DX-#02 2018/09/28 書類のハンコも郵送も不要。デジタルでデザインされた経産省の「IT導入補助金」

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行政の手続きに対し、「面倒くさい」「時間がかかる」といったイメージを持っている人は少なくないだろう。実際に今でも、紙の資料や対面での手続きが当たり前に行われている。国民にとってフレンドリーなサービスを提供しているとは言い難い状況だ。

インターネットやスマホが普及し、便利なサービスが多数生まれるなか、政府もデジタル化を進めなければいけない。経産省では、「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」による行政サービスの向上や、データに元づく政策立案に向けて積極的に取り組んでいる。

前回の記事では、経産省に新たに設置された「デジタル・トランスフォーメーションオフィス(DXオフィス)」について紹介した。「コンセプトはわかった、宣言だけでなく具体的な取り組みを知りたい」「実際にどう変わるのか」といった声もあるかもしれない。今回は、実際にデータ活用までを見据え、ユーザーフレンドリーな形でデジタルを活用して補助金申請のプロセスを見直した事例として「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」を取り上げる。

同制度におけるデジタル化のプロセスや、具体的な効果、今後の展望について、商務・サービスグループ サービス政策課 課長補佐の斉藤雅彦、同 総括係長の平川怜奈に話を聞いた。

紙の書類は廃止。申請にかかる負担を軽くする。

「IT導入補助金」は、中小事業者の生産性向上を後押しするため、ITツールの導入支援にかかる費用を一部支給する制度だ。

初回の平成29年度の申請数は約1.4万件、二回目となる今年は予算も大幅に増額され、10万件の申請を受け付けている。これだけの数の申請を紙の書類で受け付けるとなれば、その作業は膨大だ。

斉藤 「通常の補助金は、事業者が書類を郵送した後、事務局がその内容を手動で入力する必要がありました。また、書類に不備があると再提出を依頼しなければならず、採択までの時間が伸び、省内の担当者と事業者の双方にとって、大きな負担となっていました。 IT導入補助金は他の補助金制度に比べても、申請数の規模がかなり大きい制度です。今年度は昨年の比にならない数が見込まれていたため、素早く採択を行えるよう、簡略化とデジタル化といった手続きの効率化が急務でした。」

IT導入補助金をデジタル化する上で彼らがまず着手したのが紙書類の廃止だ。今年度はIT導入補助金のウェブサイト上で各事業者がアカウントを発行し、マイページから申請を行えるようにした。ウェブサイトから申請ができるようになったことで、書類の郵送はもちろん、捺印さえ不要になった。

申請のプロセスにとどまらず、入力する内容も可能な限り簡略化し、申請の手間も削減した。

平川 「設問の数は最低限に絞り、基本的には選択式にしました。自由記載があると、申請に時間がかかったり、どんなことを記載すればいいのか戸惑われたり、完了までに踏むステップが増えてしまいます。これまでは同じ内容を複数の書類へ転記する部分も多かったのですが、自動入力を駆使してなるべく二度手間を減らす仕組みも整えました。」

自動入力が可能な点も、デジタル化による恩恵だと言える。デジタル化に取り組み、申請の方法を変更した結果、事業者の負担が軽減されただけでなく、申請書に不備があるケースも目に見えて低下した。初めてで不慣れな事業者でも、申請内容の不備の修正やそのための窓口とのやりとりに煩わされることがとても少なくなったという。

平川 「申請内容の入力段階で不備があればアラートが表示されたり、軽微な書類の不備については差替えが郵送ではなくアップロードで済ませられるなど、不備が発生する可能性を抑えつつ、アフターフォローの時間を短縮も短縮できました。 実際、昨年度の3割を超えていた不備率は、今年度1割程度にとどまっているという成果も出ています。1万件規模で1割という不備率は、他の様々な補助金制度と比べてもかなり低い数値です。不備率が少ない分、公募を締め切ってから交付決定までの期間も短縮でき、通常よりもかなり短い期間で採択までつなげられるようになりました。」

デジタル化が可能にする最適な政策立案

デジタル化の見据える先は、申請プロセスの効率化だけではない。今後は膨大な情報を分析し、社会の実情をより政策に反映する一助としていく。

斉藤 「同制度では、採択された事業者からITツール導入後の売り上げや労働時間の効果報告をいただき、生産性の向上を定量的に測定します。この分析結果を公表することにより、業種やニーズに合わせたツール選択を中小事業者が行うことへの一助となると考えています。 今後、経営状況や抱えている課題、利用しているITツール、生産性の上がり幅など、様々な情報がデジタルで蓄積されていきます。これまで紙で保管されてきた情報がデジタル化することで、より迅速な分析が可能になる。業種ごとに共通して抱えている課題の洗い出しや必要な支援としての補助金制度の検討など、定量的なデータをもって次なる施策につなげていけるのではないかと期待しています。」

経済省では、他にも様々なDXの取組みが進められている。
利用者に寄り添う行政サービスのための改善、そして経産省自体の変革の動きを今後も発信していく。