第6回「産業競争力のための知的財産の価値の戦略的最大化」に関するワーキ
ンググループ(WG1)及び
第6回「大学、ベンチャー・中小企業が利用しやすい知的財産制度」に関する
ワーキンググループ(WG2)
1.日時:平成14年2月25日12:35~15:45
2.場所:経済産業省別館2階236共用会議室
3.出席者:(WG1)澤井主査、山地副主査、赤羽委員、江崎委員、小倉委員、熊倉委員、
小泉委員、河野代理、作田委員、竹田委員、本委員、丸島委員、
山田委員、唯根委員、渡邊委員
(WG2)清水主査、土井副主査、赤羽委員、安藤委員、伊藤委員、井上委員、
木下委員、熊倉委員、小泉委員、杉光委員、渡邊委員、
4.議題:(1)知的財産関係紛争の迅速処理と紛争処理コストの低減
①不正競争防止法に関する訴訟事件の裁判管轄について
②三倍賠償制度について
③証拠収集手続の拡充
④弁理士法の一部を改正する法律案
(2)先端技術4分野の知的財産権保護
①出願人ニーズを踏まえた審査
②ライフサイエンス分野における審査基準の明確化と国際調和
(3)その他
委員からの意見等を中心にまとめると以下のとおり。
(1)知的財産関係紛争の迅速処理と紛争処理コストの低減
①不正競争防止法に関する訴訟事件の裁判管轄について
知的財産政策室長から「不正競争防止法に関する訴訟事件の裁判管轄について」資料
をもとに説明。
・ 地裁のみでなく東京高裁も同様に専属管轄化をするように要望がある。その前提として、
裁判所における専門性の高い裁判官の体制整備が問題となってくる。人材の育成につい
ても併行して検討していくべきである。
・ 不正競争防止法に関する事件の特殊性については、技術的な専門性の判断を要するよう
なこともあるかもしれないが、専門性が要求されないものもある。知的財産に関する部
分は広く専門性のある部で統一的な判断をという要請が強くなるだろうという意味では
東京・大阪に集中するのは方向性としては正しく、競合管轄が現実的だろうと思う。競
合管轄にした場合、事件が集中し、裁判所の負担増の問題が出てくる。裁判所の処理能
力についても考慮すべき。
・ 契約上の技術情報、営業秘密は何だという解釈論が出てくると思うが、異なった判断が
出てくると、契約履行や管理に影響が生じる。判断の統一化が重要。そういう意味では
専属管轄化に期待したい。ただし、全て専属管轄化すればいいのではなく、原則、専属
管轄で、地方でやった方がいいという場合には地方の裁判所が判断できるようにすれば
良いと思う。
・ 不競法第2条4号から9号までは必ずしも専門性が高くないという分類になっている
が、ノウハウ問題の訴訟が難しくなっている。大阪、東京の少なくとも競合管轄が必要
だろうと思う。競合であったとしても早い段階で当事者の申立て等で東京、大阪への移
送が必要となることが考えられる。
・ 裁判所を誰が選べるのかが問題である。被告の申立てで裁判所が判断するのであれば、
原則、専属管轄として、事件に応じて振り分けても変わらないのではないか。
・ 競合管轄だけれども一時的な管轄権を東京、大阪に認めて、当事者の申立てにより裁判
所の裁量で地方に移送という制度は不可能ではないのではないか。特許関係の事案は、
東京・大阪に集中している。不競法でも本当に必要なものは東京・大阪に集中してくる
だろう。
・ 東京・大阪両地方裁判所に、競合管轄を認めるのであれば良いのではないかという感覚
だ。企業のニーズである高裁レベルの一本化のような形になれば、競合管轄である程度
幅があっても、いろいろな実態に対応できる。
・ 統一的な判決をして欲しいという考えがあり、裁判所によって違う結論が出る可能性が
あり、それに対する検討をする必要がある。
②三倍賠償制度について
特許庁制度改正審議室から、「いわゆる「三倍賠償制度」など侵害救済手段の強化につい
て」資料に基づきを説明。
・ 工業所有権法における刑事罰は実際機能しているのか。アメリカと同様に刑事罰をなく
し、民事の懲罰的賠償を採用する方が実態に合っている。過去の主様な特許・実用新案
権侵害訴訟の平均賠償額の推移については、増大する傾向が読み取れるが、実損を超え
た賠償額が出たというわけではない。
・ 「懲罰的」という言葉だけに捕われてしまい、対策が進んでいない。企業が納得できる
ような侵害救済手段を考える必要がある。
・ 実態をいうと、裁判になれば勝ち目がないのでライセンスを受けることを申し出てくる
企業と明らかにコピーをしながら言われるまで放っておいて裁判で争って負けたら損害
賠償を払おうと考える企業の二通りがある。ビジネス上どっちが得かというと、後者で
ある。ビジネスリスクをどこで負担させるか、誘導するような仕組みが無ければ、結局
はフリーライド行為を助長することとなる。
・ 予防的効果を重視するのであれば、法律に「こういうものは3倍賠償である」と明記す
れば良い。
・ 現行法の範囲内で1つ考えられるとすれば、特許権侵害の場合、現在の財産的損害以外
に法人の「無形の損害」という形で、損害賠償額の上積みを考えてもいい。
③証拠収集手続の拡充
特許庁制度改正審議室から、「証拠収集手続の拡充」について資料に基づき説明。
・ 特許法105条について、営業秘密、技術情報の開示を正当な事由から外すべき。営業
秘密を出すということになると、逆にプロテクティブ・オーダーをかける措置が必要。
違反した人には罰則規程が欲しい。
・ 侵害行為をすべて明らかにするという裁判制度にすべきである。侵害の事実が明らかに
されるように法制度で定めるべき。
・ 侵害についてはすべて公開し、侵害技術を明らかにすべきだというのはわかるが、問題
は侵害していると権利者が言い、相手方が侵害していないと防御権を抗している段階に
おける営業秘密の取扱いをどうすべきかということである。裁判所がそれぞれの段階に
おける状況を踏まえて規定を運用しているのが実態である。
④弁理士法の一部を改正する法律案
特許庁制度改正審議室から、「弁理士法の一部を改正する法律案について」資料に基づき
説明。
・ 当面何人という計画だが、継続性を持っているのか。ロースクールとの整合性はどうな
っているのか。技術と法律のわかる訴訟代理人を将来的にいかに育成していくのか、検
討すべきである。
(2)先端技術4分野の知的財産権保護
①出願人ニーズを踏まえた審査
特許庁調整課調査班長から、「出願人のニーズを踏まえた審査」について資料に基づ
き説明。
・ 日本独自の明細書のパターンができると、諸外国にも出願することを踏まえれば、結局
コストが上がることとなる。世界のスタンダードと離れた制度は、産業競争力にマイナ
スに働く。
・ 日本だけで特許を出すものにどんどん早く特許を付与すると、国内企業間でつぶし合い
をするだけで、結局は競争力が落ちていく。外国に出願しているものを優遇するという
のであれば、国際競争力という観点から納得できる。競争力という意味では、こういう
ことを視点の中に入れて欲しい。
・ 審査請求の厳選について、検討する時間が必要である。アメリカがそうだから審査期間
を短くすべきという議論は誤っている。日本にとって良い仕組みは残すべき。
・ 先端4分野について、ナノテクは今後、医療機器、診断方法などに発展していく。日本
の場合、医療は産業ではないということで特許の対象から外しているが、特許として認
めるべきである。先端4分野については積極的に特許にすべき。
・ 産学連携は、現状では課題が多い。制度を築いていくこの時期が一番大事であり、本当
に大学の先生が特許を出すことをバックアップする体制を取らないといけない。
・ 大学、国の研究機関が特許を出していくのは重要だと思うが、日本だけに出すと逆に日
本を拘束する。是非外国に出していくことを優遇する仕組み、費用的な支援などの措置
が必要である。
②ライフサイエンス分野における審査基準の明確化と国際調和
特許庁審査基準室長から、「ライフサイエンス分野における審査基準の明確化と国際調
和」について資料に基づき説明。
・ スクリーニング方法の特許は影響力が大きいという気がするが、日本はどのような状況
なのだろうか。実態を良く見て、日本の国益にかなったような審査運用を考えた方が良
い。
(3)その他
知的財産政策室長から参考資料である「産業競争力強化の観点から見た我が国知的財
産を巡る現状と課題」について、資料に基づき説明。
・ バイ・ドール法を改正して欲しいとは考えていないが、もっと積極的に使えるような制
度として欲しい。産業競争力を高めるために、ある種のインセンティブを高める施策が
必要だろう。
・ 基本特許を取れるような研究開発を促進し、そこに焦点を当てて欲しい。知財の運用は
産業界できちんとやる。大学の先生が特許を出せるような支援が必要である。
・ 大学の取組みについて、法律はできているが、実効性を損なう面がたくさんある。例え
ば、TLOを国立大学の学内には作れないために一元管理が難しいこと、費用がかかる
のはわかっているのに、TLOは研究費を一切使えないので人を雇えないということ等
を踏まえるべき。大学の先生は、特許化に熱心でないといった精神論はあまり意味がな
い。
・ TLOが、あるクリティカルサイズまで大きくならないと全大学の先生をケアできない。
だからと言って産業界が先生を一本釣りすれば、TLOの足を引っ張っることになる。
産業界からの協力をお願いしたい。
・ 企業の中で技術管理を経験してきた人が、TLOに参加するなど多くの分野から協力が
必要。プロジェクトには適材適所の人材が必要であり、国が積極的に協力すべき。
・ TLOとして何をやりたいのか、どういうスペックの人が欲しいのかまで踏み込んで考
えなければ、制度を作るだけとなり、スペックのミスマッチが起こる。TLOにおける
マネイジメントに、秀れた人材が入り込まなければ、良い方向にはいかないのではない
か。
・ 特許は1件だけでは力がない。特許網になってはじめて力を持つ。TLOにも、核にな
る基本特許を含めて早い段階で周辺特許を押さえるという実務家が必要だ。
・ 大学の教官として、特に私立大学の文系では産学連携の話は聞こえてこない。ベンチャ
ーを立ち上げたことがあったが、学内調整が非常に大変であった。大学発ベンチャーの
ことを考えるのであれば、文系の先生のことも考えて欲しい。
・ 大学発の発明をどうやって商業化していくかについて、発明を適切に評価し、商業的に
常識的な対価を決めることに苦労がある。
・ バイ・ドール法について、アメリカとはマーケットの規模が全然違うので、どうやって
リターンさせるのかという仕組みを考えておかないと、日本国内特有のものになり、広
がりがない。
・ 国の施策として、大学の発明を機関帰属とするのであれば人材が必要であるし、そのた
めの財政基盤をどうするのか。法整備をやっても、実際にどういう運用ルールにするの
かが課題である。
・ 総合的な国家戦略という意味では、幅広い有機的なつながりをもった戦略性に欠けてい
る。知的財産の信託スキームや文系の人を使うという制度設計など、日米のもともとの
制度の違いを念頭に置いて、知恵を出していく必要がある。
以 上
|