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外国公務員防止条約に関する経緯

1.条約の概要

1997年12月、OECDは「贈賄が国際商取引(貿易及び投資を含む。)において広範にみられる現象であり、深刻な道義的及び政治的問題を引き起こし、良い統治及び経済発展を阻害し並びに国際的な競争的条件を歪めていることを考慮し」[1]、世界的に外国公務員への贈賄を抑止及び防止するため、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」(以下「条約」という。)を策定した。

条約は、全17条から構成されており、犯罪の構成要件、外国公務員の定義、制裁、裁判権等とともに、条約の効果的な運用のための司法共助、犯罪人引渡し、各国実施状況のフォーローアップ等に関して規定している。

【条約の主な内容】

(1)犯罪の構成要件

  • ある者が故意に、
  • 国際商取引において、商取引又は他の不当な利益を取得し又は維持するために、
  • 外国公務員に対し、
  • 当該外国公務員が公務の遂行に関し行動し又は行動を差し控えることを目的として、
  • 当該外国公務員又は第三者のために、不当な利益を直接に又は仲介者を通じて申し出、約束し又は供与すること

(2)外国公務員の定義

  • 外国(外国の地方公共団体も含む)の立法、行政、司法の職にある者
  • 外国の公的機関(公共の利益に関する特定の事務を行うために特別の法令によって設立された組織)の職員等外国のために公的な任務を遂行する者
  • 公的な企業の職員等外国のために公的な任務を遂行する者
  • 公的国際機関の職員又は事務受託者

(3)制裁

  • 効果的で、均衡がとれたかつ抑止力のある刑罰
  • 刑罰の範囲は、自国の公務員に対する贈賄罪と同程度
  • 法人も処罰
  • 賄賂及び贈賄を通じて得た収益の没収又は同等な効果を有する金銭的制裁
  • 追加的な民事上又は行政上の制裁を科すことも考慮

(4)裁判権

  • 属地主義を原則として裁判権を設定
  • 属人主義については、各国の法原則に従って、これを採用すべきか決定

(5)資金洗浄

  • 自国の公務員に関する贈賄又は収賄と同一の条件で資金洗浄に係る法制を適用

(6)その他

  • 上記以外に、条約の実効性を確保するため、会計、相互援助、犯罪人引渡し、各国の実施状況のフォローアップ等を合わせて実施

2.条約策定の経緯

(1)米国の海外腐敗行為防止法の制定

1977年、米国企業による海外政府機関や政治家等への贈賄が明らかになったことでも知られるウォーターゲート事件等を契機に、米国は、外国公務員に対する商業目的での贈賄行為を違法とする海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act)を制定した。しかしながら、同法は、企業賄賂という不正の抑制に有効に機能した一方で、米国の企業だけが規制を受けるのは公正ではなく、米国の国際競争力が不当に削がれるとの意見があった。

このため、1988年に同法を改正し、外国公務員への不正の利益供与の取締りを各国に対して義務づける国際的な取決めの締結や各国制度の改変を積極的に求める規定が盛り込まれた。

(2)国際的な議論の進展

1989年、米国はOECD国際投資多国籍企業委員会(CIME)の場において、外国公務員への贈賄防止に関する条約の交渉を提案し、1994年、同委員会において「国際商取引における贈賄防止に関する勧告」が採択され、加盟国に対して、国際商取引に関連した外国公務員への贈賄の抑止・防止についての実効的措置を求めた。

続いて1996年には、CIMEの贈賄作業部会において、具体的な犯罪化の方策について議論が行われ、同年5月のOECD閣僚理事会においてコミュニケが採択された[2]

(3)外国公務員贈賄防止条約の策定

1997年5月のOECD閣僚理事会においては、1)1989年4月までに、加盟各国において法律を国会に提出し、同年中の成立を目指す、2)条約については、1997年末までに交渉を終了すべく直ちに条約交渉を開始し、各国が1998年末までに締結すべく努力する旨勧告された。同年6月のデンバーサミットにおいては、これらのコミットメントを歓迎し、その内容の実現を図ることを確認した。

これを受けて、1997年7月より条約交渉が開始され、同年11月、条約本文について合意するとともに、条約に関する交渉国の共通の解釈をまとめた注釈[3]を採択、同年12月17日、贈賄作業部会参加34ヶ国の代表が参加し、豪州を除く33ヶ国が署名し、1999年2月15日に発効した[4]

3.我が国の条約実施の対応

(1)外国公務員贈賄に対する刑事罰

我が国では条約を実施し、外国公務員への贈賄に対する刑事罰を設けるため、平成10年に不正競争防止法を改正(平成11年2月施行)し、外国公務員等に対する不正の利益の供与等に関し、違反者には3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人重科として3億円以下の罰金が科されることとなった[5]

その後必要な法律の見直しを行い、現在では外国公務員贈賄罪に対しては、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(又はこれらの併科)、法人重課として3億円以下の罰金が科せられるとともに、国民の国外犯も処罰されることになっている。

(2)資金洗浄

平成11年、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の制定により、自国の公務員に関する収賄と同一の条件で資金洗浄に係る法制を適用するとの条約の要請(第7条)に基づき、外国公務員贈賄罪により供与された財産を犯罪収益とし、その資金洗浄に関する処罰規定(同法第2条第2項第3号)を設けた。

(3)会計

外国公務員に対する贈賄、又はそのような贈賄の隠蔽を目的とした、帳簿外での取引、架空の支出の記載、虚偽の書類の使用等の禁止については、既に「財務諸表等の用語、様式又は作成方法に関する規則」や「企業会計原則」において、これらの違反に対して、証券取引法、商法、公認会計士法等において民事上、行政上又は刑事上の措置が科されている。

(4)法律上の相互援助・犯罪人引渡し

外国の司法当局との協力については、既に国際捜査共助法、外国裁判所の嘱託による共助法、逃亡犯罪人引渡法にて対応されている。

4.OECD贈賄作業部会からの指摘

(1)各国における条約実施状況の審査

外国公務員贈賄防止条約では、各締約国の措置の同等性を確保することが、世界的な外国公務員贈賄防止の進展を図るために必要としている[6]

このため、条約第12条(監視及び事後措置)では、「この条約の完全な実施を監視し及び促進するため、組織的な事後措置の計画を実行することに協力する」旨の規定があり、これに基づき、OECD贈賄作業部会において、1999年2月の条約発効後、順次各国の審査が行われている。

注釈

[1]
条約前文

[2]
OECD閣僚理事会コミュニケ(抄)「国際商取引における贈賄と闘うために、効果的かつ調整のとれた形で贈賄を犯罪化し、その為に、犯罪化を容易にする方法及び適当な国際的手段について更に研究し、1997年に提案を検討すること」

[3]
国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約の注釈。以下単に「条約の注釈」という。

[4]
本条約は、OECD加盟国以外にも開放されており、平成17年10月現在の条約締約国は、OECD加盟国30ヶ国(豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、仏、独、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、伊、日本、韓国、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英、米)に、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、チリ、スロバキア、エストニアの6ヶ国が締結している(条約締約国36ヶ国)。

[5]
世界的には、米国で45件の起訴(2002年1月現在)、韓国で1件の処罰があるほかは、カナダ、ポーランド、スウェーデンでの起訴事例が判明している。

[6] 条約の前文には「締約国においてとられる措置の間の同等性を達成することがこの条約の不可欠の目的であり、このためそのような同等性から逸脱することなしにこの条約を批准することが必要」と規定されている。

お問合せ先

外国公務員贈賄防止総合窓口
経済産業政策局 知的財産政策室
電話:03-3501-3752
FAX:03-3501-3580
E-MAIL:damezowai@meti.go.jp
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最終更新日:2012年6月26日
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