経済産業省
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日本のエネルギーのいま:安全性の向上

 エネルギー政策の推進にあたっては、何よりも「安全性」=「S」が最優先です。原子力発電については、福島の事故の教訓を踏まえ、規制基準や防災対策・避難対策を抜本的に強化し、施設の安全性の向上はもとより、住民の方々の安全・安心の向上に努めています。
平成27年8月、鹿児島県の川内(せんだい)原発1号機が、国内の原発としては約2年ぶりに、原子炉を起動し発電を開始しました。そこで、原子力発電所の安全性の向上へ向けた取組をはじめ、原子力発電所の再稼働に関する政府の方針、取組を紹介します。

1.原子力発電に関する政府の方針

原子力は、エネルギー基本計画において、低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源と位置づけています。
その上で、原子力発電所の再稼働については、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進めることとしています。

2.安全性向上に向けた取組:新規制基準の導入

福島の事故の反省と教訓を踏まえ、原子力規制委員会が設置され、世界で最も厳しい水準の新規制基準が定められました。
これは、諸外国の規制基準や、地震・津波など我が国固有の自然条件の厳しさも勘案して策定されたものです。事故防止の対策の強化のみならず、万一重大事故が発生した際に備える対策も導入しています。
具体的には、以下の原子力規制委員会のホームページをご参照ください。

福島第一原発における教訓

  • 福島原発事故では地震や津波などの共通要因により安全機能が一斉に喪失しました。
  • その後のシビアアクシデントの進展も食い止めることができませんでした。

外部・内部電源の喪失で安全機能の一斉喪失。シビアアクシデントの進展は冷却停止、炉心損傷、水素発生、水素漏洩。

福島第一原発の教訓を踏まえ、新規制基準に基づいてA~Eのような課題に対応した具体策が講じられています。

具体策AからEは後述

A:地震や津波などに対する耐性強化

  • 既往最大を上回るレベルの津波を「基準津波」として策定し、基準津波への対応として防潮堤などの津波防護施設等の設置を要求しています。
  • 津波防護施設等は、地震により浸水防止機能等が喪失しないよう、原子炉圧力容器等と同じ耐震設計上最も高い「Sクラス」を要求しています。

<津波対策の例(津波防護の多重化) >

○津波防護壁の設置 (敷地内への浸水を防止)
○防潮扉の設置(建屋内への浸水を防止)

B:長時間の電源喪失の防止

新基準と従来の基準との比較(電源)
  従来 新基準
外部電源 2回線
(独立性の要求なし)
2回線
(独立したものを要求)
所内交流電源 恒設2台
(非常用ディーゼル発電機)
左記に加え、恒設1台を追加。また、可搬式(電源車)2台も追加し、7日分の燃料を備蓄。
所内直流電源 恒設1系統
(容量は30分)
左記の容量を24時間に増強。また、可搬式1系統及び恒設1系統を追加(いずれも24時間分)

※上記の他、電源盤等についても共通要因で機能喪失しないことを要求

高台への電源車の配備(可搬式交流電源)

外部電源系の強化(独立した異なる2以上の変電所等に2回線以上の送電線により接続)

C:炉心損傷防止対策

  • 万一共通原因による安全機能の一斉喪失などが発生したとしても炉心損傷に至らせないための対策を要求しています。
    (例1)電源喪失時にも可搬式電源等により逃がし安全弁を解放し、可搬式注水設備等による注水が可能となるまで原子炉を減圧(BWRの場合)。
    (例2)原子炉を減圧後、可搬式注水設備により炉心へ注水。

前の箇条書きで説明

D:格納容器破損対策

  • 炉心損傷が起きたとしても格納容器を破損させないための対策を要求しています。
    (例1)格納容器内圧力及び温度の低下を図り、放射性物質を低減しつつ排気するフィルタ・ベントを設置(BWRの場合)。
    (例2)溶融炉心により格納容器が破損することを防止するため、溶融炉心を冷却する格納容器下部注水設備(ポンプ車、ホースなど)を配備。

前の箇条書きで図を説明

E:放射線物質の拡散抑制

  • 格納容器が破損したとしても敷地外への放射性物質の拡散を抑制するための対策を要求しています。
    (放射性物質のプルーム(大気中の流れ)を防ぐための屋外放水設備の設置)

 
対策イメージ(大容量泡放水砲システムによる放水)

(画像の引用) 平成23年度版消防白書 http://www.fdma.go.jp/html/hakusho/h23/h23/html/2-1-3b-3_2.html外部リンク

3.原子力防災対策・避難対策の強化

福島原子力発電所事故の教訓を踏まえ、原子力規制委員会が作成した「原子力災害対策指針」では、原子力災害対策の重点区域を、原発から概ね30kmまで拡大しました。(従来は、8~10km)
原発から概ね5km圏を、「予防的防護措置準備区域(PAZ)」、概ね5~30km圏を「緊急的防護措置準備区域(UPZ)」とし、それぞれ距離に応じた事前準備を行います。
災害対策基本法に基づき、30km圏を含む関係自治体は、地域防災計画(含、避難計画)を作成します。
計画の作成に際しては、国の関係省庁が、関係自治体の取組を全面的に支援するとともに、自治体が作成した避難計画を含む「緊急時の対応」については、国の関係省庁、関係自治体で、具体性や合理性を確認することとしています。

地域防災・避難計画について 

  • 「安全神話」に陥らず、原発事故が万一発生した場合に備え、原子力災害への対応を具体的に計画しておくものです。
  • ①災害対策基本法及び②原子力災害対策特別措置法を根拠に策定されます。
  • 福島第一原発事故の教訓を踏まえて、高齢者等も含めた住民が迅速に避難できるよう、避難計画についてもきめ細やかに整備することとしています。
  • 避難計画は地域の実情を熟知する自治体が中心となって一義的には策定しています。一方で、国は、万が一事故が起きた場合に、責任を持って対処するべく、自治体の範囲を超える広域調整や、自衛隊等の実動機関の派遣を実施しています。
  • 国と自治体が協力して計画の充実を図るため、原発所在地域ごとに関係省庁、関係自治体等が参加する「地域原子力防災協議会」を設置し、避難計画の具体化・充実化を進めています。
  • その上で、IAEAの国際基準や原子力災害対策指針などに沿った「具体的で合理的」なものであることを詳細に確認し、総理大臣が議長を務める原子力防災会議で、国として了承することとしています。
    1. 立地自治体等と協力して、地域防災・避難計画の充実を支援
    2. 要支援者対策や避難先施設、移動手段・ルートの確保等で関係省庁が主導的に対応
    3. 実働機関(自衛隊、警察、消防、海保)も参加し、協力体制を構築

前の箇条書きで図を説明

4.原子力発電の自主的な安全性向上の取組の促進

東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓の一つは、関係者が、規制基準さえ満たせば事故のリスクはなくなるという「安全神話」に陥っていたことにあります。
「安全神話」と決別するためには、規制を強化するというアプローチに加えて、「安全文化」を根付かせ、原子力に関わる全ての関係者が、自らの意思で世界最高水準の安全性を求め、安全の高みを目指していくという姿勢に変わる必要があります。
ここでは、事故後に進められている、原子力発電の自主的な安全性向上の取組を紹介します。

原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ

  • 原子力の自主的な安全性向上に向けた取組は、政府も含めた原子力産業に関わる者の自発的な行動により具体化され、実践されていくべきとの問題意識の下、昨年7月より、総合資源エネルギー調査会「原子力の自主的安全性向上に関するWG」(座長:安井至 (独)製品評価技術基盤機構理事長)を開催。

原子力の自主的・継続的な安全性向上に向けた提言(平成26年5月30日)

  1. 適切なリスクガバナンスの枠組みの下でのリスクマネジメントの実施

    (経営トップのコミットメント、原子力安全推進協会のピアレビューの効果引き上げ、科学的論拠に基づく産業界の意向の一本化等)

  2. 東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を出発点に実践が求められる取組
    • (1) 低頻度の事象を見逃さない網羅的なリスク評価の実施
      (外的事象も含め対象としたPRAを実機データを用いて実践、原子力リスク研究の人的、知的蓄積を集約した主体を構築等)
    • (2) 深層防護の充実を通じた残余のリスクの低減
      (設計によるリスク低減、メーカーからの提案検討、リスク情報の共有等)
    • (3) 我が国特有の立地条件に伴う地震・津波等の外的事象に着目したプラント毎の事故シーケンス及びクリフエッジの特定と、既存のシステムでは想定されていない事態への備え及び回復を含むレジリエンスの向上
      (ソフト面でのシビアアクシデントマネジメント対策、緊急時対応をマネージできる人材の育成等)
    • (4) 我が国で商業運転されている軽水炉の更なる安全性向上のための研究の再構築と国内外関係機関との調整の強化
      ( 政府が場を設け、軽水炉安全研究ロードマップの策定、規制・推進側の共同研究等)
  3. こうした取組を着実に進め、根付かせるために特に求められる姿勢
    • (1) 批判的思考や残余のリスクへの想像力等を備えた組織文化の実現
    • (2) 国内外の最新の知見の迅速な導入と日本の取組の海外発信
    • (3) 外部ステークホルダーの参画
    • (4) 産業界大での人的・知的基盤の充実
    • (5) ロードマップの共有とローリングを通じた全体最適の追求
      (政府は当面、ロードマップについて関係者間で調整を行う場を設ける)

自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループ

  • 平成26年9月より、自主的安全性向上・技術・人材WG(座長:山口彰 東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授)において、電気事業者、メーカー、産業界団体等を招聘し、原子力の自主的安全性向上の取組実態を聴取するとともに、活発な議論を実施。
  • 平成26年5月に「原子力の自主的・継続的な安全性向上に向けた提言」が示されてから約1年の間に、電気事業者、メーカー、産業界団体、学会、政府等により、原子力の自主的安全性向上の取組がどのように進められてきたかを総点検し、横断的な課題や各主体の取組の改善点を示す「原子力の自主的安全性向上の取組の改善に向けた提言」の取りまとめを実施。

原子力の自主的安全性向上の取組の改善に向けた提言(平成27年5月27日)

原子力の自主的安全性向上の取組の総点検の結果、良好事例とされたこれまでの取組

  1. 四国電力は、伊方原発3号機をモデルプラントとして、原子力リスク研究センター(NRRC)が実施する地震PRA(確率論的リスク評価)の研究開発に参加。
  2. 関西電力は、プラントの設備や事故時の変化を熟知し、平時と事故時の両方において安全対策を上層部に進言できる安全俯瞰人材の計画的な育成を実施。
  3. 東京電力は、原子力・立地本部長を主査とする会議体がリスク管理を行い、必要に応じて社長を委員長とするリスク管理委員会に直接報告する体制を構築。
  4. 日本原子力発電は、地方自治体の避難計画策定にあたり、立地地域の首長会議において、シミュレーターを用いた事故事象に関する勉強会の開催等の協力案を提示。
  5. 電気事業者各社は、防災等を目的として、外部機関の緊急時対策訓練も活用しながら、ブラインド訓練等を含む効果的な取組を実施。

主な改善提言

  1. 適切なリスク管理と予期しない事態へのレジリエンス向上によるリスクの低減
    • (1)発電所の運転・保守を含む日々のリスク管理へのPRAの活用
    • (2)外的事象、多数基立地条件、過酷条件下での人間信頼性等に関するリスク評価手法の高度化
    • (3)現場からトップまでのリスク情報伝達の在り方と意思決定の仕組みの改善
    • (4)原子力安全推進協会(JANSI)によるプラントの総合評価システム等の早期確立と安全性向上に向けたインセンティブの早期導入
    • (5)規格統一化された緊急時対応体制の整備、緊急時の意思決定を独立して監視する人材の各発電所への配置
    • (6)産業界による多数基立地等を考慮した自主的な安全目標の設定
  2. 事故の可能性も想定した外部ステークホルダーとの適切なリスクコミュニケーション(適切な情報発信と外部ステークホルダーからのフィードバックの自らの意思決定への取り込み)の具体化
    • (1)事故も想定した原子力リスクの発信と、発信した情報に対するフィードバックを自らの意思決定に取り込む方法の検討
    • (2)地方自治体の地域防災計画策定等に貢献するためのリスク情報の活用方法の検討
  3. 東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた組織安全文化の改善と安全確保のための人材育成の継続
    • (1)疑問を提示し、それを議論する風土づくり実施
    • (2)意思決定の組織文化等への依存性や第三者意見の重要性等を踏まえた適切なリスクマネジメント体制の構築
    • (3)適切な安全文化指標等を用いた安全文化改善の継続的な監視と、世界の良好事例に学ぶ姿勢の強化
    • (4)技術以外の知識も活用した安全管理や国際安全基準の策定等において活躍できる人材の育成、社会人教育機能の整備
    • (5)リスク分析やリスク管理及び事故を想定した外部ステークホルダーとのリスクコミュニケーションを実施できる人材の育成
    • (6)国際安全基準の策定や新規導入国における原子力安全確保に貢献できる人材の育成に向けた取組の進捗状況の確認
    • (7)海外や他産業分野の良好事例等を参考にした資格制度や社会人の継続的な教育システムの検討
    • (8)廃炉や除染等に人材を呼びこむための方策の検討
  4. 安全性向上と技術・人材の維持・発展に係る利用と規制の連携強化
  5. 明確な優先順位付けがなされた軽水炉安全技術・人材ロードマップの策定と国内外からの多様な指摘を踏まえたローリング(継続的な改善)の実施

残余のリスクと自主的安全性向上

  • 規制基準さえ満たせばリスクがないとする「安全神話」と決別し、産業界の自主的かつ継続的な安全性向上により、世界最高水準の安全性を不断に追究する「安全文化」を構築することが重要。

前の箇条書きで図を説明

原子力リスク研究センター

  • 電力中央研究所の一機関として、10月1日に「原子力リスク研究センター」(NRRC: Nuclear Risk Research Center)が設立。
  • センター所長に前米国原子力規制委員会(NRC)委員のジョージ・アポストラキス氏、センター特別顧問に元NRC委員長のリチャード・メザーブ氏が就任。
  • 確率論的リスク評価手法(PRA: Probabilistic Risk Assessment)を研究・活用し、低頻度ではあるが大きな被害をもたらしうる事象(大地震、津波等)の対策立案、リスク低減、電力各社のリスクマネジメント確立を目指し、電力を主導。

電力中央研究所を中心に、事業者、学協会・国際会議・国内外各機関等、産業・国内外研究機関・国が連携

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