中小企業では、限られた予算の中、自社内のIT化だけでも苦労が伴います。ましてや協力会社とともにIT化を進めていくのは、よほどの理解を得ないと難しいでしょう。自社のIT化に成功し、平成19年にIT経営実践認定企業に選ばれながらも、さらなる発展を遂げたのが田中精工株式会社。グループ企業にもIT化を推進することで、業績を向上させ、中小企業IT経営力大賞を受賞しました。代表取締役の田中光一氏にお話を伺いました。
御社のIT経営についてのお考え、バックグラウンドを教えてください。
創業者でもある先代の社長が、IT化に大変興味を持っておりました。昭和50年代に、業界に先駆けてCAD/CAMをはじめとするIT化に取り組んだのです。世間からは「よくやるな」と言われていたようですが、創業者の思い入れが強いのもあり、社内にもITに抵抗感のない土壌ができていたと思います。
今回のIT化に成功する前に、経営課題としてあったものは何だったのでしょうか。
当社の主要な業務はダイカスト製造です。今まで、複雑な工程で異なる技術が要求されるダイカストは、一貫生産が困難と言われてきました。品質や納期、価格を保つためには、ひとつずつの技術レベルを高めることはもちろん、各工程でリードタイムや数量を細かく管理することが必須だったのです。当社は2000年にオフコンからオープン系システムに全面リニューアルし、工場内の見える化を実現しました。2007年に、その取り組みでIT経営実践認定企業に選出していただいたのです。
しかし、得意先からの短納期、コストダウンの要請は日増しに厳しくなっていきます。原則として一貫生産を実現していますが、完全に自社だけでまかなっているわけではなく、協力会社に工程の一部を外注しています。当社内でいくら管理レベルを向上させても、協力会社が納期遅れなどを起こしてしまえば台無しです。全体の30%程度は協力会社に外注していましたから、情報の流れをIT化して管理レベルを上げる必要がありました。
協力会社に対して、どのような取り組みをなさったのですか。
協力会社は当社への依存度が平均で50%程度です。従業員数十名程度の小規模な製造業ばかりなので、ITに対して難しい印象があったり、抵抗感がある企業もあります。「このシステムを使ってください」と一方的に依頼するだけでは、とうてい使いこなしてくれません。
そこで私たちは「使っていただく」と考えて、協力会社の意見も聞きながら、一緒に勉強しようと持ちかけることから始めました。