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有限会社山口工芸(Hacoa事業部)

会社概要

  • 有限会社山口工芸(Hacoa事業部)
  • 本社所在地:〒916-1221 福井県鯖江市西袋町503
  • TEL 0778-65-3112  FAX 0778-65-3114
  • 事業概要:越前伝統工芸漆器製造・販売、木製商品インテリア等の製造、販買促進商品の企画製造、デザイン商品企画開発、商品販売マーケティング、など

会社HP

本事例についての問い合わせ先



有限会社山口工芸 Hacoa事業部 社屋前 スタッフの皆様

 

市橋様の修業時代のことを教えてください。

 妻の実家が越前漆器の木地師でした。最初は当時の仕事に不満も無かったし、後を継ぐ気はなかったのですが、何度も訪れているうちに面白いと感じ、当時の仕事と未来を見つめ直すようになってきました。そこで、義父である師匠の山口怜示氏(伝統工芸士)に、丁稚奉公覚悟で「3年間だけ飯を食わして欲しい」、と頭を下げ弟子入りしました。修行の日々は、師匠が仕事が入る前に掃除をし、普段の仕事をこなし、1日が終わったら、刃物を研いだりと翌日の準備をして終えてから自分の仕事をすると深夜になりました。その事を毎日毎日繰り返すというものでしたし、一般的には10年かかる一人前の職人になるところを3年でやりたいと宣言したこともあり、寝る時間を削って、人の3倍要領よく、考えながら仕事をする事を心掛けていました。仕事への向き合い方を変える事が大変厳しかったです。
 また、当時は90年代後半でしたが、新たな販路作りも試行錯誤の状況でした。当初は漆器を入れたスポーツバッグを2つ抱え、夜行バスで都心に行って、青山や代官山のセレクトショップに飛び込みで営業する、というようなことを毎月のようにしました。
 ただ、そのような中で感じたのは、伝統工芸には縦社会があり、職人が前に出ることは許されないという風潮があることでした。例えば、百貨店から個展のオファーがあったときには、問屋からは相当な圧力を受けました。そのような経験があり、漆を売るのであれば漆器屋さんがやれば良いのであって、自分は木地屋らしく木地で仕事をしていこうと、割り切って考えられるようになりました。
 

現在、デザインにも拘った木工製品を製造されていますが、そこに至るまでに、どのような紆余曲折があったのでしょうか。

 修行時代はデザインのことは全く分かりませんでした。ただ、福井県の漆器展覧会に出展したところ金賞を受賞し、日展に参加しないかとの誘いがありました。そのような作家としての道も考えましたが、自分の目指すものとは少し違うなと思いました。
 その後、鯖江市が実施している鯖江市立インテリジェントデザイン講座(SSID)で福井県出身のデザインディレクター川崎和男氏の講義を1年間授かりました。そこでは我に対しての自信と精神論としてのデザイン、すなわち、商品は人に使ってもらい、喜んでもらわないとダメだということを学んだと思っています。
 また、生活様式の変化は、漠然とした危機感として感じていました。また、より目に見えた課題としては後継者不足の問題がありました。そのため、しっかり仕事を生まないといけないし、また時間が限られている中で如何に商品のクオリティを上げるかというトレーニングができるような環境が必要だと考えていました。
 そのような紆余曲折を基に、Hacoaを作りました。第一の目的は、後継者を育てるためです。人が集まらないのに、お金が集まるわけがない、とにかく人を集めたかった、という思いが最初にありました。
 

Hacoa創設後、軌道に乗るまでに、どのような取組をなされたのでしょうか。

 創設当初はデザイン提供の仕事もしていましたが、目の前で自分がデザインした販売促進の品が捨てられているのを見て、その業務は止めました。それよりも、やはり、買う人が喜んでもらえるような商品、ずっと使ってもらえるような商品を作ることがやりたいと改めて思いました。その想いからHacoaデザインのベースにもなる、「有用性のデザイン」が生まれたのです。
 転機になったのは、「木―ボード」を発表してからです。この商品は、もともとあるお客様の声に応えるために作ったものだったのですが、話題性もあり、徐々に反響が大きくなっていきました。楽天でショップを構えていたのですが、2chでも「一度触ってみたい」、「欲しい」という声が挙がり、それが効いて、アクセス数が上がりました。また、「木―ボード展」という企画展をやったことも話題になりました。なお、Hacoaのロゴを商品に付けたのは、この「木―ボード」が初めてです。
 また、人を集めるという目的のためには、良い作業環境が必要です。そのような思いから、創設初期の利益を基に、先行して設備投資を行いました。工作機械のオペレーションのためのソフトウェア開発に投資し、これにより、若者が集まり、技術的に未熟でもすぐに設備を使いこなす事で技術の差を縮める事ができるようになりました。まずは作業を楽しみ、技術は後から身につけていく、という方針です。
 また、リーマンショックの前後でも変化がありました。リーマンショック前は自社商品の売上げは全体の1割程度で、今と比べても1/5ほどでした。ほとんどは外資系ホテルや商業施設の内装、デザイン提供による売上げでした。しかし、リーマンショック後、そのようなホテル関係の受注が全くなくなります。その時期には、ブランディングの1つとして自社社屋を建てた頃でもあったので、非常に厳しい局面に立ちました。それ以降、外部から影響されない、自分たちの売り方とマーケットを作ろうと考えるようになりました。また、毎月第1木曜日を新商品発表の日と決めて、コンスタントに自社商品を発表し始めたのも、そこからです。


「Full 木ーボード」
 

商品開発に対する考え方を教えてください。

 当社では大量生産はできません。技術がブランドの核になります。したがって、スタッフを育てることに特に力を入れています。例えば、USBメモリ等の商品は高い技術は求められないので、まずはその製造から始めて、徐々に難易度の高い商品の製造にスキルアップさせていきます。また、先輩は後輩を教えますが、先輩も後輩に負けないようにどんどん技術力を上げようと努力します。
 その際、私(市橋氏)はスタッフに対して、他人がやっていて、とにかく格好良いと思えることを取り入れなさい、とよく言っています。木の切り方一つにしても、格好良いと思われないと、人に真似はされません。今は、現場の掃除は朝早く来てスタッフが進んでやっていますが、もともとは私が朝早くやっていたものを、それを見ていたスタッフ達が行ってくれるようになったものです。掃除ひとつに対しても格好良いと思われるスタイルを持てば、嫌だなと思う事が苦も無く出来ていくものです。
 また、そのように技術を受け継いでいくためには、長く作っていけるような商品を開発する必要があります。ですので、当社は一過性の商品ではなく、ロングセラーの商品を開発することに拘っています。13年以上売れ続けている商品もあります。「見て感動、触って感動、買って、贈られて感動」するような商品、持っているだけで他の人に自慢できるような有用性のある商品づくりがHacoaのものづくりです。
 毎月、新商品を発表していますが、商品コンセプトは、私(市橋氏)が全て一元的に管理しています。スタッフの提案を取捨選択しながら、ブラッシュアップして作り上げますが、Hacoaの哲学をスタッフに教えるという観点からも、そのような開発方法が合っていると考えています。外部からの商品、デザインの提案では、Hacoaの哲学がブレると考えるからです。


「Wooden Case for iPhone」 


「Monaca」(USB)
 

まさに人を中心として事業が動いている印象ですが、「人を集める」という目的はそもそもどのようなお考えが元にあるのでしょうか。

 私自身、産地の後継者問題に疑問を持っていたからです。親の仕事を子どもが継ぐ事は理想の姿だと思いますが、実際には地元の人間は興味を持たないし、跡を継いでいかない。それは親が子どもに対して、自分の仕事は食っていけないから継がなくていい、厳しい、つらいと愚痴を言ってしまうからではないだろうか。一番近いところにいる人、尊敬されるべき親が、自らの仕事を否定し、目をそむけている事が悲しくも現実であり、後継者問題の根本にあると考えます。それを変えたい、という想いがありました。
 だから、スタッフに対しても、格好良く仕事をしようと言います。余裕を持って、綺麗に、落ち着いてスマートに仕事をしようと言います。そうすることで自分たちも生き生きとして仕事ができていますし、そのような姿を他人が見れば、魅力的だと思うはずです。そうすれば、人が憧れ、人が集まり、その人たちに伝統的な技術はしっかりと受け継がれていきます。


会長・山口怜示(木地師/伝統工芸士)による技術指導風景
 

よく製造者の方からは、仕事をこなすだけで忙しく、ブランディングや販路開拓、新商品開発など、新しいことを考えることも行うこともできないという声を聞きますが、そういうご意見についてどのように思われますか。

 忙しくて色々なことができない、というのは言い訳、甘えだと思います。おそらく、今まで通りにやっていて、何とかならないかなと思われているのではないでしょうか。確かに、ものを作っていると、時間に追われる、ということはありますが、そうであればこそ若い者に技術を教えて、仕事を与えてあげればいいと思います。若い者に給料を出さなければならない、という危機感も必要でしょう。
 手が足りなくなってから人を入れるのではなく、余裕があるときに人を入れ、とにかく仕事を教え、技術を向上させる。そして、上のものは空いた時間で必死に仕事を見つけてくる、というサイクルが必要だと思います。
 

東京に2店舗、直営店を設けられていますが、効果はいかがでしょうか。

 とにかくお客様に直に商品を触ってもらえる場であり、お客様の生の声を聞ける場として、非常に重要だと考えています。お客様の声がなければ商品作りはできません。ものづくりの核だと考えています。
 生の声を聞く為にも本社の全スタッフを東京店舗に連れて行く機会も設けています。また、全スタッフが日々の出来事やお客様の声が聞こえるようにメール等で共有する体制があります。そのようにお客様の声を直接聞くことは、従業員のモチベーションが向上するからです。また、お客様との貴重な接点ですので、接客も重要視しています。やはり接客の担当者も、Hacoaの商品が好きな人を採用しています。
 

直営店「2k540店」


直営店「KITTE丸の内店」
 

海外への進出についてどのようにお考えですか。

 海外で代理店を見つけることも考えてはいますが、まずは国内で足下を固めたいと考えています。当社商品は日用必需品ではなく、嗜好品です。そうであれば、当社の商品のファンをしっかりと作って、マーケットを育てることが大事です。それと同じことを海外でしようとすると、人も資金も要りますし、国内以上に大変です。また、海外を優先して国内事業が疎かになることも考えられます。地に足を付けた時に海外へ挑戦しようと準備を行いながらその時を待っていま

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電話:03-3501-1705(直通)
FAX:03-3501-6974

(伝統的工芸品産業について)
商務情報政策局 伝統的工芸品産業室
電話:03-3501-3544(直通)
FAX:03-3501-6974

最終更新日:2013年9月30日
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