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審議会・研究会

グローバル産業金融研究会(第1回)  議事要旨

○冒頭、産業資金課長から、研究会開催に当たっての問題意識について説明。その後、各委員・オブザーバーから自己紹介があった後、自由討議が行われた。

発言の要旨は以下のとおり。

 

1.総論

○我が国企業がグローバルな生産ネットワークを構築する中、政府間では、関税、非関税障壁を撤廃するよう検討が進められている。一方で、企業は為替、金融リスク等への対応が迫られている。企業がこうしたリスクへ対応し得るよう、リスク管理のツールを増やしていくことが必要である。

産業界では、こうしたリスクへの対応を進めることが必要であるほか、金融機関は、企業ニーズを踏まえる形で、商品設計を進めていくことが重要。また、同時に企業、金融機関のリスク管理・商品設計の自由度を高めるような、為替管理、決済(クリアリング、セトルメント)等に係るインフラ整備も必要である。

○アジア域内で生産を行うメーカーでは、域内での部品のやり取りが増加している。モノの流通状況に対応した効率的資金手当てが事業戦略上のポイントとなっている。

○我が国には、優れた技術を有する中小企業が数多く存在する。こうした中小企業の一部はグローバリゼーションの波に上手く乗っている一方、乗り切れていないところも存在する。企業戦略上の問題も多分にあるが、金融面での限界がグローバリゼーションの制約となっているのも事実。

○中小企業の海外進出が活発化しているが、金融面での問題は無視し得ない。特に、中国、インド、ベトナムといった地域に進出する企業からは相談が多い。

 

2.アジアにおける日系企業の資金調達

(1)必要資金の調達

○自動車業界では、自動車の製造に止まらず、販売金融を同時に提供することが常識。アジアでも、販売金融の取扱いを始めつつあるが、そうした金融子会社の資金調達では、資金調達の多様化が課題。

○海外進出した中小企業の多くは、進出のための資金確保もさることながら、進出後のオペレーションに係る資金の調達についても厳しい状況。信用保証やABCP構想等の支援策にも関心がある。

○アジア進出企業への融資に際し、貸出上限規制が存在することにより、銀行として十分な資金が提供できていない地域が存在する。持ち込み資本に応じて1先当りの貸出額にキャップがかけられてしまう。こうした状況は、他の邦銀、外銀等も同様であり、企業が必要資金を現地で十分に確保できていない可能性もある。証券化等による代替手段に対する期待は大きい。

○アジア各国の債券市場の厚みが出てイールドカーブが形成されるようになれば、金利、為替の取引が活発化し、企業にとって、財務リスクのヘッジ手段が拡大するという効果が期待できる。

 

(2)資金の効率的管理

○アジア進出企業では、資金の効率管理を実現するため、邦銀のサービスに依らず、独自にCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入する企業が増えてきている。

○資金繰り管理について、地域ごとにコントロールセンターを設け、集中管理を行っている。アジアについては、シンガポールで行っているが、域内の金融制度、文化、宗教等が異なるため、なかなか効率的な資金管理システムを構築することは困難。

○アジアでは、CMSで対応できない部分については、金融機関等のサービスを活用することになる。資金の集中管理は、日中赤残等も発生することから与信行為である。したがって、日系企業の経営、信用状況を良く知っている邦銀に頼むことが効果的な面もある。邦銀に対しては、今後の更なるサービス提供に期待したい。

○アジア進出企業の金融リスクは、為替リスク、金利リスクはもとより、流動性(資金繰り)リスクが重要。特にアジアでは、様々な経済状況の変化に対応できるよう、慎重に取り組まなければならない。

○シンガポールでは、トレジャリーセンター関連法制が整備されている。しかし、現行タックスヘイブン地域に該当するため、連結ベースで国内実効税率が適用される。翻って、アジアの多くの国では法人実効税率は30%程度である。したがって、シンガポールを基点にCMSを行おうとすると税制のメリットが享受できない。他方、その他のアジア各国にトレジャリーセンターを置くと、税率のメリットは取れるが、クロスボーダーの送金・通貨規制が適用されるため機能しないというジレンマにあるのが実情。

 

(3)売掛債権の管理

○売掛債権のリスク管理も課題の一つ。自動車、電気機器等の製造メーカーでは、販売に関して現地の販売代理店と提携することが一般的。こうした販売代理店は、売上が増加すればするほど、販売額と回収代金の間に差が生じる。この結果、販売代理店は日系メーカーへの支払いサイトの調整により資金繰りをつけようとするが、メーカーにとっては信用リスク増加要因となる。しかし、メーカーでは、こうした信用リスク管理が現行不十分。金融機関は、ソリューション提供者としてファクタリングや保険等のソリューション提供について、検討を行っていく必要がある。

 

3.アジア企業の資金調達

○アジア進出する日系企業のうち、約100社程度は現地(シンガポール、マレーシア等)で上場している。また、中国企業は、香港、シンセンで上場した上で、日本市場を通り越して、欧米(ニューヨーク、ロンドン等)で資金調達を行う事が一般的。

○現在、アジア各国は貯蓄超過の状況となっているが、域内金融資産が有効に活用されているかは疑問。域内資金の効率的な資金循環を促すためには、金融関連インフラ整備と民間金融機関の努力が必要。

○東京証券取引所の役割も重要となってくる。昨今、取引所間の提携が話題となっているが、東証の役割についても再考を迫られる時期に来ている。

○アジア域内の個人金融資産について、如何なる形態で金融資産を保有し貯蓄・投資を行っているのか注視する必要がある。

○アジア企業が債券や株式で資金調達を行う際、アレンジャーとなる金融機関からは、「日本にカネがあるのは分かるが、制度面でイレギュラーな面がある」ため日本での調達に抵抗があるとの指摘を受けることが多い。日本国内のリスクマネーを上手くアジア企業の成長に活用し得るような制度整備を行っていく必要がある。

 

4.アジア特有の金融制度

○企業は、イスラム金融について今後認識を高めていくことが重要。台湾企業等はイスラム金融を活用して、資金調達を行っている。また、イスラム金融を活用した、日本国内への投資も見られ始めている。

○イスラム金融は日本人が思っている以上に、アジア域内では大きなプレゼンスを占めている。インドネシアは世界最大のイスラム圏であるし、マレーシアもイスラム金融を通じて、オイルマネーを取り込みはじめている。

○アジア域内で展開する企業にとって、資金調達手段の一つとしてイスラム金融の可能性はある。しかし、現状日系企業にとっては、円の調達コストが低いほか、イスラム金融は十分成熟していないため取引コストが高く、今すぐ日系企業が活用するという段階ではない。

もっとも、現地通貨建てで調達できれば、為替リスクが排除できるため、進出先での資金調達の一部にイスラム金融が組み込まれることはあり得るだろう。

 

5.アジア域内のクロスボーダーM&Aと国際キャッシュフロー

○日本の企業、金融機関のアジアでの活動が活発化する中で、域内M&Aの動向については注視する必要がある。欧米では2000年前後、クロスボーダーM&Aが増加したが、その際、国際資金フローも大きく影響を受けた。アジア域内でM&Aが進めば、必然的に資金フローに変化が見られるだろう。

○足下10年程度、日本企業が業務の選択と集中を図ってくる中で、日本企業の不用部門をアジア企業が買収するM&Aが盛んに行われてきた。もっとも、ここにきて日本企業の活力が復活し、グローバル展開が進む中で、逆に日本企業がアジア企業を買収するという事例が増えてきている。


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