経済産業省
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株式会社柘製作所

会社概要

  • 株式会社 柘製作所(かぶしきがいしゃ つげせいさくしょ)
  • 本社所在地:〒111-0042 東京都台東区寿4-3-6
  • TEL:03-3845-1221 FAX:03-3845-1225
  • 創業年月日:1936年(昭和11年)3月
  • 代表者:代表取締役社長 柘 恭三郎(つげ きょうざぶろう)
  • 事業概要:  パイプ、キセル、筆記用具、ステッキ、象牙製品、装身品、たばこ(シガレット、葉巻、パイプたばこ、シャグたばこ、嗅ぎたばこ)他の開発、製造、輸入、販売

会社HP

本事例についての問い合わせ先

担当者名:三井 弘司(みつい ひろし)取締役常務執行役員
電話番号:03-3845-1221
お問い合わせ:http://www.tsugepipe.co.jp/ec/contact/
 

ツゲ・イケバナ・ベントアップル・リング付    手綱煙管四分一仕上げ(たづなきせるしぶいちしあげ)

まもなく創業80年を迎える歴史ある企業として、喫煙具のパイプやキセルといった分野に着目されていることが大変興味深いです。設立経緯と事業概要を教えて下さい。

 先代である私(柘代表取締役社長)の父が象牙パイプの奉公をしたことをきっかけに1936年(昭和11年)3月、喫煙用パイプや印材、箸、耳かき等の象牙製品を製作するために柘製作所を創業致しました。当初は象牙製品が主流でしたが、終戦直後には進駐軍によるパイプたばこの放出や、パイプを使用するマッカーサー元帥の姿が報道されたことでパイプの需要が高まり本格的に生産を開始しました。米軍向け贈答用象牙パイプも多く生産しましたが、これが米軍に大変気に入られました。当時はパイプを製作する会社が東京で47社、うち足立区で27社あり100人超の職人がいました。元々、傘の手元や万年筆を作る職人がいて、工法も似ているということでパイプを作り始めました。パイプの生産事業も安定し柘パイプも一ブランドとして認識された1981年(昭和56年)4月、父は当製作所社長業の他、東京象牙美術工芸協同組合理事長と日本象牙美術協同組合連合会長を長年勤め上げたことで、ものづくりによる業界発展の尽力が認められ勲五等瑞宝章を授与されました。今日では柘パイプも「TSUGEブランド」として世界的にも認知され、世界各国から多くの注文を受けるようになりました。現在はパイプやキセルの開発・製造・販売のみならず、たばこ(シガレット、葉巻、パイプたばこ、シャグたばこ、嗅ぎたばこ)やシガレットケース等のアクセサリーを含め全ての喫煙具を取り扱っています。

 
1936(昭和11)年、創業時の柘製作所と父・柘恭一郎氏

 パイプは全て手作りによるものですが、その製作過程について教えて下さい。

 昔はパイプの原料として桜の木を使用していました。今日に至るまで地中海沿岸の標高500mから1,000mの山に生育している「ブライヤー(学名エリカ・アルボレア)」と呼ばれるツツジ科の潅木(かんぼく)の平均3kgの根隗(こんかい)を使用しています。日本国内には生息していない樹木です。当製作所では高品質のパイプを生産するために、強い難燃性を持つイタリア産のブライヤーのみ使用しております。ブライヤーは高地の急斜面に生息し、採取にも危険を伴うことからイタリアでも伐採職人が減少しています。そのため現地バイヤーに対して単にブライヤーを売って欲しいと要求しても売ってはくれません。その都度、現地に出向いて実際に商品を見ながらバイヤーとFace to Faceでの話し合いを繰り返し行います。こうして長年にわたって築き上げた友好と信頼関係があるからこそブライヤーを入手出来ているのです。ブライヤーはパイプによる喫煙時の味わいが格別なものです。


イタリア産ブライヤーとパイプ用にカットされた木材

 そして主に夏季に根隗を掘り出してから倉庫に入れます。水分を時折噴霧させ、湿度を与えながら数ヵ月間乾燥させます。そして根隗に付着している泥や小石を取り除き、パイプ用の材料として目的にあった大きさに切り分けます。この切り分け時点においても木目をきちんと確認出来る技術を持つ職人が必要とされます。カットされた木材は木目の入り方も違うため、職人が材料を見てどのような形に仕上げるか判断し、1000分の1ミリまで切削出来るNC(数値制御:Numerical Control) 旋盤で削り上げていきます。この削り上げの作業では天然素材を生かす仕上げの技術が必要とされ、曲面仕上げと言われる技術もまた職人の手によってなされるものです。そして着色してサンドペーパーをかけて、また着色して磨き火皿にカーボンを塗ります。


パイプの曲面仕上げ

 最後はマウスピース部分ですが、エボナイト棒(硬質ゴム)から作られ、1本1本のパイプに合わせて削り出しを行い、アルコールランプの熱で曲げて調整します。これでパイプが完成します。

  
マウスピースの部材                   パイプの着色



カットされた木材からパイプ(マウント・フジモデル)が完成するまでの工程

 当製作所はオーダーメイドを受け付けておりません。職人が木材を見てそれにあった形のパイプに仕上げるという手法を取っています。つまり職人の感性を尊重して、ものづくりを行っています。パイプ愛好家からもこうした製作工程が高く評価されており、完成した製品は直ちに売り切れてしまう状況です。
また、メンテナンス業務も行っていますが、過去にあるお客様からパイプ修理の依頼を受けました。マウスピース部分が傷んでいたので修理致しましたが、その後お客様から「祖父の歯形の付いた大切な部分を何故修理したのか」とお叱りを受けたことがありました。お客様にとって、パイプがこれほどまでに強い愛着を持った製品であることに衝撃を受けました。こうしたお客様の思いからも、ものづくりに対する姿勢を学ばせて頂いたことが、高級喫煙具としての「TSUGEブランド」を確立出来たものと自負しています。

 

パイプの構造
 

 パイプを作り上げるには卓越した技術と経験、更には職人の感性まで求められます。一人前の職人に成長するまでは相当長く厳しい修行が必要となると思います。新世代への技術伝承と人材育成にかかる取組において重要な点は何でしょうか。

 当製作所では「職方商人(しょっかたあきんど)」という言葉をよく使います。これは創業者である父の座右の銘で、「職人は商人の精神を持ってもの造りを行い、商人は職人の精神を持ち商いを行え」というものです。この精神を受け継ぎ、例え営業職で入社した社員でも最低3ヶ月間は必ずものづくりの現場に身を置き、職方を経験することを条件としています。付加価値のある製品を市場に投入するには、営業を担当する社員もまたパイプに精通していなければなりません。職人の経験が必ずや営業に役立つものと考え、これを実行しています。当製作所には60年の経験を持つ熟練工匠(Craftsman)の福田和弘が構えています。福田はデンマークで修行した経験を持ち、ハンドメイドの技術と感性を学びました。今では年間250本、3日間で3本のパイプを作る技術を持っていますが、これは誰一人真似することは出来ません。これまでの経験を積み上げてきたからこそ福田のみが成せる技術なのです。現在は2人の後継者がTSUGEブランドを継承すべく現場での製作に関わっています。
  
60年の経験を持つ熟練工匠福田和弘氏      製造工程で精密機械も利用して極限に仕上げる


製作所内の風景

 漆工芸の工房「会津・布分」とのコラボレーションから生まれた「蒔絵四季花木紋様組(まきえしきかもくもんようくみ)」のパイプは、日本の漆芸を国際的に知らしめた作品とも言われています。

 大正、昭和に活躍した人間国宝の「漆聖」松田権六(まつだごんろく)がロンドンでパイプに漆の高蒔絵を画いたことが始まりで、これが世界的にも高く評価されました。当製作所の「蒔絵四季花木紋様組」シリーズは、春夏秋冬を表現した植物を題材として仕上げています。
これはシャンクと呼ばれるボウル(パイプのたばこを燃焼させる部分)から伸びている柄の部分の根竹まで一体感のある漆黒に塗り上げ、ボウルには蒔絵作家の小松茂夫先生が日本の四季を表現した植物を描きました。漆塗りを行うためにはパイプの下地がきちんと仕上がっていなければならず、職人ならではの技術が必要とされます。このような日本の風情と文化を押し出した作品も製作しています。


「蒔絵四季花木紋様組」蒔絵・妻恋草紅葉     「蒔絵四季花木紋様組」蒔絵・花菖蒲
 

 販路開拓、販売戦略面においては国内でも見本市や展示会に参加されています。また、海外への見本市にも毎年出展し、更にはミッションを組んで欧州の有名な喫煙具メーカーや販売店を訪問する等、海外での活動も積極的に行っています。

 当社はパイプやキセルの製作のみならず、輸入品を含めた喫煙具全般(手巻きたばこ、ライター等)を取り扱っています。国内では喫煙具関係者向け展示会である「スモコレ」等を通じて、販売店やお客様への販売を行っています。勿論、海外展開にも力を入れています。過去の円高時には量産型パイプの輸出を中心に行っていましたが、円安になってからは高級品として付加価値のあるパイプに焦点を当て、他のパイプと差別化を図りました。初期には小売店向けに営業を続けましたが、当時は全く売れませんでした。それならば海外の国際見本市に参加してみようということになったわけです。これが発端となり、今では毎年7月に開催される米国最大のたばこの国際見本市である「IPCPR(International Premium Cigar&Pipe Retailers)」にも自社ブースを設けて出展しております。見本市では当然の如く営業活動が最も重要ですが、それ以上に年に一度懐かしい友人達と再会出来る場であり、同業者が頑張っている姿を見るとこちらも励まされる思いです。


IPCPR(米国)での出展ブース

 また、4年に一度開催される「※世界パイプ・スモーキング選手権大会」が本年10月にドイツ・ケルンで行われ、同選手権への出場者や小売店からの参加者とミッションを組んでツアーを開催致しました。このツアーは選手権への参加や見学と併せて、欧州の喫煙具関連の有名企業(ドイツ(ビッグベン)、オランダ(ハイジェニアス)、英国(ダンヒル))を訪問し、製造工場等の見学も含め企業交流も行ってまいりました。現在は毎月のように営業活動のために北米、欧州、アジア、ロシアに出張しています。先に営業職で入社した社員でも最初は職方を経験するということを申しましたが、職人もまた営業活動を学ぶべく海外出張に同行して、実際の交渉現場を見てもらっています。売る側・買う側・作る側のそれぞれのニーズを直接聞くことが、より良いものづくりを行うことが出来るとの考えです。当製作所では英語に長けた社員がおり、週に1、2回程営業部社員や職人を集めて自主的に英語研修を行っています。喫煙具の専門用語は英語でも統一表記が多く覚えやすいことから、一定の専門用語を覚えることが出来れば、現地に行ってもある程度の交渉が可能です。
また、国内、海外からも喫煙具に関する講演も多く依頼され、例えば、パイプの使用方法や人材育成等といったテーマに応じた講演活動も行っております。
 
※世界パイプ・スモーキング選手権大会
3グラムのパイプタバコ(紙巻きタバコ3本分)をビリヤード型(まっすぐな標準タイプ)のパイプに5分以内に詰め、どれだけ長い時間をかけて吸い続けられるかを競う大会。

 
社内英語研修の風景

 喫煙具は消費者の安心・安全は元より、健康面への配慮も求められる製品です。近年、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)と社会環境に配慮した販売活動が強く求められる時代となっていますが、こうした消費者への配慮という面においても積極的に取り組まれています。

 パイプの製造、使用においても安全面でのルールがあります。製作過程では、例えばパイプの焦げを防止するための設計をはじめ、800℃にも及ぶ耐熱性維持のためにパイプの肉厚を5mm以上とするルールがあります。マウスピース部分のエボナイト棒は、高品質の素材を提供するメーカーの製品を使用する仕様としております。パイプの使用方法については取り扱い説明書に詳細に記載していますが、誤った吸い方やメンテナンス不足が影響した劣化により舌の低温火傷等を防止することについても細心の注意を払っています。
 また、当製作所は一般社団法人日本たばこ協会の賛助会員でもあり、同協会が定めた自主基準(未成年者の喫煙防止、テレビ等の媒体を用いた製品広告は行わない、見本たばこの配布は、未成年者および非喫煙者を対象として行わない、公共性の高い場所では行わない、主として未成年者に人気のあるタレント、モデルまたはキャラクターを製品広告に用いない、喫煙と健康に関する注意文言の明記等)を遵守してきております。今後も消費者の方が安心して安全に使用して頂けることを第一優先として、ものづくりを行っていく所存です。

 
柘製作所職人の皆さん

お問合せ先

商務情報政策局 日用品室
電話:03-3501-1705(直通)
FAX:03-3501-6794

(伝統的工芸品産業について)
商務情報政策局 伝統的工芸品産業室
電話:03-3501-3544(直通)
FAX:03-3501-6794

最終更新日:2015年1月26日
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