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  • 業務効率化・生産性向上
  • 輸送用機械器具製造業、自動車・同附属品製造業

事例ピックアップ
強い経営体質への転換 「IT経営による下請けからの脱却」 〜株式会社東洋ボデー〜

  • 基幹系システムの刷新により、多品種変量生産へ対応
  • 生産量を平準化する管理システムを構築し、「生産会議」を不要に
  • システム連携によるタイムリーな経営情報の把握と意思決定を実現

プロフィール

写真 東洋ボデー
中小企業IT経営力大賞 経済産業省大臣賞
企業情報
  • 企業名 : 株式会社東洋ボデー
  • 所在地 : 東京都武蔵村山市伊奈平2丁目42番地の1
  • 資本金 : 4,800万円
  • 従業員数 : 105人
業種

輸送用機械器具製造業、自動車・同附属品製造業

導入目的

業務効率化・生産性向上

企業概要

東洋ボデーは、昭和38年に設立後、一貫してトラック用ボディ(荷台)の製造を行ってきました。設計・開発から製造・販売に至る全工程を手掛け、現在では国内の全トラックメーカーを顧客とし、成熟した市場において着実にシェアを拡大しています。業界平均では約1ヶ月といわれる生産日数を3〜7日に短縮した「短納期生産」に加えて、カチオン電着塗装に代表される「高品質」を強みとし、メーカー仕様による量産製品、個別仕様となる自立型製品の双方において、高い信頼性を獲得しています。

導入の背景と目的

トラック需要が伸び悩み、大手トラックメーカーによるコストダウンへの要求が厳しさを増すなかで、東洋ボデーは、下請依存型の経営体質から脱却し、多品種変量生産に耐える「強い経営体質」に変革することが急務でした。しかし、当時の基幹系システムは下請型の量産製品に適合した生産管理システムであり、個別受注による自立型製品への対応ができず、業務効率の悪さと工場における生産性の低さが大きな課題となっていました。業務効率と生産性の向上には、業務の前工程/後工程を意識した情報共有が重要であり、そのためには情報量の増大と高速処理による生産管理の最適化を図る必要がありました。そこで、同社は 2002年より基幹系システムの刷新に着手し、自立型製品の生産管理に適した機能追加、ならびに収益性の向上を意図したシステムの見直しを実施しました。

IT化の概要

多品種少量生産に対応し、生産性と業務効率を向上させるために、東洋ボデーではIT活用を前提とした業務プロセスの再構築を行いました。同時に、基幹系システムと経理の整合性を確保し、経営管理の高度化を実現しています(図1参照)。

IT活用をベースにした業務プロセスの再構築

多品種変量生産への対応、生産性の向上、業務効率の向上へ向けた各種施策を実施しました。確実に業務を遂行するために、業務上のルール/標準をシステムで制御するようにした点が大きな特徴となっています。

(1)  多品種変量生産への対応
受注管理/生産管理において、生産可能な納期で受注を「座席予約」する仕組みとし、生産量を平準化し、能力を超えた受注登録をシステムで制御できるようにしました。
(2)  生産性の向上
変動要因による生産計画の見直しが発生した際に、「座席予約」された受注をもって生産能力を維持するようにしました。
(3)  業務効率の向上
購買管理/在庫管理/技術情報管理で、業務上のルールや標準に適さない変更等をシステムが制御(禁止)できるようにし、業務遂行の全体最適化を図りました。

経理等との連携による経営管理の高度化

生産ライン/原価把握/予算実績管理等の機能を追加することで、生産情報システムと経営管理システムをシームレスに連携し、早期でタイムリーな経営情報の把握と意思決定を可能とする高度な経営管理を実現しました。
(図1)

経理等との連携による経営管理の高度化

図1

IT経営推進の取り組み

同社では、経営改革活動において「全社対象にITを経営ツールとして位置づけ、お客様に貢献する」方針を示し、経営トップ自らがシステム検討会議へ参画し、システム化戦略の方向性を提示するなど、IT経営の実践に率先垂範を行っています。また、事業後継者がCIO(IT経営の推進者)の任に当たり、各部門実務担当者を配下に、設計から運用に至るまでのシステム全体の構築を担当しました。同時にCIO補佐組織として「最適環境委員会」を職場単位の一般職で立ち上げ、運用面でのルール遵守を支援し、運用阻害要因の克服を補完しました。IT経営の推進に当たっては、経営資源が乏しいなかTAMA産業活性化協会の支援を受け、2001年から2004年にかけて一貫して社外人材を活用することで、継続的かつ段階的なIT経営の推進を行い、成果をあげています。

正式名称は社団法人首都圏産業活性化協会であり、準正式名称のTAMAとはTechnology Advanced Metropolitan Area(技術先進首都圏地域)の略である。埼玉県南西部、東京都多摩地域及び神奈川県中央部等における中堅・中小企業、大学、公的機関などが水平的なネットワークを形成し、新事業が次々と生み出される環境を整備することを目的とした団体

導入効果

IT経営実践により業務プロセスの再構築と経営管理の高度化を図った結果、生産性および業務効率の両面で効果が得られました。現在では、自立型製品は総製品の75%を占め、年々シェアは増加しており、多品種変量生産への対応についても優れた成果をあげています。特に、受注管理/生産管理における「座席予約」の仕組みは、納期の短縮につながりました。それまで社内で重要な位置づけにあった「生産会議」は、そのほとんどがシステムに置き換わり、非常時を除いて一切行う必要がなくなりました。また、自立型製品の需要増から懸念された増員対応も、業務効率が向上した結果、ほぼ不要となりました。短納期生産の実現は、ボディメーカーとしての信頼性を向上させ、当初の大手顧客は1社であったにもかかわらず、2005年には全トラックメーカー6社の顧客化を実現するという大きな事業目標の達成を導きました。

今後の展望

個別受注の製品が75%を占めるなかで、同社ではいまなお開発・設計者の負荷が大きいこと、サプライヤとの情報共有といった課題を抱えています。これらを解決するためには、企業全体としてのIT経営の推進を継続すると同時に、経営方針のひとつである「お客様に貢献する」の実現に向けて、アフターサービスを含めた継続的な価値の提供に注力したいと考えています。同社では、このような問題認識のもと、2007年年度の「中小企業戦略的IT化促進事業」の採択を受け、企業全体としてのIT経営の深耕と高度化への取り組みをまさに推進しているところです。CADシステム/設計部品表管理システムと基幹システムの連携や共通EDI(電子データ交換の規格)によるサプライヤ連携といった、IT化を視野に入れた経営改善に引続き取り組むことが期待されています。

IT経営推進を支援した方々

ITコーディネータ 真野 淳