については推定規定があるのですが、イ
ンターネットを通じた提供については推定規定はかからないような形になっているので
はないかというふうに読めるのですが、昨年、法制審議会で議論された方にそこのとこ
ろを御紹介いただければすっきりするのではないかと思います。
○土肥小委員長 いかがでございましょうか。昨年度の経緯について御案内の方いらっ
しゃいますか。
○三村委員 私は、立法の経緯はわからないのですが、我々が現場でこの条文を見てい
るときの「等」というのは「貸し渡し」のことを言うんだろうというふうに読んでおり
ました。ですから、「譲渡及び貸し渡し」の「貸し渡し」が「等」であって、「譲渡」
の中には、プログラムの場合には、「電気通信回線を通じた提供も譲渡である」という
ふうに読むのではないかというふうに思っていたのです。ですから、「等」があるから、
電気通信回線を通じた譲渡は譲渡ではないということにはならない、むしろ「貸し渡
し」が「等」であるというふうに読む余地はあるのではないかと思うのです。
○松尾委員 もともと「譲渡等」というような条文ができるとは思っていなかったので
す。(笑声)そのときには、旧法にあった「拡布」、あれがいいだろうと、そうしたら
「譲渡」も「貸し渡し」もとにかくすべて入るといいますか、そういうふうにしていた
ところが、結局、「拡布」というのはまたもとに戻るということもあって、法制局で
「譲渡等」なんて、珍しく「等」が入るような条文になったわけです。
私の理解では、「等」というのは「貸し渡し」だけを含む意味ではなくて、「譲渡及
び貸し渡し」を含んで、その中にはプログラムなどの場合には、電子機器通信回線を通
じた提供を含むと。これは「電子通信回線を通じて」ですから、「譲渡」とか「貸し渡
し」とか、そういうふうに分離できないわけですから、そういうふうに広い意味を入れ
たというふうに理解しております。
商標法の方については、実は「使用」の定義を、商標法の抜本的改正というのが問題
になっておりましたので、差しあたり電気通信回線線を通じて提供する行為も「使用」
の中に入るということだけを書いておこうという、ある意味では間に合わせ的なもので、
これを今度改めてよく考えようということにあるのだろうと、私はそういうふうに理解
しております。
○小宮知的財産政策室長 そうすると、特許庁が「拡布」という文言を、特許法の2条
の定義のときに使おうとしたときに、102条1項の議論をしたかしないかというのが多
分ポイントになるはずです。
○松尾委員 それはしてないです。
○小宮知的財産政策室長 だとすると、まさに立法者たる特許庁は、前の定義は広げて
も、後ろの推定規定を広げるつもりはなかったということでしょうか。
○松尾委員 私は、前を広げれば自然に広がると思っていたのだろうと思います。(笑
声)
○土肥小委員長 木村さん、お願いいたします。
○木村制度改正審議室長 特許庁ですが、私自身も直接立法作業には参画していないの
で確たることは申し上げられないのですが、ここでその辺のことを根掘り葉掘り議論す
ることにあまり実益があるとも思えないのですが、いずれにしても、これは審議会の議
論と、その後の法制局の審理の過程をもう一回ひも解いてみないと何とも申し上げられ
ないような気もしております。その辺は事務局の中でもう一回整理して最終的に案を出
すことになると思いますので、その段階でまた整理したいと思います。多分松尾先生が
おっしゃられたとおりではないかと思うのですが、確かに素直に読む限りにおいては、
後ろの推定規定のところで、「譲渡」という概念は「譲渡等」ではありませんから、い
わゆる電気通信回線を通じた提供というのは、直ちには含まれないような気がいたしま
すけれども、そこは経緯を確認します。
○丸島委員 私もこの委員会に入っていたのですが、認識としては、電送も「譲渡」の
中に入れましょうということで委員会では議論したと思います。「拡布」という言葉も
確かに出ていました。
ただ、問題は、それが立法過程に入ると、どういう条文になったかというのは、決ま
ってからでないと見せてくれないわけです。ですから、立法者がいろいろ考えたことと
本当に一致してつくっているのかどうかというのは非常に不安ですよね、こういう問題
が起こるということは。今回の不正競争防止法も同じことが起こるかもしれない。そこ
で、条文化されたものを検討するという機会は与えられないのでしょうか。
○土肥小委員長 いかがですか。
○小宮知的財産政策室長 それは難しいと思います。最後は、法律の技術論としてどう
いうふうに書きあらわすかという議論と、そうではなくて、何をどういうふうに法律的
に担保するかという議論と2段階あると思うのですが、後者の話というのは、何をどう
するかというところまで審議会で議論していただければ、あとは、条文上どうあらわす
かというのは、まさに法制局の問題なので、そこは我々にお任せいただくしかないと思
います。
○丸島委員 理屈はそのとおりなのですが、一致して流れていないところに問題がある
のではないかと思うのです。違う考えが入る余地があるのではないかという、そこだろ
うと思います。ですから、いつも立法の趣旨は何ですかと言っても、委員会の人は、最
後はわからないのです。ほとんどの委員会は全部そうだと思います。最後に法制局と担
当省庁との間でつくられて、委員会の人はほとんどわかっていないというのが実情だと
思うのです。今みたいな議論が出るのは、大先生がいながら「あれっ」と思って、僕も
びっくりしているのです。私自身も「譲渡」の中に入っているという理解でいたもので
すから、別だと言われてびっくりしました。
○松尾委員 今の具体的な文言については、お任せする以外にないというお話でしたけ
れども、本当はそうでもないと思うのです。不正競争防止法の営業秘密の保護の規定が
できたときは、弁護士が随分通産省の方と何度も打ち合わせをして、かなり文言をつく
って、そのときに大反対していた弁護士会からの賛成を取りつけて、それでほとんどそ
のままになったのです。そのときはそうだったのですが、それ以後は全部知らないわけ
です。でき上がってから、「あれ、何で珍しく「等」がつきましたね」ということで、
ここは法制局が「うん」と言わなかったということをよく聞くのです。やはりそこを少
し頑張っていただいて、審議会で議論したみんなの、先ほどの102条の1項もそうなの
です、気持ちが乗ってないので、私どもも審議過程を日弁連でずっと聞かされていたの
で、みんなで検討してきたのですが、でき上がってから、「何かちょっと違うね」みた
いになりますので、そこら辺は法制局の方によく交渉していただきたいと思います。
○土肥小委員長 よろしくお願いいたします。
○小宮知的財産政策室長 どういう形があるかわかりませんが、なるべく細かいところ
まで皆様のコンセンサスが得られるように工夫したいと思います。よろしくお願いいた
します。
○土肥小委員長 よろしくお願いいたします。
それでは、「使用」概念については、ただいま御意見を伺っておりましたところでは、
裁判例がございますし、そこでの考え方で大体いいだろうということかと思います。
「商品」概念についても、無体物を含むという方向性かと思いますが、よろしゅうご
ざいますね。
最後の「譲渡」、ここは今多々御議論いただきましたように、難しいところでござい
ます。時間的にはあとわずか残っておりますので、「譲渡」のところについてお話しい
ただいてもよろしゅうございますし、本日の会合で一回休憩に入りますので、全体の議
論を通じて、言い残したようなことがございましたら、ここで一言おっしゃっていただ
いてもよろしいかと思います。
篠原委員、お願いいたします。
○篠原委員 一般論でございますけれども、こちらの審議会でお取りまとめいただく報
告書なり、また、政府の方で内閣法制局等と条文の詰めをなされるときに、法律という
のは国民のものだと、国民が読んでわかるのが法律であるということを原則にしていた
だきたい。したがいまして、解釈学で無体財産は入っているから、もう規定しなくても
いいんだというのは、国民のための法律ではない。要するに、素直に読んでわかるよう
に、入れるのなら入れるということがわかるような法律規定にしていただきたい、ぜひ
易しい法律にしていただきたいということでございます。
○土肥小委員長 ありがとうございました。

4.そ の 他

○土肥小委員長 時間的にはそろそろ終了かと思います。本日も活発な御意見をいただ
きまして、本当にありがとうございました。委員の皆様からちょうだいいたしました多
くの御指摘、御意見は私ども事務局に預からせていただきます。そして、この次のステ
ップということになろうかと思いますけれども、小宮室長から今後のスケジュールにつ
きまして説明をお願いいたします。
○小宮知的財産政策室長 まず、スケジュールについて御紹介いたします前に、実は、
営業秘密の訴訟上の保護強化の問題でございます。このたび司法制度改革推進本部に新
たに知的財産についての検討会、11番目の検討会が設置されることになりまして、ここ
で民事訴訟法に関連することとして、この営業秘密の訴訟上の保護強化の問題も取り扱
われることになったわけでございます。ただ、本件につきましては、第1回目の会合か
ら各委員から御議論をいただいておりますので、本日まだちょっと時間がございますし、
その後、別途文書によりまして、もし御意見がある場合には、我々の事務局の方に御意
見をいただければと思います。
ただ、検討会との関係で、本筋はあくまでも司法制度改革推進本部でございまして、
我々は不正競争防止法の関係で皆様の御意見を伺うという立場でございますので、小委
員会でどういう形で取り扱いをするかについては、事務局でお預かりさせていただきた
いという前提付きでございます。今いただいても結構ですし、文書の場合には、1週間
後の24日までに事務局あてに提出をいただければと思います。もし今何かあれば御発言
をいただければと思います。
○土肥小委員長 舩山委員、お願いいたします。
○舩山委員 日本知的財産協会でございますけれども、営業秘密の訴訟上の保護という
ことで、民事の改正も刑事の改正もあわせて積極的に、産業競争力強化の観点から、検
討会において前向きな御議論をぜひともいただきたい、積極的に推進していっていただ
きたいというふうに考えておりますので、ぜひともよろしくお願い申し上げます。
○土肥小委員長 齋藤委員、お願いいたします。
○齋藤委員 私も同感でございます。第1回目のときに、ここで憲法論議までやろうと
いう意気込みがあったと思うし、このテーマはそういうテーマだと思います。財産とし
ての営業秘密の保護ということであるのですが、これが裁判のプロセスの中で逆の方向
に働くというのは本末転倒と考えております。通常、労働力、時間、コストをかけてつ
くり上げた財産が、保護のためのプロセスの中で価値を失っていくというのは到底考え
られないところでありまして、プロセス自体を検討するというのも、この委員会の1つ
のミッションではないかと思っております。特に新しい営業秘密、それから、重要で、
他に本当に知られたくない営業秘密ほど泣き寝入りしなければならないというところに
ついては、この不正競争防止法というものを検討する以上、外しては考えられないと思
います。
○土肥小委員長 一色委員、お願いいたします。
○一色委員 各委員に特に御異存がなければ、当小委員会の総意として強く要望があっ
たと、ぜひとも実現していただきたいということを、司法制度改革推進本部の方にお伝
え願えればと考えております。
○土肥小委員長 丸島委員、お願いいたします。
○丸島委員 私も同じことを申し上げようと思ったのですが、各委員が書類を出すとい
うよりは、恐らく全員がそういうことを望んでいると理解しておりますので、委員会と
してそれをはっきり意思表示した方がよいのではないかと私は思います。
○土肥小委員長 そうすると、本委員会で、そういう意見をまとめるということについ
て御異存がある委員の方、おいでになりますでしょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、そういう形で申し入れをするということで預からせていただきたいと思い
ます。
○小宮知的財産政策室長 かしこまりました。では、そういう形でお預かりさせていた
だきたいと思います。
それでは、スケジュールでございますけれども、次回は11月21日、水曜日、14時から、
当省本館17階国際会議室にて開催を予定しております。
次回は、これまでに委員の皆様からいただいた御意見を踏まえまして、本小委員会の
報告書案を提示して、皆様の御意見を賜りたいと考えております。よろしくお願い申し
上げます。

5.閉 会

○土肥小委員長 どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、産業構造審議会知的財産政策部会第5回不正競争防止
小委員会を閉会させていただきます。
本日は長時間の御審議、どうもありがとうございました。
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