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有限会社東北工芸製作所

会社概要

  • 社名:有限会社東北工芸製作所
  • 本社所在地:〒980‐0011 宮城県仙台市青葉区上杉3-3-20
  • TEL 022-222-5401
  • 代表者:佐浦康洋
  • 設立:1933年(昭和8年)
  • 資本金:300万円
  • 従業員:6名
  • 事業概要:宮城県指定伝統的工芸品「玉虫塗」の製造・販売

会社HP

本事例についての問い合わせ先

有限会社東北工芸製作所 常務取締役 佐浦みどり
Info@t-kogei.co.jp


 

本日は宮城県指定伝統工芸品「玉虫塗」の製造販売を行っている東北工芸製作所の常務取締役、佐浦みどり様にお話しをお伺いします。御社の歴史が、昭和初期に仙台に設立された国立工芸指導所から始まっていると伺いました。伝統工芸に携わる企業としてはとても珍しい沿革だと思いますが、詳細を教えてください。

 現在、弊社は宮城県指定の伝統的工芸品「玉虫塗(たまむしぬり)」の唯一の製造・販売事業者です。弊社の起源は、昭和3年に仙台に設立された国立工芸指導所に遡ります。同所は東北地域の産業発展や輸出振興を目的として設立されたものです。昔から東北の人たちは手仕事が得意だと言われおり、そのような地域性や民度を活かした製品を作り、輸出して外貨を獲得しようという狙いがありました。
 そこで、伝統的な下地を施した器に、銀粉やアルミニウムを蒔き、その上から染料を加えた透明な漆を塗り仕上げるという技法が生み出されました。その技法を活かし、商品化するために、同指導所や東北帝国大学(現在の東北大学)金属材料研究所の支援を受けて設立されたのが弊社です。弊社は、商品化する際に「玉虫塗」と名付けられたられた漆器新飾法110460号の特許実施権を得て、商品開発、展示会、販売を行うことになったのが昭和14年になります。
 まさしく産学官連携ですが、弊社はその先駆けだったと思います。漆塗りの技法は従来から仙台にもありましたが、最初から海外に発信することを目的として生み出されたものである点は、一般的な伝統工芸品とは異なっています。


創業当初の東北工芸製作所
 

当時の海外に向けてのお取組はいかがでしたでしょうか。

 弊社の設立初期の商品は、洋食器を中心としたラインナップを揃えていました。また、玉虫塗の技法はそもそも、海外の家庭に多い間接照明の下でも映えるような艶、色使いを追求したものですので、まさに海外での使用を想定して商品作りをしていました。
 そして特に戦後、弊社の近隣の施設が、進駐軍の方々の病院や将校倶楽部として使用されるようになると、創業者の佐浦元次郎が英語が話せたということもあり、多くの進駐軍の方々が弊社を訪れ、商品をご購入いただいたとのことです。
 当時は玉虫塗が進駐軍を通じて米国国内に入り、米国のラジオ放送や新聞で紹介されることもありました。今で言うインバウンドですが、米国の方々への認知度が高まったことにより需要が増え、その売上げによって弊社の経営基盤が整ったと聞いています。それまでの市場調査に基づく技術・商品開発と、販売のタイミングが上手く重なったのだと思います。
 

進駐軍に人気のあった玉虫塗 マッカーサー夫人がご来訪
 

一般的な漆器商品との差別化は、どのように図っていますか。

 玉虫塗の技法は、中塗りの後に銀色の層を作る点が、一般的な漆塗りと異なります。それにより、明るいところと暗いところとで、見たときの色が変化します。そのような特徴から、玉虫塗と名付けられています。
 また、商品の価格帯には気を配っています。弊社のものづくりの精神は、「見る工芸から使う工芸へ」です。前身の国立工芸指導所の基本理念を受け継いでいます。この理念の下、生活に行き届く価格帯で商品を作り、販売していくことを重要視しています。そのために、既存の技法にこだわらず、カシュー漆やウレタンといった新素材、吹きつけ塗装なども取り入れて、コストを抑えつつ安定して量産・納品できる体制を整えています。お客様は商品を記念品やギフトとしてお買い上げいただくことが多いので、そのご予算の範囲内でお買い上げいただけるような商品作り、価格設定をしております。また、伝統的工芸品であることにとどまらず、今の感覚を通した商品の良さに関心を持たれたり、宮城県の地場産品としてご購入されたりすることが多いです。それらの点を工夫し、PRしていくことを大事にしています。


伝統色は赤と緑 テーブルウェア、ステーショナリー、インテリアの定番ラインナップ
 

東日本大震災により、御社も被害を受けたと思いますが、その後、どのような変化がありましたか。

 東日本大震災の後は、商品の地元での売れ行きが、著しく落ちました。震災前はほとんど宮城県内のみが商圏であり、その売上げで保っていたのですが、震災後は観光客の減少やイベント・催事の中止などの影響により、大きく売上げが落ちました。
 そこで、弊社としては、方向転換する必要性が生じました。地元だけではなく、別のところでも売れる商品を作らなければなりません。そうすると誰が見ても良いと思うような、洗練されたデザインが必要です。震災から1年ほど経った時に、期せずして、宮城県出身のクリエイターなどご縁のある方々が、弊社の商品作りに協力していただけました。その結果、「TOUCH CLASSIC」というブランド名の商品ラインナップを生み出すことができました。
 弊社は今までブランディングに取り組んだことはありませんでしたが、「TOUCH CLASSIC」を作り上げる中で、ウェブサイトやカタログなどの様々なコミュニケーション・ツールを整えて情報発信をしているうちに、全国的に、徐々に関心を持ってくれるお客様が増えています。今までは、地元の催事やお土産等で販売を行っていたのですが、そのような売り方、見せ方とは全く異なります。質の高い情報を全国的に発信し、お客様に関心を持ってもらうような工夫をし、お客様を呼び込むという方法は、これからの弊社の営業方針となりました。
 

東京、パリ、ベルリンなど地元外でも取り扱いが広がる「TOUCH CLASSIC」シリーズ
 

従来の商品ラインナップについてはいかがですか。

 「TOUCH CLASSIC」が全国的な販路開拓を目指した商品ラインナップである一方で、地元でしか売れない商品があることに気がつきました。宮城県の地場のものだからということで直接店舗にお越し頂いたお客様や、海外の方へのお土産として玉虫塗をお選びいただくお客様は、地元に多くいらっしゃいます。商品としては、玉虫塗の定番品と言えるような、赤・緑の伝統色で、県花であるミヤギノハギの意匠をあしらったものなどが好まれます。そのような従来からのお客様の声に応えていくことも大事なことだと考えています。
 

御社は海外の展示会にも出展経験がおありですが、海外でのご活動はいかがでしたでしょうか。

 「TOUCH CLASSIC」は、当初から国内外の垣根を越えて通用するものを作る、ということがテーマでした。プロジェクトに参加している国内のクリエイターの方の意見だけではなく、海外のクリエイターの意見も取り入れました。その結果、海外の方はモノトーンの日用品を持っていることが多く、買い換えるなら白か黒のものが多いのではないか、という想定の下、商品は黒を基調としたラインナップとしました。
 2012年に、海外の市場調査も兼ねて、ドイツ・ベルリンのDMY International Design Festivalというデザイン見本市に出展しました。そこで初めて「TOUCH CLASSIC」の試作品を発表したのですが、海外の方々の反応も良く、商品作りの方向性は間違っていないと感じました。
 その後、ドイツ・フランクフルトのアンビエンテ国際見本市やJETROの商談会に商品ラインナップを出展しました。そこでも上々の反応があり、パリやベルリンのセレクトショップで富裕層向けの商品として取り扱われています。


ドイツでの展示会の様子
 

クリエイターとの協業や海外・国内での展示会出展を通じて得たことはありますか。

 今までの地元のお取引先は、玉虫塗のことをよくご存じなので、お客様にも詳しくご説明いただけました。しかし、都市圏や海外のお取引先は、玉虫塗のことを全くご存じないので、お取引先に対して玉虫塗のストーリーを伝えていくことが必要だと考えます。商品の見た目で直感的にご購入いただけるお客様はおりますが、なぜこの価格なのか、その価格に見合う技術・技法が備わっているからだ、ということを知った上で納得してご購入するお客様もいらっしゃいます。お客様に対して、そのような商品のストーリーをご説明いただくために、お取引するショップの方とは直接、顔の見えるお付き合いをさせていただくことにしております。ですので、仲卸を介してのお取引はしておりません。
 また、クリエイターやバイヤーの方々とコミュニケーションを取るようになってから、商品を売るためにはウェブサイトやカタログ、パンフレット等の販促ツール、コミュニケーションツールを整えることは必要だと感じました。ウェブサイトは見やすく統一的なイメージになるように整備し、定期的に更新しております。カタログ等について、例えばコピーについてはただ日本語を外国語に訳すだけではなく、訳した後の外国語としてしっかりした文章でなくてはならないとか、商品の写真については商品が映えるような状況や撮り方を工夫したりとか、細部まで作り込むことが大事だと考えています。
 また、海外では、食洗機を使える食器であることが求められました。それを受けて、現在、産業総合研究所と協力し、玉虫塗の表層面を強化するための手法を研究しています。研究の成果は出ていますので、今後は商品化に向けて市場調査や技術面、価格面の検討をしていくことになります。
 

デザイナーの方や、アニメ業界の方との協業にあたって、気を付けていることはありますか。

 クリエイターの方やアニメ等の異業種の方と一緒にお仕事をする場合には、どちらか一方が上の立場に立つという偏った関係ではなく、あくまで対等の関係を心がけています。弊社としても、下請け的に事業に参加するのではなく、弊社自身が主体性を持って事業に取り組まないと、事業としてモチベーションを保ちつつ継続していくことはできないと考えています。
 新しい取組に着手する際に、一緒にお仕事をする方が、今後も長くお付き合いできる方なのかどうかを見極めなければなりません。弊社の規模と能力をしっかり相手に理解していただくことが前提となりますし、そのためには双方向でのコミュニケーションを盛んにすることが必要です。一緒にお仕事をする方とはお互いに理解し合い、何のための事業なのかという目標を共有することが、長いお付き合いに繋がると考えます。
 

今後の御社のご活動の方向性を教えてください。

 規模を大きくすることは考えておりません。規模を大きくすることはある程度簡単にできますが、縮小することは非常に大変です。弊社もバブル崩壊後に、その経験をしました。ですので、現在の生産能力を勘案した適正規模を追求することにしています。その適正規模を目指して、今後も販路拡大のため、クリエイターの方や異業種の方との新しい取組をしたり、展示会に出展したりすることは必要だと考えています。
 また、弊社は創業以来、戦後、バブル期、バブル崩壊後と、常に時代の必然性や市場の状況に合わせて、商品や販路を変えてきました。一番大事なのは、玉虫塗の技法を後世に伝え、そのために会社を継続させることです。震災をきっかけとして、また新たな環境変化がありましたが、今後も試行錯誤を続け、変化していきたいと考えています。
 

お問合せ先

商務情報政策局 日用品室
電話:03-3501-1705(直通)
FAX:03-3501-6794

(伝統的工芸品産業について)
商務情報政策局 伝統的工芸品産業室
電話:03-3501-3544(直通)
FAX:03-3501-6794

最終更新日:2015年3月23日
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