経済産業省
文字サイズ変更
アクセシビリティ閲覧支援ツール

suzusan e.K.

会社概要

  • suzusan e.K.
  • 本社所在地:Ronsdorfer Str. 77a, 40233 Düsseldorf, Germany (ドイツ・デュッセルドルフ)
  • TEL: +49-211-30-21-053-1    FAX:+49-211-30-21-053-9
  • 創業年月日:2008年 4月
  • 従業員:6人
  • 事業概要: 有松鳴海絞りの技術を用いたオリジナルブランド「suzusan」の企画及び海外流通

会社HP

本事例についての問い合わせ先

クリエーティブディレクター:村瀬 弘行
メールアドレス:   info@suzusan.com


 有松の町並み。東海道沿いに町ができ、宿場を歩く旅人にてぬぐいを売り出したことから町の歴史が始まった。
 

 御社の沿革、事業内容について教えてください。

 私(村瀬氏)の実家が、名古屋の有松絞りの産地にあります。有松絞りは各工程を職人が分業して行っていますが、実家はそのうちの一つを営んでいます。私の父が職人としては四代目であり、浴衣や絞りのテキスタイルをメインとして、細々と続けていました。
 私自身は、もともとは家業を継ぐ意志は全くなく、デュッセルドルフの芸術大学に進み美術を学んでいましたが、そこでドイツ人でビジネスを専攻していた現在のビジネスパートナーと出会いました。ある時、イギリスの展覧会に絞りのテキスタイルを出展した父親に、生地を日本に持って帰れないので預かって欲しいと言われ、何気なく預かったことがありました。その際、私の部屋に置いてあった生地を見たビジネスパートナーが「おもしろい」と言い出したのが、事業を始めたひとつのきっかけです。
 有松鳴海絞りは浴衣が有名であり、浴衣は日本の伝統文化で昔からあるものですが、需要としては確実に減ってきています。有松が開村して400年の歴史の中で最盛期には1万人以上の職人が働いていたと言われていますが、 suzusanを起業をした時には既に200人以下にまでなり現在60半ばの父親の世代が一番若い世代になっていました。父の世代から浴衣だけではなくOEMとしてアパレル向けの生地を作っていましたが、ファッションの世界は波が激しく、その波に産地が右往左往している状態です。それならオリジナルブランドを作って、安定した製造をし、職人を育てていこうと考えました。日本の文化が無い地域の人が使えるものを前提に、例えば照明やストールなどであれば異文化にもすっと入っていけると考え、2008年にビジネスパートナーとsuzusan e.K.を設立しました。余談ですが良く聞かれるSuzusanという名前の由来は「鈴三商店」という家業の屋号から取っています。Suzusanではファッション、インテリアの両方の領域で、ドイツと日本を軸に活動しています。製品のデザインは私がドイツで行い、製造は日本の有松で行っています。ちなみに、日本の株式会社スズサンとドイツのsuzusan e.K.は別会社です。日本のスズサンに発注をかけて国内で製造をし、ドイツのsuzusanが買い取り、海外に発信するという形を取っています。
 アイテムは、海外では基本的にsuzusanのブランドのみ扱っています。現在の販売先はファッション、インテリアを合わせて約20カ国です。一昨年まで展開は海外のみで日本国内のオリジナルブランドでの展開は無かったのですが、それまで父一人の職人としての個人事業だったものを、昨年に有松で法人化し今後国内の展開も広げて行く予定です。


 93歳の職人。8歳の頃から絞りを始め、手蜘蛛絞りができる最後のひとり。
 

 海外で事業を展開されている経験から、日本製品をどのように見られているのでしょうか?

 展示会を見ていて、日本のブランドは、「どこで・どのような人が・どのような思いで作っている」のか、ということはかなり明確に出ていると思っています。しかし、「どこで・どのような人が・どのように使うか」ということが、現地の人にそこまで届いていないと感じています。日本で売れたからと言ってそのまま持ってきても、どうやって使うかわからないことは多くあります。日本の中では需要があって、良いものではあるかもしれませんが、食文化・気候・宗教も違う中で、「どのように使うか」を明確にしないと、受け取る側もとまどってしまいます。素晴らしい日本製品はたくさんありますが、それを自分の生活に入れると考えると、なかなか取り入れづらいということがよくあるのです。「どのように使うか」までをある程度提示することが大切だとおもいます。そのためにまずモノを作って持ってくるのではなく、モノが出来上がる前に売り先の環境を、実際に生活をするなかで感じてみてその経験を踏まえてデザインをするのもいいのではないでしょうか。


 suzusanのストール。カシミヤやアルパカなど本来絞りでは使わなかった素材と組み合わせている。
 

 「日本」を強く押し出して事業を展開されているのでしょうか? 

 日本にこだわっているということはありません。当社の製品は全行程が手仕事である性質上高価格になってきますので、おのずと限定した場所での販売となっています。「ハイエンド」であるラグジュアリーブランド等と、当社の製品が一緒に並んで違和感がないようにしないといけないと思っています。
 日本だから良い、と紹介するのではなく、良いと思ってタグを見たら「メイド・イン・ジャパン」であったという形が理想です。製品をデザインする際に日本的な要素を前面に出すことはしません。日本を前面に出すと、使う方も日本を意識しすぎてしまい、限定した使い方しかできないと考えているからです。日本だから良いのではなく、そのブランドだから良いと思ってもらえるようなブランディングをしています。


 絞りの技術を施した照明。染める代わりに熱加工を加える事で絞りの形の形状が残っている。
 

 ファッションとインテリアの両分野にチャレンジされていますが、日本製品を展開する上でお気づきになられたことはありますか?

 ファッションとインテリアは全然違う分野です。ファッションは、春秋の年2回、バイヤーが商品を購入する機会があります。そこを過ぎてしまうともうオーダーは来ませんので、そこに資源を集中させます。その後のフォローは、次のシーズンに来てもらうためのものとなります。
 一方インテリアは逆で、シーズンというものがありません。インテリアはリテールだけでなく、ホテルなどのコントラクトビジネスもあります。ファッションは回転が速いですが、インテリアは1つ良いものを作れば、その製品を何年も売っていけます。どちらが良いとは言えませんが、両方の分野を見るというのは良い経験になっていると感じています。
 産地出身で海外に出てきたという経験上、現在の日本のモノづくりの特性を考えると、ファッションの回転の速さに産地がついていくのはなかなかハードルが高いのではないでしょうか。インテリアにフォーカスすると、トレンドを追うファッションよりも地に足を付けたリサーチで、対象となる地域にどういうマーケットがあって、どういう人が使って、どういう売り方で、どういうモノを作るのか、という考え方ができます。日本のモノづくりのあり方やスパンに合っていると思います。 日本は各産地・企業にとても高度な技術がありますので、インテリアの分野でもっとうまく使うことができるはずです。
 日本の産地・企業は、技術と知識ではポテンシャルが高いのですが、センスと経験が足りないと感じています。私は、技術・知識・センス・経験の4つが揃ったところで、良いプロダクトが生まれると思っています。技術・知識ばかり先走ってしまい、海外から見たら「そこまでやらなくても…」と思われるようなところにこだわってしまうこともありますので、チャンスを逃していることも多くあると思います。


 照明シリーズのShizuku
 

 海外の展示会に出られて、気づいた点をお聞かせください。

 出展している展示会をみていると、日本企業ブースのコーディネートは日本人であることが多いですが、私はマーケットの先の人がデザインした方が良いと考えています。日本の人が日本のブースをデザインしても、結局箸の文化の人がフォーク・ナイフの文化の人のところへ来て、箸の使い方を教えているようなものです。箸の使い方がわからかない人による、どうしたら箸をうまく、おもしろく使えるのかという視点から、ブースのデザインをすることも必要です。ブースのスタンドにそうしたデザイナーを入れると、デザイナーが現地の人を知っているので、宣伝もしてくれます。海外に出る時に、「日本」を背負いすぎてはいないでしょうか。これは、日本製品の弱点として先述した「どのように使うか」にもつながっていきます。
 モノの使い方は本当に自由で、例を挙げるなら、ガラスのコップで温かいコーヒーを入れたらカッコイイということで、パリの有名なバリスタが東京で伝統的な技法で作られている日本製のガラスコップにカフェラテを入れ、彼のカフェで出すということもありました。日本人ですと、ガラスのコップというと冷たいお茶・水を飲むものいうイメージが先立ち、温かいコーヒーを入れるという発想はなかなか出ないと思います。これはブースにも言えることで、商品のセレクトも任せてみるなど、外部の人間を入れることが重要になってきます。
 また、ブースに日本人がずらりと並び過ぎているとも感じています。外国人からすれば、入りづらいはずです。現地の信頼できるスタッフを雇い、ブースに入ってもらうなどしてビジュアルだけでも現地に溶け込んでいると、それだけで入りやすいと思います。現地に信頼できるビジネスパートナーを見つけられれば、商品を送るだけでも良いのです。


 パリの老舗セレクトショップ、L‘eclaireur(レクレルール)。中央にあるのがsuzusanのストール。
 

 デザインに対するお考えをお聞かせください。

 職人は、自分の技術を見せたがることが多いです。その技術は本当に素晴らしいのですが、出来上がってみると細かさが目立ち普段どうやって使ってよいかわからず、その技術の分値段も高くなってしまいます。
 私がデザインをする時には「風通しの良さ」を意識し、技術を見せるというよりも、センスで勝負するようにしています。私がデザインしたものを職人にお見せすると、「こんなもの、絞りでは無い、シンプルすぎる」と言われることがありますが、そのデザインは絞りでしか出せない風合いが欠かせないのでお願いしているのです。技術としてはそれなりのものは必要ですが、若い人でも十分作ることのできるレベルの技術でも、表現できることはたくさんあると思います。一度、産地の最高峰の技術で出来たものを展示会で見せたことがありましたが、行き過ぎと感じられてしまったこともありました。
 伝統とは、作ることも大事ですが、繋げることも大事です。若い人でも出来る技術を使いながら、デザインを起こしています。創業した2008年には、産地に若い人がほとんどいませんでした。一家族一技法の分業制の中で、職人は現在200人以下であり、そのほとんどが60代から90代の高齢のかたでどうやって次に伝えるかは喫緊の課題です。最初から高度な技術ばかり目指すと、若手がたどり着く前に職人が産地からいなくなってしまいます。どうすれば若い人も作っていけるのか、そうした視点も産地には重要です。
 技術的には簡単でも、まずそこから広める、まず作れるものを作ることが大切だと思います。仮に工程を一つ落としたとしても、世界レベルから見れば日本の技術レベルはかなり上の方にあります。若い職人ができるような技術でも、世界で十分に響くのです。


 パリで毎年2回開催されるライフスタイルの見本市、Maison & Objet。世界中から沢山の来場者が訪れる。
 

 現在有松には若い職人が増えているとのことですが、何か取組をされているのでしょうか?

 元々、産地はとても閉鎖的でした。新しく入ってこようとする人を追い返していたこともあると聞いています。一つの家で一つの技法でしたので、技法をコピーされたくないという思いから、産地の中ですらお互いのことがわかっていない状態でした。
 有松には、元々問屋がいて、職人はその問屋から仕事をもらって町が回っていました。しかし、ある時期を境に、人件費の安さから問屋が絞りの仕事を海外に出すようになりました。職人も減り、有松で売られているものが有松製でないこともあり、悲しく思っていました。
 数年前からドイツやフランスの学校で技術を教えるようになりましたが、学生に必須となっている実地研修で、希望者を有松に送り込むことを始めました。産地の中に外国人が入ってきて、周りからは一体何をしているのか、と思われることもありました。しかし、外国人が研修している様子を見て、産地の職人が、自分達の技術は外国からわざわざ来て研修するような素晴らしい技術であるという意識を持つようになり、モチベーションも上がっていきました。現在までにフランス、ドイツを中心に10人以上の長期滞在した海外からの研修生を受け入れ、最近では常時外国人が絞りの行程に携わっています。また職人の立場からも、言葉が伝わらない外国人に身振り手振りで技術を伝えなければいけないので教える練習にもなり、先述の、作るだけでなく伝統を繋げるという点でも有意義だと思っています。
 結果、産地の若い人も残り、他地域から人も来るようになりました。人数としてはまだまだ十分ではありませんが、こうした取組を一つ一つ積み重ねていきたいと思っています。


 有松のスズサンのオフィス。作業工程が外から全て見られる。
 

 変わりたいと思っている産地にとって、必要なことは何でしょうか?

 「ガラス張り」にすることです。日本のモノづくりの現場では、窓が無いなど、とても暗いところで職人が作業していることがあると思いますが、私はそれが苦手です。ドイツの某老舗インテリア企業の社屋を見せて頂いたことがありますが、1~2階が工房となっており、近くを通れば全て丸見えの状態でした。その会社は、昔は製造工程を見せたくないという考えでレンガ造りの建物でしたが、思い切って工房を外からも見えるようにしたところ、作り手のモチベーションが上がったとのことです。人に見せることで、職人の意識が変わったのではないでしょうか。見られることによるリスクは無いとは言えませんが、会社の生産率も随分上がったそうです。
 そこで、有松の実家の会社も、外から丸見えの造りにしました。通る人に工程を見てもらうことによって、情報発信の役割も担うようになったのです。そうした経験からも、他の産地にも、物理的にガラス張りにしてみることをお勧めします。技術を見せないといけないので、下手な仕事はできなくなってしまいます。見られるということは技術そのものにも影響しますし、知られることで産地内の会話も増え、内外から興味を持ってもらい、新しいものが自然と生まれてきます。まずはそこから、始めてみてはいかがでしょうか。

 

お問合せ先

商務情報政策局 日用品室
電話:03-3501-1705(直通)
FAX:03-3501-6794

(伝統的工芸品産業について)
商務情報政策局 伝統的工芸品産業室
電話:03-3501-3544(直通)
FAX:03-3501-6794

最終更新日:2015年5月11日
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.