平成13年9月13日(木) 14:00-17:00
於:経済産業省国際会議室
出席者(敬称略・50音順)
(1) 委員長 広瀬義州
(2) 委員 井上隆、植田リサ、岡本大輔、奥田飛功、神作裕之、久保幸年、齋藤治彦、酒井剛、
桜井久勝、柴田和史、杉本徹雄、西澤茂、平井直樹、廣本敏郎、福田眞也、
藤田晶子、堀内啓、松尾眞、山田博之、吉見宏
池野谷真千子(堀内委員代理)
(3) インターブランド社 Jan Lindemann、豊隅 優、片山 潔、五味達宏、倉重佳代子
(4) 博報堂・博報堂コンサルティング 首藤明敏、中谷吉孝、山之口援、上島幸則
(5) 経済産業政策局審議官 桑田始
(6) 経済産業政策局産業組織課 桜井和人、河西康之、橋本定和
Ⅰ 第3回企業法制研究会(ブランド価値評価研究会)開会
(委員長)ただ今からブランド価値評価研究会の第3回会合を開催する。
まず世界的に多くの企業でブランド価値評価を行っているインターブランド社からブラ
ンド価値評価の実務について説明していただく。
Ⅱ インターブランド社報告「ブランド価値評価の実務」
我々がどのようにブランドを評価するのか、どのように評価方法を開発してきたのかに
ついて説明する。
我々のミッションはブランド価値の管理にある。我々の業務は様々な分野にわたってお
り、ブランド評価はその1つである。そのほかにも、マーケット・リサーチ、トレード・
マーク開発、ネーミングなどがある。
これまでブランドがビジネスに対してどのような価値があるのかを研究してきた。コ
カ・コーラ、IBMなどでは、ブランドは非常に重要な役割を果たしており、株価に対す
る影響も大きい。例えば、我々が行ったランキング調査におけるコカコーラのブランド価
値は、コカコーラ社の株価時価総額の約3分の2に相当していた。ブランドは企業にとっ
て重要な資産である。
ブランドは無形資産であり、利益を生み出す。ただし、ブランドは他の無形資産とは異
なっている。ブランドは法的権利として自己所有することができるし、本業以外でもブラ
ンドを利用して収益を得ることができる。すなわち、ブランドは識別可能で分離可能であ
るため、資産計上できると考えている。研究開発などの無形資産も重要ではあるが、特許
権などは評価が難しく、資産計上も難しい。
ブランドの価値は、顧客の需要によって生み出される。顧客には、例えば、スーパーマ
ーケットで購入する一般消費者もあれば、ITソリューションプロダクツを購入する法人も
ある。ビジネスの観点からいえば、これらの顧客の需要を創出し確保することがブランド
の価値である。ブランドを評価する場合には、この側面に注目する必要がある。
次に、どのようにブランドを評価するのかについて説明する。まず、従来の価値評価ア
プローチを考えてみる。第一に市場価値を用いて評価する方法がある。これは企業全体の
評価額である。例えば、取引がどのくらいあるのか、事業の大きさがどの程度であるのか
などに着目し、収入または利益の倍数により評価する方法である。しかし、企業には様々
なブランドがあり、また企業の活動にはブランド以外の様々な無形資産が関係しているた
め、企業全体の評価額の比較などの方法で特定のブランドだけを評価することは難しい。
また、ブランドは他のブランドと差別化されている必要がある。例えば、コカ・コーラ
などは、ターゲット・グループ、カスタマー・グループ、無形のブランド、販売業者、味
などに差別性がある。このような差別要因から、コカ・コーラのブランド価値はペプシコ
ーラのブランド価値に比べて、6倍ほどになっている。この差別性という特徴を考えると、
市場価値の単純な比較によるブランド価値評価は難しい。
プレミアム価格を用いて評価する方法がある。一般的な商品とブランド商品の価格には
差があり、この価格差がプレミアム価格である。
従来は、このプレミアム価格が将来にどうなるのかを計算できた。しかし、現在では、
汎用型の商品が少なくなり、全ての商品がブランドをもつようになった。したがって、ブ
ランドのない汎用型の商品とブランドのある商品の価格を比較することが難しくなってい
る。その例外としては、石油、化学品、コンピュータチップなどであれば、コモディティ
プライスくらいである。ただし、このプレミアム価格によって将来の収益が確保されるた
め、これを無視すると、将来のブランド価値を適切に計算できない。
取得原価を用いて評価する方法がある。すなわち、どの程度のマーケティング・コスト
がかかったのかによって、ブランドを評価する方法である。しかし、コカ・コーラなどの
場合には、マーケティング・コストがどの程度かかるのかを把握するのが困難であり、ま
たブランドに対する投資には広告宣伝だけではなく様々な投資が含まれるため、識別が難
しいコストもある。したがって、過去のコストを集計するのは非常に難しい。
取替原価を用いて評価する方法もある。これはブランドを取り替える場合にどれだけの
コストがかかるのかによって評価する方法である。投資と価値の間に、どの程度の関連性
があるのかを考えてみると、さほど重要な関連性はみられない。
ロイヤリティ額を用いて評価する方法がある。これは、かつて非常に普及していた方法
である。市場において匹敵するブランドに対するロイヤリティ収入を測定し、それとの比
較によって対象ブランドのロイヤリティ額を把握する。
これらの方法に対して、我々の方法は、ビジネスにおいて顧客の需要を確保するうえで
の経済的な価値を用いて評価する方法である。場合によっては、ライセンスする場合のロ
イヤリティ・レートをチェックすることも有用な方法であるが、取得原価などは全く考え
ずに評価することがある。我々は、かなり前からブランドの経済的価値に着目してきた。
我々の評価方法は、様々な分野において支持されている。例えば、貸借対照表における
資産計上、移転価格などの観点から、会計事務所、アナリスト、広告代理店、経営コンサ
ルタント、銀行、高等裁判所、証券取引所、課税当局、政府機関などに支持されている。
また、ブランドは、債権の証券化において担保として認められた事例もある。
ブランド評価によって、経営の観点からみると、ブランド価値に基づいて投資収益を測
ることができる。また、財務的観点からみると、先ほど申し上げた資産計上、債権証券化、
移転価格問題、訴訟などに利用できる。
ブランドの分析には、2つのアプローチがある。1つはマーケティングの観点であり、
もう1つは財務の観点である。この2つの観点は同時に考慮しなければならず、いずれか
一方をみるだけでは、適切なブランド評価を行えない。全ての営業コスト、税金費用、資
本コストなどを考慮した超過利益に、ロール・オブ・ブランディング・インデックス(ブ
ランドの役割指数)を用いて、将来のブランド収益を算定する。これにブランド力スコア
を加味して、ブランド価値を算定する。
ブランド評価は、4段階にわけられる。セグメンテーション、財務分析、ブランド役割
分析、ブランド力分析の4つである。
顧客が異なるとブランドに異なる影響が及ぶため、セグメンテーションは非常に重要で
ある。東芝、IBMであれば、一般消費者顧客と法人顧客を明確に区別しなければならな
い。セグメンテーションを行う場合には、各セグメントで顧客を均質化することが必要で
ある。ブランド別、タイプ別、チャネル別、地域別、製品別などにセグメンテーションを
行って、あるセグメントに分類される顧客を均質化する。
財務分析においては、5年から10年程度の期間にわたる収益の予測、ブランド収益の予
測などを行う。その後、ブランド利益を計算するため、まず営業費用、税金費用を控除す
る。さらに資本コストを控除するが、資本コストを考えるうえでは、運転資本、固定資産
純額が重要となる。この考え方は、EVAに近いと思われる。
ブランドは顧客の需要を創出する。ビジネスによっては、ブランドが唯一の無形資産と
なることもある。例えば、シャネル、コカ・コーラ、スーパードライなどは、商品からブ
ランドを外すと、無形資産からの収益がほとんどなくなってしまう。もちろん、ブランド
が重要な無形資産のうちの1つに位置付けられるビジネスもある。例えば、航空会社では
ブランド以外にもスケジュールが重要であるし、化学品では安全性、通信会社ではカスタ
マーベースなどが重要となる。他の無形資産と比較した場合のブランドの重要性は、業界
によって異なる。例えば、化粧品などはブランドの重要性が高いが、バルクケミカルなど
は重要性が低いと考えられる。
ブランド役割指数は、業種、企業、顧客層などのセグメントごとに異なる数値となる。
ブランド役割指数は、マーケットリサーチデータ等に基づいて算定する。まず需要創出に
貢献する要素(購買要因)を明らかにし、各購買要因に対するブランドの寄与度を把握す
る。これらを把握するために、相殺分析(Trade-off analysis)、マーケット・リサーチ、
経営者に対するインタビュー、さらには我々のコンサルタントとしての経験を用いる。
例えば、テレビを例にとると、品質、デザイン、ライフスタイル、革新性、特徴の順で
重要である。これらの各購買要因に対するブランドの寄与度をみると、品質はかなりブラ
ンドに依存していることがわかる。
将来の収益を予測するためには、リスク・プロフィールを考慮する必要がある。すなわ
ち、ブランドによってどの程度の需要を確保できるのかを考えなければならない。リスク
は、理想的なブランドとの比較によって把握できる。理想的なブランドを無リスク資産に
近いとみなして、これとの対比で実際のブランドをスコアリングし、リスクの程度を推定
する。具体的には、7つの要因を基準にして、理想的なブランドとの比較を行い、ブラン
ド・リスクを特定していく。例えば、市場性であればマーケットの成長性、安定性であれ
ばブランドの存続年数、ブランドの認知度、主導性であればマーケットシェア、トレンド
であればマーケットシェアの推移、サポート性であれば投資効率、法的保護性などを検討
する。これらに基づくスコアが高ければ国債と同程度のリスクになるが、スコアが低けれ
ばリスクが加味されていく。
ブランドが存在する各地域ごとに国債の利率を把握し、パーフェクト・ブランドのプレ
ミアムを計算する。パーフェクト・ブランドであっても流動性がないため、その部分をプ
レミアムとして加算する。このパーフェクト・ブランドの割引率に、ブランド・スコアを
加味して、実際のブランドに係る割引率を算定する。ブランド・スコアが低いほど、割引
率が高くなる。レジュメのグラフは、ブランド力スコアと1/割引率の相関関係を示してい
る。まずパーフェクト・ブランド、平均ブランド、ノー・ブランドの3つの関係を把握し
たうえで、S型の関数を求めている。
以上の分析に基づいて、セグメント売上高から営業費用等、資本コストを控除したうえ
で、ブランド役割指数を乗じてブランド利益を算定し、これをブランド力スコアに基づく
割引率で割り引くと、ブランド価値が算定される。
以上の議論をまとめると、ブランとは認識可能な事業資産であり、国際的な会計基準ま
たは多くの国内会計基準においても、ブランドが認識されている。また、ブランドは株式
市場とも関係がある。ブランド評価を行うためには、ブランドがどのように価値を創出し
ているのかを理解し測定する必要がある。
Ⅲ インターブランド社報告をめぐるディスカッション
(委員)ブランドの役割指数について、化粧品のブランド役割指数が高く、化学製品のブ
ランド役割指数が低いとの指摘は、直感的には理解できる。ブランドの役割を具体的な指
数として求めるうえでの計算根拠について、詳しく説明していただきたい。
(インターブランド社)どのように計算するのかは、どのような種類の情報が入手可能で
あるのかに左右される。マーケット・リサーチ・データ、既存のリサーチ・データ、トラ
ッキング・データなどを用いて、依存度を測る。この過程においては、ドライバを発見し
て、ブランドの重要度を評価する。
(委員)4つの質問がある。まず、ブランドの役割を理解するうえで、定性的な要因、例
えば経営陣の評価などを考慮する必要があると思われるが、ブランド役割指数の算定に定
性的な要因を加味しているのか。
貴社のブランド評価は、コーポレート・ブランドではなくプロダクト・ブランドを対象
にしていると思われるが、コーポレート・ブランドとプロダクト・ブランドの間にシナジ
ー効果がある場合には、どのようにシナジー効果を考慮しているのか。
リスク・フリー・レートとして国債の利回りを用いているが、多国籍企業の場合には、
どのように対応するのか。
資本コストの計算について、どのくらいの測定期間を設けているのか。
(インターブランド社)まず、マネジメントの態度、マネジメント力については、ブラン
ド力を測ることでわかる。ブランド力を測ることにより、対象ブランドのマネジメントが
他のマネジメントに比較して、適切であったのかどうかを評価できる。
コーポレート・ブランドとプロダクト・ブランドについては、例えばIBMなどはコー
ポレート・ブランドであると同時にプロダクト・ブランドでもある。コーポレート・ブラ
ンドとプロダクト・ブランドの区別は、顧客別セグメンテーション、地域別セグメンテー
ションなどとは無関係である。ブランド役割指数の算定においては、セグメントごとにブ
ランドが需要の創出にどのような役割を果たしているのかを求めている。
カントリーリスクについては、地域別セグメンテーションの結果、ブランドが存在して
いる各地域のリスク・フリー・レートを用いる。
資本コストについては、ブランド評価と企業評価を同一視して考えている点がポイント
である。例えば、企業評価における資本コストが入手できれば、資本コストの加重平均な
どを用いている。すなわち、従来から議論されてきた企業評価において用いられている評
価方法を利用しようと考えている。
(委員)資本コストは、同じ資本コスト率、βを全ての業界に適用するという意味か。
(インターブランド社)資本コストは、業界によっても企業によっても異なる。企業特有
の資本コストを計算している。
(委員)例えば、コカ・コーラが日本でよく売れている要因の1つにブランド力が挙げら
れる。しかし、そのほかに流通チャネルの役割も重要であり、日本の場合には自動販売機
の設置が欠かせない。すなわち、多くの自動販売機を設置している企業ほど、多くの商品
を販売できる。かつてペプシ・コーラは日本で成功していなかったが、サントリーが買収
した結果、ペプシ・コーラを販売する自動販売機が増え、販売数量が増大した。この場合
には、サントリーの買収によりペプシ・コーラのブランド力が高まったわけではなく、流
通チャネルが変わったにすぎない。このようなブランド以外の無形資産である流通チャネ
ルとブランドとの関係は、ブランド評価においてどのように反映されているのか。
(インターブランド社)確かに利益の創出には、様々な要素が関連している。我々は、ブ
ランドの役割を評価する場合に、販売力もみている。これは、製品によっても重要度が異
なるが、例えば入手可能性などの要因を評価することにより、販売力を考慮している。た
だし、例えば、スーパーマーケットでは回転率を高めるために、ブランドごとにランクを
付けて陳列場所を変えており、ブランド自体の力も売上に貢献している。したがって、様々
な要素を加味してブランド評価を行っている。
例えば、保険はプッシュ型の商品である。一般消費者は、保険セールスマンに勧められ
た商品を購入する場合が多い。したがって、ブランドの役割は大きくない。ブランドの役
割を分析する場合には、このような要素も考慮している。
(委員)先ほどの飲料を考えてみると、消費者が何を選択するのかの視点とともに、自動
販売機を設置するロケーションを持っている者がどこの自動販売機を選択するのかも重要
である。その場合には、必ずしもブランドだけで判断しているわけではなく、人間関係、
場代、販売手数料なども関係してくる。このようなロケーションの確保におけるブランド
の役割をどのように評価しているのか。
また、コカ・コーラ社の商品の中にも強いブランドと弱いブランドがあり、例えばホワ
イト・ウォーターなどはあまり売れていないし、良いロケーションを確保するほどのブラ
ンド力はない。しかし、良いロケーションを確保しているコカ・コーラ社の自動販売機に
入れれば、相乗効果によりホワイト・ウォーターの売上が伸びることも考えられる。この
ような相乗効果は、ホワイト・ウォーターのブランド力と考えているのか、またはそれ以
外の要因と考えているのか。
(インターブランド社)自動販売機にコンシューマープルがない、ブランド力がない場合
には、あちこちに自動販売機を設置しても売上が伸びない。このような場合には、ブラン
ド力が非常に大きな役割を果たしていく。
ビールには、レストランやバーでしか飲めないブランドもある。また流通の力によって
販売できるブランドもある。ブランド分析においては、どのようなタイプのブランドなの
かも考慮している。
また、ブランド分析においては、質の高いデータが入手可能であるかどうかも重要であ
る。完全に理論的な解答を想定することはできるが、現実的には質の高いデータが入手で
きない場合には、入手可能なデータに応じた分析が必要となる。
(委員)ブランド役割指数の算定において、様々なドライバーを発見していくと思われる
が、ドライバーと役割指数の関係を導き出すために、インターブランド社独自の計算方式
があるのか、または通常の因子分析、共分散構造分析などの既存の手法を用いているのか。
同様に、割引率の算定において7つの要因のウェート付けを行っているが、どのように
ウェート付けを行ったのか。
(インターブランド社)我々は、極端に細かい所までブランド役割指数を算定しているわ
けではない。実際には、そこまでの精度は求められていない。評価方法については、構築
された方法があるため、主観的にブランド役割指数を変更することはない。
割引率については因子分析も行うが、実際にはデータが入手可能ではないことも多い。
したがって、あるブランドについては、SOM、SOVまたは認知度の全てのデータが揃
っているわけではない。したがって、全てのブランドについて同じように詳細な分析はで
きない。ただし、一貫して同じ手法で評価することにより、比較可能性、利用可能性を担
保している。データが豊富であれば、7つの要因に限らず、いろいろな分析はできるが、
場合によっては、データが断片的の場合もある。したがって、我々は、どのような場合に
も対応できるようなアプローチを採用している。
(委員)例えば、コカ・コーラのブランド価値を求めるために、どのようにコカ・コーラ
社の全社売上からコカ・コーラブランドの売上を抽出しているのか。コカ・コーラのロゴ・
マークがついている商品の売上を抽出しているのか、またはコカ・コーラ社の全社売上を
そのまま用いているのか。
(インターブランド社)いくつかの方法がある。収入のうちコカ・コーラのブランドから
生じた収入、他のブランドから生じた収入に関する報告がある。これらは、公表されてい
るデータに基づいて計算したものである。公表されたランキング調査においては、コカ・
コーラブランドにより生じる収入割合は、協力会社から情報を得て算出している。
Ⅳ 博報堂報告「ブランド価値評価の実務」
我々は、日本企業を中心としたコーポレートブランド戦略の構築、ブランド体系戦略の
構築、ブランドマネジメントシステムの構築・組織構築、Eブランディング戦略の構築、
ブランディング戦略の実行支援などを行っている。このようにブランド管理をめぐるテー
マは多岐にわたっており、ブランド価値評価は、ブランド管理全体のうちの1つのテーマ
と捉えている。
実際に日本を代表する企業のコンサルティングを行っていくと、グローバルでのブラン
ド管理、具体的には日本にある本社が現地法人との関係でブランドをどのように管理して
いくのか、または事業を多角化していくうえで事業カンパニーとの関係でブランドをどの
ように管理していくのか、さらには中長期経営計画において時間軸との関係でブランドを
どのように管理していくのかなどが問題になっている。
ブランド価値とはブランドがもたらす付加価値と考えられる。ブランドは、商標であっ
たり、ネームであったり、シンボルマークであったりする。ブランドがもたらす付加価値
には、顧客基盤、非価格競争力、販売活動効率、原価抑制、資金調達効率の5つがあると
考えている。
顧客基盤の確立は、常に新規顧客を開拓するのではなく、継続顧客を確保することであ
る。これによって顧客の生涯価値を高めることが、企業経営の観点から効率的である。す
なわち、長期的なロイヤルティが強い顧客基盤をもたらす。
非価格競争力については、価格プレミアムも重要であるが、デフレが進行している現状
では、多くの企業にとって、いかに価格を維持するのかが重要なテーマになっている。同
じ品質であるにもかかわらず、なぜ価格差が生じるのかが問題である。
販売活動効率については、例えば我々が専門とする広告宣伝活動では、これまで年間キ
ャンペーンの都度、テーマを考えてきた。しかし、ブランド力が高い企業では、同じ広告
宣伝費をかけても、その効果に大きな違いが生じる。このような販売活動の効率化に対す
る寄与も、ブランドがもたらす重要な付加価値である。
以上の3つは、対消費者との関係においてブランドがもたらす付加価値である。これに
加えて、優良な取引関係の維持、従業員のモラルの維持、合併・分社化における従業員に
対する求心力の維持などに対するブランドの貢献も重要である。
最後に、ブランド力が高まることによって、キャッシュ・インフローが増大するだけで
はなく、資本調達効率が高まる。
どのような目的でブランド価値評価が必要とされているのかを考えてみると、次の4点
であるように思われる。まず、最も重視しているのは、ブランド育成管理のための評価基
準としての必要性である。ブランドは資産ではあるが、常にメンテナンス活動を行わなけ
れば、その価値が減少してしまう。例えば不慮の事件が発生した場合に、適切に管理しな
ければ、突然、ブランドの価値が消滅してしまう。したがって、常に現状を定点観測し、
現状の問題点、地域別の問題点を確認しながら、その原因を分析して対策を講じる必要が
ある。このような管理を行うための評価基準、さらには管理に携わる者の業績評価基準と
しての必要性が、最も重要である。
また、ブランド使用料の算出については、重要なテーマが2つあると考えている。1つ
はグループ経営における親会社、子会社間のブランド使用料の徴収であり、もう1つはブ
ランドの貸与に伴うロイヤリティ価格の算出である。
3つ目のニーズとして、ブランド買収(売却)価格の算出がある。通常、M&Aにおけ
る企業評価は市場価格に基づく評価であるが、そのうち純粋にブランドの部分がいくらで
あるのかが重要である。また、ブランドを単独で売買する場合には、どのように評価する
のかも重要である。
最後に、資本市場における企業価値評価の適正化がある。貸借対照表へのブランド資産
の計上などにより、投資家が実物資産だけではなく、ブランドも含めて企業評価を行えば、
企業価値全体が高まっていくと考えられる。
ブランド価値評価手法について、我々は、購買価値評価、すなわち価格プレミアムなど
消費者のブランド購買上の知覚価値を測定して数量化する手法を採用している。ほかにも
DCF法、利益倍数法などの財務・会計アプローチや、日経のブランド・パワー・ランキ
ングなどのイメージ価値評価、すなわちブランド認知・好意・ロイヤリティなどブランド
に対するイメージ属性を数量化する手法がある。
我々が購買価値評価を採用する理由は、ブランド価値評価を行ううえでは、消費者の評
価をモデルに組み込む必要があると考えるからである。消費者がブランドを値踏みし、対
価を支払う活動に、ブランドの最も基本的な価値があると考える。流通や投資家も、消費
者行動の結果、累積効果を評価している。ただし、購買価値評価には消費者調査が必要で
あり、統計的なバイアスなどの問題があるため、精緻な統計管理が必要となる。
財務・会計アプローチも検討したが、ブランドの寄与率、利益倍数(割引率)の算定に
恣意性が介入する問題がある。
我々が価格プレミアムに基づく購買価値評価を採用する理由には、トップマネジメント
が理解しやすい点もある。例えば、自動車メーカーのA社とB社の北米での連結売上高は
同じ程度であるが、営業利益には大きな差がついている。これは、A車が北米で、競合者
と比較して1台当たり平均1,000ドルも安く販売されているのに対して、B車は定価で販
売され、かつ販売奨励金も実質ゼロになっていることに起因している。このように、価格
プレミアムが経営に与えるインパクトは明らかである。ブランド価値が消費者のブランド
に対する投票であると考えれば、その差異は価格に現れる。これを評価することが重要で
ある。
レジュメにある図は、販売数量と販売価格のトレード・オフの関数を示している。この
トレード・オフの関数は、ブランド力の差によって異なってくる。同じトレード・オフの
関係にあっても、ブランド価値が高ければ、トレード・オフの関数は右上に上がっていく。
したがって、トレード・オフの関数の差が、ブランド価値の差である。
ブランド使用料徴収における留意点には、4つある。第一に、ブランド使用料導入のタ
イミングである。従来はブランド料を徴収してこなかった子会社からブランド料を徴収し
ようとしても、合意が得られないおそれがある。したがって、純粋持ち株会社への移行、
連結会計の本格導入、グローバル本社制の導入など、明確に理由が存在するタイミングを
とらえて、ブランド使用料を徴収する必要がある。
第二に、ブランドオーナーシップ概念も重要である。ブランドのオーナーシップは誰に
あるのかを明らかにしないまま、ブランド料を徴収することには問題がある。したがって、
持ち株会社はブランドオーナーであり、事業会社、海外子会社はブランドの利用者である
との考え方を浸透させる必要がある。逆に、事業ブランド等は事業会社にオーナーシップ
を委ねるなどの判断も必要である。
第三に、ブランド使用料の使途の明示がある。ブランド使用料の使途が明確になってい
なければ、ブランド使用料徴収の合意が得られない。通常は、持ち株会社等が使用料を徴
収して、ブランドメンテナンス費用を効率的に支出して、共通のブランド力を高める。
第四に、ブランド価値貢献子会社の評価がある。子会社には、親会社のコーポレートブ
ランドに貢献している事業をもっている場合がある。例えば、親会社と子会社のブランド
イメージは逆転している場合があり、これを評価せずに、親会社が一方的に子会社からブ
ランド使用料を徴収しようとしても、理解が得られないおそれがある。
第五に、ブランド使用料徴収方法の明確化である。例えば、連結対象であるかどうか、
持ち株比率はどうなっているかなどの基準があり、これを明確にする必要がある。また、
海外からブランド使用料を徴収する場合には、移転価格税制の問題が生じるため、税務上
の問題もクリアする必要がある。
我々が行っている価値評価手法について具体的に説明する。まずレジュメの図にあるブ
ランドイメージ価値評価について説明する。HABIT(Hakuhodo Audience & Brand-
User's Index for Targeting)と呼ばれるパネルによってデータベースを構築している。
基本的な尺度は、ボンディングスケールとボイススケールである。ボンディングとは絆を
意味しており、どこまでブランドが消費者の心の中に食い込んでいるのか、ファンになっ
てもらっているのかの尺度である。ボイスとは、どこまで良いブランドだと思われている
のかの尺度である。ボイスについては、良いブランドとしての条件を8つの尺度でとらえ
ている。オリジナリティ、個性・ポリシー、機能品質、感性品質、定評、活気、国際性、
パイオニアの8つである。
日本のブランド評価の具体例を申し上げると、ボンディングについては、日常品のラン
キングが高い。逆に、ボイスについては、日本を代表するメーカーのランキングが高い。
企業ブランドと商品ブランドの関係をみると、例えばA社の場合には、企業ブランドが
最も高く評価され、商品ブランドとの間にかなりの格差がある。これに対して、B社の場
合には、企業ブランドとCという商品ブランドがほぼ同じ程度である。D社の場合には、
A社と同様であるが、E社の場合には、Fという商品のブランドが最も高く評価されてい
る。
以上がブランドイメージ評価であるが、ブランドの価値を金額で評価するために考えた
のがブランド購買価値評価である。例えば、2つの商品が同じ品質で同じ容量であっても、
ブランド実績によって流通小売価格が異なる。この価格の累積によって現在の売上が計上
され、その売上を前提にして利益が計算される。
ブランドBが148円、ブランドAが168円の場合に、ブランドAを好きなユーザーは、
20円の差があってもブランドAを選ぶ。ここで、どれだけブランドBの価格を下げれば、
ブランドBを選ぶのかの実験を行う。ブランドBが133円になるときに、ブランドBを選
ぶ場合には、ブランドAはブランドBを15円値下げさせる力をもっている。この競合ブラ
ンドを値下げさせる力をブランドの価格プレミアムと呼ぶ。
実際には、値下げさせる相手ブランドの重みも考慮して価格プレミアムを推定する。例
えば、シェア5%のブランドAとシェア20%のブランドCがあり、ブランドBがブランド
AとCを15円値下げさせる力をもっているとすると、ブランドBがマーケットに及ぼす影
響力は、ブランドCを値下げさせるほうが大きい。このように、どのような規模の相手ブ
ランドをどれだけ値下げさせるのかを計算する。
また、ブランドBのユーザーとブランドAのユーザーの両方を考えて、ブランドAがブ
ランドBのユーザーを獲得するために15円の値下げが必要であり、逆にブランドBがブラ
ンドAのユーザーを獲得するために10円の値下が必要であるとする。ブランドBにとって
は、15円が債権プレミアムであり、10円が債務プレミアムである。この債権と債務を全て
のブランドとの関係で計算するのが、我々が用いる手法である。
ユーザーは商品を選ぶ際に、必ずしもブランドだけで判断しているわけではない。ブラ
ンド名称をよく知らなくても、パッケージのパターン、陳列場所などブランド名称以外の
要素で商品を識別し選ぶ場合もある。我々は、ユーザーがブランド名称を識別して商品を
選ぶ場合のプレミアムをブランドプレミアムと呼び、この部分を計算している。例えば、
価格プレミアムが高くても、ブランド名称の認識率が低ければ、ブランドプレミアムは低
くなる。
次に、企業ブランドとの関係について説明する。消費者は、企業を購入できず、商品し
か購入できない。商品ブランドの中に企業ブランドが入っており、企業ブランドの中に商
品ブランドが入っている。例えば、ネオソフトの商品ブランドには、雪印の企業ブランド
が入り込んでいる。逆に、雪印の企業ブランドには、ネオソフトの商品ブランドが入り込
んでいる。ブランド価値が連想によって生み出されるとすれば、各商品ブランドの価格プ
レミアムを算出したうえで、企業ブランドの連想強度を乗じれば、マーケットにおける企
業ブランドの価値を計算できる。
例えば、商品A、B、C、Dの売上に占めるプレミアム比率を算定し、これに売上予測
を乗じて、価格プレミアムを計算する。また、企業ブランドを提示したときに、どのくら
い商品ブランドを連想するのかの連想強度を計算し、価格プレミアムに乗じることによっ
て、企業ブランドプレミアムを算定する。ここで計算される価値は売上をベースとしてい
るため、利益を計算するためにはコストを差し引かなければならない。このような手法に
よって、企業ブランドを金額で評価できると考えている。
パッケージブランドのシャンプーの例について説明する。実際の購買データから平均購
買単価を算定し、平均購買単価を示したパッケージ写真を提示して、実験調査を行った。
縦軸が販売価格に占めるプレミアム比率で、横軸が市場シェアである。右上にIという商
品のブランドがある。これは、プレミアム比率も市場シェアも高い。左上にJ、Kなどが
ある。これらは市場シェアは低いが、プレミアム比率は高い。市場シェアはブランド力を
反映しているため、市場シェアとプレミアム比率は相関すると考えられるが、実際には、
必ずしも相関していない。
上述したのはパッケージ商品の例であるが、耐久財、サービスとは異なる方式をとって
いる。ブランドの役割が、パッケージ商品と耐久財、サービスとでは異なるからである。
パッケージ商品の場合には、商品に関する説明があるわけではなく、パッケージに価格と
ブランド名称だけが付されている。味、素材、経験、メーカー、信頼などの連想はブラン
ドに含まれている。すなわち、ブランドに属性が含まれている。これに対して、耐久財、
サービスの場合には、ブランドに技術、信頼、モーター、冷蔵庫などの連想が含まれてい
るが、ドア数、冷凍庫の位置、保証期間などの連想は含まれていない。実際に消費者が商
品を選ぶ場合には、ブランド以外の属性も考慮する。この場合には、コンジョイント分析
を利用している。
例えば、携帯用PCのブランドの調査を行った。属性として、価格、CPUの動作速度、
ブランド、バッテリー、駆動時間、使用CPU、標準搭載メモリ、本体重量、ハードディ
スク、画面サイズを挙げた。その結果、価格、CPU、ブランドの順で重要性があること
が確認された。また、ブランド以外の属性を一定と仮定し、平均価格を15万円とすると、
ある商品ブランドLは、約1万5千円程度高く売れる。
また、サービス業として自動車保険を調査した。その結果、ブランド以外の属性を一定
と仮定すると、M社とN社の間に約20%程度の差がみられた。
これらの結果に基づいて、売上に占めるプレミアム比率を乗じることによってブランド
価値を算定できる。
以上をまとめると、我々は、イメージ価値評価と購買価値評価を行っているが、ブラン
ド価値評価手法として価格プレミアムに基づく購買価値評価を採用している。価格プレミ
アムに寄与するイメージ項目、これに対応するマーケティング行動などを調査しながら、
ブランド育成管理を行っている。これをブランド使用料の算出、買収価格の算出などの算
出資料に用いることもある。
Ⅳ 博報堂報告をめぐるディスカッション
(委員)価格プレミアムを算定するうえで、具体的にどのようなデータを用いて他のブラ
ンドを値下げさせる力を測っているのか。
(博報堂)200サンプル位の消費者調査を行っている。パネラーに会場に来てもらい、写真
カードで調査している。コンジョイント分析については、実験結果データを内在させた独
自のソフトによって行っている。
(委員)その場合に、価格プレミアムはフィックスしたものとしてブランド価値を算定す
るのか、またはある程度の期間で価格プレミアムを更新しながらブランド価値を算定する
のか。
(博報堂)財務・会計アプローチと異なり、非常にコストがかかる点が問題であるが、半
年ごと、1年ごと位の期間でデータをチェックしていきたいと考えている。また、高い価
格プレミアムをつけた消費者と低い価格プレミアムをつけた消費者で、どのように連想構
造が異なっているのかを解析して、プランニングにも役立てたいと考えている。
大企業であれば、かなりのコストをかけて消費者調査を行っているため、これに上述し
た手法を取り入れていけば定点的に観測できると考えている。
(委員)過去の研究結果では、どのような製品ブランドでも価格を20%下げれば、消費者
がスイッチするとされていたが現在はどうか。
(博報堂)個々の商品によって異なっているのが現状である。
(委員)絆尺度と価格プレミアムには相関関係があるのか。
(博報堂)現在検討中であるが、絆尺度と価格プレミアムとの相関係数をとって、何が価
格プレミアムに寄与しているのかを検討している。
(委員)絆尺度を認知、理解、好感の順にハイアラルキーとしているが、ボンディングス
ケールの得点は、これらの尺度の合計点なのか、または絆の得点なのか。
(博報堂)認知を除く尺度で主成分分析を行っている。
Ⅳ 植田委員報告「ブランド価値評価に関するアンケートについて」
これまでワーキンググループで何度も議論を重ねたアンケート案を説明する。アンケー
トは、ブランド価値評価の必要性の裏付け、ブランド価値評価に用いるデータの入手を目
的として行う。期日は10月25日とし、対象企業は公開企業と非公開企業の一部にしよう
と考えている。
質問項目は、Ⅰ会社の概況について、Ⅱブランド、ブランドイメージ等について、Ⅲブ
ランド戦略等について、Ⅳブランド価値等について、Ⅴ企業買収及びブランド買収につい
ての5つに大別される。
ブランド、ブランドイメージ等については、企業のブランドに対する考え方、ブランド
イメージの構成要素、ブランドイメージを構成する無形項目などを質問する。これらは、
コーポレートブランドとプロダクトブランドそれぞれについて質問しようと考えており、
評価モデルを構築するうえで重要な項目と考えている。
ブランド戦略等については、企業のブランド戦略、マーケティング活動、ブランド管理
体制などを質問する。ブランド価値に影響を及ぼす要因として、ブランド管理体制、ブラ
ンド戦略、経営者の考え方などが重要と考えている。評価モデルの構築にも利用できるが、
日本企業の現状として、どのような管理を行っているかの実態を把握したいと考えている。
ブランド価値等については、本研究会で検討しているブランド価値評価の実状、ブラン
ド価値評価のニーズなどを質問する。これらの質問については、評価モデルの構築よりも、
日本企業の実態の把握に力点をおいて項目を作成している。また、
企業買収及びブランド買収については、ブランド価値評価を行う目的の1つとして、ブ
ランド買収、企業買収を行う場合の適正価格の算定があると考えている。したがって、買
収の実態、価格算定の根拠等について具体的に質問する。
Ⅳ 植田委員報告をめぐるディスカッション
(委員)このアンケートによって、企業の考え方を把握するとともに評価モデルに用いる
変数を入手すると理解したが、具体的に、どのようなモデルを考えているのか。
(委員)具体的な評価モデルは、まだ決定していない。ただし、将来キャッシュ・フロー
からブランド価値を算定するインカムアプローチを採用しようと考えている。そのために、
財務データとマーケティングデータの2つが必要と考えている。具体的には、Q24でプロ
ダクト・ブランドの財務データを入手し、Ⅱでマーケティングデータを入手しようと考え
ている。
(委員長)すでにワーキンググループ、臨時ワーキンググループを含めて、約40時間ほど
の検討を行っている。想定する評価モデルについては、代表的なモデルのリサーチを終え、
それぞれのモデルの長所、短所を把握している。まだ具体的な評価モデルを構築していな
いが、ある程度のモデル案を想定したうえでアンケート項目を慎重に考えている。
(委員)アンケートにブランド・スコアカードという用語が出てくるが、この用語の説明
はないのか。
(委員長)まだ一般的ではないが、ブランド・スコアカードとはブランド価値評価指標等
を指す用語として用いている。できれば、経済産業省の評価指数を用いる用語として普及
させたいと考えている。このような啓蒙的な意味を含めて、カッコ書きでブランド価値評
価指標等と説明している。また類似した用語としてバランスト・スコアカードという用語
もあり、いずれかの機会に委員に両者の関係等についてご報告いただければと考えている。
(委員)本研究会の成果となる評価手法に各企業の数値を当てはめた場合のブランド価値
評価指標を意味する用語として、ブランド・スコアカードを用いているのか。先ほどの報
告も含めて、現在、様々なブランド価値評価指標があり、企業側としては、どれがよいの
かがよくわからない。本研究会の成果が1つのスタンダードになるのであれば、これを示
す用語としてブランド・スコアカードを用いてはどうか。
(委員長)その方向で検討させていただく。
(委員)ブランド使用料など実際の役務の提供がない費用の授受があるとの選択肢がある
が、ブランド使用料の定義がはっきりしていない。SONY、日立などの例を考えてみる
と広告宣伝費の負担などの役務の提供があり、ブランド使用料の名目で徴収していても実
際の役務の提供がない費用とはいえないのではないか。
(委員)ワーキンググループでもブランド使用料という用語の使い方が企業によって異な
っているため、質問の仕方が非常に難しいとの指摘があった。この点については、実際の
役務の提供の有無が費用の正当性を裏付ける要素と考えているため、実際の役務の提供の
有無を説明したうえで、選択肢を提示している。役務の提供があるものについてコンサル
ティング料、経営指導料などの具体的な役務に関連する名称を付して、そうではないもの
についてブランド使用料と表現している。
(委員長)もともと社標使用料、経営指導料などを想定していたが、これらを全て含めて、
ブランド使用料は、ブランド使用に伴う何らかの対価という意味で用いている。ただ、ブ
ランド使用料は親子会社での授受を想定しており、第三者との授受は想定していない。こ
の点を明らかにするために、もう少し検討させていただく。
(委員)Q9はブランドイメージの構成要素を10点満点で回答させるよう質問しており、
Q10は顧客が選好するイメージを○で回答させるよう質問しているが、この2つはどのよ
うに違うのか。
(委員)Q9は、企業自身にブランドイメージの構成要素を質問しているが、Q10は企業
の顧客が選好するブランドイメージを質問している。
(委員)Q9で、企業が企業自身のブランドイメージを考えるときに、顧客を考えていな
いとの意味か。
(委員)もちろん企業は、顧客の選好を考えて、自社のブランドを構築しており、両者が
一致することが最も望ましいと考えられる。しかし、現実には、必ずしも一致しない場合
もあると考えており、両者が一致する企業と一致しない企業の相違を評価モデルに取り込
んでいきたいと考えている。
(委員長)Q9は企業自身がどのようなブランドイメージをもっているのかを質問してお
り、Q10は顧客がどのようなイメージをもっているのかを質問している。Q10については
消費者調査が望ましいが、時間とコストの面から困難であるため、企業に質問している。
(委員)内容は理解したが、もう少しわかりやすい表現にしてはどうか。企業の方が、Q
9とQ10を回答するときに、両者の違いがわからないのではないか。
(委員)企業からみて企業自身のブランドイメージと顧客が望むブランドイメージは一致
していることが望ましいが、企業によっては両者が異なっている場合もあり、2つの質問
をすることに意味はあると考えている。
(委員)○○委員が指摘されたとおりであり、私自身もQ9とQ10の趣旨は理解している。
(委員)企業自身のブランドイメージと顧客が考えるブランドイメージが一致している企
業もある。おそらくブランド力が高い企業であろう。しかし、そうではない企業も存在し
ている。実際に、我々も両者が不一致であったり、また企業が想定していなかった良い面
を顧客がみていたりする場合もある。
企業では、毎年、消費者調査を行っているため、回答するだけのデータはあると考えて
いる。
(委員)伺っていると、ブランドアイデンティティとブランドイメージのことではないか
と思われる。両者を区別する必要性はよく理解できるが、問題は、一般の企業の方が理解
できるかどうかである。
(委員)Q9とQ10はQ8から続く一連の質問であるが、確かに用語の正確性を追求する
と、Q9ではブランドアイデンティティという用語を用いたほうがよいかもしれない。す
なわち、会社としてブランドを通して何を訴求しようとしているか、何をアピールしたい
かを質問している。これに基づいてマーケティング活動をした結果、顧客側に生じるブラ
ンドイメージが、まさにQ10の質問である。
(委員)そのように具体的に質問したほうがよいのではないか。
(委員長)この点についても、もう少し検討させていただく。
(委員)2つ質問させていただきたい。1つは、なぜ金融・保険業をアンケート対象から
除くのか。もう1つは、ブランド使用に伴う対価の授受について、対価の計算方法を質問
する必要はないか。他社のブランドを買収する企業買収、ブランド買収については質問し
ているが、自社のブランド使用料の計算方法も質問したほうがよいのではないか。
(委員)金融・保険業については、財務データの入手可能性が問題である。ただし、さら
に入手可能性を検討したうえで、可能であれば金融・保険業もアンケート対象に含めたい。
ブランド使用料の計算方法については、ブランド使用料の定義が明確になっていない現
状で、その計算方法を質問するのは難しいのではないかと考えている。
(委員長)個人的には、本研究会でモデルを構築すれば、そのモデルに基づいてブランド
使用料が計算されるのではないかと考えている。
では、本日の議論を踏まえた若干の修正、語句の修正などについては、委員長一任とさ
せていただきたい。
(委員)異議なし
Ⅴ 今後の日程について
(事務局)次回の研究会は、10月18日(木曜日)午後5時から午後8時まで、経済産業省
国際会議室で開催することを予定している。
(委員長)本日の研究会は、これにて終了する。
-以上-
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