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株式会社印傳屋 上原勇七

会社概要

  • 社名:株式会社印傳屋 上原勇七
  • 本社所在地:〒400-0811 山梨県甲府市川田町アリア201
  • 創業:天正10年(1582年)
  • 創立:昭和28年(1953年)
  • 資本金:4,000万円
  • TEL:055-220-1660
  • 代表者:代表取締役社長 上原重樹
  • 事業概要:甲州印伝(ハンドバッグ・蟇口・札入などの皮製品)の製造販売

会社HP

本事例についてのお問合せ先

(上記の連絡先をご参照ください。) 




型紙を使い鹿革に漆を模様付けする「漆付け」の技法
 

今回は株式会社印傳屋上原勇七の上原重樹社長にお話をお伺いします。製造事業者でありつつ、直営店を運営していらっしゃいますが、どのような経緯があったのでしょうか。

 もともと甲府市中央に工場と直営店がありました。その後、昭和56年1月に東京・青山店、平成2年10月に大阪・心斎橋店、平成22年11月に名古屋御園店を出店しました。卸業務も行いながら、小売も行うというスタイルは昔から行っていました。
 その中で、やはり、最初に先代の社長が東京・青山に直営店を出したことは、当時としては大変な決断だったのだと思います。地方の中小製造事業者が都心に店舗を持つということは経営面・財政面でもハードルは高いですし、従来からお取引をしている卸先との関係もありました。しかし、結果としては、都心での印伝自体の知名度が上がって、当社としてもお取引先としてもwin-winの関係になったのだと思っています。
 

メーカーが直営店を持つことの意味はどこにあるとお考えですか。

 小売のノウハウも蓄積しながら、ものづくりを行えるということです。小売の良さは何と言っても、お客様の声を直接お聞きすることができるという点です。耳の痛いこともありますが、実際にお客様が商品を使われて感じられたことをお聞きできるのは、当社にとって得がたい財産になります。
 また、お客様とのコミュニケーション能力を高めるために、直営店のスタッフの教育にも力を入れています。スタッフには必ず工場に来てもらい、製造工程を実際に見てもらっています。商品カタログだけを見るよりも、実際に製造現場を見ていた方が、商品の説明に説得力があります。また、直営店のスタッフだけではなく、卸先の販売員の方にもできる限り工場見学をしていただくようにしています。


一色ごとに型紙を変えて色を重ねていく「更紗」の技法
 

直営店ならではの工夫はありますか。

 お客様に直営店に足を運んでいただくための工夫として、直営店では基本的に当社の全ての商品を置くようにしています。卸先では売れ筋商品に偏りがちですので、例えば、数は出ないものの手の込んだこだわりの商品などは直営店でご購入いただけます。
 また、直営店では、海外向けの商品や、直営店オリジナルの商品、本店オリジナルの商品を置いています。そのようにして、お客様に直営店にお越し頂くメリットを付加しています。
 そういう意味では、直営店は様々な試みができる、テストマーケティングの場として活用しています。
 

お客様の方々はどのような層が多いのでしょうか。

 圧倒的に女性が多いです。年齢的には40代以上の方が多いでしょうか。しかし、最近は少しずつ若年化してきています。最初は、お父さん、お母さんへのプレゼントとして購入されるなどのきっかけで直営店に訪れていただくことがあります。また、商品開発をする際に、極端なことはしませんが、若い方でも持てるように意識しながら行っています。若い方が、将来の主要なお客様になっていただくことも考えると、そのような取り組みは必要です。
 

小売と卸の役割をどうお考えですか。

 現在、小売と卸の売上げは、4:6です。小売の場合は当然、上代で販売できますから、小売による収益性とキャッシュフローにおいて会社の運営にもたらす役割は大きいです。一方、小売だけでは工場の運営に見合った数量を裁くことはできませんので、卸による流通が必要です。小売と卸の両方がバランスよく伸びていくことが重要だと考えています。
 

卸先や新規の取引先との関係で重視していることはありますか。

 お互いの相互理解を深めることです。現在の卸先は、昔から長いお取引をしていただいているところが多いので、当社の事情を理解してくれていますが、新しいお取引をする場合にも、十分にお互いの事情を理解することが大事です。
 特に、当社は手作りの商品を取り扱っているので、納期に相応の余裕がないと対応できません。数量が多かったり、特殊なものであったりするほど、納期は重要です。お取引先にはそのような当社の事情をご理解いただくとともに、当社もお取引先からのご要望に真摯にお応えすることで、長いお付き合いをしたいと考えています。
 

鹿革を藁、松脂でいぶして着色する「燻(ふす)べ」技法
 

商品開発について、お客様の声をどのように踏まえていますか。

 お客様の声を全て取り入れることはできませんが、最大限に参考にさせていただいて、ものづくりを行っています。実際に、お客様の声に基づいて作ったシリーズもあります。お客様の声は、現場である直営店からすぐに本社に上がってくる仕組みを作っていますし、本社でお客様の声を一つずつ検討しています。
 当社では、毎年5月に新商品を発表しています。そのために、社内でプロジェクトチームを組み、外部のデザイナーと協業して、商品企画を行っています。プロジェクトチームには、工場・営業・小売店頭のスタッフと、作るところから売るところまでの社員を入れ、水平的な組織を組んでいます。このような体制を組むことで、作り手だけの意見ではなく、売り手の意見、お客様の視点を商品開発に取り入れています。
 商品開発は毎年行っていますので、新商品の発表を楽しみにしているお客様も大勢いらっしゃいます。また、発表した商品が好評であれば、プロジェクトチームに参画した社員、職人のモチベーションも上がります。お客様にとっても、社員にとっても良いことですので、この取組は今後も継続します。
 

デザイナーとの協業において、気を付けていることはありますか。

 外部のデザイナーとの協業は、昭和58年から行っています。当初は、洋装でも持てるような当社独自の印伝柄の商品を作ろう、ということで始めました。
 デザイナーとは対等の関係であるように心がけています。デザイナーの方はどうしても、商品ではなく「作品」を作りたがる傾向があるように思います。一方、我々は商売ですので、リピートして売っていかなければなりません。そうすると、極端に懲りすぎた物は商品になりません。
 したがって、デザイナーの方と我々の接点を如何に見出すかが重要です。デザイナーの方とは徹底的にコミュニケーションを取り、印伝の性質や製造技術など、我々の事情を十分に知ってもらうようにしています。また、職人の方もできるだけ要求に応えようと知恵を出す中で、新たな工夫が見つかることもあります。双方向からの歩み寄りが重要です。
 

最近、ニューヨークを中心に海外でのご活動をされていらっしゃいますが、どのような思いから始めたのでしょうか。また、どのようなお取組をされていますか。

 海外進出しようと考えたのは、日本が誇る「甲州印伝」という伝統的工芸品を海外でも発信していきたい、という思いからです。国内需要が低迷しているから、というような動機ではありません。むしろ、国内でもまだまだ伸びる余地はあると考えています。
 海外では3、4年ほど前から、毎年2回のニューヨーク・コーテリー展(COTERIE NY)に出展しています。海外での事業は、まだ商売としては成り立っていませんが、時間はかかるものと思っており、継続することが大事だと考えています。一つの展示会に出展し続けていると、顔馴染みのバイヤーが段々と増えてきて、人脈が広がりますし、信用も出てきます。
 また、現在では、現地に販売窓口として代理店を置いています。展示会で商談が成立して商品が売れるのは良いですが、その1度切りになってしまい、その後の長い取引に繋がりにくいことが多いです。現地のお取引先のアフターフォローのために、代理店は必須だと考えています。この点、日本の企業が上手くできていないところだと思います。
 

海外でのご活動を通じて、何らかの気付きは得られましたでしょうか。

 まず、海外では「印伝」というもの自体が知られていませんので、印伝の由来、素材、製造方法など、説明をしなければなりません。また、漆はjapanと呼ばれ、耐久性もあり、日本人にとっては非常に強い塗料として認識されていますが、海外の方はもちろんそのことを全く知りません。ゼロからのスタートだと認識することが必要です。
 また、納期に関しても厳しい対応を迫られることがあります。可能な範囲で対応するしかありませんが、それについても手作り品であることを理解してもらう努力が必要です。
 したがって、伝える努力をしなければなりません。海外ではWEBサイトが重要視されますので、現地代理店と協力してWEBサイトを充実させ、カタログ、パンフレットのデザインや説明を工夫しています。情報発信は非常に大事です。
 

最後にお聞きします。御社にとっての「お客様とのお約束」とは何でしょうか。

 一つは、商品を売りっぱなしにはしないということです。お客様には折角気に入ってご購入頂いた商品ですから、長くご愛用いただきたいと思っております。そのために、すべて無料とはいきませんが、できる限り修理をさせていただいております。
 もう一つは、値引きをしないということです。値引きをすることは、定価でご購入頂いたお客様の信頼や、卸のお取引先の信頼を失ってしまいます。定価でご購入いただけるような良い商品を生み出すこと、そしてその価値を丁寧にご説明することが大切です。
 

お問合せ先

商務情報政策局 日用品室
電話:03-3501-1705(直通)
FAX:03-3501-6974

(伝統的工芸品産業について)
商務情報政策局 伝統的工芸品産業室
電話:03-3501-3544(直通)
FAX:03-3501-6974

最終更新日:2014年9月24日
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