シンポジウムレポート

平成29年度産学連携サービス経営人材育成事業
第2回シンポジウム・セミナー概要

日時 平成29年10月13日(金) 13:00~16:40
場所 TKP心斎橋駅前カンファレンスセンター
出席者 【基調講演】<敬称略>
株式会社産学共同システム研究所
代表取締役 白井 達郎
【採択校発表者】<敬称略>
弘前大学人文社会科学部
教授 森 樹男
東洋大学国際観光学部国際観光学科
教授 島川 崇
金沢大学人間社会研究域人間科学系
助教 丸谷 耕太
近畿大学経営学部商学科
教授 高橋 一夫
山口大学経済学部経営学科
教授 内田 恭彦
愛媛大学法文学部人文社会学科
教授 和田 寿博
琉球大学観光産業科学部
宜志富 知恵子
【コメンテーター】<敬称略>
株式会社産学共同システム研究所
代表取締役 白井 達郎
公益財団法人大阪観光局
専務理事 野口 信義
【経済産業省】
経済産業省 商務・サービスグループサービス政策課
課長補佐 塩野谷 和寛
近畿経済産業局産業部サービス産業室
室長 濱崎 浩
【事務局】
(株)JTB総合研究所
参加者 42名
産学共同システム研究所 代表取締役 白井 達郎 氏

・地域の中からのイノベーションを考えると、自らアイデアを企画、立案し実現するためにはきちんとした基礎を身に付ける必要がある。観光の領域でも夢や志が高いほど相手に与える印象は良くなる。

・弘前大学の先生方は地元の「じょっぱり」でベンチャー創出を考えているが、新しいアイデアを念頭に置き、しっかりとした企画立案を作り上げ、そこに出口を作ることが重要である。

・経営資源は人、もの、金、時間だが、人という大切なものを生み出していくことが課題で、経営環境を考えると谷底に落ちてもそこから這い上がる精神力、第三者に支援を仰ぐ際には人間的な魅力が必要となる。

「One to Multi」という言葉を使っているが、様々な大学の研究に関心をもち、企業の成功のプラットフォームを作ることが重要である。また、(理科系、文化系を問わず)ポストドクターの活用も肝要である。

・企業とインターンシップの環境が作れるかがキーワードである。大学とホテル業界とのコラボレーションで良い関係を築いてもらうためには、長期間のインターンシップが絶対条件である。

<意見交換>
・大学がオリジナリティを持った人材を育てるために必要なことについて意見交換がなされた。

弘前大学人文社会科学部 教授 森 樹男 氏

「じょっぱり起業家」は造語で、「じょっぱり」は津軽弁で強情っ張りという意味である。何事にもくじけない強い心と起業家マインドを持った学生を育てるという意味を込めたものである。学部向けと社会人向けの観光プログラムを作っていく。

・弘前大学観光マイスター育成プログラムは学内で調整中だが、2018 年度には実施したいと考えている。既存の事業や新しい事業を含めて18 単位を取得するとマイスターの称号がもらえることとなっている。

・起業家育成では地元の起業家を呼んで、講義を実施している。

・今年度は武者修行型プログラムとして、海外インターンシップ、海外スタディツアー、履修証明プログラム等を考えている。青森の企業や台湾の海南大学と連携したプログラムを構想している。

履修証明プログラムは、食と観光に関わるものを計画している。この計画では、社会人向けの市民カレッジの活用も考えている。社会人向けということで大学に来て授業を受けてもらうことは大変なため、DVD教材も制作している。

東洋大学国際観光学部国際観光学科 教授 島川 崇 氏

・今年4月に国際観光学部を開設した。それと同時にスタートした新たな試み「観光プロフェッショナルコース」をご紹介する。「働きながら学ぶ」がコンセプトのコース。

・このコースでは1年から3年まで3年間、同じ企業でインターンシップを行う。朝から午後1時まで働き、大学に戻って4限目以降の授業を受ける。

・学生を単なる労働力と見做すのではなく、学生の学びを段階的に行うことを理解してくれる連携企業を選別した。いずれの企業もこのコースのために特別な枠組みを新たに構築してくれた。

一般学生と比べ、このコースの学生は傍観者にならずに当事者意識を持っていると感じられる。

・産学連携によりインターンシップが充実してきているが、課題もある。最近は1Day インターンシップを実施する企業も多いが、一日では何も分からない。インターンシップでこそ、表面的な理解ではなく、裏の大変な部分を学ぶ必要がある。

インターンシップは企業からのオファーでやるのではなく、大学がイニシアティブを持って取り組むべきであり、希望をきちんと伝えコミュニケーションをとって進めていくべきである。

金沢大学人間社会研究域人間科学系 助教 丸谷 耕太 氏

金沢大学の地域創造学類に観光学・文化継承コースができる。実際に動き出すのは2019年4月からで授業の準備や科目の開発を行っている。

・定員は15名である。白井先生は地元のことを考えるべきだとおっしゃっていたが、金沢大学も観光を通じて地域づくりを行い、人材を輩出していくことがメインの目標である。

現在は授業を実施しインターン先の開拓を行っている。全学の学生に案内し、興味のある学生に単位はあげられないが特別講義として開講している。

・また、国際シンポジウムを検討している。なかなか金沢から能登に観光客が行ってくれないため、能登ではインバウンド観光を進める動きもあり、農業遺産でつながりがあるフィリピンの棚田の研究者を呼び、環境(のよさ)を伝え観光客を満足させつつ地域資源の維持を学びたいと考えている。

・ゲストハウスではインバウンドに日本文化を伝えるパーティを毎日行っている。将来的にはゲストハウスの運営も大学生にお願いしたいと考えている。その活動のキュレーションを行い発信することもしている。

・みそぎがわら能登留学という1年間学生が留学するプログラムがあり、インバウンドの授業も今後展開したいという提案がある。

<意見交換>
・押し売りの観光に陥らないよう、地域独自が抱える課題に対する取組の必要性について、意見交換がなされた。
・たくさん人を呼ぶ動きから、人が増えることによる社会コストの増大など、観光まちづくりをどう捉えて公共性とビジネスを両立していくのかについて、意見交換がなされた。
・インターンシップの取組方について、意見交換がなされた。

近畿大学経営学部商学科 教授 高橋 一夫 氏

・私たちのターゲットは4年制大学を卒業した社会人で、観光協会等に勤めている方、今後地域の観光と関わりを持とうと考えている方である。

DMOの人材育成プログラムの開発の目的として、マネージャー人材を育成し、観光地のイノベーションを創出するようにする。

DMOの人材育成には、観光協会に、行政や民間から出向する方が多い現状を踏まえると、プロパーの育成が重要である。

・また、そのためには労働条件、年棒を見直し魅力のある職業としていくことが必要となる。

「日本における観光地経営のイノベーションを創出する」という目的のもと、「経験に磨きを掛けること」をめざし三つの習得すべき能力を議論した。すなわち、①人が生来持っている資質を高めること

②DMOの経営・運営に必要なスキルを獲得すること、③マネジメント及び専門家として身につけるべき知識と理論の獲得を通じた課題解決能力である。

・DMOの中核人材として活躍するための教育ニーズは北海道から沖縄に分散しているため、EdTec ITを活用した遠隔地教育が求められており、そのための連携パートナーを探している。

・昨年度の12科目の短縮バージョンは、デスティネーションマーケティング、地域ブランドのマネジメント、サービスマネジメント、マーケティングリサーチ、観光会計財務等である。

今年は新規に開発した8科目でより実践的な演習科目をまとめるため、実務経験の豊富なJTB総研をコーディネーターとし、DMOマネージャー実務実習、観光庁のDMOネットの使い方も含めたDMS演習などである。12 月に中間状況を確認し議論を深めていく。

・これらのプログラムの中から、特にニーズの高いと思われる2科目をモニター講座として、東京と大阪で実施し、アンケートからさらにブラッシュアップを図りたい。

可能な限り日本全国に分散するDMO 関係者が受講しやすい形を構築し、自らの能力に磨きをかけて、DMOで働くことに魅力を感じられるような協力をしていきたいと考えている。

山口大学経済学部経営学科 教授 内田 恭彦 氏

・実務家、経営者、起業予定者を対象としている。地方の中山間地域、交流人口が少ない地域でのサービス事業の生産性向上を大きな目標としている。

・地域の小さなサービス業、農漁業者も対象となっているため、理論や考え方を、より分かり易くするために豊富なDVD(動画)ケースを作成している。

参加者自身の事業計画の策定を最後に行うこととしている。これはまず同一地域等で関連する複数の経営者が参加し、そこで地域戦略を構築し、それに沿った形で個別企業の事業計画を策定するものである。

ツーリズム・サービスは従来の観光とは全く異なる価値の提供がなされている。例えば鹿を撃って解体して食べるコースがある。消費地ではなく生産地とはいかなるものかを体験し、地方とは何かを考えたり、自分の生き方の相対化を促すなど、重層的な価値を提供している。

平成30年度に山口大学の公開講座で経営人材プログラムとして正規に導入することが決まった。

地域創生研究会(仮称)を立ち上げ、我々のプログラムをブラッシュアップしていく。平成29年11月にキックオフのシンポジウムを開き、平成30年10月から二つのプログラムをスタートさせる。

・課題としてリサーチ機能の充実、大学院改革の方向に従い再度検討する。担当教員の負荷が生じるため、その対応法についても検討している。

愛媛大学法文学部人文社会学科 教授 和田 寿博 氏

・各大学の取組に学び、観光サービス人材育成をめざした産学官連携が大切だと考える。

学生教育に加え、リカレント(社会人向け)教育を実施し、学生と多様な社会人を育成した。昼間開講プログラムでは観光ボランティアや第3セクター、金融機関の関係者、夜間開講プログラムでは観光に関心を持つ中小企業経営者や起業家が受講している。

観光サービス産業関係者を対象としたプログラムでは、中堅管理者の交流機会を産官学連携で取り組んでいる。また9月に開業した道後温泉別館飛鳥乃湯の職員の研修の1 コマを提供した。

コンソーシアムは観光サービス産業経営者の交流機会であり、講演会聴講や観光人材育成の懇談を行っている。大切なのは人・仕事・まちの振興を進めるための信頼関係、心の交流である。

・情報発信としては、公益社団法人日本観光振興協会の広報誌『観光とまちづくり』や愛媛県の公益社団法人えひめ地域政策研究センターの調査研究情報誌『ECPR』に取組みを紹介した。

琉球大学観光産業科学部 宜志富 知恵子 氏

沖縄21世紀ビジョンは2030年ごろにあるべき姿を実現するために沖縄県が制定した。この人材を育成していくことが琉球大学のプロジェクトである。

12の講座を開講する。3年目の今年は、旅行、スポーツ、サービスマネジメント、ビッグデータ活用、インターンシップ特別コースを新たに設置した。受講奨励科目で簿記やマーケティング等、通常の科目との連携も図っている。

産学連携の体制図では、産業界から講師の派遣やインターンシップの受け入れ、本学からは企業の課題解決の提案を行っている。実際に企業に受け入れられた提案もある。

・包括連携協定を締結し次年度から自走化するための準備もしている。

前期はどの講義でも経営に必要な数字を取り入れることを重視し、企業の声を聞けるということでいずれも定員の倍の希望者数となり、受講者は抽選で選んでいる。

インターンシップ特別コースでは、日本トランスオーシャン航空の協力で、web制作、機内販売商品企画、JALJTAセールスの協力で東洋大学と合同で滞在型旅行商品企画に取り組んだ。webではJTAの「美ら島物語」で「PHOTOGENIC TRIP」という特集ページを2ヶ月限定で掲載している。20代の県外の女子が宮古島に来た際にインスタグラムに載せたい場所を紹介している。機内販売は「ちゅらちゅらピアス」を2ヶ月限定で販売、売上目標数を超える販売数となっている。

・東洋大学との合同インターンシップでは、旅行プランを作る過程で観光客の目線を学び、当たり前と思っていた沖縄の魅力を再確認し、基本的な知識の少なさに驚いていた。

今後は国際物流、沖縄ツーリストの寄付講座としてフィールドワーク、グループディスカッションを取り入れ、旅行の基礎から新しい取組までを学べる講座、1、2年生にサービス産業の基礎を現場で学んでもらう講座等を開講する。

<意見交換>
・大学側からも依頼をする相手の業態を見ながら提案するといった工夫が必要であるなどインターンシップのあり方について意見交換がなされた。
・ビジネスマンの基礎的な知識と基礎的な社会常識の教育について意見交換がなされた。
・人材不足や後継者づくりといった組織内のマネジメントについて意見交換がなされた。
・従来型の観光産業は労働集約的であり、その生産性をいかに向上させるかについて、意見交換がなされた。

以上

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