経済産業省
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早期事業再生研究会
第3回 議事要旨



Ⅰ 日時

 平成14年12月9日(月)9:00~12:20


Ⅱ 出席者(50音順、敬称略)

 片山 英二    阿部・井窪・片山法律事務所 弁護士
 齊藤 誠     一橋大学大学院教授
 坂井 秀行    坂井・三村法律事務所 弁護士
 静  正樹    東京証券取引所上場部 企画調整担当課長
 須田 徹     税理士法人トーマツ 理事長
 住田 昌弘    (株)整理回収機構 常務執行役員
 高木 新二郎   獨協大学教授
 田作 朋雄    PwC FAサービス パートナー
 中村 廉平    商工中金審査第3部 法務室長
 三好 眞     金融工学研究所 常務取締役
 三好 康之    メリルリンチ証券マネージングディレクター
 安嶋 明     日本みらいキャピタル㈱ 代表取締役
 柳川 範之    東京大学助教授
 由良 芳從    全国銀行協会・UFJ銀行戦略支援部 部長
 横山 洋一郎   日本政策投資銀行事業再生部 次長
※オブザーバー
  金融庁
  法務省
  日本銀行
  中小企業金融公庫
  東京地方裁判所
  産業再生機構設立準備室


Ⅲ 議事要旨

1. 早期再生、迅速再生を可能とする金融環境の整備について

(1)デフレ環境下の債権回収とDCF Valuation(大企業を中心に)

 ○産業再生を実現させることを念頭においた不良債権は、「当該産業が過剰供
  給・過剰設備状態にある」、「主力行が他行・市場でリファイナンスできな
  い」、「債務者の市場評価によるDCF価値が総借入を下回る」と定義でき、こ
  の種の債務者は、正常先、要注意先に集中している。早期処理が回収の最大
  化につながる。

 ○融資債権の時価管理(引当て)を行わない限り、トリガーを引くタイミング
  の判断が出来ない。現在の処理コストと将来処理したときの処理コストの比
  較により経営責任が追求されることを明確化しない限り、金融機関の正しい
  判断を導けない。

 ○大手行が4~5行に集約されたことを勘案すれば、市場ガバナンス型再生処
  理(リファイナンスによる再生)以外に金融機関を健全化させる方法はない。


 ○不良債権Exitは、「広義のリファイナンス(自主調達)が出来るようになる
  こと」と定義でき、自主再生には、BBB~A各同等の財務指標を必要とし、
  時間もかかる。
 ○現行市場では戦略投資家へのM&A(過剰設備供給の是正)、プライベートエ
  クイティへの譲渡が回収を最大化させる可能性が高い。
 ○懸念事項として、DCF方式の割引率が、現行会計指針においては約定利率
  (1~1.5%程度)となっているのに対し、市場実勢が、戦略投資家
  (M&A)は4~7%、Distressed ファンドは10~15%程度となっており
  大きく乖離する点が上げられる。

 ○債務者、債権者、管理当局を問わず、早期再建を具体的に進めない限り経済
  は再生しない。

(2)中小企業向け融資について

 ○中小企業については、所有と経営が分離しておらず、株主のガバナンスが働
  きにくいため、金融機関によるガバナンスの役割は相対的に高い。金融機関
  の支援は、第1ステージとして「経営者の意識改革」、第2ステージとして
  「経営改善計画の策定」、第3ステージとして「経営改善計画の実行・管理」、
  そして、第4ステージとして、「金融取引条件の改善」の段階が挙げられる。

 ○中小企業の早期再生を遅らせる金融慣行として、個人による根保証の問題点
  が挙げられる。債務者会社との関係では、経営者だけでなく、第三者(知人
  等)やその他の人物も根保証を徴求されることもあるし、また、保証額が非
  合理な包括根保証も数多く存在する。

 ○個人保証の問題を是正するためには、保証徴求の意義を見直し、債務者会社
  のモニタリングのためには、財務コベナンツを導入するべきであるし、経営
  責任の追及のためには、取締役の第3者に対する責任の法理を活用すべきで
  ある。

 ○現在、すでに保証人となっている人の救済のための制度整備も必要であり、
  根抵当権と同様に、根保証についても制度整備することが考えられる。例え
  ば、包括根保証を排除し、極度額の定めを義務付けることや、根保証人の確
  定請求権若しくは判例上認められた解約権を立法化することが考えられる。

 ○担保執行法・破産法の改正においては、差押禁止財産や自由財産の範囲の拡
  大が考えられるし、また、個人保証人のための再生手続を創設することも考
  えられる。

 ○また、現行の無税直接償却の基準によれば、金融機関は、保証人を生活保護
  レベルまで追及しなければならないことになっており、基準の見直しも検討
  すべき課題である。

(3)その他

 ○Distressed Fundは、ローン債権をローン債権としてみているので、債務者
  会社の破綻後に回収を目的として債権を購入する。したがって、ファンドが、
  金融機関から、債務者会社に対する額面100の債権を70で購入し、80で転
  売したとすれば、ファンドに10の利益が生じるが、債務者の債務負担額には
  変わりがない。

 ○プライベートエクイティファンドは、ローン債権を購入した場合でも、株式
  を買い取って、債務者会社のビジネスモデル、事業戦略を見直して、企業価
  値を上げることを目的とする。

 ○債権の流通市場を創設することは大事だが、実際に価額を付けるためには、
  そこで取引がなされる商品の供給が必要である。一定のマスを供給するため
  には、取引しやすい商品の標準化で財を供給することと、プレイヤーが出て
  きやすいようなインセンティブを与える制度的な後押しが必要であろう。

 ○債権が市場で取引されたとしても、債権回収を目的とする者が債権を購入し
  たのであれば、事業再生を図ることはできない。債権の購入者が、債務者会
  社のエクイティをとって、他の債権者との交渉にあたるなど事業の再生に取
  り組むことによって、はじめて事業再生が可能となる。

 ○債権が売買された後に、結果的に債務者に買い戻されるような場合もありう
  るが、評価の場所をつくること自体には意義がある。

 ○会社の債務を個人保証している経営者についても、すでに通常の民事再生手
  続を利用した再生の成果が現れてきている。現状の最大の問題点は、債権者
  の中に個人の民事再生事件に対して同意するための内部の決済基準を有して
  いない者がいることである。

 ○融資を「担保型・債務者企業着目型」と「収益着目型・事業着目型」に完全
  に対比することは困難である。現状でも、担保はリスクに応じて取得してい
  るのであり、担保のみに着目しているわけではない。また、プロジェクト
  ファイナンスにような事業収益型の融資においても、担保の取得は行われて
  いる。したがって、資金使途に応じた担保設定を普及させていくことがポイ
  ントとなろう。また、売掛金への担保設定を例にとれば、譲渡禁止特約が存
  在していることや、そのような担保設定が取引先に対する第3債務者の信用
  不安を引き起こすなどの商慣行上の問題も存在する。

2. 企業再建から事業再生スキームとしての倒産法制度の活用について

(1)事業再生

 ○事業再生とは、再生計画が合意され、リファイナンスが付くようになること
  である。

 ○事業再生では、基本的には私的再生を考えるのが通常であり、法的再生より
  も、事業価値の毀損が少なく、債務者と銀行の協力も得やすく、再生後の
  ファイナンスも容易である。法的再生を選択するのは、債権者の合意がとれ
  ないとき、経営者の排除が必要なとき、権利者の確定、権利の明確化が必要
  なときである。

 ○事業の再生には、コア事業の存在が不可欠であり、その場合にはスポンサー
  も得られやすい。

 ○金融機関間の調整において損失のメイン寄せが行われるかぎり、メインが負
  担できる範囲でしか再生ができないのが現状であり、メインに過大な負担が
  生じると、メインが他の債務者企業の再生に協力するための財務基盤をも
  奪ってしまうことになりかねないので、損失の適正な負担を考慮することが
  重要である。

 ○今後は、私的整理においても、計画のモニタリングを行っていくことも重要
  である。

 ○公的再生機関は、再生事例に介入することについて、情報開示を進めさせる、
  債務者に対して株主責任をとらせるための交渉力を強める、債権者間の調整
  力を強化するなどの強みをもっている。

 ○事業再生の加速のためには、事業再生と金融再生を一体処理し、事業再生の
  実行により、金融が同時に再生していくことが必要である。金融機関にとっ
  ても、債務者会社が再生してその債務者区分を格上げすることにより、引当
  金を減らすことができるというメリットがある。

 ○合意前提の私的再生の限界に対しては、多数決制度を持つ法的再生への連続
  性を確保することで、一部債権者の「ごね得」を防止することが必要。

 ○私的再生と法的再生の連続性(中立性)の確保の阻害要因として、法的再生
  に入ることに対するブレーキが2つ存在している。ひとつは、債務者会社が
  法的再生に入ることで、その債務者区分が破綻先に落ちてしまうことにより、
  金融機関がそれに応じた引当金をつまなければならないことである。また、
  債務者区分の格上げのルールも明確ではない。もうひとつは、法的再生の申
  立が証券取引所の上場廃止基準とされていることである。

 ○再生ビジネスの活性化には、市場の理論に沿った淘汰、再生のしくみを崩さ
  ないことが必要である。

(2)税務

 ○法人税法59条及び同法施行令117条は、債務の免除等が多数の債権者によっ
  て協議の上決められる等その決定について恣意性がなく、かつ、その内容に
  合理性があると認められる資産の整理があった場合に、債務免除益等に対し
  ては、欠損金に達するまでの金額は益金に算入しない旨を定めている。しか
  し、実務上はかなり厳しく運用されており特例が認められにくいのが問題。

 ○事業再生においては、少なくとも時価資産額と負債がバランスする必要があ
  り、資産の含み損を処分するのに十分な債務免除を受ける必要があるが、私
  的整理においては資産の評価損の計上が認められないため、5年間の青色繰
  越欠損金を越える金額に対しては免除益として課税が発生する問題がある。

 ○また、DESに関する会計・税務処理は、債権が流動化している現状において、
  第二次債権者の存在も考慮する必要があるが、債権の譲渡人および譲受人に
  対する適切な取扱いが定められていない。

(3)上場廃止基準

 ○企業の早期再生は、上場企業の投資魅力の向上につながるものである。これ
  まで、東京証券取引所では、退出基準の強化(債務超過・時価総額基準)と
  更生会社に関する不受理基準の撤廃により対応を行ってきた。

 ○清算型手続においては、法的整理、私的整理を問わず、上場廃止となるが、
  再建型手続については、法的整理では上場廃止となるが、私的整理では、上
  場を維持することができる。これは、法的整理では、通常、株券が無価値化
  (100%減資)すること、無価値化しない場合であっても、再建計画確定まで
  長期にわたって対象として不安定な状態が続くのに対して、私的整理では、
  株券が無価値化するケースが少ないことに起因している。

 ○米国では、法的整理で株券の無価値化を前提とする例は極めて少ないので、
  NYSEは上場維持が可能である(無価値化するものは上場廃止)。株券の無価
  値化を前提としない法的整理については、日本でも上場維持の可能性を考え
  る余地はある。しかし、早期退出・早期再上場の促進と、上場維持策を採る
  ことでは、どちらが早期再生にとって望ましいか、私的整理に甘い上場廃止
  基準は、早期再生の抜け道を作ることにつながらないか、法的整理イコール
  と倒産という既成概念を変えられるか、にも留意すべきである。

                                  以上

(なお、議事概要については当課文責によるものとする)
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