経済産業省
文字サイズ変更
審議会

産業構造審議会知的財産政策部会不正競争防止小委員会(第6回) 議事録



○土肥委員長 それでは、定刻となりましたので、産業構造審議会知的財産政策部
会第6回不正競争防止小委員会会合を開催いたします。
初めに、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○小宮知的財産政策室長 それでは、配付資料の確認をいたします。袋から資料を
出していただきたいと思います。本日は、報告書の原案についてご議論いただきます。
その関係で資料ナンバー3までとなっております。
資料1、議事次第、資料2、名簿、資料3が委員限りということで「不正競争防止
法の見直しの方向性について(案)」をお配りしております。
あと参考といたしまして前回の議事録を配付させていただいておりますけれども、
議事録につきましてもメーンテーブルのみの配付とさせていただいております。これ
はホームページにも掲載してございますので、よろしくお願いいたします。資料の不
足、落丁などがございましたらご連絡をいただきたいと思います。
本日は、「資料3の不正競争防止法の見直しの方向性について(案)」に基づきまし
てご議論をいただくわけでございますけれども、本日、皆様から自由かつ幅広いご意
見をしんしゃくした上でパブリックコメントに付していきたいと考えております関係
から、この資料につきましては非公開かつ委員限りの配付という形にさせていただき
たいと思います。どうかご了解をお願い申し上げます。
また、議事概要につきましては公開をさせていただきますけれども、逐語議事録に
つきましては小委員会の報告書がとりまとめられるまでは非公開とさせていただきた
いと思います。よろしくお願い申し上げます。
○土肥委員長 それでは、今説明がございましたように、案のとりまとめにつきま
してはよろしくお願いいたします。
それでは、議事次第に従いまして委員会を進めさせていただきます。本日は、不正
競争防止法の見直しの方向性についての検討を行うこととしております。
小宮室長から資料に基づいて説明をお願いいたします。
○小宮知的財産政策室長 それでは、早速、資料に基づきまして約30分程度でご説
明をさせていただきたいと思います。
早速、資料をあけていただきたいと思います。まず、ちょっと目次をあけていただ
きたいと思いますけれども、本日の資料、4章構成になっており、まず「民事的保護
の強化」というものがございまして、これは今までご議論いただきましたように各類
型ごとに検討を加えてございます。
目次2ページでございますけれども、第2章が「営業秘密の刑事的保護」という形
になっておりまして、これもまた構成要件につきまして逐次検討を加える形になって
おります。
第3章が「ネットワーク化への対応」ということで、これもまた「商品」、「使用」、
「譲渡」「引き渡し」、各その概念規定ごとに検討を加える形になっております。
目次3ページにいきますと、第4章「訴訟上の営業秘密の保護強化」でございます。
これは前回申し上げましたように司法制度改革推進本部の方で本格的な検討が行われ
るわけでございますけれども、この審議会におきましてもさまざまなご議論が出たと
いうことを踏まえまして、この審議会としての考え方を整理をしてございます。
それでは、早速4ページから逐次ご説明をさせていただきたいと思います。最初は
前文でございます。昨年から当省の産業競争力と知的財産を考える研究会、さらには
総理の知的財産戦略会議においていろいろな知的財産戦略が策定をされてきたわけで
すけれども、その中で不正競争防止法に関連する課題が位置づけられている、したが
って次期通常国会にその改正法案の提出も含めた検討を要請をするということを掲げ
てございます。
なお、4ページの下の方に「産業財産」「産業財産権」という注書きをつけておりま
す。これは今まで工業所有権等々といっておりましたけれども、知的財産戦略大綱に
おきましてこの名前を変えていこうということが策定をされたわけでございまして、
これに倣ってこの報告書の案の中でも呼び方を変えておりますので、ご了承いただき
たいと思います。
それでは、5ページでございます。 まず「民事的保護の強化」でございます。「現
状と課題」はもう既に皆様に1回ご説明をしておりますので、はしょってまいります
けれども、ここにありますように知的財産戦略大綱で記載をされておりまして、企業
における実態としては、6割以上の企業が民事的保護は不十分、6ページへまいりま
すと立証の困難性が最大の問題点といった認識があるわけでございます。
6ページ、(2)の「課題」でございますが、平成10年、11年の特許法等々産業財産
権4法の改正、さらには12年の著作権法改正でこの民事救済措置の強化が図られてい
るわけでございまして、このあたり、この下から始まる表で整理がされてございます。
7ページ、この民事救済規定の「検討」でございますけれども、大きな括弧で要約
を書いてございます。簡単に申し上げますと、この特許法の関連規定と同様の規定を
導入する方向で検討するということでございます。ただ、(3)にございますように、
具体的態様の明示義務につきましては、いろいろと議論がございます関係から、表現
ぶりのトーンが1段階弱い形になってございます。
個別にコメントしてまいりますと、7ページの下の方で「逸失利益の立証容易化規
定の導入」ということでございますけれども、これは特許法と同様に「被告の譲渡数
量×原告の単位数量当たりの利益額」を算定方法とする立証容易化規定を導入するとい
うことでございます。
8ページ以降、現行法制の状況が書いてございまして、これはもう今までの会で説
明したとおりでございます。8ページの下の方から「具体的検討」として、まず「全
体的検討」をしてございます。
前回ちょっと議論になった点でございますけれども、8ページの下になお書きとし
て、現行の特許法 102条第1項等の適用範囲については、「譲渡」以外の場合につきま
しても、要は柔軟に類推適用が行われることが可能であると理解ができるということ
をあえて入れさせていただいております。
9ページでございますけれども、他方で不競法の特殊性にも配慮しなければならな
いということを上から5行目のところに付してございます。
次に、「個別的検討」でございます。号ごとに検討してございますけれども、9ペー
ジにございますように、まず他人の商品等表示を使用した商品の譲渡(1号、2号、1
5号)関係につきましては、逸失利益の立証容易化規定を適用する余地があるとしてお
ります。
次に、他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡(第3号)につきましては、逸失利
益の立証容易化規定が妥当すると解される。
それから、営業秘密を使用した商品の譲渡、これは4号から9号までですけれども、
逸失利益の立証容易化規定を適用することが可能と解される。
その他(第10号から第14号まで)につきましては、否定的に解し得るという形で、
それぞれの行為類型ごとに適用の可能性について整理をさせていただいてございます。
次に、9ページの下から始まります「ライセンス料相当額の認定規定における『通
常』の文言の削除」でございまして、10ページにございますように、特許法 102条第
3項と同様に「通常」の文言を削除する方向で考えるというのが結論でございます。
「現行法制等」でございます。この10年改正の趣旨は前にご説明したとおりでござ
いますけれども、このような趣旨が不正競争防止法の事案についても妥当すると解さ
れるわけでございまして、特許法と同様に「通常」の文言を削除する方向で考えると
いうのが検討結果でございます。
その次に(3)「具体的態様の明示義務規定の導入」でございます。これは先ほどち
ょっと申し上げたように、対応としては、特許法 104条の2と同様の規定を置くべき
か、引き続き積極的に検討するという形にしております。
現行法制につきましては、11ページにございますように、民事訴訟規則79条第3項、
平成11年改正特許法第 104条の2のそれぞれの趣旨について記しているわけでござい
ますけれども、11ページの下の方から始まりますように、不正競争防止法におきまし
ても同様に争点の明確化・訴訟運営の迅速化を図ることができるのであれば、導入す
ることが望ましいと考えられるわけでございます。
「この点」といたしまして、周知・著名商標や形態模倣に係る訴訟などにつきまし
ては、原則的に、市場において侵害品などを入手することが容易であるので活用でき
る場面が少ないと思われるけれども、いまだ市場に侵害品が出回っていない段階にお
いては立証の容易化に資する。また、営業秘密に係る訴訟については、営業秘密それ
自体は、ただし書きの例外事由としての「相当の理由」に該当し、被告に具体的態様
の明示義務は生じないが、営業秘密に該当しないような技術上の情報などについては
具体的態様の明示義務が生じることから、その限りにおいて侵害行為立証の容易化に
資するとも考えられるとしております。
ただ、「もっとも」で始まるところにありますように、要は原告となる主体及び保護
される客体が必ずしも明確ではなく、被告に一方的に明示義務を課すことのないよう
運用されることが必要という留意点も付してございます。いずれにいたしましても、
こういう点を踏まえて引き続き積極的に検討をするというのが現段階での考え方でご
ざいます。
(4)「文書提出命令とインカメラ手続の導入」でございますけれども、これは対応
といたしましては特許法 105条と同様の規定を置く方向で考えるということで、12ペ
ージから「民訴法 223条における趣旨」、13ページに「平成11年改正特許法第 105条等
の趣旨」が書かれてございます。詳細につきましては、1回説明してございますので
省略をいたします。
14ページでございますけれども、「具体的検討」としてございますように、相手方の
侵害行為の立証容易化のために、営業秘密を含む文書(又は検証物)が提出される可
能性を拡充させることは、原告の立証容易化、真実発見のために必要である。その際、
営業秘密を含む文書について文書提出命令の発令を適正に行うためにインカメラを利
用する必要があることから、インカメラ手続を導入する必要性があると考えるわけで
ございます。
「他方」ということで、インカメラ手続の若干問題点になるかもしれないところを
2つ挙げているわけでございますけれども、1つは「手続保障に対する危惧」、もう1
つは「心証形成に対する影響」ということでございます。
ただ、これはその下、(ⅰ)と(ⅱ)というところに書いてございますように、それ
ぞれ一定の手続保障が図られる、もしくは本案審理における心証を形成することはな
いということがいえるわけでございます。
したがいまして、この「結局」というところございますように、平成8年の新民訴
法への導入の際に、秘密性の判断を裁判所に対する信頼にゆだねて可能な限り証拠の
提出を図るという実務的な解決が行われ、また平成11年の特許法改正においてもこれ
を踏襲した経緯もあることから、不正競争防止法においても特許法と同様の規定を導
入することが適切と考えられるとしてございます。
15ページ、(5)でございます。「計算鑑定人制度の導入」でございますけれども、
これも特許法 105条の2と同様の規定を置く方向で考えるという結論にしてございま
す。
「現行法制等」につきましては、民訴法第 163条、11年改正特許法 105条の2のそ
れぞれの趣旨について記しているところでございまして、民訴法については当事者照
会制度、鑑定人の発問等につきまして記してございます。
特許法の方につきましては、損害の計算に必要な書類の提出を求めることができる
ということで、(ア)、(イ)、(ウ)と記しているわけでございますけれども、16ペー
ジ、
「具体的検討」というところにございますように、これらの趣旨は不正競争防止法事
案についても妥当すると解されるわけで、したがいまして特許法と同様の規定を置く
方向で考えるというのが結論でございます。
次に、(6)「立証が極めて困難な場合の損害額の認定規定の導入」でございます。
対応といたしましては、特許法第 105条の3と同様の規定を置く方向で考えるという
ことでございます。
「現行法制等」でございますけれども、これは「民訴法第 248条の趣旨」、要は裁判
所の判断により損害額を算出・認定することができるとして、被害者の救済を図った
ものであるわけでございます。
(ⅱ)にございますように、「平成11年改正特許法第 105条の3の趣旨」、17ページ
に入りますけれども、裁判官の判断により、実質的な損害賠償額の認定をできるよう
にしたというのが趣旨でございまして、こういうことを踏まえますと不正競争防止法
事案についても妥当すると解されるわけでございまして、特許法と同様の規定を置く
方向で考えるというのが結論でございます。
以上が民事救済手続の強化の関連でございました。
次に、18ページ以降、第2章「営業秘密の刑事的保護」についての章に入らせてい
ただきたいと思います。
「現状と課題」でございますけれども、「政府の認識と取組」、「企業における実態
等」、これらにつきましてはもう既に説明をしてございますので、はしょってまいりま
す。要は営業秘密をめぐるトラブルが増大をしているわけでございまして、例えば18
ページにありますように2割の企業がトラブルを経験し、19ページにございますよう
に、条件つきも含めて企業の約8割が営業秘密の刑事的保護に賛成をしている実態が
あるわけでございます。また、企業内の情報化が進展をしているという実態もあるわ
けでございまして、これらを踏まえて検討を進める必要があるわけでございます。
19ページの下の(2)の「課題」というところで始まりますけれども、20ページに
まいりまして下の表に1回整理をしたわけでございます。要は営業秘密に係る有体物、
要するに財物の不正取得等につきましては、刑法において窃盗罪や横領罪が成立する
ものの、無体物(情報)である営業秘密自体につきましては、現在では一定の範囲に
おいてのみ、例えば不正アクセス禁止法とか刑法上の背任罪等の規定により刑事的保
護が図られている状況であるわけでございます。
一方、アメリカは経済スパイ法があるわけでございますが、それ以外のドイツ、フ
ランス、韓国、中国等の諸外国におきましては、無体物である営業秘密自体を客体と
する刑事罰が存在をしているわけでございます。社会の変化にかんがみますと、現行
の民事的な保護に加えまして刑事罰の導入に向けた検討が必要であるわけでございま
すけれども、他方で弊害もあるわけでございまして、この点に十分留意をしつつ、検
討を行う必要があるとしております。
21ページの「検討」でございます。非常に簡潔に書いてございますけれども、営業
秘密の侵害の重大性と労働者の転職の自由、内部告発など他者の利益との調和の見地
から、不正取得及び不正利用・不正開示について違法性の高い行為に絞り込んで処罰
を行う方向で検討を行うとしてございます。
まず、(1)「刑事罰導入の視点」でございます。前の表にもございますように、現
行の刑法というのは財物のみを対象として処罰規定が設けられているわけでございま
すけれども、昨今の情報のデジタル化、人材の流動化によりまして、当該刑法の制定
当時では想定されなかった情報である営業秘密自体の不正取得等の紛争が増大してい
る。また、営業秘密の価値の増加により、これらの行為による被害も甚大化している
といえるわけでございます。したがって、違法性の高い行為の処罰を検討する必要が
あるわけでございます。
他方、その「留意事項」があるわけでございますけれども、昭和47年の改正刑法草
案の検討時に提起された以下の留意点があるわけでございます。ただし、この留意点、
時代は変わりまして解決に向かっているところもあるわけでございます。
21ページ以降、(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)、(ⅳ)、(ⅴ)、(ⅵ)とあるわけでござい
ますけれ
ども、22ページにございますように、まず特許との関係につきましては、これはもう
平成2年の不正競争防止法の改正によりまして民事的な保護が図られているというこ
とで、その留意点(ⅰ)につきましては、ある意味で不正競争防止法における営業秘
密の保護が定着をしてきている。かつ知的財産戦略大綱では営業秘密の一層の保護強
化が望まれているという変化がございます。
それから、秘密の概念が不明確ではないかという論点でございますけれども、これ
も平成2年以降、営業秘密の定義が、非公知性、有用性、管理性の3つの要件が定め
られておりますし判例も蓄積をしてきているということで、これも不明確ではなくな
ってきているという理解ができようかと思います。
(ⅳ)の背任罪と重複するのではないかという点でございますけれども、これも以
前議論をさせていただきましたように、東洋レーヨン事件の判例のように、背任罪で
は処罰できない事例が考えられるわけでございますし、情報のデジタル化や社会のネ
ットワーク化などに応じて発生する犯罪にも対処する必要性が生じているということ
をかんがみますと、残った(ⅱ)労働者の退職・転職の自由、(ⅴ)消費者運動・公害
反対運動等に対する抑制になるのではないか、(ⅵ)報道機関の取材・報道の自由が不
当な拘束を受けるのではないか、この3点に配慮をしながら構成要件を定める必要が
あるのではないかということでございます。
「具体的検討」でございますけれども、一般的な問題、不正取得、3番目に不正使
用・不正開示、4番目に二次的関与者の順番に検討を行っております。
まず「一般的な問題」でございます。まず「保護法益」でございますけれども、以
前にもここのところでいろいろなご議論をいただいたわけでございますが、対応とい
たしましては、個人的法益及び社会的法益を保護法益とする方向で検討するという形
にさせていただいております。
23ページに「考え方」を記してございますけれども、不競法は知的財産法の一角を
占めるものでありますから、知的財産としての営業秘密の保護が問題となる一方で、
まさに法律の名前もありますように不正な競争を防止をするという社会的な法益もあ
るということで、両方があるのではないかというのが考え方でございます。
次に、その下、「目的」でございます。目的を構成要件として規定するかどうかとい
うことですけれども、これは規定する方向で考えたいと思います。具体的には、第三
者による営業秘密の使用行為が当該営業秘密の保有者に対する法益侵害に結びつくも
のであることから、業務に使用する目的、不正競争の目的などと規定することが考え
られるわけでございます。
また、諸外国の法制に倣いまして、図利加害目的などとすることなども考えられる
わけでございます。
「考え方」として下に書いてございますけれども、まず「業務に使用する目的」と
いって、括弧書きで例えばということで「自己又は第三者の業務に使用する目的」と
いった書き方を挙げてございます。下にございますように、営業秘密の侵害というの
は、結局、当該情報の使用によって実害を発生させるものであるという点にかんがみ
まして、文書偽造罪等における「行使の目的」ないし電磁的記録不正作出罪における
「供用の目的」に対応する主観的違法要素として、「使用する目的」などを要件とする
ことが考えられるわけでございます。
次に、オプションの2番目、(イ)でございますけれども、「不正競争の目的」また
は「不正の競業の目的」でございます。これは現行法でも既に出ている表現ぶりでご
ざいますけれども、「考え方」にございますように、不正競争防止法の趣旨にかんがみ
まして、「不正競争の目的」と限定的に規定することが考えられるわけでございまして、
これによりまして内部告発が排除されることが明確になるということが考えられるわ
けでございます。
24ページ、「図利加害目的」でございます。図利加害目的につきましても、不正競争
防止法または刑法それぞれに使用事例があるわけでございますけれども、「考え方」と
いたしましては、この不競法2条1項7号の規定もしくは背任罪の規定に準じまして
規定をすることが考えられるわけでございますが、目的犯でございますので、確定的
認識などが必要とすれば、処罰範囲というのはそんなに広くないのではないか。それ
から、内部告発も「営業秘密」の「有用性」といった、営業秘密の規定の方でその要
件で除外をされるということが解されるわけでございます。したがいまして、そんな
に広がりは出てこないのではないか。
それから、イギリスなどでは内部告発として good faith の告発を保護してござい
まして、bad faith のものを除くために上記のような目的を規定することが考えられ
るとしてございます。
次に、「違法性」でございます。「正当な理由がないこと」などの違法性阻却事由を
構成要件として規定をするかどうかでございますけれども、規定をしない方向で考え
たいとしております。結局のところ、同義のことをあえて規定する必要はないのでは
ないか、目的要件で絞りをかければ十分ではないかということでございます。
次に、「客体」でございます。対象となる不正行為の客体を、「営業秘密」全般では
なく、「技術上の情報」などの一定の情報のみに限定するかということでございますが、
これは「営業秘密」一般を対象とする方向で考えるという形にしてございます。
下にございますように、営業上の情報も技術的情報と同様の有用性・財産的価値を
備えたものでございますし、実際上も営業上の情報の侵害への対応が問題になるわけ
でございます。現在の経済社会における営業上の秘密の重要性にかんがみますと、こ
れはあえて刑事罰の対象から除外する合理的な理由はないとも考えることができると
しているわけでございます。
25ページにまいりまして、「営業秘密」全般を客体とする不正行為を処罰対象とする
場合に、秘密管理性について、民事と異なった特別の要件を付加するかという論点に
つきましては、民事上の要件と同様ということでございます。
ここにございますように、既に判例も蓄積をされているわけで、比較的明確と言え
るわけでございますし、民事上の管理性の要件も厳格に解されているわけでございま
して、範囲も限定的でございますので、同様に考えていいのではないかということで
ございます。
次に、「結果」でございます。「損害の発生」などの結果発生を構成要件として規定
するかでございますが、これは規定をしない方向で考えるということでございます。
「考え方」のところにございますように、保有者の管理外にある営業秘密が存在す
ること自体が、いつでも使用・開示し得るという意味において、営業上の利益を侵害
するおそれを基礎づけているということができるわけでございます。
また、損害がなくても、「不正取得」や「不正開示」といった行為態様のみによって
違法性が認められるとも考えられるわけでございますし、実害の発生につきましては、
刑事訴訟法 230条にございますように、「害を被った者」という告訴権者の該当性の判
断で足りると解し得るわけでございます。したがいまして、「損害の発生」等の結果発
生を規定しない方向性で考えることができるということでございます。
次に、「未遂」でございます。未遂処罰規定につきましては、規定をしない方向で考
えるということでございます。
まず、不正取得でございますけれども、要は不正に使用・開示されることによって
初めて財産上の価値が低下するわけでございますので、その前段階の取得行為につい
て、未遂まで処罰する必要はないとも考えられるわけでございますし、その次のペー
ジですが、不正使用・不正開示につきましては、背任の未遂に相当すると解すること
もできる行為も含まれておりますので、その未遂まで処罰する必要はないという考え
方でございます。
次に、「刑罰」の重さでございますけれども、懲役刑につきましては3年以下、罰金
刑につきましては 300万円以下の方向で考えるということでございます。これは、現
行法の刑罰の重さと同様ということでございます。
次に、国外への流出については処罰を厳しくするかどうかですが、これは国内と同
様とする方向で考えるということでございます。ここにございますように、財産的価
値を害する点では国内外でも同様でございますので、したがって同じ形で考えるとい
うことでございます。
次に、「親告罪」でございます。親告罪とする方向で考えます。これは「考え方」に
ございますように、公開審理に伴い予測されるさらなる秘密侵害の可能性・侵害の程
度・これに伴う損失と、犯人に対する特別予防・刑事制裁の必要性・処罰感情とを、
究極的には国家ではなくて当の被害者の利益衡量的決断にゆだねることができるとい
うことが考え方の理由になってございます。また、親告罪としないと、結局非常に弊
害が大きいということが次のページにかけて記してございます。
次に、27ページ、「不正取得」でございます。「処罰の要否」でございますけれども、
不正取得は処罰する方向で考えるということでございます。
「考え方」ございますけれども、不正取得行為によって営業秘密の財産的価値が減
少する可能性が飛躍的に高まることから、「取得」するという積極的な行為態様はそれ
自体、非難可能性が高いと評価することができるわけでございますし、有体物であれ
ば財産犯が成立する、これとのバランスにかんがみて取得行為を処罰すべきという考
えが成り立つわけでございます。
また、公正な競争秩序の維持という法の趣旨を重視しますと、これは秩序を破る行
為だということで、やはり処罰の対象とすべきと考えることができるわけでございま
す。
次に、「処罰の対象」でございますけれども、不正取得後の「使用」「開示」も対象
とするかどうかですけれども、これは対象とする方向で考えるということでございま
す。
つまり使用・開示行為というのは法益を直接的に侵害する行為でございまして、違
法性が高い。特に使用行為というのは不正競業それ自体でございまして、処罰しない
のは妥当ではないと考えられるわけでございますし、不正取得がなされた後に、使用
・開示についてのみ関与した者についても共犯の成立を肯定することができるわけで
ございます。したがいまして、使用・開示も処罰対象とする方向で考えることが望ま
しいと思うわけでございます。
28ページの上の方にございますように、親告罪とした場合には、短い告訴期間の起
算点の問題がございまして、告訴可能な期間が長くなるという利点もございます。
次に、「行為態様」でございます。不正「取得」を処罰する場合に行為態様を明確化
して規定するかということで、不正取得の行為態様を明確化して規定する方向で考え
るということでございます。
具体的には2つぐらい考え方があるわけでございますけれども、1つは(「不正な手
段」を明示して)刑法上の財物に係る窃盗罪・強盗罪・恐喝罪・詐欺罪等に対応する
行為を規定する方法、もう1つは(「取得」の態様についてドイツ法のように)「技術
的手段を利用する」「複製物を作成する」などの方法により「取得」する行為を規定す
る方法といったことが考えられるわけでございます。
下に、(ア)と(イ)と2つに分けてございますけれども、(ア)の方は、有体物で
は財産犯が成立するような類型をとりあえず捕捉することが必要であり、またそれで
十分ということを述べてございます。
また、(イ)の方では、技術的手段を利用する。例えば外にアンテナを立てて電話回
線を盗聴するとか複製物を作成する、コピーをとるといったようなものにつきまして
は、特に高度の法益侵害の危険性が認められて処罰の必要性が高い、また立証も容易
といったことが考えられ得るわけでございます。
次に、「不正使用・不正開示」でございます。「処罰の要否」でございます。29ペー
ジでございます。現行法の7号にございます正当取得者の不正「開示」を処罰すべき
かどうかということでございますが、処罰する方向で考えるということでございます。
これは、現在、刑事処罰の間隙が生じております、背任罪の主体たり得ない者など
による不正開示行為を捕捉をする必要があると考えられるわけでございまして、これ
をしっかり捕捉をしておかないと、ご存じのように競業他者に例えばこの営業秘密が
渡るような事例もあるわけでございます。したがいまして、処罰をする方向で検討す
ることが望ましいということでございます。
次に、その真ん中の部分でございますけれども、「開示」のみならず、正当取得後の
不正「使用」も処罰の対象とするかということで、「使用」も処罰の対象とする方向で
考えるということでございます。考え方としては、やはり使用行為というのは不正競
業行為それ自体でございますので、処罰対象とすることが望ましいと考えられるわけ
でございます。
「処罰の主体」でございますけれども、不正「開示」などを処罰する場合に、だれの
行為を処罰対象とするかということで、いろいろとご議論があるわけでございますが、
役員、従業員(職員)を処罰対象とする方向でまず考える。派遣社員につきましては、
今後さらに検討する必要があると整理をしてございます。
「考え方」のところにございますように、背任罪等の主体に該当しない者の行為を
捕捉するためには、営業秘密をその保有者、これはライセンシーなどの使用権限や開
示権限を有する者を含むわけですけれども、ここから正当に示された役職員一般を処
罰対象とすることが必要になろうかと思います。
派遣社員でございますけれども、派遣先企業の指揮命令に従って業務を行う点にか
んがみますと、従業員と同様に処罰をすることも考えられるわけでございますけれど
も、この点に関しましては今後さらに検討する必要があるとしてございます。
次に、30ページへ進みまして、この審議会でも非常にご議論いただきました元従業
員の問題でございますけれども、元従業員などを処罰いたしますと、労働移動に対す
る一種の抑止効果をもたらすおそれを有すると考えられるわけでございまして、こう
いう観点から元従業員などにつきましては処罰対象としないことが考えられると整理
をさせていただいております。
それから、取引先の問題でございます。この審議会でも金型の問題が提示をされた
わけでございますけれども、これにつきましては契約の有効範囲が必ずしも明確では
ないということで、一般の取引関係に萎縮的な効果を与えるおそれがあることから処
罰対象としないという整理でございます。
最後、4番目、「二次的関与者」でございます。「処罰の要否」につきましては、こ
の二次的関与者につきましてもやはり違法行為に加担をしているということで処罰を
する方向で考えますが、他方で、規定につきましては一般の共犯理論にゆだねる方向
で考えるという整理をさせていただいております。
以上、「営業秘密の刑事的な保護」の関連でございました。
次に、「ネットワーク化への対応」でございます。31ページは「政府の認識と取組」、
「企業における実態等」でございますが、このあたりはもう再三ご説明をしていると
ころでございますので、飛ばさせていただきます。
32ページの(2)の「課題」でございますけれども、情報技術の発展に伴いまして、
インターネットを利用した電子商取引が急速に拡大し、ネットワークを利用した新た
な商品流通や広告等が登場しているわけでございまして、不正競争防止法につきまし
ても、このネットワークを利用した無体物の取引行為などに対応するために、「商品」、
「使用」、「譲渡」「引き渡し」の概念規定について、改正の是非を検討する必要がある
わけでございます。
33ページの「検討」のところに要約として書いてございますけれども、ことしの産
業財産権4法――特許法とか商標法の改正を踏まえまして、不正競争防止法につきま
しては、まず「商品」の概念規定については改正を行わず、「使用」の概念規定につい
ても改正を行わず、「譲渡」「引き渡し」の概念規定については明確化の観点から改正
する方向で考えるということでございます。
まず、(1)「『商品』の概念」でございますけれども、法改正を行わないということ
でございますが、現行法制におきましても、特許法は確かに改正をいたしましたけれ
ども、商標法につきましては、国際的に「商品」には無体物が含まれるという解釈も
あることから改正を行っていないわけでございます。この33ページの下から始まりま
す不正競争防止法上の「商品」概念につきまして、有体物に限るという限定説と無体
物まで含まれるという非限定説があるわけですが、34ページの下の方にございますよ
うに、現在の情報社会におきましては、もう無体物も有体物同様に独立した取引の対
象として認知をされておりますことから、「商品」に無体物を含めて解釈することが適
当ということでございます。
また、特許法は物として規定をしているわけでございますけれども、不正競争防止
法は商標法と同様に「商品」と規定をしているわけでございますので、特許法が改正
をされたからといって不正競争防止法を変えなければいけないという形には多分なら
ないということでございます。
さらに、この不正競争防止法の目的たる公正な取引秩序の維持確立の観点に立って
検討するということになりますと、35ページの上の方にありますけれども、有体物と
無体物で解釈を異にする必要はないということでございます。
次に、「『使用』の概念」でございますけれども、これにつきましても法改正を行わ
ない方向で考えるということでございます。商標法につきましては、その「使用」の
定義規定のところで「電気通信回線を通じた提供」ということを明記したわけでござ
いますけれども、35ページの下の方にございますように、不正競争防止法における
「使用」概念につきましては、ドメインネームの裁判例におきまして、電子画面上で
の商標の使用が不正競争防止法上の使用に該当することを正面から認めているという
点がございます。
36ページに「具体的検討」とございますけれども、商標法と異なりまして「使用」
の定義規定がないということと、使用態様、性質についても特に限定を付していない
こと等から、学説でも広く解釈をされているし裁判例もあるということで、改正をす
る必要はないということでございます。
36ページの下の方、「『譲渡』『引き渡し』の概念」でございます。これは、電気通信
回線を通じて提供する行為は、「譲渡」「引き渡し」に該当するかどうかということで
すが、該当するかどうか、これは明らかではないということで、ことしの商標法の改
正に倣いまして、別に電気通信回線を通じて提供する行為を列挙することにより、規
制の明確化を図る方向で考えたいと思います。
「現行法制」でございますけれども、先ほど申し上げたように、商標法の改正を行
いまして、電気通信回線を通じて提供する行為を「使用」の一形態として加えて立法
上の明確化を行ったわけでございます。37ページをみていただきますと、不正競争防
止法における「譲渡」「引き渡し」の意義につきましては、以下にございますように考
えられているわけですけれども、これが無体物たる商品を電気通信回線を通じて提供
する行為が含まれるかどうかというのが明確ではないわけでございます。
したがいまして、②の「具体的検討」というところにありますように、必ずしも特
許法、商標法に平仄を合わせる必要があるわけではありませんけれども、やはり同様
に概念規定の明確化を図ることが望ましい。特にこの点、標識法としての側面がある
こと、これまでも商標法の規定を踏まえた改正を行ってきたということがございまし
て、商標法と同様に規制の明確化を図る観点から、電気通信回線を通じて無体物を提
供する行為につきまして、「譲渡」とは別に規定をするということが考えられるわけで
ございます。
38ページでございます。また、現行の不競法第2条1項10号及び11号に関連いたし
まして、「譲渡」の客体を機器や装置などの有体物に限定しまして、プログラム等の無
体物につきましては「電気通信回線を通じて提供する行為」として別に列挙をしてご
ざいますので、この不正競争防止法の中での整合性を図るという意味におきましても、
「譲渡」とは別に規定をすべきではないかということでございます。
最後、第4章、39ページからでございます。「訴訟上の営業秘密の保護強化」でござ
います。知的財産戦略大綱におきましても、知的財産関連訴訟におきまして証拠収集
手続の一環で営業秘密の保護に関連して所要の措置を講ずる旨記載があるわけでござ
いますし、また審議会におきましても、特許侵害訴訟におきます証拠収集手続の拡充
につきまして、営業秘密を含む文書であっても原則提出し、提出された営業秘密を含
む文書につきましては保護強化を図るべき旨の要望が寄せられているわけでございま
す。
「課題」というところにございますように、実体法上秘密が保護されても訴訟手続
上営業秘密が開示されてしまうおそれがあると権利者の保護が十分に図られないとい
う指摘があるわけでございまして、これについて検討することが必要であるわけでご
ざいます。
「検討」ということで、結論をイタリック体で書いてございますけれども、現在の
ところ、ご存じのように司法制度改革推進本部知的財産訴訟検討会における議論にゆ
だねられているわけでございますけれども、当小委員会におきまして訴訟手続におけ
る営業秘密の実効的な保護措置が整備されるよう強い意見が寄せられたことから、か
かる意見が十分に反映されるよう、引き続き検討会の議論を注視していくことが適当
という形で整理をさせていただいております。
具体論として40ページ以降書いてございますけれども、まず「現行法制等」という
ことで憲法82条第1項の説明をしてございまして、対審の公開制限の要件ということ
で、この要件以外は公開の制限を不可とする見解と、営業秘密などを考慮して、この
公開原則をより弾力的に解する見解とそれぞれのご主張があるわけでございます。
40ページの下の方です。他方、「民事訴訟法」の関連では、平成8年の改正の際に訴
訟記録の閲覧等の制限規定は設けられたわけでございますが、検討された3つの事項
のうち他の2つ、裁判の非公開、刑事罰を含む秘密保持命令、この2つについては改
正が見送られたわけでございます。
41ページに「訴訟記録の閲覧等の制限」ということで民事訴訟法第92条が規定をさ
れたわけでございますけれども、こういうことも含めまして、現行の運用ということ
で、41ページの下の方に、まずこの民事訴訟法の第92条がある。
それから、弁論準備手続を活用する形がございます。それから、裁判所外尋問によ
る証人尋問手続、営業秘密を含む文書の不必要な開示を避けるためのその他の裁判所
の訴訟指揮による柔軟な運用、こういう形で実務上の対応がなされているわけでござ
います。
41ページでございますけれども、他方で、まさに営業秘密の刑事罰の議論の中でも
問題提起がございましたように、刑事訴訟におきましては、憲法上、他の訴訟手続よ
り裁判公開の要請が強く求められているわけでございまして、そういう意味で厳しさ
があるわけでございます。
「具体的検討」といたしまして、先ほど申し上げましたように、司法制度改革推進
本部の検討会における議論があるわけでございますけれども、この審議会でも活発に
議論が行われたわけでございまして、「その中で、営業秘密は一旦公開されるとその価
値を失ってしまうために、民事の訴訟手続においては営業秘密が開示されない手続の
整備が必要であり」、また刑事の訴訟手続においても営業秘密に配慮した手続の導入を
検討すべきとして、「産業競争力強化の観点から、上記検討会において前向きな議論を
行い積極的に推進すべきとの強い意見が寄せられた」と整理をさせていただいており
ます。
そこで、「訴訟上の営業秘密の保護については、現在のところ司法制度改革推進本部
の検討会における議論に委ねられているが、上記意見が十分に反映されるよう、引き
続き検討会の議論を注視をしていくことが適当」という形で結ばせていただいている
ところでございます。
以上、ちょっと時間を超過いたしましたけれども、説明は以上でございます。
○土肥委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして、ご意見、ご質問等をちょうだいするわけ
でございますけれども、本案が4章から構成されておりますので、この章立てに従い
まして、以下検討を進めていきたいと思っております。
順番は、この第1章の「民事的保護の強化」、それから「刑事的保護」、そういう形
で進んでまいりたいと思っております。
それでは、第1章の「民事的保護の強化」、この問題につきまして、どの点からでも
よろしゅうございますので、ご意見をちょうだいできれば、あるいはご質問がもしご
ざいましたらお出しいただきたいと思っております。いかがでございましょうか。
押本委員。
○押本委員 民事的救済のところと第3章との兼ね合いなのですけれども、インタ
ーネットを介した提供行為を含めるか含めないかというのが前回議論にあったと思う
のです。今回の1章はあくまでも「譲渡」という言葉にこだわるのか。特許法の場合
は「譲渡等」ということで、審議会の解釈等においては当然そういうものも含まれる
となっていますけれども、商標法においては単に「譲渡」という言葉とネットワーク
を介した提供ということを分けてあるから、極端な場合、譲渡以外は含まれないと解
されるところがあって、今回の不正競争防止法の改正案において、この逸失利益の推
定は譲渡のみなのか、その辺がある程度広い解釈のもとに定義されるのか。
○土肥委員長 その点につきましては、先ほどの説明にも少し出ておったかと思っ
ております。8ページの下の方になると思います。
○小宮知的財産政策室長 特許法の場合、まさに「譲渡」というのが代表格として
位置づけをされているわけでございます。したがって、今日の資料にもございますよ
うに、ほかの形態についても類推適用し得るという解釈になっているわけでございま
す。前回議論にもなりましたように、文言的には特許法も並列に読み得るわけでござ
います。したがって、我々も産業財産権4法との関連では同じように今回並列で規定
をするわけですけれども、損害額の推定をする場合には、そこは特許法等と同様に、
いわば他の類型についても類推し得るという形でご理解をいただいてよろしいかと思
います。
○押本委員 ということは、文言的には「譲渡」という言葉になって、特許法が類
推適用みたいな形。ただ、特許法は「譲渡等」という形で、ある意味で広い範囲にも
ともとなっていたというところとのニュアンスで、そこまで読み切れるのかなとちょ
っと心配が……。
○土肥委員長 102条1項の方は「譲渡」ですよね。
○押本委員 はい、そうです。ただ、実施の定義のところが「譲渡等」というとこ
ろで……
○小宮知的財産政策室長 だから、実施の定義の方が膨らんでいるにもかかわらず、
損害額の掛け算の規定のところが「譲渡」と、「等」が入っていない形になっておりま
す。ところが、前回も議論になりましたように、そこは「譲渡」というのは代表格と
いうことで考えられているわけです。したがって、実施の定義の方ではもっと広い規
定、いわゆるはみ出た譲渡以外の部分、「等」の部分についてもこの推定規定を使い得
るというのが今の特許法の解釈運用になっていると我々は理解をしているわけなので
す。
そうすると、不正競争防止法の方におきましても、ここに電気通信回線を通じた提
供と後ろで書いたとしても、今度は損害額の推定をする場合に「譲渡」というのは代
表格として規定をするわけで、ほかの規定についても類推適用は可能だというのが我
々の頭の整理ということでございます。
産業財産権4法と違う規定のやり方をやりますと、では産業財産権4法では限定的
になっているのかという逆の問題が惹起されてしまうわけでございまして、そういう
ことから考えても、今の産業財産権4法の規定の仕方と合わせてやっておいた方がい
いかなというのが我々の考え方でございます。
○土肥委員長 案としてはそのようになっているようでございますので……。
丸島委員。
○丸島委員 質問させてください。12ページですが、(4)の上、「引き続き積極的
に検討する」という意味はどういう意味なのかをご説明いただきたいと思います。
○小宮知的財産政策室長 前向きに検討するという意味です。
○丸島委員 この委員会ででしょうか、それとも別なところなのでしょうか。
○小宮知的財産政策室長 パブリックコメントを12月上旬に出しますけれども、そ
れまでには検討を詰めてはっきりさせて出したいと思います。実はまだ法制的な議論
がいろいろありまして、今はこういう書き方になっていますけれども、急速に詰まっ
てきているところです。後で申し上げようと思ったのですが、パブリックコメントに
かけるバージョンは、出す前にもう一回各委員の方々におみせしたいと思っておりま
す。その段階ではもっとはっきりした表現になるべく今頑張っておりますので、その
ところをお酌み取りいただきたいと思います。
○丸島委員 わかりました。
○土肥委員長 文化審議会の方でも同じような問題があるようでございまして、取
り扱いにいろいろ困っておるやに聞いておりますけれども、そういう別の委員会の進
行をみながら詰めていきたいということのようでございます。
○小宮知的財産政策室長 今委員長の方からありましたように、要は著作権にして
も営業秘密以外のものにしても、要するに積極否認をやるまでもなく、もうわかっち
ゃっている じゃないかというロジックというのが非常に強くあるわけでありまして、
そうなると規定をしなくても今の現行の規定でも、つまり民訴法の規定だけで十分い
ける、わざわざ特則を書く必要もないんだ、こういう議論が片一方で法律学者の中か
ら当然あるわけであります。
他方、それを突き詰めていきますと、ではどうして商標法に入れちゃったのという
また別の根源的な問題も生じますし、余りこういうことをコメントしていいかあれで
すけれども、文化庁は文化庁で産業財産権4法に入っているのに著作権法に入れない
という、今度は産業財産権法と著作権法のバランス問題がございまして、これまたこ
れで困っているわけであります。
したがって、ある意味で我々も文化庁の出方、法律学者との議論、内閣法制局との
議論、こういうところも総合的に判断をしていこうと思っておりますけれども、構え
としては我々はなるべく入れる方向でいきたいなとは思っています。ただ、先ほど申
し上げたような必要のない規定を入れるべきではないんだというような議論もまだち
ょっと残っている関係から、このような形になっているということが正直なところで
ございます。
○土肥委員長 ほかにございませんでしょうか。
三村委員、お願いします。
○三村委員 今、事務局からのご説明があったのですけれども、もし積極否認の規
定が必要ないんじゃないかという議論があるのでしたら、商標法に比べれば、著作権
法の場合を含めて必要な場合が多くあります。著作権法の場合には、代表的にはプロ
グラム著作権については開示してもらわなければ実際上の審理はほとんど不可能でご
ざいますし、不正競争防止法の場合には、ご存じのとおり、技術上のノウハウの場合
が典型的でございますけれども、被告に積極否認を求める必要がありますので、商標
法に比べればずっと必要があるという形でご検討いただきたいと思います。
○土肥委員長 商標法の場合には準用という形で規定できるんですよね。この場合
ですとそういう方法は難しゅうございましょうから。
○三村委員 そういう点では、意匠の場合も裁判になる場合であれば、被告からの
開示の必要はほとんどないのですけれども、意匠法との比較からしても、やはり必要
な規定だというふうにご議論いただければと思います。
○土肥委員長 ほかにございませんでしょうか。
今は逸失利益の問題、先ほどの積極否認のところあたりのご意見、ご質問等が出て
おります。文書提出命令、その他、計算鑑定人、「通常」の文言、民訴法 248条の特則
のようなもの、このあたりは出ておりませんけれども、いかがでございましょうか。
「通常の」のところ、計算鑑定人のところ、 248条の特則、このあたりについては、
従来の議論からいたしますと積極的にご議論いただいておるところかと思います。こ
の3点につきまして、よろしゅうございますか。
文書提出命令あたり、何かご意見ございますでしょうか。
本案の書きぶり等につきましても、よろしゅうございますね。
○丸島委員 ちょっとよろしいでしょうか。
○土肥委員長 お願いします。
○丸島委員 直接でないので、別の章のときのお話かもしれないのですが、この委
員会の最初に文書提出命令をもっと積極的に拡大してほしいという要望をお願いした
と思うのですが、これは別の委員会でやるべき仕事だというので、この委員会では見
送られたわけですね。最後の4章でほかの検討会に対する関連での表現があるのです
が、この表現は自分自身で注視するというだけで、ほかの検討会に対して何かお願い
するとか影響を与えるような関連は全然表現されてないわけですね。これが難しいの
かどうか、私はわかりません。となると、それとの関連で、この最初のところの文書
提出命令の表現そのものが4章で改善されるという前提でみていたものですから、も
しこれが独立して余り影響を与えないのなら、こっちの方にもうちょっと積極的に入
れたいなという感じをもっているのです。
○土肥委員長 本日合わせてご議論いただくということももちろんあり得るのだろ
うと思っておるところでございますけれども、時間も限られておりましたので章ごと
の検討にさせていただいているところでございます。今、丸島委員がおっしゃってお
られる部分につきましては、もっと後の段階できちんと時間を配分して必ず検討させ
ていただきますので、よろしくお願いいたします。
よろしゅうございますか。「民事的保護の強化」につきましては、先ほどの丸島委員
のところを含みながら、仮どめということにさせていただきます。
それでは、次の点に入らせていただきます。第2章です。18ページ以下ということ
になります。「営業秘密の刑事的保護」の問題でございます。ここも「民事的保護の強
化」に比べますともっといろいろ議論があるところであろうと思います。第2章は、
大きく分けますと、22ページ以下の「一般的な問題」と27ページ以下にある「不正取
得」の問題、4号問題と申しましょうか、2条1項4号に関する不正競争行為の処罰
の問題、29ページ以下に「不正使用・不正開示」とございまして、2条1項7号問題
が分けて書いてあると思います。この3つの問題、まず「一般的な問題」あたりから
ご議論いただければと思います。つまり22ページ以下、「具体的検討」とございまして、
①「一般的な問題」、このようにございます。
先ほどの小宮室長の説明からいたしますと、(ア)、(イ)の2つ、「目的」のところ
あたりはかなり時間をかけて説明があったところではないかと思っておりますけれど
も、この「目的」の部分について、何かご意見、ご質問等ございますでしょうか。
高山委員、お願いいたします。
○高山委員 23ページの「目的」のところについて申し上げます。考え方の選択肢
といたしまして、先ほどの報告では(ア)、(イ)、(ウ)の3つの考え方が紹介された
わけでございますが、私は個人的にはこの真ん中の(イ)の規定の仕方が一番いいの
ではないかと思います。
理由が幾つかございますが、まずこの要件において、報道の目的でありますとか正
当な内部告発の目的で行われた行為については処罰の対象から外すということが大変
重要になっているわけでございます。
その点からいたしますと、例えば(ア)ですと、報道を業務としている方にとって
は、報道の目的で行うという場合も形式的にはこれに当たってしまうおそれがあるよ
うにみえるわけです。その点では、(イ)はこれが除かれるということは明確になって
おります。(ウ)も、報道や内部告発の目的も加害目的に当たってしまうと解釈される
余地があるように思われます。
特に(ウ)については、24ページの「考え方」の説明のところで、イギリス等の法
律で内部告発として good faith 、bad faith というような区別があって、それが紹
介されてございますが、ここでの善意、悪意というのは、日本の民法でいうような善
意、悪意というのとは異なりまして、一般的な日常用語での意味の善意、悪意という
形に近い区別になっているわけです。このような考え方は英米法では比較的頻繁にみ
られるところでございますけれども、日本の刑事罰の規定の中ではこういう考え方を
とるような解釈というのは、もし取り入れるとすれば異様な感じになるのでして、図
利加害目的という文言もそれ自体としてはかなりあいまいなものであって、内部告発
の目的とか報道の目的がそれによって明確に除かれるという形にはなっていないよう
に思われるわけです。それが1つの理由です。
もう1つの理由は、この「目的」の要件をかなり限定的に規定することは大変重要
だということで、その点では(イ)の選択肢が一番いいのではないかと思っておりま
す。なぜかというと、ほかの要件と関係するところで、例えば24ページのその次の
「違法性」という要件で、もし「正当な理由がないこと」という言葉を加えないのだ
といたしますと、それにかわるような限定的な目的要件が必要であろうと思います。
「不正競争」という言葉がこの「目的」のところに入っていれば、そうでない正当な
理由で行う行為は外れるということが明確になろうと思いますし、また25ページの
(ⅴ)の結果という要件に関しましても、もし「損害発生」の結果発生の要件を規定
しないということにいたしますと、いってみれば実害の発生を前倒しにした形で、「目
的」の要件で実害発生の危険を基礎づけるような内容が要求されるわけであります。
その点からしても「目的」の選択肢の中では、この(イ)の「不正の競業の目的」と
いうのが一番いいのではないかと考えます。
○土肥委員長 ありがとうございます。高山委員のおっしゃったのは内部告発との
関係、適正な内部告発を阻害しない、排除しないという観点からということでござい
ましたけれども、もう1つの人材の流動性との関係でいうと、それは主体の問題、つ
まり後で別なところで切ればよろしいということになるわけですね。
ほかにございませんでしょうか。一色委員、お願いいたします。
○一色委員 ただいまの「目的」のところに関連する議論でございますが、(ア)の
「業務に使用する目的」とか、(イ)の「不正競争の目的」という規定ぶりにしますと、
第三者がこのような行為をする場合に、その者に情報、営業秘密を提供する行為が入
ってこないように解されるかと思うのですが、これはどのように事務局としてお考え
でございましょうか。
○小宮知的財産政策室長 まず、今のご質問に単純に答えていきますと、(ア)は
「第三者の業務に使用する目的」と括弧書きで書いてございますので、(ア)は入るこ
とは前提となっております。(イ)の「不正競争の目的」の場合に第三者の扱いという
のが実はちょっと不明確な部分もあるなということでオプションの(ア)を考えたわ
けでございまして、そういう意味では、第三者は(ア)は入っていて、(イ)は不明確
というのが今の質問に対する答えでございます。
○土肥委員長 よろしいですか。
○一色委員 (ア)に関しましては、私の間違った解釈でございまして、申しわけ
ございませんでした。
○三村委員 今のようなご説明で、確かに(イ)の場合に第三者が用いるのに対し
て情報を提供するのが入らない可能性があるということであれば、(イ)の場合も
(ア)に倣って「自己又は第三者が不正の競業を行う目的」とか、そういう形で
(イ)を(ア)的に書くことは十分可能だろうと思います。
一般的な話で(ア)、(イ)、(ウ)のうちでどれがいいかという点につきましては、
先ほど高山委員がおっしゃったように、私も(イ)の書きぶりが一番妥当だろうと個
人的には思っております。したがって、今のようなご指摘があるのであれば、(イ)を
基本にして「自己又は第三者の不正の競業の目的」というような形で少し膨らませる
という形でお書きになるのがよろしいのではないかと思います。
○土肥委員長 ありがとうございました。
山口委員、お願いいたします。
○山口委員 同じ点でございますが、今(イ)か(ア)かというご議論がございま
したけれども、(イ)と書くと非常に狭くなり過ぎるのではないかという問題が多分あ
るのだろうと思われます。その辺を考慮して(ア)という考え方が出てき得るのだろ
うと思いますけれども、先ほどの高山委員のご議論でも、(ア)で十分限定されている
かという問題が慎重な考慮に値する問題だろうと考えられますので、今、三村委員の
いわれたような(イ)のオプションとか、その辺を考えられて妥当な線引きをするの
がいいのではないかと私は思います。
○土肥委員長 ありがとうございました。
松尾委員、お願いいたします。
○松尾委員 私も全く同意見です。(イ)を中心にして考えていただきたいと思いま
す。特にこの(ウ)がよくわからないのですが、23ページの表のところには「(ウ)図
利加害目的等」とありますね。それから、(ウ)に書いてある2つの条文から引かれて
いるところですが、刑法の方はまさに図利加害なのですが、不正競争防止法の方でい
きますと「不正の競業その他の不正の利益を得る目的」ということで非常に広くなる
のです。私はこういう広いのは設けるべきではないと考えます。
○土肥委員長 ありがとうございました。
丸島委員。
○丸島委員 半分質問も入るのですが、今のように(イ)でいった場合、「自己ない
し第三者」という表現を入れたとしても、自分で単なる開示をしてしまった場合はど
ういうことになるのでしょうか。後の不正開示に入るのでしょうか。
○小宮知的財産政策室長 入らないと思います。つまりもっと具体的にいうと、自
分で新しい会社を起こす場合か、またはライバル会社にそれを開示する場合は確実に
入りますけれども、勝手にインターネットにばらまいてしまうのは入らない可能性が
高いと思います。
○丸島委員 それをなぜ外すのでしょうか。
○小宮知的財産政策室長 不正競争ではないからということです。
○丸島委員 不正競争でないのはわかるのですが、営業秘密を不正目的で、「目的」
の中にそういうのを入れなかったらば、そもそも財産が公開されることによって損害
を受けるわけですね。そういうのが一つも防げないというのはちょっとおかしいよう
な気がするのです。ですから、入手するときに既に公開する目的で入手しても罰せら
れるべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○山下知的財産政策室課長補佐 若干の補足説明ですけれども、ばらまいたという
のは、多分マニアとかの間で楽しむためにばらまいたということが念頭にあって小宮
から申し上げたと思うのですが、仮にそれが競業他者に渡るような場合であれば入り
得るとも考えられます。
○丸島委員 入るのですか。
○山下知的財産政策室課長補佐 そこはケースによって違ってくると思います。
○丸島委員 一般に公開すればだれでも入手するわけでしょう。だれが罰せられる
のですか。
○山下知的財産政策室課長補佐 その場合は、ちょっとまだ中で具体的に検討して
いるところで確定的なことは申し上げられないのですが、要はばらまいた結果、それ
を仮にみた人が競業他者であるという場合も中には考えられるわけであって、そうい
った場合には入る可能性があるとも考えられるというふうに検討しておるということ
です。
○丸島委員 それで入るとしたら非常に混乱が起こるような気もするのです。一般
に企業間で公知になった情報というのは営業機密とみていないで管理していますから、
第三者が不正取得して公にしてしまったと。公になった情報というのは、普通の企業
は公情報としてそのまま使いますよね。それを使ったことによって罰せられる要因が
あるとしたら、これはおかしいと思うのです。ですから、不正取得して公開する段階
で抑えないと、これは営業秘密を保護できないのではないでしょうか。
○山下知的財産政策室課長補佐 これは「目的」のところですので、どの程度認識
しているかというところも関係してくると思われまして、公開するときに実際にこれ
をばらすことによって競業他者に渡るのかどうか、そういったところで不正競業の目
的ありと判断されることもあり得ると思います。
○丸島委員 「目的」でいうのか「開示」のところでいうのかわかりませんけれど
も、先ほどの内部告発とか報道の自由とか、また後で出てくる職業流動化とか、そう
いうことを守るのは大事だというのはわかるのですが、そのことに余り気を置くこと
によって、一般の規定の中に、頭にそれを入れることによってほかに影響が出てくる
ような感じを私は受けているのです。ですから、もし報道の自由とか内部告発とか流
動性が大事なら、それを特別に取り上げて、むしろこういう場合は該当しないという
ふうに規定した方が安全ではないかなという気がするのですけれども、いかがでしょ
うか。
○土肥委員長 今、委員ご指摘の点につきましては、確かに重要な問題であろうと
思いますので、現段階におきましてはこれはまだ案の段階でございまして、この後ま
た事務局の方で、各委員の今日の議論を含めて、さらに追加的な検討を加えた上でパ
ブリックコメントに出すというようなことでございますので、今ご指摘のところを伺
っておくということにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
○丸島委員 その前に、私は認識が違っているかもしれませんけれども、内部告発
が認められるべきだとお考えの背景は、どんな企業の有効な営業機密であっても内部
告発のためには使っても罰せられない、こういう前提があるのでしょうか。
○土肥委員長 この点、事務局からですか、それとも……
○小宮知的財産政策室長 正直いって内部告発の対象が、例えば公害とか、いわゆ
る営業秘密に全く当たらない情報であれば、ここのところで目的規定でどうこう議論
する必要もない、つまり営業秘密とは関係ない世界なのですが、問題なのは会社のも
っておられる情報の中にグレーゾーンの情報というのが相当程度あるというのが、我
々はいろいろなところから聞いてちょっと受けている印象でありまして、つまり1つ
の紙の中に価値の高い営業秘密と内部告発の対象となっている情報とが混在している
事例というのはそれなりに存在をしている。そうすると、今度はそれを全部含み込ん
だ形で処罰規定を設けたときには、丸島委員のおっしゃるようなリスクがある反面、
逆の、つまり乱訴になるリスクというのも当然グレーゾーンで発生するわけでありまし
て、内部告発をある意味で守っていくという観点に立つと、なるべくグレーのところ
は残さない方がいいという考え方もあり得るわけであります。
もう1つ、逆に丸島委員にお伺いしたいのは、今委員長の方からはここで決まるわ
けじゃないということはありますが、パブリックコメントを出す前の最後の会議であ
りますから議論はびしっと整理をしておきたいなというのが我々事務局でありまして、
まさに丸島委員の議論を非常にフラットに解釈をしていくと図利加害目的と規定をせ
ざるを得なくなるのかなと。
つまり限定的に抜くというのは、いろいろな法律の技術論としてはすごく難しい世
界に入っていくものですから、最終的にどういう目的でやる者を処罰の対象にするの
かというところを最初からはっきりさせておかないと、多分法律として構成できなく
なってしまう可能性が高いなと。
したがって、今まさに議論になったように、競業他者に渡る、もしくは競業他者が
起きるという自体がいけないとするのか、それとも情報が外に出ること自体が悪なの
かというところはやはり少しご議論いただいておかないと、我々も最後にパブリック
コメントでどこか1つに絞って書かなければいけないものですから、その時点で意見
が反映されていないという話になっても困りますものですから、そのあたりはむしろ
今日きっちり議論をしていただきたいなと思います。
○丸島委員 私は企業で営業秘密を管理する立場からしますと、財産価値を保つの
は公開されるまでだと思っていますから、どんな目的であれ、マニアック的な目的で
あれ、公開されたら企業にとっては非常に損失を受けると思います。これが第1点。
これは自己の営業秘密についてそうですね。
もう1つは、第三者から契約書を入手している営業秘密、これについては明らかに
契約違反であります。目的が何であれ、第三者には開示しないとなっているわけです
から、そういう状態で営業秘密を中で管理している従業員が公開してしまったという
ことは契約の違反になります。
そういう意味で、企業としては公開した後あるいは取得した後、何に使うかは無関
係で、1回公開されることによってえらい影響を受けるということは私はあると思う
ので、公開そのものが対象になるべきだと私は思います。
○土肥委員長 お願いいたします。
○竹田委員 この「目的」については、前に検討したときの案では不正の目的が入
っていましたね。私は不正の目的の方がいいのではないかという意見を述べたつもり
ですが、これは不正競争防止法の12条の1項2号に「不正の目的」というのがあって、
括弧書きで「不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他不正の目的を
いう」となっています。
これでいくと、今丸島委員がいわれたようなインターネットで営業秘密をばらまく
というようなことは不正の目的に入るのではないかと思うのですけれども、その方が
いいのかどうかについては前の議論では必ずしも詰められたわけではなかったと思う
ので、ここではもう不正の目的はドロップされているのですが、その点も加えて議論
した方がいいのではないかと私は思うのです。
○土肥委員長 三村委員。
○三村委員 今、丸島委員からのそういうご不安はよくわかるのです。ただ、愉快
犯とかマニアックな人の開示行為、そういうものまで処罰するということになります
と、それは一般刑法で規定しております業務妨害罪と同じことになってしまいますの
で、それを不正競争防止法の罰則で書くのが適当かどうかという問題になってしまい
ます。そうすると、威力業務妨害とか業務妨害罪の対象となる行為を不正競争防止法
でかわりに処罰するのかという形で、刑法との線引きが微妙になってくるだろうと思
います。ですから、むしろそういう行為は刑法の威力業務妨害罪の規定をもう少し拡
充するというような形で対処するのはわかるのですけれども、この不正競争防止法と
いう法律の中で対処するのはやはり限界があるのではないかと思っております。
○土肥委員長 ありがとうございます。
竹田委員、お願いいたします。
○竹田委員 三村委員がおっしゃったご意見は私もよくわかります。ただ、現行の
不正競争防止法の14条も刑事制裁規定で「不正の目的をもって」と規定してるんです
よね。ですから、その辺をどこに絞るかというのは、この営業秘密の開示についてど
こまで刑事制裁にするか。特に今まで議論したような抑止的効果ということを考えた
場合に、丸島委員のいっているところまで広げていいのかどうかということがやはり
問題なのかなと思うので、現に規定まであるわけですから、必ずしも不適当というわ
けでもないのかなと思います。
○土肥委員長 ありがとうございます。
山口委員、お願いいたします。
○山口委員 目的要件それ自体とすれば、その明確性の問題が最終的には残ると思
います。今その不正の目的が現に使われてるじゃないかというご指摘がございました
けれども、それが果たして本当にいいのかどうか。あるからしようがないわけですけ
れども、そういう問題もあろうかと思います。新たに立法するときに果たしてそのよ
うなものを用いることが妥当かどうかということは、さらにもう一度考えていい問題
かと思います。
もう1つ、基本的には、やはり刑罰規定というのは抑止効果をもつわけですね。現
に実際に処罰される対象よりも、それ以上の行為を抑止するという効果をもつわけで
す。したがいまして、その点まで考えた上で、不当な抑止にわたらないような罰則を
つくっていくという視点も私は大事ではないかと思います。
罰則の場合に、特に単一の利益を守るだけが問題になるわけではございません。例
えば報道の目的の場合も内部告発の場合も――内部告発は何でもいいのかというご議
論もございましたけれども、一定の正当な利益を追求するための内部告発のような場
合、それはカウンターとなる利益というのはございます。その調整の中で、どの程度
の抑止効果が及んでいくのかということを考えながらつくっていくというのが罰則の
基本的なつくり方ではないかと私は考えております。
したがいまして、営業秘密を守るという点からしますと多少ご不満の残る部分もあ
るいはあるかとも思いますけれども、それはそのような刑罰規定の限界といいますか、
固有の性質である、そういう問題もあるのだということも考慮される必要があるので
はないかということでございます。
○土肥委員長 ありがとうございました。いずれにいたしましても、各委員からご
指摘いただきましたことは、「目的」で絞るということについては皆さんご異論ないわ
けでございます。それをどう書くか、どう適正に書いていくかというところがまさに
求められておるところでございますけれども、これだけ議論することはできませんの
で……。
三村委員。
○三村委員 先ほどの山口委員の意見は大変貴重な意見で、私も基本的に賛成でご
ざいます。ちょっと補足したかったのは、今、竹田委員の方で14条で不正の目的とい
う条文があるというご指摘で、確かにそのようになっているのですけれども、14条の
1項は「2条1項1号又は13号に掲げる」という形で絞っておりますので、現在の
「不正の目的」の語を用いた条文は、後の方の違反行為の方をみますと、行為自体の
内容で既に不正競業行為に限定されている条文でございます。したがって、営業秘密
の不正開示の場合のように、その行為自体が競業かどうかがわからない行為について
同じように不正の目的だけで書くかどうかというのは、また別の問題になるだろうと
思います。
○土肥委員長 松尾委員。
○松尾委員 ちょっと今のところに補足したいと思います。14条でいっている1項
1号と13号というのは、一般の需要者、消費者に影響があるから刑事罰でいいと思う
のです。これに対し営業秘密の保護ということになりますと、これは民事の方は基本
的には個人の財産の保護ということであり、刑事罰でそれ以上のことがあるときに制
裁を加えてもいいという趣旨です。そこで私は1号や13号と比較しても営業秘密の
刑事制裁についてはむしろ不正競争の目的というようなことで縛った方がいいだろう
と思います。
○土肥委員長 ありがとうございました。
久慈委員、お願いいたします。
○久慈委員 ちょっと質問みたいな話なのですが、不正競争の目的とした場合に換
金目的でという場合にはそれは除外されるのでしょうか。
○小宮知的財産政策室長 今ご議論がありますように、(ア)と(イ)を少し連結を
するという観点で書くとすれば、換金の相手がライバル会社かどうかというので1つ
そこは大きく分かれるかなという感じがします。だから、単純に売る場合と、そうで
はなくて、まさにライバル会社が買い取って自分の業績を上げるためにやるという場
合では全く違うということになろうかと思います。
○久慈委員 ライバルかどうかはなかなか定義が難しいのですけれども、私の扱っ
たケースはほとんどが換金目的で、雑誌社とか、ほかに持ち出すというケースです。
実際にどういうことが起きているのかという類型的なことを考えた場合に換金目的で
持ち出したりする場合がみんなすっぽ抜けるようであれば、抑止効果みたいなものも
余り期待できないかなと思うのです。
○小宮知的財産政策室長 逆にお伺いしたいのは、まさに今こういう議論になって
いるのは討伐?性の高い行為は何かということだと思うのです。雑誌に抜けている営
業秘密というのは、私は雑誌をいつも読んでいますけれども、何が営業秘密なのかと
いうのがよくわからないのであれですが、では当該営業秘密が例えば会社の競争力を
どこまで阻害をしているのか、それと不正の競業でとらえられるような範疇の場合と
どのような差があるのかというところが、もう1つこの議論をしていくための大きな
ポイントではないか。つまり最終的にはこれは産業競争力を強化するためにやってい
るわけで、したがって雑誌に抜けるような情報が、まさに先ほど松尾委員がいわれた
ように刑事罰まで導入して抑えなければいけない話なのかどうなのかというところだ
と思うのですけれども、そこについてはいかがですか。
○久慈委員 具体的にいいますと、まだ研究開発中の技術なり商品を持ち出すわけ
です。商品の仕様とか性能、機能を情報として雑誌に売る。その雑誌社はそれをスク
ープ記事みたいにして出すわけですけれども、その持ち出した者には何百万かの謝礼
ということで払われているわけです。そういったケースがそのまま野放しになるのか
どうかということなのです。
○小宮知的財産政策室長 野放しになるのかどうかではなくて、それによって会社
の事業成績がどの程度下降することに立ち至ったのかどうかという質問なのです。
○久慈委員 それはいろいろな形で証明しろといわれれば証明しなければいけない
部分ではあるのですけれども、つまりごく当たり前の話で、特許も何も出していない
開発中のものがそのまますっぽ抜けたら損害があると考えるのが当然だと思うのです。
そういう問題についてお話ししているのです。
○小宮知的財産政策室長 だから、それを刑事罰まで導入しなければいけない、つ
まり民事だけでは不十分である、そこまで重たいものなのかどうかということを伺っ
ているのです。
○久慈委員 情報を保護するという趣旨からいえば、そういったことが非常に多い
んだということを申し上げたいのです。
○土肥委員長 丸島委員、お願いします。
○丸島委員 先ほど山口委員から抑止力という表現が出て、私は逆の意味で抑止力
ということを期待しているのです。刑事罰を適用しなくても、厳しいということによ
って秩序が守られるのだと思っているのです。それを抑止力と私は考えているのです
が、厳しくするとほかのことが制約される抑止力という意味でご説明されたと思うの
です。ほかのものに影響を与えるからというと、では原則すごくやわらかくしようと
いう方向に絶対いくと思うのです。
そういう立場からみると、企業の立場で、今の委員のいわれた雑誌に公開してなぜ
悪いという1つの例、これは想像ですけれども、具体例で例えば内部告発にも関連す
るのですが、役員代表訴訟を起こそうと思って、ある役員が担当している営業秘密の
契約交渉、こんな下手な交渉をした、会社に損失を与えたということを暴露したとし
ますね。これは相当な営業秘密が出ると思います。これは内部告発でもあります。そ
れが許されるのでしょうか。私は大変なことになると思うのです。
ですから、すべての内部告発をやめろという意味ではないのですが、裁判やって、
まだそれが代表訴訟になるかどうかわからない、そういうものを内部告発して営業秘
密を大量に外部に出す、これは先ほどの目的に該当しないわけですよね、不正競争で
はないということになると。
○土肥委員長 現在、刑事罰について議論をしておるところでございますけれども、
不正競争防止法の中には民事罰も当然ありまして、そして刑事罰でどこまで書けるか
ということで今議論になっているわけです。刑事罰ですべて対応するということなの
か、刑事罰にはそこそこの謙抑性のようなものがあって、もちろん適切に目的という
規定を書いて利害調整が十分できるようなことが一番望ましいのでしょうけれども、
今原案としてはこの3案が出されて、委員の方のご意見を伺ったところでは、(イ)と
いう案がかなり強かったという状況にあるわけでございます。
丸島委員がおっしゃっているところが、例えば(ア)ではないけれども(ウ)を出
してほしいというようなご意見なのか、そういう形でちょっととめさせていただいて、
例えば(イ)と(ウ)ぐらいをとめるというような形、それで議論をちょっと進めた
いと思うのです。
○丸島委員 民事で救済できるじゃないかとおっしゃっていますけれども、今私が
申し上げたような例のとき、損害って何なのでしょうか。これは恐らく損害立証が難
しいですから、そんなに民事で救済されないと私は思うのです。現実にはその情報を
知ったライバル会社というのは相当の益を得ているはずです。そういうことが裁判上、
損害として認められるならいいですけれども、恐らく不可能だと私は思っていますか
ら、むしろ刑事罪でそういうことを抑止するということが非常に大事だと思っている
のです。そういう意味から刑事罰を考えているのですが、逆の方向でいわれると非常
に効果が出てこなくなるだろうと思っているのです。
○土肥委員長 丸島委員がお出しになった例そのものが、ちょっと私もイメージと
して正確にはとっていないのかもしれませんけれども、商法上、取締役というのは当
然会社に対して忠実義務等々を負っているわけでして、そのような取締役が会社に対
して代表訴訟の対象となるような責任をもし起こしておる、負っておるというような
場合に、それを内部告発で出すという例ですか。
○丸島委員 いや、起こしているのではないかと疑って出すわけですから、まだ裁
判で起こしていると決めているわけではないわけですよね。そういう内部告発のとき
に営業秘密を出して、先ほどの内部告発のためにはいいのではないかという議論とも
関連しているのですが、大事な営業秘密を外へ出すことが刑事罰でも保障されないし、
恐らく民事でも適切な救済がされないだろうと思うのです。そういうことがまかり通
るようでしたら、今、産業競争力を保て、営業秘密の管理をちゃんとやりなさい、営
業秘密を事業戦略で活用しなさいという趣旨に全く反してしまうのです。どうやって
保護して、どうやって活用できるのだろうかと。
今回、前がそうなってるから刑事罰はそれ以上やるなというご意見もあったようで
すけれども、前が少なかったら今度はふやしていただきたいという気持ちもあって申
し上げているのに、何で前に拘束されるのかなという感じすらしているのです。です
から、どういう視点で改正すべき――まあ余りいわない。
○土肥委員長 舩山委員。たくさんまだ論点も残っておりますので、よろしくお願
いいたします。
○舩山委員 要はこの目的論の要件のところは、企業の中で実務に携わっている人
間として、肌身感覚としては会社の中で恐らく(イ)は通らないのです、余りに狭過
ぎるということで。
実際、先ほどの久慈委員のお話で、むしろ産業スパイというケースなんかめったに
ない。やはり実際に先ほど久慈委員のおっしゃられたケースの方が、企業としては社
会的な信用と責任の問題がございますので、そういった点から営業秘密が外に出るこ
と自体が問題になるということでございますので、(ア)、(イ)、(ウ)ある中で(ウ

の選択肢も残しておくとか、そういった形で(イ)に特化した議論は避けていただき
たいなと考えております。
○土肥委員長 わかりました。では、そもそも本委員会におきましては「目的」で
絞るということについては了解を得られておるわけでございますけれども、どのよう
に書くかというところについては(イ)あるいは(ウ)、そういったところの議論があ
るということで、とにかく一応まとめさせていただければと思います。
時間がかなり押してきておりまして、例えば刑事罰の問題につきましては、4号の
類型あるいは7号の類型でも、だれのどういう行為をカバーするかという大きな問題
がまだあるわけでございます。例えば28ページあたりで4号類型の不正競争行為につ
きましてどういう行為をという問題があるところでございますし、その隣の29ページ
の下の方では7号類型でだれの行為をという主体の問題があるところでございますが、
この2つの点あわせてご意見いただければと思いますけれども、いかがでございまし
ょうか。
竹田委員、お願いいたします。
○竹田委員 4号類型についてこの報告書案に書かれていることはこの線で私自身
としては納得で、これでいいのではないかと思っています。問題は7号類型の方で、
7号類型は処罰するかどうか自体が非常に問題があるわけですが、私が一番問題にな
るのは処罰主体の問題で、処罰主体を考えていくと、7号類型を刑事制裁として全体
にバランスよく規定するというのは非常に難しいところがあるのかなと思います。
この案で役員及び従業員は処罰対象、派遣社員はさらに検討ということになってい
まして、その点はそういう方向も考えられると思うのですが、あとは営業秘密の開示
を受ける者が契約関係に立つ場合、例えば継続的取引契約あるいはライセンス契約等
において開示を受けた場合に、その不正開示が処罰対象にならないということと従業
員の場合には処罰対象になるということについて、一方が刑事制裁になり一方が刑事
制裁にならないということで、これは社会的納得が得られるものかどうかということ
にちょっと危惧の念をもつのですが、その点について少し皆さんの意見を聞きたいの
です。
○土肥委員長 わかりました。
丸島委員。
○丸島委員 特にここは一番問題だと思っておりますので、30ページに書いてある
対象から外す例ですね。派遣社員というのは、普通は派遣先の指揮命令に従って行動
するわけで、その人と会社の従業員と別な効果が出るというのは非常に混乱を招くと
私は思います。
もっと大きいのは、その次の元従業員を処罰することは労働移動に対する一種の抑
止効果をもたらすといいますけれども、これがもし刑事罰の対象にならないとしたら、
流動性は増すでしょうけれども、相当な営業機密がライバル会社に移動するだろうと
思います。それを助長することをあえてするのでしょうか。流動性を増すこと自体は
私はいいと思うのですが、なぜ不正使用を認めてまで流動性を増すのでしょうか。こ
れは理屈に合わないと思うのです。ですから、元従業員を処罰対象としないというの
は、私はぜひ従業員と同じようにしていただきたいと思っていますし、取引先も同じ
ような意味で、同じレベルでみんなそういうことを感じて行動するというのが大事だ
と思うので、ある人は同じレベルで動いている中で刑罰の対象から外れるというのは、
むしろ非常に混乱を来すと私は思います。
○土肥委員長 最も対照的なご意見で、どう調整的なお尋ねをしてよろしいのかわ
からないのですけれども、今現在問題になっている人材の流動性を損なわないという
観点になっておるのですが、その点についてご意見ありませんでしょうか。
○丸島委員 私、頭に入った知識を次の職場にいって活用する、これはしようがな
いと思っているのです。ただ、表現されているように、正当に入手した営業秘密を不
正使用してもいいという感覚で許されたとしたらちょっとおかしいのではないかなと
思うのです。
○土肥委員長 竹田委員。
○竹田委員 それは丸島委員のいっているようなことではないと私は思うのです。
まさにそれは不正競争行為となっているので、元従業員がそういうのを開示するのは
いいことであるとか、それは野放しであるとか全然いっているわけではないわけです。
これは刑事制裁の対象にどこまでするかという議論でいっているわけで、それは私は
違うと思いますし、元従業員の問題については、今委員長もいわれたような問題もあ
り、職業選択の自由やなんかの問題から、いろいろ法律上刑事制裁を科するところま
でいくのには問題があるところだし、一方で従業員の退職のときに秘密保持義務を課
する場合にどこまでそれが有効かというようなことは裁判所の判例でもいろいろ問題
のあるところですから、それを刑事制裁までもっていくというのはちょっとできかね
ることだと私は思っています。
○丸島委員 民事で救済されているじゃないかとおっしゃると思うのですが、現実
にそういうケースのときどれだけ救済されるのでしょうか。そのバランスだと思うの
です。私は民事で十分救済されるならこんなことはいわないと思うのですが、されな
いから問題だと思うのです。それを刑事罰があるからこそ抑止効果が出て、そういう
ことをしないようにするというのが本来の形だろうと思うのですが、いや、元従業員
にそういう刑事罰を科したら流動性を阻害するといったら、どんどん技術は流れる。
理屈の上では民事で救済されるでしょうけれども、実質的な救済はされないと私は思
っているのです。そこが問題だと思っております。
○土肥委員長 栗原委員、お願いいたします。
○栗原代理 30ページのところで取引先のことが書かれてございます。ここでは取
引先については処罰の対象としないと書いております。先ほどのご説明の中でも金型
の問題にちょっと触れられておりましたけれども、金型の問題を例にとってお話をし
ますと、金型の図面等の流出問題、これはユーザー企業が企業ぐるみでやっていると
いうこともあるのでしょうが、中にはその企業の社員が勝手にやっているという例も
あろうかと思います。大企業と中小企業の中で発注企業と下請企業といった取引関係
がある場合、営業秘密の漏洩等があったとしても、その後に取引を継続したいという
ような希望があれば、刑事罰ということはなかなか難しい問題があろうかと思います。
しかし、こういった社員に対する罰則が何らかの形でできないでしょうかというの
が我々の考えでございまして、例えば昨年の7月に金型につきましては経済産業省の
方から指針を出していただきました。秘密保持契約をきちんと結ぶということが大前
提ですけれども、ちょっと突拍子もない案かもしれませんが、ユーザー側の企業が仮
に図面の流出をしたような社員に対して告訴をするなり、厳しい措置をとるというよ
うなことを秘密保持契約の中に盛り込めないだろうかということが考えられます。ま
た、そうした契約を結ぶということを、経済産業省の方で指針と同じような形でお示
しいただくか、何らかの指導というような形で行っていただければと考えています。
○小宮知的財産政策室長 今ご指摘がございましたように、金型については6月に
製造産業局長と商務情報局長の連名で、ユーザー企業に対してちゃんと秘密保持契約
を結ぶように、このような指針を示しているところであります。
我々もこの金型問題というのは扱いが二重三重に難しい面がありまして、議論する
場所によっていろいろな意見が出てくるところで困っているところではあるのですけ
れども、1つは優越的地位の濫用の問題というのはこの世界とは若干違う世界として
存在をしておりまして、これにつきましては近ごろ公正取引委員会も積極的に対処す
る方向が出てきているようでございますし、我々としても、いやしくも取引関係にお
きましてそのようなことがあれば、そういうことがないような形にやっていきたいと
いうのは基本的なスタンスとしてございます。
それから、今の金型企業とユーザー企業の間には、契約の形で文書化されていない
という根本的な実態論がございます。これはむしろ釈迦に説法でございますけれども、
知的財産というのは、営業秘密であろうと何であろうとすべて文書化されたものしか
守れないわけでございまして、したがってまずは文書化をする、契約を結ぶというこ
と。実は私も先日、金型協会に呼ばれまして、それを口を酸っぱくして申し上げたと
いうのが実態でございます。
今ご指摘をいただいた点でございますけれども、当省がどこまで強力にユーザー企
業にいえるかどうか、これまた近ごろ当省も大分産業界から嫌われておりまして、余
り強くやり過ぎるとすぐ市場への介入だと非難を受けるものですから難しい点はあり
ます。ただ、秘密保持契約が結ばれないような状況になるとすれば、それはやはり問
題であろうかなと思っておりますので、今、金型業界の中でもひな形をつくろうとい
うような動きもあると伺っておりますけれども、そういう中でこういう刑事罰が導入
された場合には、そういうことも踏まえて契約のひな形を考えていただくというのも
1つの方法にはなるかなという感じはしております。
○土肥委員長 一色委員。
○一色委員 時間がございませんので簡単に済ませますが、処罰の主体を考える場
合に、それは必ずその目的をどう規定するかということとパッケージで考えなければ
ならないと考えております。したがって、「目的」のところで(ア)と(イ)のブリッ
ジ型というふうにかなり厳しく絞るのであれば、退職従業員、元従業員を対象に含め
ても、それによって雇用の流動性を阻害するというおそれはほとんどないと認識をし
ております。これは二重に絞り過ぎではないかと考えます。
○土肥委員長 今、4号、7号の問題でだれの行為かというところの議論があるわ
けでございますけれども、これは非常に大きな問題でございますのでやらせていただ
きますが、時間の関係もありますので1つだけちょっと先にお聞きいたしたいところ
は、インターネット対応で、この案では「使用」のところ、「商品」のところの概念規
定については法改正を行いませんで、電気通信回線を通じての提供を入れるという案
になっております。これは商標法でもそのようにやりましたし、不正競争防止法独自
の事情もあることは先ほど説明のあったとおりでございますが、これはこういう形で
よろしいでしょうか。
ありがとうございます。順番とすると、第4章の営業秘密の訴訟手続上の問題が丸
島委員から出されておるところでございますので、丸島委員、これを先にやりましょ
うか。
○丸島委員 はい、お願いします。
○土肥委員長 それでは、丸島委員、この点についてお願いいたします。
○丸島委員 前回の委員会のときに、委員全員の意向としてこういうことを検討会
の方に提出してほしいということで合意されたように私は理解したのですが、今日の
記載ぶりをみますと「注視していくことが適当と考える」。意味がよく理解できないの
ですが、自分でそのようにみているというだけで一つも相手に伝わらないのではない
かと思って、こういう表現になぜなってしまうのかなと。
最後のところでも、「十分に反映されるよう、引き続き検討会の議論を注視していく
ことが適当と考える」、これもやはりみているだけですね。これでは何の効果も出ない
のではないかと思いまして、もうちょっと積極的に考慮していただくような記載ぶり
にしていただきたいなと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
○土肥委員長 一応これは本委員会で意見をとりまとめまして、それは出ているわ
けですよね。
○小宮知的財産政策室長 はい。
○土肥委員長 出ておりまして、改革推進本部の方で議論が現在行われているとこ
ろでありますので、我々は乗り込むわけにいきませんものですから、この表現として
は議論の経緯をみるというしかないのだと思うのです。
○丸島委員 理屈はそうだと思うのです。権利侵害することはできないと思うので
す。ただ、わかりませんけれども、想像するに、委員の方も本委員会と同じようにい
ろいろな意見をもっていらっしゃる方がいっぱいいらっしゃると思うのです。ですか
ら、あの委員会で総意としてこれが来たということになれば、その検討の委員の方も
十分考えていただけるのではないか、そういう効果はあるように思うのです。ですか
ら、ただ注視するのではなくて、ぜひそうしていただきたいなという気持ちなのです。
○土肥委員長 ここでどのように申し上げてよろしいのかよくわかりませんけれど
も、部会長が出ておられますので、本日のところは申し上げるとしかいいようがない
のです。
○小宮知的財産政策室長 表現ぶりはまた相談をさせてください。これでも実はか
なりけんかを売っている文章になっています。これは本当はオフレコにしたい発言で
すけれども、ぶちあけた話でいうと、要するにくぎを刺されていまして、本部は本部、
経済産業省は経済産業省ということではっきり裁判の話は本部でやらせてもらいます
という話になって、したがってこういう文章になっているわけです。
だから、我々としては、当然のことながらこういう審議会で行われた議論というの
は既に伝えていますし、毎回毎回、本部の事務局の方も傍聴しておられて、今日もい
らっしゃっているようですけれども、こういう丸島さんのご発言も逐一全部、本部に
は報告をされていますから、我々がどういう議論をしてきたかというのは余すところ
なく伝えられているということだと思います。あとはそれをどういう形で政府部内の
議論に反映をさせるかという反映のさせ方の問題ですから、丸島さんは私にけんかを
せよとおっしゃるのかもしれませんけれども、そこは表現ぶりは少し考えさせていた
だいて……。それから、今委員長からご発言がございましたように、中山部会長は検
討会のメンバーですから、そういうことも踏まえてうまい表現ぶりを少し考えさせて
いただければと思います。
○土肥委員長 それでよろしくお願いいたします。
○丸島委員 ありがとうございます。
1つだけ追加させていただきたいのは、私の発言は伝わったとしても、産業界のい
ってることは理屈に合わんということで否定されている要素が随分あるようにみてい
るのです。ですから、ここの委員全員というと、産業界だけではなくて、学者の方も
いらっしゃれば弁護士の方もいらっしゃるし裁判官の方もいらっしゃる。そういう方
が総意でいいとおっしゃるのとは意味が全然違うのではないかと思っていまして、ぜ
ひお考えいただきたいと思います。
○土肥委員長 今日は検討会の座長の伊藤先生もご出席でいらっしゃいますし、そ
こは十分、産業界だけでなくて、この審議会の意見は検討会の座長にも伝わっている
と信じております。
そういうことで第4章については引き取らせていただきまして、刑事罰のところで
最後に4号類型、7号類型で、ここのところはぜひ原案に盛り込みたいということ、
あるいは何か貴重なご意見等ございましたら、最後にお出しいただければと思います。
時間も来ておりますので余り時間はとれませんけれども、ございましたらお願いいた
します。
○齋藤委員 今まだ整理できてないのですけれども、先ほどから元従業員をどうす
るかというのが最後大きな問題として残るのかと思います。ただし、正当取得者の範
囲をどうやって絞り込むかという工夫が一面何かなされ得るのではないでしょうか。
例えばこの情報はここから外に出してはだめだとかというような縛りをかけることに
よって、この正当取得者の範囲をかなり限定することができるか、そういう可能性が
あるのかないのか、ちょっとお伺いしたいのです。
○小宮知的財産政策室長 すみません、イメージがうまくわかないのですけれども。
○齋藤委員 例えばこの部屋からこの情報を持ち出してはならないというような管
理をしておけば、そこから持ち出したものは不当に取得したということになるのでし
ょうか。
○山下知的財産政策室課長補佐 すみません。時間もないので、そこは具体的に検
討していますので、また後でご相談させてください。
契約で縛りをかけて、例えばこの情報はここから持ち出してはいけないというよう
なこと、そういう縛りをかければ7号を入れてもいいのではないか、そういうご趣旨
と理解しているのですけれども、いずれにしろ、そもそも7号を入れるべきではない
という意見もあるものですから、そこは具体的にどこでバランスをとるのかというこ
との問題にもなりますので、具体的に検討させてください。
○土肥委員長 では須賀委員。
○須賀委員 しばらく出ていないので、最後のチャンスのようなので、働く者の立
場で発言をさせてもらいたいと思います。
いずれにしても、刑事罰を科すか科さないか、どのような形でやっていくのかとい
うのは、いろいろと専門家の方に議論してもらって一定の結論を出していただければ、
私どもは構わないと思っているのですが、働いている者の立場からしますと、情報が
漏れることによって影響を受けるのはそこで働いている多くの労働者なのです。利益
を得るのはごく限られた労働者でしょうけれどもそれらの結果によって企業が営業面
や業績面で影響を受け、その結果としてそれらに直接的に関わっていない多くの労働
者、あるいは従業員がリストらにあったり、場合によっては中小企業の場合は倒産と
いうことも考えられるわけです。また、大企業においても、事業縮小や部門の合理化
などもあり得るでしょう。また、そういった事例もたくさん報告されています。した
がって、そうしたことにならないようにするために、そこのところの仕組みをよく考
えていただいて、不正使用・不正開示ということに関してきちんとした定めをつくっ
てもらって、それによって罰するべきは、きちっと罰する。しかも罰し方についても
抑止効果をもたせた方がいいのか、あるいは社会通念的にここまでが限度だなという
部分を明確にしていただきたい。日本経団連さんのおっしゃっていることは、私ども
も同じ企業を守っている立場ですからよくわかっているのですが、雇用の流動化とい
う一方での流れがある中で、ではそこまで本当に刑事罰を含めてやることがいいのか
どうかということも含めて、専門家の皆さん方ともう少し議論をした方がいいのかな
と私は思っています。いずれにしましても、一番困るのはそこで働いている従業員だ
ということはぜひ念頭に置いていただきたいと思います。
もう1つ、これは私ども自身の悩みでもあるのですが、企業の中は就業規則があり
ますし、私ども労働組合の場合には労働協約という形で企業内のルールをつくってい
ますけれども、これはほとんどが団体契約なのです。一人一人に対してこういうこと
はだめですよということを縛るというような形には必ずしもなっていない。ここは法
で規制する部分ではなくて、労使といいますか、従業員の代表といえばいいのかわか
りませんが、いずれかの形で企業内で処理できる部分もたくさんあるのだと思うので
す。そのこともぜひ念頭に置いて議論をしていただければありがたいと思います。こ
の2つだけです。
○土肥委員長 少なくともそういう観点から検討はされておると思っております。
申しわけございません。もう定刻を過ぎてしまっております。
小原委員、お願いいたします。
○小原委員 私も余り出ていなかったのですけれども、研究の現場の立場からいい
ますと、多分、刑事罰というとかなりぎょっとする。しかしながら、これをみるとき
ちんと書いてあって、まずは適用されないなと安心しております。具体的にこれが契
機の1つであったと思いますが、ハーバードの医学部の事件、あの場合は日本でもし
同じことが起こったらどうなるのですか。これは刑事罰には適用されない? どうな
のでしょうか。
○小宮知的財産政策室長 ハーバードの2回目の方ですか。
○小原委員 ええ。
○小宮知的財産政策室長 遺伝子スパイ事件、2回起こっていますね。僕らも細か
く判例を分析しているわけではありませんからあれですが、簡単にいうと、最初に起
こった事件はここでいうところの4号類型に近いと思います。だから営業秘密を取得
した形になる。他方、2回目の事件というのは7号類型に近い。つまり正当に示され
た営業秘密を不正に使用・開示してしまったということであります。したがいまして、
今のご質問からいうと、2回目の事件というのは、この7号類型の使用・開示を処罰
するのであれば処罰ができますが、処罰しないのだったら処罰できない、こういう形
になろうかと思います。
○小原委員 大学等も法人化でこれから会社と同じようになりますから、かなり意
識を変えていかないといけないときに、こういう考え方というのは上手に報道あるい
は流布しないと、変な誤解が起こって萎縮効果があると非常に困ります。サイエンス
は基本的に公開というのが原則、その方がいいということは来ました?から、ぜひそ
こはご留意いただきたいと思っています。
○土肥委員長 ほかにございませんでしょうか。――それでは、まことに申しわけ
ないのですけれども、時間がまいりましたので、本日のご検討いただいたことはこれ
で一応まとめさせていただくということにいたします。どうも活発なご意見をありが
とうございました。
本委員会の報告書のとりまとめに当たりましては、先ほどの説明にございましたよ
うにパブリックコメントを募集いたします。パブリックコメントを募集する報告書案
には、本日委員の皆様からご意見、ご指摘いただきましたものと、本日欠席されてお
られる委員がおられましたらその方のご意見、本日十分に時間の関係でご発言いただ
けなかった場合、その方の意見を追加的にちょうだいいたしまして、その追加的なご
意見をちょうだいする期間を約1週間程度設けることとし、11月27日水曜日までに事
務局にご意見をご提出いただければと思います。その上で報告書案を必要に応じて修
正いたしまして、12月9日から1カ月程度のパブリックコメントを実施したいと考え
ております。もし11月27日以降にご意見をいただきました場合には、これはパブリッ
クコメントに対するご意見ということで取り扱わせていただきたいと思います。
なお、パブリックコメントに付する案につきましては、別途委員の皆様に送付させ
ていただきますけれども、報告書案に関する修正がありました場合には、よろしけれ
ば委員長であります私にご一任いただきたいと思いますけれども、いかがでございま
しょうか。よろしゅうございますか。
ありがとうございます。それでは、異議もないようでございますので、そのように
させていただきたいと思います。
最後に、小宮室長から連絡事項及び今後のスケジュールについて連絡をお願いいた
します。
○小宮知的財産政策室長 次回の小委員会につきましては、既に委員の皆様からご
都合をお伺いしておりまして、2月の上旬に開催させていただくことを考えておりま
す。具体的な日程につきましては、定まり次第ご連絡をさせていただきます。
それから、これはご報告でございますけれども、実は不正競争防止法の規定の中に
知的財産政策とは若干関係のない外国公務員に対する贈賄防止のための処罰する規定
があるのです。この関係につきましては、OECDでその他の点も含めていろいろと
ご指摘をもらっていることもございまして、この産業構造審議会の別の分科会の下に
国際商取引関連企業行動小委員会という別の小委員会を設置をいたしまして検討を行
う予定でございますので、皆様にご報告をさせていただきたいと思います。
以上です。
○土肥委員長 それでは、以上をもちまして産業構造審議会知的財産政策部会第6
回不正競争防止小委員会を閉会させていただきます。本日は、本当に長時間のご審議
にご協力いただきましてありがとうございました。
審議会全体トップ
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.