経済産業省
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早期事業再生研究会
第2回 議事要旨



Ⅰ 日時

 平成14年11月26日(火)10:00~12:00


Ⅱ 出席者(50音順、敬称略)

 阿部 泰久 (社)日本経済団体連合会経済本部 税制グループ長
             兼 経済法制グループ副長
 片山 英二 阿部・井窪・片山法律事務所 弁護士
 齊藤 誠 一橋大学大学院教授
 坂井 秀行 坂井・三村法律事務所 弁護士
 静 正樹 東京証券取引所上場部 企画調整担当課長
 須田 徹 税理士法人トーマツ 理事長
 住田 昌弘 (株)整理回収機構 常務執行役員
 高木 新二郎 獨協大学教授
 田作 朋雄 PwC FAサービス パートナー
 中村 廉平 商工中金審査第3部 法務室長
 松下 淳一 学習院大学教授
 三好 眞 金融工学研究所 常務取締役
 三好 康之 メリルリンチ証券マネージングディレクター
 安嶋 明 日本みらいキャピタル㈱ 代表取締役
 柳川 範之 東京大学助教授
 由良 芳從 全国銀行協会・UFJ銀行戦略支援部 部長
 横山 洋一郎 日本政策投資銀行事業再生部 次長
※オブザーバー
  金融庁
  法務省
  国土交通省
  日本銀行
  中小企業金融公庫
  東京地方裁判所
産業再生機構設立準備室



Ⅲ 議事要旨

1.早期再生、迅速再生を促すガバナンスメカニズムの形成について

(1)金融機関によるモニタリング・ガバナンス

 ○大企業から中堅企業クラスを対象とするシンジケートローン等の融資形態に
  おいて、財務コベナンツを利用するケースがある。

 ○財務コベナンツで用いられる代表的な指標として、自己資本維持、利益維持、
  Interest Coverage Ratio等。

 ○過剰債務企業や法的整理・私的整理企業等への融資にあたって、レンダーが
  借り手企業に対するガバナンスを発揮し、経営努力や借入金返済のインセン
  ティブを持たせる観点から、融資契約の中で財務コベナンツを付与する例も
  あり、Leverage Ratio、Interest Coverage Ratio、Debt-Service Coverage
  Ratio、Loan-Life Coverage Ratio等の各種財務指標について一定の水準の維
  持を義務付けることがある。

 ○財務コベナンツは、コベナンツ抵触に際して「期限の利益喪失」を行う権利
  を付与する契約上の効果をもたらすだけでなく、貸し手にとっては、「(財務
  内容悪化等の)抑止」「予兆管理」「情報開示の促進」の効果があり、借り手
  にとっても、「経営上のリスクチェックシート」的な役割を果たす効用もある。

 ○財務コベナンツは、一般的に信用悪化の「予兆」となる事項を列挙したもの
  であり、即座に期限の利益を喪失させる権利を実行するのではなく、抵触の
  原因を吟味した上で対応を決定することが多い。

 ○銀行では、近時、取引先に対し、行内で当該取引先の信用状況に応じて設定
  している「信用格付」を開示することも行われている例があり、銀行と取引
  先との間で、当該取引先の財務状況や問題点等について共通の認識を持つこ
  とや、適用金利についての理解を高めることに役立っている。

(2)格付けにおける評価手法

 ○格付機関では、デフォルトリスク+回収リスクで評価を行っており、将来に
  わたるキャッシュフロー創出力を重視。

 ○デフォルトリスク評価においては、潜在的リスクを含めた「リスク分析」が
  中心となり、定性判断が重要。

 ○財務指標を用いて信用度を図る際には、業種特性を考慮することが必要。

 ○(株、社債、債権売買市場等)市場は巨大な評価システム。期中のモニタリ
  ングができ、アーリー・ウォーニング指標として有効。株式市場の情報の場
  合、補足タイミングは倒産の1、2年前。市場情報には定性評価も含まれて
  いる。扮飾もある程度マーケット価格に織り込まれている。

(3)自主規制機関による適時開示・自発的開示

 ○ベンチマーク群について一定の実用性が確認できたとしても、投資判断に与
  える影響は未知数であり、法的な「強制開示」につなげるのは時期尚早。

 ○取引所等の自主規制機関が管轄する決算発表資料は、タイムリーであり(株
  主総会前の開示)、株主によるガバナンスを期待しやすい。

 ○自主的規制機関が市場開設者の立場から独自の開示情報を付加するケースが
  ある。例えば、決算短信における「経営成績及び財政状態」欄に、財務指標
  群や定性的な情報群を記載していくことが考えられる。

(4)その他

 ○中小企業向け融資においても、シンジケートローン等において、財務コベナ
  ンツを設定することがあるが、大企業向け融資で用いられるような厳格な適
  用は現実的ではなく、実態に即して柔軟に対応することが必要。

 ○指標の使い方としては、将来の経営の努力目標としての指標と現状を把握し
  て意思決定を行うための判断材料としての指標の2種類がある。財務コベナ
  ンツには前者の要素が強いものもあるが、意思決定の判断材料としての後者
  の指標に定性的な要素までを含めていくためには、マーケットにおいて自ら
  リスクを引き受ける者がいるかどうか、という点で判断せざるを得ない。

 ○金融機関による財務コベナンツを考える際には、他の債権者との間の同順位
  性の問題も考える必要がある。例えば、金融機関が、財務コベナンツを利用
  して、社債に先立って弁済を受けることが考えられる。同順位債権者間の調
  整の方法として、倒産法上の否認権の取扱いを確認することも必要。

 ○ファンドによる投資判断においては、事業の継続価値が清算価値を上回って
  いることが大前提。事業価値は、現在価値への割引きに用いるリスクプレミ
  アムや時間軸に依存する。また、ファンドは、企業単位ではなく、事業単位
  で、事業計画との対比でモニタリングを行っていくものであり、企業単位で
  の静態的な財務指標を用いてはいない。


2.早期再生、迅速再生を可能とする金融環境の整備について

(1)シンジケートローンと債権流通市場

 ○財務コベナンツの存在や流通市場での債権価格変動は、借り手企業に早期事
  業再生のインセンティブを与える。事業再生に関心のない債権者は、流通市
  場で売却し退出可能。

 ○クロスディフォルト条項やパリパス条項が存在するため、事業再生過程でロ
  ス負担のメイン寄せは起こりにくい。

 ○財務コベナンツによってリスクコントロールがなされるシンジケートローン
  は、事業再生プロセス下にある企業向けの資金供与形態としても最適。

 ○シンジケートローンの市場規模はこのところ急拡大。借り手・投資家の裾野
  も拡大。もっとも、新規貸出に占めるウエイトは4%と僅少であり、このた
  め債権流通市場も十分整備されていない。

 ○シンジケートローンと債権流通市場の一体的な発展を妨げている要因として、
  ①企業サイドの債権譲渡に対する抵抗感、②金融機関がリレーションシッ
  プ・バンキングからの脱却に後向き、③売却を前提としたローン・プライシ
  ングがなされていないため、売却時に引当てを上回る損失が発生しやすい、
  ④国内投資家のリスク許容度の低さ、⑤借り手企業に関する財務情報の不十
  分さ、⑥債権価格情報が不透明等。

 ○具体的な改善策として、債権売却の際の簿価通算に関する税・会計上の取扱
  いの明確化、債権価格情報の整備、債権に関する信用情報の整備、債権売買
  を行う際の信用情報に関する守秘義務範囲の明確化、債権売買を前提とした
  引当・償却制度の整備、借り手企業や金融機関にシンジケートローンへのシ
  フトを促すための情宣活動、債権売買のための決済システムの構築等が必要。

(2)債権譲渡スキームと不良債権処理

 ○債権譲渡スキームは、金融システムにおいて、間接金融と直接金融の中間領
  域として位置付けられる。

 ○ローンの組成・管理は銀行・サービサー、ローンの値付けはファンド・格付
  機関、ローンのリスクの引き受けは機関投資家といった金融機能に応じた役
  割分担が必要。

 ○日本の金融システムにおいては、銀行部門におけるローンの塩漬け、機関投
  資家部門におけるローン市場への消極的参加、ローン譲渡市場の周辺マー
  ケットの欠落により、中間領域たる債権譲渡スキームが欠如。

 ○債権譲渡スキームの有する金融機能として、信用リスクの移転とシェアリン
  グ(多数の投資家によるリスク分担・リスク引き受け能力の高い投資家への
  リスクの移転)、ローンのプライシング(ローンの時価評価、値洗いの「場」
  としての債権譲渡市場、会計上の評価、時価評価、市場評価の相互依存性)、
  債務者交替の契機(経営資源の投下主体への債権譲渡)。

 ○不良債権処理における債権譲渡スキームにおいては、ローンの時価評価、値
  洗いの契機(ローン・リスク引き受け者による評価)、事業再生においてリー
  ダーシップをとれる債権者へのローン譲渡、機関投資家対象商品へのパッ
  ケージ化が重要。

 ○銀行の売却インセンティブの欠如、機関投資家の購入インセンティブの欠如
  が日本における債権譲渡スキームの障害。

                                  以上

(なお、議事概要については当課文責によるものとする)
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