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プロフィール ![]()
製造業 IT組織改革 企業概要 本田技研工業株式会社は「夢」を原動力として、個人・社会への新たなモビリティを提供すべく、二輪・四輪・耕うん機などの汎用製品の生産・販売を主に事業活動を行っています。現在ではASIMO(人間型ロボット)や小型ビジネスジェットなど、幅広いカテゴリで独創的な技術・商品を開発・生産する企業へと成長。また、世界各地のお客様が望む商品・サービスを提供するために、開発から生産・販売まで現地で行う体制を整えています。同時に、社会的な責任を果たすべく、環境や安全への取り組みを積極的に行っています。 |
本田技研工業のIT部門では、これまで二輪や四輪といった事業部門個別の取り組み、部門横断的な取り組みを経て、全社インフラの整備などにも取り組んできましたが、残された課題がグローバル化への対応でした。しかし、同社はこれまで日本、北米、欧州にIT部門の機能を持っていましたが、それらを統括するグローバル本社的な機能を有していませんでした。
グローバル化への対応にあたって、各部門からもさまざまな要望が発生し、IT部門は要件に迅速に対応するため、開発力の向上に焦点をあててきました。その結果、開発力は約2倍に向上しましたが、現場からは、「請負体質だ」「IT部門が話す用語は分らない」「IT主導では失敗する」などの声があがっていました。IT部門では、倍の仕事をこなせるようになったにもかかわらず、現場から評価されず、モチベーションも低下しました。ユーザー部門からの要件が複雑化したことから、要件が曖昧なまま膨大な開発をこなしていくだけで、IT部門では何のために開発し、どのようにすれば良いシステムになるかという視点が欠けていたことが原因といえます。
こうした状況を打開するため、IT部門は自らの役割を見直し、変革を目指しました。
まず、「社内の開発ベンダー」という位置づけから脱し、企業内のCIO的な役割を担わなければ、価値の高いIT環境を全社員に提供できないと考えました。具体的には、システム開発のノウハウではなく、ビジネスプロセスのノウハウを持つことに軸足を移すことにしたのです。「請負体質」という言葉は、最もHondaらしくない言葉であり、IT部門に「Hondaらしさ」を取り戻すことをテーマに掲げました。同社は、開発業務の急増によりアウトソース先に流れてしまっていた企画や業務設計などのスキルやノウハウをもう一度社内で持つことが重要と判断し、「方針」「体制」「意識改革」「Hondaらしさ」「ITガバナンス」の5つの軸でITの構造改革を展開しました。 |
図1 |
原点回帰をキーワードに、IT部門は開発への注力ではなく、企業競争力への貢献を最重視し、「部門の効率化」ではなく「全体最適」を目標としました。
この全体最適という概念を現場に訴求して、企業競争力を強化していくうえでは、IT部門は最低限、現行のサービスを安定して提供することを前提としました。次に、現場と一体となってプロセスを改革していくことが重要と考えました。現場からあがってきた要望にただ応えるのではなく、IT部門自らが現場の真の課題を適切に把握することを目指しました。そして3つめの重要な役割が、これらを束ねるためにITガバナンスを発揮することです。同社ではこれらの3つを新たなIT部門の役割としたのです。
同社では3年前にIT部門の組織体系を変更しました。以前はITの開発効率を重視したテーマ遂行型組織でしたが、現在は業務領域別に企画から開発・保守まで一貫して責任を持って遂行する現場接点重視型組織へ変わっています。従来は、企画、開発、サポートなどの部隊が別々に存在し、ITプロジェクトの進行にあわせて担当が変わる組織体制で、重複作業がなく、要員配置がしやすいというメリットがありました。しかし、ユーザーから見ると責任者がはっきりしないという問題があったのです。 |
図2 |
ユーザーに対して一貫して責任を持つ組織体制は、実は昔のIT部門に戻ることになり、各業務領域でのばらばらな動きによって色々な齟齬が起こります。そこで全体をガバナンス(統括)する組織「IT戦略管理室」を作ったのです。この組織により、現場のサービス機能を提供するIT部門のチームはアクセルを踏む役割に集中でき、不適切なアクセルに対してはブレーキをかけるという牽制機能がIT部門に備わったのです。 |
図3 |
これまで日本中心でのITのグローバル展開においては、特にロシアや南米などの遠い地域で展開やサポートが困難になっていました。「IT戦略管理室」の設置とプロセスの構造改革によって、各地域のIT部門やユーザー部門との一体感が生まれ、共創体制ができあがったのです。その結果、2008年正月に稼動したブラジル工場の事業においても、システム構築を含めスムーズに立ち上げることができました。
また、今までは開発が主体であり、その後システムをどう定着させるかはユーザー任せでしたが、システムの活用法などの研修や展開中の管理・指導など、定着までのプロセスを含む活動をグローバルで行うようになりました。その結果、システムの活用度が質・量ともに上がりました。さらに、ユーザー部門との共創体制は、ユーザー部門の満足度の向上とIT部門の活性化にも繋がっています。
今後必要になると考えているのは、経営の効率化とスピード化です。ビジネスの場だけではなく、ITを経営判断にも役立てられるように強化したいと考えています。その際重要になるのは、経営層に対していかにITの価値を説明できるかという点だと思われます。IT部門はITのプロとして、ITの価値を信念を持って分かりやすく伝える必要がありますし、また、IT部門内では通じる言葉であっても、相手の立場に立って相手の言葉に変えて伝えていく必要があると考えています。