計量標準FAQ(全般)
全般
測定に関すること
A-1 全般
Q1. 正しく測定するためには、何が重要ですか。
A1. 測定の正確性を確保するには、測定器の正確性と測定方法の適切性の双方を確保していくことが重要です。 測定器の正確性を確保するためには、測定器の利用者は、測定器の購入時に、目的に合った信頼性ある測定器を選択するとともに、測定器のメンテナンスとして、定期的な保守点検、校正が必要です。 また、測定法の適切性を確保するためには、試験サンプルの採取、分析手順、試験結果の整理等を定めた公定法に基づき、正しく測定を実施することが必要です。
(1)測定器の校正の重要性
我が国では計量法に基づき、事業者、個人の様々な活動を支える基盤インフラとして、幅広い分野における正確な計量を確保するため、計量の標準となる特定標準器や特定標準物質を国家計量標準として定めています。
【国家計量標準とのつながりにより正確な計量を確保】
計量法の校正制度は、これら国家計量標準につながる校正が維持される仕組みであり、測定器の精度を維持するために必要なものです。測定に関する校正において、国(経済産業大臣)に登録された事業者は、独立行政法人製品評価技術基盤機構のホームページのデータベースから検索することができます。
計量法の校正制度は任意のものであり、国家計量標準につながる校正を受けるか否かは、事業者、自治体等利用者の判断によります。測定器を購入された製造事業者等に御相談ください。
【計量法に基づく校正の流れ】
(2)測定器の正確性の確保
測定器の利用者は、測定器の購入時に、目的に合った信頼性ある測定器を選択することが重要です。測定器は、センサーの経年劣化や電子回路等の不具合などにより、正しい測定値が得られない場合があることから、測定を実施する者は、日常の点検の他に、定期的な保守点検や校正が必要とされています。
(3)測定方法の適切性の確保
測定方法の適切性については、規制・基準等で定められている公定法等に基づき、測定を実施してください。
Q2. JCSS制度について、教えてください。
A2. JCSS (Japan Calibration Service System):計量法トレーサビリティ制度は、計量法に基づき、日本の計量計測システムの根幹となる計量標準供給制度と校正事業者登録制度から構成されています。
- 計量標準供給制度
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国立研究開発法人産業技術総合研究所は、日本唯一の国家計量標準機関として、国家計量標準の設定のため、研究開発から整備、供給に至る一連の業務を行っています。
製造現場、研究機関、自治体等の事業活動、国民生活の中で利用される様々な測定器を製造、保守点検する上で、基準となる計量標準は欠かせない存在でありますが、国家計量標準は、日本で一つしかなく、測定器を製造する事業者や保守点検を実施するサービス提供者が、直接、国家計量標準を使用することはできません。そのため、それらの事業者に対して、国家計量標準に繋がるトレーサビリティが確保された2次標準、3次標準の供給が必要となってきます。実際に利用される測定器と国家計量標準との繋がり(トレーサビリティ)を確認する上で、重要な役割を果たすのが、校正という技術であります。
- 校正事業者登録制度
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測定器の校正又は標準物質の値付けを行う者(校正事業者)は、国家計量標準と測定器を繋ぐ信頼性の確保に努めることが必要であり、校正技術と設備を有することが審査で認められた事業者のみ(ISO/IEC17025の要求事項を満たしている者)が国に登録され、校正証明書の発行など校正業務を行っています。
計量法に基づく校正事業者登録制度は、国に代わり、独立行政法人製品評価技術基盤機構が審査・登録を行っています
計量法に基づく本登録制度は任意の制度であり、国に登録された事業者が行う校正証明に強制力はなく、ISO9001やISO/TS16949のように、国家計量標準とのトレーサビリティの確保を求められる取引・証明等の分野において利用されています。
なお、登録される事業者への要求事項は、国際標準化機構及び国際電気標準会議が定めた校正機関に関する基準であるISO/IEC 17025:JIS Q17025と同等であり、登録された事業者が発行する校正証明書は、ISO/IEC17025の認定事業者の証明書と同等、国際的な取引・証明においても通用するものです。(全ての登録事業者がMRA対応事業者ではありません)
A-2 トレーサビリティ
Q1. 測定におけるトレーサビリティとは何ですか?
A1. ある測定器が国家計量標準に繋がっていることを確認する校正の連鎖のことを言います。
現場で利用される測定器は、より正確な(不確かさがより小さい)目盛を持つ標準器によって校正されています。更に、その標準器は、外部の登録校正事業者が有する、より正確な標準器によって校正され・・・、というような、校正の連鎖により正確な標準器を求めていく、最終的には国家計量標準に辿り着きます。不確かさがすべて評価された切れ目のない比較の連鎖によって、決められた基準に結びつけられる測定結果又は標準の値の性質がトレーサビリティとなります。
Q2. 日本の国家計量標準のトレーサビリティ体系について教えてください。
A2.JCSSで提供されるトレーサビリティ体系の概要は、区分ごとには次のようになっています。
それぞれの図中、濃いピンク色の矢印で示されている校正サービスにはJCSS標章/JCSS認定シンボルがついた校正証明書が発行されます。
Q3. お客様からJCSS校正証明書だけでなくトレーサビリティ体系図の添付が求められました。
どうしたらよいですか。
A3.JCSS校正証明書は、国家計量標準とのトレーサビリティを確保するものであり、お客様から、例えばISO9001の要求事項として、国家計量標準との関係の確認のために求められるのであれば、校正証明書のみの提出で問題なく、トレーサビリティ体系図の提出は必要ありません。
なお、上記の目的以外で、お客様からトレーサビリティ体系図が求められる場合、当事者
の取引・証明となりますので、提出が必要となる場合もあると思います。
JCSS校正証明書に記載されている内容の説明
Q4. QMS審査員にJCSS校正証明書の意味をどのように説明すればいいでしょうか?
A4.認定センターでは審査登録機関や審査員研修機関に向けて、トレーサビリティに関する説明会を適宜開催しており、各機関内での周知をお願いしています。個別のQMS審査員にもこちらの資料を提示して説明してみてください。
A-3 不確かさ
Q1. 不確かさとは何ですか?
A1.何かを測定しているとき、一つ一つの測定器の読み値(観測値)が少しずつ異なっていることがあります。観測値が同じ値にならず、ばらついているわけです。観測値にいろいろな補正をしたり、平均値をとるなどのデータ処理をして、一つの数字にまとめます。測定結果としては測定値という数字を報告します。
測定値を見ても、一つの数字になっていますから、そのもとになった観測値がどの程度ばらついていたか分かりません。測定の結果を報告するときに、測定値という数値と一緒に、ばらつきの大きさを報告すれば、それが分かります。それが分かれば、そのばらつきの範囲の中に、測定される量の本当の値があるだろうと思えるわけです。
ばらつきが小さいときには精密であるといい、測定値は精密な測定の結果であることが推定できます。一方、ばらつきが大きいときには、測定値は精密な測定の結果ではなく、その信頼性は低くなります。もともと、測定はその結果を利用して、何らかの判断をしたり、アクションを取るためのものです。信頼性の高い測定値は安心して使えますが、信頼性の低い測定値の場合には、例えば、関連の情報を集めたり、他の測定値を集めて総合的な判断に持ち込むとか、その測定値は注意しながら使うことになります。
ばらつきの大きさも数値として表現することができれば、定量的な判定がより容易になります。直観的には、測定値のばらつきの大きさを数値で表したものが「不確かさ」です。
ここで、「測定値のばらつきの大きさ」といったのですが、ここで「ばらつき」は英語の“dispersion”を直訳したものです。ここでいうばらつきには、データが変化するという様な目に見えるばらつきだけでなく、我々の知識のあいまいさによって不確かになっている部分があります。例えば、使用している物理的な定数のあいまいさや補正値のあいまいさなども含むことになります。ここは表現が難しいところですが、もとになるデータの変化やもとになる知識のあいまいさによって、測定値があいまいさを持っており、そのあいまいさを数値で表した「拡がり」が不確かさである、ということができます。
Q2. 不確かさの見積もりについて教えてください。
A2. ISO/IEC 17025 5.4.6.1項では、「校正機関又は自身の校正を実施する試験所は、すべての校正及びすべてのタイプの校正について測定の不確かさを推定する手順をもち、適用すること。」と定めており、計量計測トレーサビリティの中核を担う校正機関において、測定の不確かさを推定することは必須となっています。測定の不確かさを推定するためのガイドとして、 JCSSでは校正方法及び不確かさの見積もりに関するガイドを作成し公表しています。また、不確かさの初心者向けに不確かさの入門ガイドも公表しています。詳しい内容は、それぞれの文書をご覧ください。
また、NMIJでも不確かさに関する情報を紹介しているページ(不確かさWeb)がありますので参考にしてください。
A-4 校正
A-4-1 校正全般
Q1.定期的な計測器の確認において、校正・検証・調整の違いがよく分からないのですが。
A1. 「校正」とは基準とする計量器と比較して(被校正対象である)計量器の指示値がどの程度ずれているか確認することであり、その信頼性を表す尺度として不確かさが明示されます。
「検証」とは基準とする計量器とのずれが例えばJIS規格などの規定された範囲内にあるかを確認することで、通常、合格又は不合格をいう判定がなされます。
「調整」とは、校正や検証の結果、基準とする計量器とのずれが大きい場合に所定の指示値を示すよう計量器に調整を施すことをいいます。
なお、ISO/IEC GUIDE99 :2007 では、次のように定義されています。
校正(calibration)
指定の条件下において、第一段階で、測定標準によって提供される測定不確かさを伴う量の値と、付随した測定不確かさを伴う当該の指示値との関係を確立し、第二段階で、この情報を用いて指示値から測定結果を得るための関係を確立する操作。
検証(verification)
与えられたアイテムが規定された要求事項を満たしているという客観的証拠の掲示
例1 対象とする任意の標準物質が、当該の量の値及び測定手順に対して、質量10mgの測定試料まで均質であることの確認
例2 測定システムが性能特性又は法的要求事項を満たしていることの確認
例3 目標測定不確かさを満たすことができることの確認
調整(adjustment)
測定しようとする任意の量の値に対応して所定の指示値を示すように、測定システムに施す一連の操作
Q2. ISO/IEC17025の要求事項と校正との関係について教えてください。
A2. ISO/IEC17025は、国際標準化機構(ISO)によって策定された、試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項(General requirements for the competence of testing and calibration laboratories)の国際標準規格です。詳しくはNITEのホームページをご覧ください。
A-4-2 計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)
計量法に基づく校正事業者登録制度は、国に代わり、独立行政法人製品評価技術基盤機構が審査・登録を行っています。詳しくは、NITEのホームページにおいて、校正事業者に関するFAQがありますので、くわしくはそちらをご覧ください。
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