経済産業省
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審議会・研究会

企業価値研究会(第2回)  議事要旨

  1. 日時:平成16年9月28日(火)16:00~18:00

  2. 場所:経済産業省本館17階西6第1特別会議室

  3. 出席者:神田座長、安達委員、石綿委員、梅本委員、大澤委員、大杉委員、久保田委員、佐山委員、柴田委員、武井委員、寺下委員、西川委員、八田委員、八丁地委員、藤縄委員、堀井委員、松古委員、松田委員、村田委員、柳川委員、他

  4. 議題:日本企業の現状認識

  5. 議事概要:

    はじめに事務局より、日本企業の敵対的M&Aに関する実態調査結果を紹介。続いて、産業界の各委員から各々の問題意識について説明。産業界の各委員の問題意識及びその後の討議における主な意見は以下のとおり。

    <問題意識>

    【敵対的M&Aに対する脅威が増大している背景】

    • 金融機関との持合が解消し、安定保有比率の低下する一方で、外国人持株比率は上昇。
    • 株式での価値向上が王道と考え、努力しているが、経営者が算定する企業価値に比較し、現実の株価はなかなか上がらない。
    • 会社法現代化は、直接的には敵対的M&Aを促進させることはないが、間接的な関係はある。
    • グループ経営の形態を取る企業は、親会社を買収すれば上場会社を含めた多くのグループ会社を取得できる。また、キャッシュリッチな経営や、多角化経営によりコングロマリットディスカウントの状態になっている企業も買収のおそれがある。
    • 大株主に信託口が入ることで見えない株主が増加している。また、巨大ファンドは経営陣の想像を超えた提案を行ってくる。
    • 世界的に大規模な組織再編が進んでおり、日本も特別でないと感じている。アジアに強い日本企業とのマッチングを狙ってM&Aをかけてくる欧米企業が存在し、更に中国・韓国からも買収者が出てくることも考えられる。
    • 事業のグローバル化や研究開発投資の増額への対応を目的としたM&Aや技術力・顧客網などについてのシナジー効果を狙ったM&Aも考えられる。

    【敵対的M&Aによる弊害】

    • 短期的利益や増配を目的とした敵対的M&Aをかけられた場合はもちろん、平時から敵対的M&Aに対して意識することで、研究開発を含む長期的なビジョンに基づいた経営はとりにくい。またコストシナジーの追求を放置しがちになる。
    • 敵対的M&Aの場合、買収者が投資の回収方法や買収のプロセスを示さないことが多いが、株主は市場価格より高い、プレミアの付いたTOB価格が示されることで、企業の持つ真の価値よりも低い価格で株式を放出する可能性がある。
    • 買収により、急激に事業が方向転換したり、買収者との重複事業が売却された場合、地域経済や雇用にも影響を与え、顧客とのそれまでの長い関係を壊すことにも繋がりかねない。また、ブランド価値や目に見えない価値への弊害も考えられる。
    • 子会社や関係会社が狙われた場合、これらの企業の高い技術やノウハウが流出する。
    • 海外への技術や人材の過度の流出は、国民経済にとってもマイナスではないか。例えば、日本独自の高い技術を国が何らかの規制を設けて流出を防ぐ必要があるのではないか。
    • 敵対的M&Aでも全て弊害があるとは言えず、解体を目的とした買収などについてはどう評価するのか会社としても整理は困難。

    【現在の対策では敵対的買収への備えとして不十分な理由】

    • 時価総額向上のために入念なIRを行おうにも、現在では証券保管振替制度のために株主の常時把握が出来ない。
    • 会社の経営方針を理解して頂くよう、機関投資家や個人投資家に対して力を入れているが、研究開発の情報など企業情報を全て開示できる訳ではないため、効果があるのかよく分からず、IRだけで、時価総額の向上を図るのは難しいと感じている。
    • IRや株主資本政策については、長期的な予防策であるとは思うが、実際にTOBがかかった時には全く効果がなく、M&Aが多発する状況の中でIRだけで対抗しようとしても難しい。
    • 研究開発に係る安全性・有効性上の規制などから開発費用が高騰しており、増配や自社株買いに対して、資金を回すことができない。
    • 現在の対策では、買収者に、企業価値を上げるための経営戦略を提示させる合理的なプレッシャーにはならない。
    • 欧米の機関投資家やファンドは非常にアグレッシブであり、現状の対策程度では歯止めにならない。

    【新しい防衛策に関する検討・提案の有無及び導入を躊躇した理由】

    • 新しい防衛策について、弁護士、証券会社等とも議論を行ったが、会社法上の解釈が不明確なことなどから、あまり具体性のある提案はなく、本当に有効的か結論は出なかった。それぞれの企業が、それぞれの状況で対応するしかない。
    • 安定株主対策としてはグループ内での持合や事業会社、韓国や国内の友好的な同業他社との株式持合などの対策は行っているほか、従業員の株式保有比率を上げる努力も行っており、ESOPなども導入されれば活用したい。
    • 実際に買収を受けた場合のマニュアルを作成し、それをメンテナンスするという対策を行っている。

    【本研究会に期待する効果】

    • 欧米では防衛策導入を速やかに行えるインフラが整備されており、日本にないのはハンデキャップである。米国の判例分析もしっかりと行い、メガコンペティションを担保するため、このハンデキャップを解消する方策の検討が必要。
    • 現在の法制度でも可能な防衛策はあり、会社法の現代化により、さらに可能性は広がるだろうが、新しい防衛策に対する会社法上の解釈が不明確なことや、現状で対策可能だったとしても、総会決議が必要なのか、取締役会限りでできるのかなどの論点については明らかにすることが必要。その上で、合理的な防衛策で会社法のためにできないものがあれば、会社法の現代化に加えて欲しい。
    • 防衛策が増えることは歓迎すべきだが、レピュテーションリスクを解消するためには、「会社とは何か」、「守るべきものは何か」という論点の理論的な整理を行った上で、経営者を保護するのではなく、株主価値を高め、株主が納得する合法的、合理的な防衛策を示すことが必要だと思う。

    <自由討議>

    【三角合併制度について】

    • 三角合併制度は、両者の合意が必要な友好的M&Aを促進するための制度であり、敵対的M&Aが増加する直接的な脅威ではない。ただし、三角合併制度では、これまで完全子会社化を目的とした買収は全ての株主の合意が必要であったのに対し、まずTOBで2/3超の株式を取得すれば、あとは、少数株主の同意を得ることなく、完全子会社ができることになるので、間接的な影響はある。
    • 三角合併制度は完全子会社化を目指すフィナンシャルバイヤーを増大させる可能性が高い。

    【敵対的M&A防衛策について】

    • 100%買収目的なのか、グリーンメイルなのか、また、フィナンシャルバイヤーなのか、ストラテジックバイヤーなのか、それぞれに応じた防衛策を考えるべき。
    • 本研究会で検討する防衛策は敵対的買収を完全に防止するツールではなく、買収者が経営者と交渉するインセンティブを与えるためのツールであるということを確認したい。
    • 買収にかかる時間を引き延ばすだけで防衛策としては十分なのか。
    • 時間の確保は防衛策として必要な要素。ただし、それだけでは不十分。時間の確保に加えて、買収者に経営陣と交渉するインセンティブを与えることが重要。
    • 時間を確保すれば、その間に意見表明して本来の企業価値を示したり、買収者と交渉したり、ホワイトナイトと交渉することが可能になる。
    • 防衛策を導入して買収者が経営者と交渉するインセンティブを与えるとしても、現経営者が買収者と交渉するだけの経営判断能力があるのかチェックするルールは別途必要。

    【経営者の義務・立場について】

    • 日本で敵対的M&Aが行われない場合、逆にどのような弊害があるか議論すべき。敵対的M&Aがあるからこそ、経営者は緊張感をもって経営を行い、合理化が図られるのではないか。
    • 敵対的M&Aがなければ、経営陣に緊張感がなくなるという意見は真っ向から否定する。経営陣は敵対的M&Aがあろうとなかろうと、業績向上に向けて常に緊張感をもって経営を行っている。
    • 米国では、友好的なM&Aであっても、M&Aが起こると外部委員会ができて、現経営陣の意向は全く無視され、株主価値だけを考えたM&Aが進む。
    • 米国における外部委員会は、法的なものではなく、公正さを立証しなければならないという判例に基づいてビジネスルールとして確立しているもの。
    • 米国の裁判例で、適切な防衛策をとらなかったことが取締役の無作為として善管注意義務違反に問われた例はあるか。
    • 例えば、現在の株価が100で、経営陣が将来価値は200と考えていた場合において、買収者が500を提示し、さらに買収直後に資産を切り売りすると表明してきた場合、経営陣としてどのように判断すべきか。

    【投資家・市場について】

    • 日本の場合、割安な株価があってもそのまま放置されており、そういう意味では、敵対的M&Aが行われることで適正な株価に導かれるという考えもある。
    • 防衛策を導入せずに経営を行っていく企業と、防衛策を導入しながら経営を行っていく企業が併存するようなマーケットができるかがポイント。
    • ある海外の投資家は、日本市場は労使協調ができているため買収しやすいと言っている。
    • 日本の企業価値を正しく理解している海外の機関投資家が少ないため、日本のマーケット価値が上がらないのではないのか。
    • 逆に日本企業の株価は、PER、一株利益率で判断すると、米国企業に比べると現在でも割高ではないか。
    • 日本企業は、データから自社の理論価値というものを正確に把握しているが、それでもなお、割安と感じている。
    • 敵対的M&Aと株価は関係ないのではないか。株価は全体的な需給バランスで決定するものではないか。

    【その他】

    • 株主把握については、社債等の振替に関する法律の一部改正により、発行会社に正当な理由があれば、いつでも実質株主を把握できるようになる。
    • 会社法の現代化では、外資企業との直接株式交換は認めない方向で議論が進んでいる。合併対価の柔軟化は、友好的な合併を促進するためのもの。何か論点が出れば、スケジュールから可能かどうかはともかく、参考としたい。
    • 配当、自社株買いでキャッシュリッチを解消する活動はある程度行っている。しかしながら、成長曲線なのか成熟曲線なのかでアピールの仕方が異なってくる。まだ成長曲線であることを説明すれば、キャッシュリッチでも株主は納得してくれる。また、キャッシュリッチであれば設備投資やM&Aが機動的に行える。

以上

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