DX-#01 2018/08/10 経産省の新たな挑戦 経産省のデジタル・トランスフォーメーション

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普段の生活を見ると、スマートフォンやタブレット、PCを通じて多くのサービスが提供され、それが我々の生活の「当たり前」になりつつある。また、民間ビジネスの競争の中でもデータを収集・活用して最適なサービスを提供することが大きな差別化要因となっている。このようなデジタル技術が、我々の生活を圧倒的に便利にしたり、既存のビジネスの構造を“ディスラプト(破壊)”するなど、新しい価値を生み出すイノベーション「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」が世界中あらゆる分野で起きている。

このように日常生活で利用するサービスがスマートフォンで完結するのが当たり前の時代に、行政手続はいまだに大量の紙の資料、窓口での対面手続、手続完了までの長い時間等、多くの負担を国民に強いている。政府は今や一番のお荷物になっていると言っても過言ではない。さらに今後の日本は、人口減や財政制約など大きな社会課題に立ち向かう中、政府にも非連続的なイノベーションが求められている。

そんな状況をデジタル技術の徹底的活用により打破し自らを変えるべく、この夏経産省は、デジタル・トランスフォーメーションオフィスを新たに設置した。デジタルを前提として行政サービスを圧倒的に便利に・簡単にし、データに基づいた政策立案、サービスの向上を組織的に推進。デジタル化の最後のフロンティアとしての政府を変革していく。

経産省の「DX」で世の中はどう変わる?
①行政手続きを圧倒的に簡単に・便利に

行政手続きの図 before/after

政府全体では行政手続きは年間数億件行われており、その「電子化」はこれまでも進められてきた。しかし、多くの場合は電子化で紙からPC画面になっただけで、情報の整理、入力、確認など作業の本質は何も変わらず、行政サービスを利用・申請する企業や国民にとっても、これを受け取る職員にとっても、いわゆる“お役所手続き”によって大きな負担が強いられてきた。そのような状況を一新すべく、経産省がDXによる変革として位置づけるのは、デジタルによる「オペレーションの最適化」である。

たとえば、DXによってどんな変化が今後もたらされるだろうか。異なる手続きで同じ情報を何度も入力する必要があったものが一度の入力で良くなる「ワンスオンリー」や、関連する手続きが一括で終わる「ワンストップ」に。手続きにかかっていた手間・時間が圧倒的に少なくなる。民間サービスとも連携することで、行政手続きのためにわざわざ書類を作成しなくてよくなる。申請時の添付漏れや記載ミス等はシステムで自動的にわかり、窓口での面倒なやりとりがなくなる。

デジタル・トランスフォーメーションはこうした変化を今後可能にしていくものだ。煩雑な手続きから解放され、自分がやりたいことにより時間を使えるように。「行政からの生産性革命」を国として実現していく。

経産省の「DX」で世の中はどう変わる?
②政策のデジタルマーケティングへ

政策のデジタルマーケティングの図

行政サービスが利用されるにあたり、企業等からの申請情報の中には様々な政策立案のヒントがある。しかし、紙で行われた手続き情報は、データとして管理できないがゆえに死滅していると言っても過言ではない。また、データを部署間で共有することで、組織内のコラボレーションでより付加価値の高い政策立案を実現できる可能性があるのに、そこまで踏み込めていない。企業や国民を経産省の顧客とすれば、顧客ニーズをデータから分析し、それに基づいてターゲットに商品(政策)を届けるというマーケティングの基礎ができていないことになる。また、数多くの制度や支援策があっても、膨大な情報の中で自分が使えるもの、適したものがどれなのかがわからない、という声もある。
あらゆるデジタル化が進む時代において、データの活用体制が整っていない中、政策立案手法が圧倒的に陳腐化していると言われても仕方がない状況にあるのだ。

これらの状況を打開するために、まず行政手続自体をデジタル化し、申請情報をデータとして集めることに取り掛かる。さらにこれを分析可能にするためのデータ基盤を構築することが急務である。そして、組織としてデータを統合的に共有・活用することで、政策の顧客たる企業や国民のニーズや環境の分析をもとに、民間ビジネスでは当たり前のマーケティングやパーソナライズを行政サービスでも行うとともに、これまで経産省がアプローチできていなかった潜在的な顧客も含め、政策をプッシュ型で届けていくことを目指している。

電子政府先進国からみる未来の姿

こういった取り組みをわが国で進めていくにあたって、世界各国の政府が行政サービスのデジタル化を熱心に進める状況も忘れてはならない。

デジタル化による圧倒的な効率化で注目されているのが、人口わずか130万人、北欧の小国エストニアである。エストニアは長年のソ連による支配によって財政難に直面。しかし独立を機に行政サービスを効率化するためにデジタル化に取り組み、現在では教育・医療・警察・選挙まで、ほとんどの行政サービスをインターネット上で完結できるまでに進化した。さらにはバーチャルな居住権として、「e-residency」を他国に住む市民に提供。デジタル世界のエストニア市民という仮想国家によって、自国経済を加速化させる試みも行っている。

また、シンガポールで着目すべきは、国土を丸ごと3D化した「バーチャル・シンガポール」。テクノロジーを駆使した未来の地図ともいうべきこの取り組みでは、土地や建物がすべて3D表示されるだけでなく、車の流れや建物の工事状況までリアルタイムに可視化できるようになるとされている。そしてこの情報は各省庁間で共有され、渋滞緩和や防災といった都市問題の対策にまで活用が構想されている。

行政のあり方にチャレンジする、DXオフィス

例えば前述のシンガポールでは首相府の元にGovTechという組織を設置し、民間からエンジニア、デザイナーを採用し、自前で行政サービスのデジタル化を実現する組織を置いている。米国ではオバマ大統領時代に大統領府直属のタスクフォースであるUSDS(United States Digital Service)に、Googleからトップを採用した。デジタルガバメントという概念を持ち込んだ先駆けであるイギリスも、キャメロン首相時代に首相府の元にGDS(Government Digital Service)を設置し、現地新聞社ガーディアンのデジタル部門トップをヘッドとして採用した。彼らはこれまでの行政のシステム開発を否定し、ユーザー視点に立ったサービスデザイン思考、小さくスタートしトライ&エラーの中でサービスを開発するアジャイル開発といった概念を行政サービスに持ち込んだ。

経産省もこういった海外の事例に学び、省内の業務プロセスの見直しからユーザーフレンドリーなサービスデザイン、開発、運用、データの利活用までを省内で一貫して実現を目指す。こうした中、この夏、これらを組織的に推進するデジタル・トランスフォーメーションオフィス(DXオフィス)を設置したのだ。

DXオフィスでは経産省CIOをヘッドに省内の関連部署が連携する体制を整備し、業務プロセスの見直しからシステム化、データの利活用までの仕組をトータルでデザインしていく。加えて、民間のITシステム開発やコンサルティング経験者をチーム内に抱え、行政官とIT専門家のハイブリッド体制を取る。

この取組はまだスタートラインに立ったに過ぎない。小さく始め大きく育てる、失敗から学び改善するプロセスを繰り返す、ユーザーにとって本当に使いやすいものを追求するといったカルチャーをDXオフィスから醸成し、デジタル化を実現するだけでなく、経産省のあり方自体を変革していく。