100選運営委員・サポーターに聞く!
~ダイバーシティ経営の実践~

昨今、女性をはじめとする多様な人材の活用が叫ばれているとはいえ、ダイバーシティ経営の導入に躊躇している企業も少なくありません。
対談2回目のゲストは、『ダイバーシティ経営企業100選』運営委員で(株)リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 所長の大久保幸夫氏と、(有)インフィニティ代表取締役の牛窪 恵氏。日本企業のダイバーシティ経営推進を阻むハードルと乗り越える意義について語っていただきました。

ダイバーシティ経営推進を阻むもの①
人材獲得にあたっての大企業と中小企業の格差

大久保
リーディングカンパニーと呼ばれながらいまだにダイバーシティ経営に取り組んでいない大企業にその理由を聞くと、決まって出てくるのが「そこまで困っていない」という言葉です。つまり、今のままでも優秀な男性社員を採用できている。女性や高齢者を活かすまでもないし、外国人にしても、海外支店では採用しても日本の本社には必要ない。そんなことをしなくてもグローバル化への対応はできるというわけです。
牛窪
そうなんです。大企業にとって、そうした意識がダイバーシティ経営推進の大きなハードルになっていますね。
大久保
ところが逆に、中小企業は優秀な男性社員がなかなか採用できません。だから女性や高齢者、障がい者や外国人なども戦力になるのならば、ということで採用するわけです。
牛窪
結果として“無意識のうちに”ダイバーシティ経営を行っていますね。
大久保
ええ。でもそこにもまた問題があるんです。男性の正社員と違って、女性や高齢者は男性とはそれぞれ生活環境や生活形態が違います。そういった人たちをひとつの組織内でマネジメントするには相応のテクニックが必要になってくる。しかし中小企業にはそのテクニックがないケースが多く、そのために多様な人材を採用しても結局は失敗してしまうんです。
牛窪
「困っていないから必要ない」大企業と、「必要があっても活用できない」中小企業――そうした両極端な状況も、ダイバーシティ経営の推進を阻んでいる大きな原因だと言えますね。

ダイバーシティ経営推進を阻むもの②
女性に対する期待の低さ

――そうした現状を変えていくにはどうしたらいいのでしょうか?

大久保
もう、力ずくでやるしかない。女性の管理職登用を例にしてみましょう。
日本では働いている人の40%以上が女性ですが、女性の管理職比率をみると課長相当以上は民間全体で7%程度という状況です。海外と比較しても圧倒的に低い。だからこの際、女性管理職比率を10%以上にするところまでは、目標値を決めてやってしまったほうがよいと思うんです。もしくは期限を決めて、10%目標を満たさない企業は社名を公表するといった方法も含めて、ある程度までは女性の管理職登用を推進するべきだと思います。

――ある意味、強制してでも動かしたほうがよいということですか?

大久保
ひとつの考え方ですが。厚生労働省の調査などを見ると、企業が女性を管理職に登用する際の問題として「管理職に相応しい経験や判断力を持っていない」という声が上位に挙がっています。しかし実際は、入社以来、女性にそういった経験をさせていない。つまり最初から管理職になることを期待していないんです。
牛窪
そうですね。期待されなければモチベーションだって下がってしまいます。せっかく能力があっても発揮できず、開花せずに終わってしまうかもしれません。それを解決するには、まず上司が女性の部下を信頼することです。ただそこには相応のリスクが伴いますから、上司の側にも自信と覚悟が求められます。しかし信頼され、期待されれば、人はそれに応えようと頑張ります。その中から非常に優秀な女性管理職が出てくる可能性も高いと思います。
大久保
そうした自信がない経営者や上司が多いからこそ、まずは一歩踏み出させることが必要なんじゃないかと思います。

――女性に期待しないという旧来の日本企業の慣習が、ダイバーシティ経営推進を阻む原因のひとつになっているのですね。

牛窪
私はここ数年、複数の企業、しかも競合企業が合同で参加するマーケティング研修の講師を行っており、そこで実際に商品の売り場に赴き、顧客の定点観測を行います。すると参加者のみなさんは、ターゲットとなる人が何を考え、どのような行動をとっているか考えていなかったことに気付くんです。そして研修後は、自分以外の環境や考え方の人に思いを馳せることができるようになる。これはまさにダイバーシティの基本的な考え方です。このように、女性に対してだけでなく、自分と違う価値観を持つ人を認め、受け入れる。ダイバーシティ経営の推進にはそうした姿勢が不可欠だと思います。
大久保
企業の経済活動で、多様な人材をもっとも活用すべき分野はマーケティングでしょう。例えば家庭用品メーカーの場合、市場調査の対象は主婦が圧倒的多数を占めます。そのため男性よりも女性担当者を中心に調査を行うほうが間違いなく効果が上がります。また“おいしい”、“きれい”、“おもしろい”といった嗜好性は、消費者の性別や国籍などによって大きく異なります。そのため、消費市場に近い価値観をもった人材をマーケティングに活用することは、企業の経営戦略として非常に有効な手段になるのです。
牛窪
日本の企業の多くは、まだマーケティング業務に多くの資本を投下していませんが、ダイバーシティ経営のためにも、人材にマーケティングの視点を身につけてもらうことが重要になりますね。
大久保
多様な人材活用のためには、企業がマーケティングに限らず、ファイナンスも含めた経営マネジメント全般のトレーニングをする機会を社員に均等に提供する必要があるでしょう。

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