経済産業省
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GHS

04◆消費者製品◆Consumer Goods & Risk Assessment◆04

GHS表示のために行う消費者製品の暴露に由来するリスク評価の考え方

平成19年1月11日

GHS関係省庁連絡会議

 化学品の分類および表示に関する世界調和システム (The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals ; GHS) においては、個々の化学物質及びそれらの混合物に固有の危険有害性 (ハザード) に着目して危険有害性分類を行い、その結果に基づいて表示を行うこととされているが、人への暴露が短時間であると想定されるある種の消費者製品については、そうした暴露により慢性的な健康影響が生じにくいと考えられることから、以下のように慢性的な健康有害性の可能性 (リスク) に基づく表示についての措置が規定されている。

 「所管官庁は、障害の可能性に基づいて情報を提供する消費者表示システムを認可することができる (リスクに基づくラベル)。その場合、所管官庁は製品使用に対する潜在的暴露およびリスクを決定する手順を確立することとなる。(Competent authorities may authorize consumer labelling systems providing information based on the likelihood of harm (risk-based labelling). In the latter case the competent authority would establish procedures for determining the potential exposure and risk for the use of the product. )」

(GHS改訂初版 1.4.10.5.5.2及び附属書5 「危害の可能性に基づく消費者製品の表示」)

 ついては、GHS関係省庁連絡会議は、以下に規定する化学物質のリスクの概念及びリスク評価の手順等に則って消費者製品に含有される化学物質のリスク評価を行った結果、健康影響リスクが懸念されるレベルにないと判断する場合には、リスク評価を行った健康有害性に関する情報をラベル表示に含めなくてもよいことを確認する。

 ただし、消費者製品への安全性情報の表示のあり方や製品暴露によるリスク評価手法に関する今後の国内外の議論の進捗状況を見極めた上で、必要に応じ内容の見直しがあり得るものとする。また、リスクに基づくラベル表示が適用できるのは、一般的に消費者の暴露量と暴露期間が限定されている消費者製品の使用に伴う慢性的な健康有害性に限る。

 なお、そのリスク評価の手法が以下に則ったものであるか否かの判断は、実際にリスク評価を実施しその結果に基づいた表示を行う各事業者において行うことが必要である。

1. 化学物質のリスクとは

 すべての化学物質は、固有の危険有害性 (ハザード) を有する。ハザードにより、ヒトの健康に対し有害な影響を及ぼす可能性をリスクという。化学物質のハザードが強い場合でも、ヒトが化学物質を摂取する量 (暴露量) が小さければリスクは小さい。一方、ハザードが弱くても、大量に摂取するなど暴露量が大きければ、リスクは大きくなる。

 このように、化学物質のリスクを評価するためには、ハザードを特定し、その有害影響がどの程度の暴露量で発現する可能性があるかを確認する (ハザード評価) とともに、暴露量を推定する (暴露評価) 必要がある。これらの結果を総合的に判断し、その化学物質が有害影響を及ぼすか否かを判断する一連のプロセスをリスク評価という。

 ここでは、慢性的な健康有害性 (生殖毒性、反復暴露による特定標的臓器/全身毒性) の項目で、GHSの分類基準に従ってラベル表示が必要と区分された化学物質 (又は混合物) について、消費者製品の長期暴露に由来する非発がん影響の一般的かつ簡易なリスク評価の手順について述べる。

2. リスク評価の手順

 リスク評価のプロセスは、ハザード評価、暴露評価、リスク判定よりなる。消費者製品の暴露評価は、製造者が意図する製品の使用条件のほか、消費者の予見できる誤使用等も考慮するなど、想定できる範囲内で可能な限り安全側にたった評価を行う。

<ハザード評価>

 ハザード評価では、暴露経路 (経口、吸入、経皮) を考慮してTDI (Tolerable Daily Intake; 耐容一日摂取量) [2]やADI (Acceptable Daily Intake; 許容一日摂取量)[3]のように「暴露量がある値以下であれば、ヒトが長期間にわたって繰り返し暴露しても影響はないと考えられる量」(以下、TDI等と言う。) を設定する。国際機関等によりTDI等 が設定されている場合には、その値を用いることができる。TDI等が設定されていない場合には、以下の手順でTDI等を暫定的に設定する。

1)疫学的研究に基づくヒトのデータや動物を用いた毒性試験データから、評価対象とする化学物質がどのような有害影響を及ぼすか、また量によってその影響がどのように変化するかを評価し、影響の用量反応関係を確認する。動物試験データの評価を行う場合には、化学物質の生体内運命がヒトと類似する動物種の試験データ、暴露経路がヒトの暴露経路と関連する試験データ、より実験期間の長い試験データを優先させる。

2)影響の用量反応関係が確認できたら、化学物質の暴露量 (投与量) のうち、有害な影響がみられなかった最大の量をNOAEL (No Observed Adverse Effect Level; 無毒性量) として設定する。複数のデータがある場合には、暴露期間が長く、信頼性が確認できた実験データの中から最も小さいNOAELを選択する。NOAELが求められない場合には、LOAEL[4]を選択する。NOAEL (又はLOAEL) を1日あたり体重1 kgあたりの暴露量に換算する。

3)ヒトのデータや実験動物データから求めたNOAEL (又はLOAEL) には、化学物質に対する個人の感受性の差、動物とヒトとの間の感受性の種間差、暴露期間 (実験期間) の短さなど、毒性試験データに付随する不確実性が内在すると考えられる。この不確実性を不確実係数として表し、NOAEL (又はLOAEL) を不確実係数の積で除した値をTDI等とする。一般的に用いられる不確実係数としては、個人差10、種間差10、試験期間1~10、LOAELの使用1~10などである。

<暴露評価>

 暴露評価では消費者製品の具体的な使用状況において、ヒトが化学物質に暴露する量を推定する。この場合、通常の使用条件のほか、合理的に予見できる誤使用による暴露も考慮する。

1)暴露量を推定するため、消費者が製品中の化学物質に暴露する状況 (暴露シナリオ)を設定する。暴露シナリオは、製品の使用形態、使用頻度、一回あたりの使用量、使用場所、製品中の化学物質含有率などから設定する。

2)設定した暴露シナリオ基づき、暴露経路毎に1日あたり体重1 kgあたりの暴露量を算出する。

例えば、製品から室内空気中に放出された化学物質の吸入経路の暴露量は次式のように算出できる。

吸入暴露量 (mg/kg/日) = 1回あたり製品使用量 (g/回) × 製品中の化学物質含有率 (mg/g)

× 製品の空気中への移動率 (-) / 室内空気体積 (m3) × 暴露時間 (時間) × 製品使用頻度 (回/日) × 呼吸量 (m3/時間) / 体重 (kg)

また、例えば、製品からの経皮経路の暴露量は次式のように算出できる。

経皮暴露量 (mg/kg/日) = 1回あたり製品使用量 (g/回) × 製品中の化学物質含有率 (mg/g) / 製品体積(cm3) × 製品接触皮膚面積 (cm2) × 皮膚接触層厚さ (cm) × 使用頻度 (回/日) /体重 (kg)

肺から体内への吸収率、皮膚から体内への吸収率についての利用可能なデータあれば、考慮することにより、より現実的な暴露量の推定が可能となる。

暴露量推定に必要なデータのすべてが入手できない場合には、適切な仮定値を用いて算出してもよい。

<リスクの判定>

 ハザード評価で求めたTDI等と、暴露評価で推定した暴露量を比較し、暴露量がTDI等を超えない場合には、化学物質による健康影響リスクは懸念されるレベルにないと判断する。この場合、リスク評価を行った慢性的健康有害性区分に関する情報をラベル表示に含めなくてもよい。一方、暴露量がTDI等を超える場合には、健康影響リスクが懸念されると判断し、GHSの有害性危険分類に基づく表示を行う。

3. リスク評価にあたって留意すべきこと

 TDI等の設定時に採用する毒性試験データ (NOAEL、LOAEL)、暴露シナリオの設定方法、暴露量算出時のデータ選択方法により、リスク評価結果が変わる可能性がある。このため、評価の過程では、データに信頼性があるか、暴露シナリオが適切であるか等について十分な確認を行うとともに、評価プロセスを第三者に公表し、透明性を確保することが重要である。また、ハザードや暴露に関する新たな知見が得られた場合には、リスク評価を見直すことが必要である。

 発がん性については、NOAEL (LOAEL) が求めることのできる物質については、上述の考え方でリスク評価を行うことができる。一方、多くの発がん性物質についてはこれらの値は設定できないとされているためリスク評価が困難であるが、国又は国際機関等で発がん性を評価した結果、基準値や許容暴露量 (濃度) 等が設定されている場合には、その値をリスク評価に用いることができる。その場合には、設定された基準値、許容暴露量 (濃度) の適用範囲 (作業環境、一般環境等) と、消費者の暴露条件 (暴露経路、暴露時間、暴露頻度) の差を十分に考慮して用いる必要がある。


[1}2006年12月の国連GHS専門家小委員会で、Chapter3.8とChapter3.9からはsystemicという語が削除されることとなり、「特定標的臓器毒性」と記述されることが決定した。
[2]TDI (Tolerable Daily Intake) 耐容一日摂取量。ヒトが生涯にわたって繰り返し暴露されても影響はないと考えられる量。非意図的暴露を生じる物質に用いる。

[3]ADI (Acceptable Daily Intake) 許容一日摂取量。TDIと同義語だが、農薬や食品添加物等、その使用目的からヒトの体内暴露を前提として使用する物質に用いる。
[4]LOAEL (Lowest Observed Adverse Effect Level) 最小毒性量。化学物質の投与量 (暴露量) のうち、有害な影響のみられた最低の量。

 

 

 

 

 具体的なリスク評価手法については、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が作成した下記ガイダンス文書をご参照ください。

 

 「GHS表示のための消費者製品のリスク評価手法のガイダンス」

http://www.safe.nite.go.jp/ghs/risk_consumer.html

平成20年4月17日

 

 


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