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Qurz Inc.

島村卓実氏プロフィール

 インダストリアルデザイナー。
 カーデザイン、バスや乗車型モアなどのトランスポーテーション・デザイン、小規模住宅やインテリア、ファニチャー、プロダクトデザイン開発に携わる。 

<主なデザインワークス>
ドコモ携帯端末機 『 ポケットボード 』 シリーズ、 『 パクティ 』 、 『 カラーブラウザーボード 』 、
はとバス新型デザイン車両 『 はとまるくん 』 、土屋機械 『 ロボットモア 』 、
小学館 『 ラピタ 』 と共同開発で家具と車の特別仕様車 『 アティパル 』 、
簡易移動型隠れ家 『 キャバナ 』 のデザイン開発。
Gマーク中小企業庁長官特別賞受賞、他Gマーク受賞歴多数

※Qurz Inc.ホームページ(http://www.t-shima.com/html/top_j.html)より引用。

会社概要

  • 有限会社クルツ
  • 本社所在地:東京都渋谷区宇田川町42-7co-lab,loft2F
  • TEL: 03 (6809) 0755 FAX: 03 (6809) 0756
  • 代表者:島村 卓実
  • 事業概要:プロダクト、ファニチャー、インテリア、住宅、カラーデザイン、デザインコンサルティング等

会社HP

本事例についての問い合わせ先


本日はデザイナーの島村卓実様にお話しをお伺いします。島村様は、最初から個人でご活動されていたのですか。

 キャリアは富士重工業のスバルのカーデザインから始まりました。エクステリアやインテリアのデザイン開発に携わり、14年ほど在籍後、2005年に独立、現在の会社を設立しています。
 出身の高知県で間伐材として利用のむずかしい「やなせ杉」にであったのは独立の少し前で、しばらくはボランティアとしてお話を伺っていました。独立後は間伐材のブランド「monacca」に取り組みを本格化させるために独立したことも会社設立のきっかけです。
 現在ではプロダクトデザイン商材の開発から、バスなどの輸送機関のデザイン、ショールームの内装、地域商材のデザイン開発、デザインコンサルティング、カラーデザイン等を専門にしています。


ブランド名:「monacca」 スギの間伐材を使用したバッグ


クライアントとの協業で、商品開発はまず何から着手しますか。

 まずはマーケットから調べます、これは企業の大小を問わずお互いが現在の商品や会社の立ち位置を明確にするためです。こちらが得られない現場での情報や、デザイン開発の立場からの視点も同時にもちこんで、お互い初期研究の形で理解を深めます。
 立ち位置を分析マップにうつし、最終的に向かうべき商品像を絞り込んでいきます。
 開発に不慣れな会社やそもそも商材を持っていない会社とは、予算を決めたあとすぐにチーム作りをしていただきます。まずキーマンとなる人物が、すべてを現場と外部をつなげる役目も必用になってくるので、社内でのプロジェクトチームは欠かせません。別働隊を作らないとクライアント内部の気運も盛り上がらないうえに、従前の組織の中では新しいことは上手くできない場合が多いと考えています。
 時には事前に卸業者、小売り業者に対象企業を紹介する事もあります。素材や技術のオリジナリティとニーズが高い場合、デザインをそれほど乗せなくても商品になる事が多いです。またマーケットを押さえてから開発を進めることで、開発のリスクも減らす事ができると考えています。

 
ブランド名:「cuiora」 100%再生紙の織布バンドを使用した商品


商品開発の現場にデザイナーとしてどのように関わっていますか。

 商品単体のデザインだけをする事もありますが、むしろ、商品開発の前に、ブランディングやストーリー作りから着手します。商材の形を作る=デザイナーという図式ではなく、企画から予算、開発、販売までを統括しながら、商材をコンサルティングしていく立場になります。企業側にデザイナーがいる場合は、一緒にデザインを考えてもらう事も多いです。
 委託業務としての一方通行ではなく、互いに商品開発に携わる者の思いを共有するためでもあります。会社の歴史や人物、技術等の事柄を全て合わせたコンセプトを作り上げ、それを出発点にしてブランドや製品のストーリーを考えていきます。ストーリーやコンセプトを始めに固定することで共通の価値基準を作り、デザインの始めから、最後に作るwebやパンフレットに至るまで、一気呵成に練り上げていくのでブランドの軸がぶれなくなるし、デザインの振れ幅が小さく、開発のスピードもあがっていきます。
 そもそも何を作って良いかわからない、何を売れば分からないという場合が多いのです。ブランディングという作業は市場には無いもので、自社や地域の強みを生かせるものを発見するという作業とも言えるでしょうね。
 高くて良いものを作るのは力のある日本の企業ならできますが、同時に売れるものとなると難しくなってきます。そのため、実際に産地に入って生産工程を勉強したり、クライアントと徹底的に話し合います。例えば、株式会社井上(彦根仏壇)の「chanto」の場合には、どのようにすれば漆の素材を使いながらコストが下げられ、なおかつ魅力的な製品になるかということを、現場の生産管理にまで踏み込んで研究しました。
 そして、試作品ができあがったら、展示会での反響を窺ってから、量産に入るようにしています。展示会は商品を販売する場であると同時に、市場調査の場でもあります。例えば、メゾン・エ・オブジェを活用する場合、冬の展示会で試作品の展示を行って反響を見て、反響が良ければ量産し、夏の展示会から販売して行くという方法が考えられます。
 最近ではキックスターター等のWEBによる商品開発ファンドを呼び込む手もありますね。その商品が欲しい方から資金を募って、それを開発資金に充てる、という取組も大いに行うべきだと思います。

  
ブランド名:「chanto」 彦根仏壇の製造技術を活用した商品 コンテナー,カップ


売ることを考えると、値決めが重要だと思いますが、どのように決定していますか。

 価格は最もむずかしいポイントです。とくに海外と国内を併売していく場合、WEBでの価格の差が明確にでてしまいます。大企業でない限り国内外で価格を統一する事はできないからです。また原価の積み上げで価格を決めてしまう事がほとんどだと思いますが、これではなかなか儲けを出すまでにはいたりません。商品の価値を決める、または展示会で調査しながら最適な価格を通して商品そのものを決めるという事も必要だと思っています。
 価値に相当しない製品は利益が出ませんが、高価値が通じるマーケットや商材であれば利益が大きいと考えています。利益が低い商材でも大量生産、販売が可能ならビジネスは可能です。
 海外の展示会では往々にして日本製品は高額になってしまいます。高額だということははほとんどのバイヤーが承知していることなので、手頃な高付加価値のものを探しています。
 また代理店やディストリビューターを通じて販売する場合には、値段は完全にはコントロールできません。特に国内と海外の両方で販売する場合には、ある程度の内外価格差は出ざるを得ません。
 最終的な値決めは、試作品段階でのバイヤーなどの反応や、商品の希少性を勘案しながら決めています。例えば、「monacca」のスーツケースは他に類を見ない商品なので、ある程度の値段でも付けることができます。一方、樹脂成型品など、市場にありふれているものの場合には、競合品の価格を見ながら価格設定をせざるを得ないのが現実です。

デザイナーの立場から、クライアントに求めることはありますか。

 クライアントに対しては、デザインに対する理解を求めます。デザインとは、色や形状等の外観だけではなく、コストや流通、製造技術等、色々な制約を解決した、売れる手段としてのデザインであることを理解して欲しいと思っています。OEMが主体である会社には当然、開発販売するリスクがあることも説明もしなければなりません。自社ブランドが必ずしもいいとは限りません。むしろこのリスクを乗り越えてもなおデザイン開発したいという熱意は最も求めたいところです。
 また、クライアントが海外に通用する技術を持っているか、最低でも3年間は続けられる体力があるかどうかも重要な要素です。助成金頼みのクライアントは、助成金が無くなった後にプロジェクトを継続できなくなるおそれがあることを考えると、協業するのは困難があると考えています。
 また、どの市場をターゲットとするか、競合の状況はどうかなどといった市場の情報は、本来はクライアント側が調べて考えるべきことであり、全てデザイナー側に委ねる姿勢ではなく自らも調べ、営業し動くことが重要です。
 パリなど海外で発表したいという事はよく耳にしますが、会社側に語学や輸出入のインフラがなければそもそもビジネスにはならないでしょう。評判がよければいいほど、対応にパンクしてしまう企業もあるでしょう。
 全体の状況を見て、事業の方向性を決めるプロデュース的な役割をする場合もありますが、デザイナー主導でプロジェクトを進めるのではなく、クライアント側も主体性を持って、しっかりと考えて欲しいと思っています。

海外の展示会への出展実績について教えてください。

 海外の展示会は、プロ向けの商品か、コンシューマー向けの商品か、という観点で選定して、それに適した場に出展するようにしています。
 初出展は2004年のミラノサローネの市内展示からです。2006年までは、いくつかの招待展示もあり、ミラノサローネやブリックファン(スイス)に出展していました。
 商品ブランドの認知とイミテーション防止の意味もあり、その後ロンドンでの100%design Londonに2006年、2007年、2008年、ニューヨークのICFF(国際現代家具見本市)には2007年〜2011年まで参加、アンビエンテには2008年から4回出展しています。
 毎回プレスには反響があり、雑誌などに取り上げられましたが、実際販売につながるという意味で、パリのメゾン・エ・オブジェのNOW!エリアに落ち着いています。その他、デザイナーベースでの展示で、パリが拠点のミートマイプロジェクト展には4回出展をしています。

海外の展示会に出展する際に、気を付けていることはありますか。

 もっとも気をつけているのが、展示方法です。施工が海外になるので、現地の会社でもなかなか仕上げが日本品質にはなりません。クレームをいったら完成前に逃げられた事もあります。顧客も多くの展示を短時間にみたいので商材の前にブースのインパクトが無いと3秒も滞在していただけませんから。もちろん、ブランドが定着すれば問題ないと思います。どんな手法でつくっているのか、誰がデザインしているのか等、デザイン商材であればある程、こうした事も展示ブースで簡単に見せられる工夫は必用だと思います。
 語学ができなければ、的確な通訳を確保する事も次には必要なことです。円滑な説明で商材発注までその場で持っていく事ができるからです。英語ができなくても、一緒に開発したクライアントにはブースに立っていただいて反応をみていただくことも大切です。
 現在山形の6社のによる異業種共同ブランド「aGAREY-アガレイ」を立ち上げたばかりですが、日本での展示会に参加の後、パリの展示に全員ブースに立って説明をしていただきました。語学が大変な分、日本と異なり反響はダイレクトです。直接その場で買い付けされていくバイヤーが多くいる事にも驚いておりましたが、会場の熱気や真剣に商材を値踏みしていくその姿勢に感動しておりました。
 またこうした現場には私達デザイナーもたって、サポーしながら、説明し、反応をみて次のデザインにつなげていく事も大切なポイントだと思います。

  
ブランド名:「aGAREY-アガレイ」 雪結晶のパスタ,ダンボールのバッグ,レースの照明


海外との取引を成功させるためには何が必要でしょうか。

 最終的には、ブランドや商品の継続性と、現地での代理店、卸先を早く見つける事だと思います。
 自社でのインフラの話は先ほどもしましたが、輸出に詳しく語学力のある人材の確保、効果的なWEBサイトの構築はもちろんですが、プレスに対応できる人材や外注会社等、時差に係わらず常に迅速な対応を行うことが求めれます。
 流通における代金回収も決済方法をいくつか持った上で、発注先が個人か、直接ショップに販売するのか、卸を仲介して大量にコンテナで運ぶのか等により、デザインやパッケージ方法、商品そのものも変わってくる事があります。その地域毎、会社毎、また開発した商品をどう取り扱いたいのかにもよって、大きく取引の内容がかわります。
 現地での営業も必用になってくるでしょうし、家具にいたっては現地でメンテナンスする会社までないと販売にまでいたらないケースもあると思います。
 日本以上に細かな対応と流通手段は必ず求められますし、取引の方法によっては開発商材のデザインまで変わると考えていただきたいですね。
 まず、海外にはなく日本にしかないオリジナリティ、楽しさ、生活を豊かにする何か、を日本人の視点と海外の視点から考えていただきたいと思います。
 何度も海外に挑戦することで展示会を通しての人脈やコネクションを作る事で商品の方向性をつかみ、売れる事で少しずつインフラも整っていくと思います。
 私たちもまだ、成功しているわけではありません。新しいブランドが起きるたびに、新しいマーケットへトライを繰り返しています。
 挑戦する気持ちと、それを支えるファンドが最も大切かもしれません。

お問合せ先

商務情報政策局 日用品室
電話:03-3501-1705(直通)
FAX:03-3501-6974

(伝統的工芸品産業について)
商務情報政策局 伝統的工芸品産業室
電話:03-3501-3544(直通)
FAX:03-3501-6974

最終更新日:2014年7月29日
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