トップページ >> 化学物質の安全確保対策 >> 海外における化学物質関連制度TOP >> 化学物質の排出管理制度
化学物質の排出管理制度
■米国の有害物質排出目録(TRI)
有害化学物質排出目録(Toxic Release Inventory;TRI)制度は、「緊急対処計画および地域住民の知る権利法(Emergency Planning and Community Right-to-know Act;EPCRA,以下「地域住民の知る権利法」)」の第313条として規定されているもので、1986年より実施されている。地域住民の知る権利法は、有害化学物質の漏出事故に対応するために1986年のスーパーファンド法修整および再授権法の第3部として制定され、第313条では、対象化学物質を製造、加工、その他の方法で使用する施設の所有者・管理者に、対象化学物質の年間排出・移動量等のデータをEPAと州当局へ提出することを求めている。施設から報告されたデータはEPAでまとめられ、一般に公開される。
  1. 目的
    地域住民に対し、対象化学物質の排出及び廃棄物としての処理に関する情報を提供することと、行政機関が適切な法規制を検討するのに必要な情報を得ることを主な目的としている。
  2. 報告義務者
    以下の3つの要件をすべて満たす施設の所有者・管理者が報告を義務づけられている。
    • 10人以上の常勤従業員を有する(年間総労働時間が20,000時間以上の場合も該当)
    • 標準産業分類(Standard Industrial Classoification;SIC)のコード10(1011,1081,1094除く)、12(1241除く)、20〜39、4911、4931、4939、4953、5169、5171、7389に該当する
    • 対象化学物質を基準量以上製造(輸入含む)、加工、その他の方法で使用している
  3. 対象化学物質
    第313 条の対象となる化学物質は、「緊急対処計画及び地域住民の知る権利法第313 条対象有害化学物質(Toxic Chemicals Subject to Section 313 of the Emergency Planning and Community Rights to know Act )」として規則(40 C.F.R.§372.65)で定められ、一覧表化されている。市民は、EPAに対して、この規則で定められた対象化学物質の追加・削除を申請できる。この追加・削除によって、当初の対象化学物質一覧表は何度か改訂がなされてきた。
    現在582個別物質及び30分類の化学物質を対象とする。なお、30分類のうち3分類からは58個別物質が指定されている。(総計667物質)
  4. 基準量
    対象化学物質を以下の基準量以上製造、加工、その他の方法で使用している場合、報告が必要となる。
    • 対象化学物質が製造、加工される場合、年間25,000ポンド
    • 対象化学物質がその他の方法で使用される場合、年間10,000ポンド
    • 対象となるPBT(persistent bio-accumulative toxic;残留性生物蓄積性化学物質)を製造、加工、その他の方法で使用している場合、年間100ポンドあるいは10ポンド。ダイオキシン類は0.1グラム。
  5. 報告内容
    施設の所有者・管理者は、排出報告書 (Toxic Chemical Release Inventory Reporting Form R;以下フォームR)を毎年7月1日までに, EPAのEPCRA 報告センター(EPCRA Reporting Center)とその施設が所在している州当局へ送付する。
    また、1995年から、報告すべき対象化学物質の量が1年間に500ポンド以下の施設についてはフォームRを簡略化したフォームAによる報告が認められるようになった。フォームAでの報告は当初は単一物質のみであったが、1998年からは複数の化学物質に関する報告も可能となった。ただしPBTについてはフォームAによる報告は認められない。
    フォームは、文書による提出でも磁気媒体(ディスク)による提出でもよい。2000報告年は、文書によるものが23,116件、磁気媒体によるものが80,133件であった。
  6. 公表方法
    EPAは、フォームRにより提出された情報をコンピュータで利用可能なデータベースの形で一般に公表する。このデータベースは、国家医療図書館(National Library of Medicine, NLM)のオンライン情報・システム(TOXNET)を通じて、終日(休日も24時間)市民はアクセスすることができる。また、TRI の情報は、全米技術情報サービス(National Technical Information Service) からテープによる入手もできる他、連邦各機関や公共図書館ではマイクロフィルムでも入手することが可能である。 
    この他、EPA は毎年TRIデータを分析した年間報告の作成を行っており、また、インターネットにTRIホームページも開いている。米国EPAのウェブツールであるEnvirofactsは、EPAの毒性物質排出インベントリーを含む7つの主要な環境データベースをカバーしている。Envirofactsシステムでは「EZ(簡単にできる質問)」と特別に作成した質問の両方が使えるようになっており、ユーザーは主要項目(事業所、化学物質、排出の種類)を1つ選んでデータ表を作成し、次に特定のデータ要素を選んでその表内に表示させることができる。また、1987年から最新のデータまで完全なTRI データの一式が、CD-ROM でも利用できるようになっている。
    州によるデータの公表も行われており、第324条では、フォームRを請求する者がいる場合には、請求者の指定する地域において、就業時間内に当局データを入手できるようにしなければならないと定められている。また、地方委員会は毎年「地域住民の知る権利法」による情報が入手可能であること、それがどこで閲覧できるかを、地方紙で告知するとされている。市民は、こうしたデータ公開のための手続が定められていない場合には、手続を制定するように当局に対して市民訴訟(第326条)を提起することができる。
    なお、報告者は対象化学物質の名称など化学物質の特定に関わる情報を、企業秘密として公開しないよう申し立てをすることができる。この申し立てはEPAによって正当なものかどうか判断され、企業秘密と認められた場合には、化学物質の名称の代わりに化学的分類名のみがデータベースに掲載される。

国における化学物質排出管理制度の詳細については
米国環境保護庁ホームページ(英語)
を御参照下さい。
 

■英国の汚染目録(PI)
イギリスで実施されているPRTR制度は、汚染目録(Pollution Inventory;PI)と称されている。PIは、環境省(Environment Agency)が規制している産業活動に伴って施設から排出される汚染物質の排出目録である。PIはCRI(Chemical Release Inventory;化学物質排出目録)を改変し1998年に導入されたもので、以降毎年公表されている。

PIの根拠法は、汚染防止管理法(Pollution Prevention and Control Act 1999)、環境保護法(Environmental Protection Act 1990)及び 放射性物質法(Radioactive Substances Act 1993)であり、また、EUのIPPC(The Integrated Pollution Prevention and Control)指令が加盟各国にEPER(European Pollutant Emission Register)のためのデータ報告を義務付けていることから、近年その規定への対応が進められている。

PIの主たる目的は以下のとおりである。

  • 産業及びその他の汚染発生源について、地域別あるいは全国的な情報に容易にアクセスできるようにすること
  • 環境保護のための規制に役立つこと
  • 国内外の公約や義務を果たすための報告書作成に役立つこと

対象物質は183物質(大気:129物質、水質:79物質)で、物質の選定及び基準量は、第1ステップとして、EPERの対象物質か否かということで判断される。対象外の場合、イギリスの環境基準物質か、京都議定書の対象物質か、あるいはUNECEやUNEPの基準等が勘案される。(全部で8段階)

データの収集(報告)は紙媒体が基本であったが、一部の施設(下水処理場)について2001年から電子媒体での届出を先行導入した。これが上手くいったことを受け、2002年のデータの届出は全ての対象業種・施設で行えることとなった。ただし、まだ紙媒体での届出がなされるものがある。なお、情報公開(企業機密)に関しては、データ保護法(The Data Protection Act)が1998年に制定されている。

PIの公表データは、アクセスが容易にできるようにwebサイト上に公表されている。そして、グラフ表示、地図の表示及びデータの分析等の情報提供もあわせて行われている。

公表される(webサイト上で閲覧できる)項目は下記のとおりである。

  1. 排出源の住所
  2. 産業分類
  3. 工程分類
  4. 経路(大気、水質、土壌等)
  5. 物質名
  6. 排出量

なお、排出年も示されているため、年別・物質別の排出量が分かるようになっている。

英国における化学物質排出管理制度の詳細については
英国環境省のホームページ(英語)を御参照下さい。