経済産業省
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日中投資保護協定について
(投資の奨励及び相互保護に関する日本国と中華人民共和国との間の協定)

  1. 署名と告示

    1988年8月27日 北京にて署名
    1989年5月12日 告示



  2. 協定全文

    日本国政府及び中華人民共和国政府は、 両国間の経済的協力を強化することを希望し、 投資、投資に関連する事業活動及び投資財産について良好な待遇及び保護を与えることを通じて、それぞれの国の国民及び会社による他方の国の領域内における投資のための良好な条件を作り出すことを意図し、投資の奨励及び相互保護が,両国間の経済及び技術の交流を促すこととなることを認識し、 両国政府の代表の交渉を経て、 次のとおり協定した。

第1条 この協定の適用上、
(1) 「投資財産」とは、一方の締約国の国民又は会社により他方の締約国の領域内において、投資の時点において当該他方の締約国の法令に従って、又はこれに違反しないで投資の対象とされる次のものを含むすべての種類の資産をいう。
 
(a) 株式及びその他の形態の会社の持分
(b) 金銭債権及び金銭的価値を有する契約に基づく給付の請求権
(c) 動産及び不動産に関する権利
(d) 特許権,商標権,営業用の名称及びサービス・マークに関する権利その他の工業所有権並びにノウハウに関する権利
(e) 天然資源の探査及び採掘のための権利を含む特許に基づく権利
(2) 「収益」とは、投資財産から生ずる価値、特に、利益、利子、資本利得、配当、使用料及び手数料をいう。
(3) 「国民」とは、一方の締約国に関しては、当該一方の締約国の国籍を有する自然人をいう。
(4) 「会社」とは、
(a) 日本国に関しては、有限責任のものであるかないか、法人格を有するものであるか ないか、また、金銭的利益を目的とするものであるかないかを問わず、社団法人、組合、会社及び団体をいう。
(b) 中華人民共和国に関しては、企業その他の経済組織及び団体をいう。
一方の締約国の関係法令に基づいて設立され、かつ、当該一方の締約国の領域内に 住所を有する会社は、当該一方の締約国の会社と認められる。


第2条 各締約国は、自国の領域内において、他方の締約国の国民及び会社による投資をできる限り助長し、かつ、自国の関係法令に従って許可する。
    2 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国の領域内において、投資の許可及び投資の許可に関連する事項に関し、第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。

第3条 いずれか一方の締約国が自国の領域内において他方の締約国の国民及び会社に対し投資財産、収益及び投資に関連する事業活動に関して与える待遇は、第三国の国民及び会社に与える待遇よりも不利な待遇であってはならない。
    2 いずれか一方の締約国が自国の領域内において他方の締約国の国民及び会社に対し投資財産、収益及び投資に関連する事業活動に関して与える待遇は、当該一方の締約国の国民及び会社に与える待遇よりも不利な待遇であってはならない。
    3 この条にいう「投資に関連する事業活動」は、次のものを含む。
    (a) 支店、代理店、事務所、工場その他の事業活動の遂行のための適当な施設の維持
    (b) 自己の設立し、又は取得した会社の支配及び経営
    (c) 専門家(技術者、高級職員及び弁護士を含む。)その他の労働者の雇用及び解雇
    (d) 契約の締結及び履行

第4条
いずれか一方の締約国が自国の領域内において他方の締約国の国民及び会社に対し自己の権利の行使及び擁護のため裁判所の裁判を受け及び行政機関に対して申立てをする権利に関して与える待遇は、当該一方の締約国の国民及び会社又は第三国の国民及び会社に与える待遇よりも不利な待遇であってはならない。


第5条 いずれの一方の締約国の国民及び会社の投資財産及び収益も、他方の締約国の領域内において、不断の保護及び保障を受ける。

    2 いずれの一方の締約国の国民及び会社の投資財産及び収益も、他方の締約国の領域内において、公共のため、かつ、法令に従ってとられるものであり、差別的なものでなく、また、補償を伴うものである場合を除くほか、収用、国有化又は収用若しくは国有化と類似の効果を有するその他の措置の対象としてはならない。
    3 2にいう補償は、2にいう収用、国有化又は収用若しくは国有化と類似の効果を有するその他の措置がとられなかったとしたならば当該国民及び会社が置かれたであろう財産状況と同一の状況に当該国民及び会社を置くものでなければならない。補償は、遅滞なく行われなければならない。補償は、実際に換価をすることのできるもので行われなければならず、かつ、補償の移転は、自由でなければならない(その換価又は移転に当たって用いる外国為替相場は、補償の価額が決定された日の相場によるものとする。)。
    4 いずれか一方の締約国の国民及び会社で、その投資財産及び収益が収用、国有化又は収用若しくは国有化と類似の効果を有するその他の措置の対象となったものは、これらの措置及び補償の価額に関し、これらの措置をとった他方の締約国の関係法令に従って当該他方の締約国の管轄裁判所の裁判を受け又は権限のある行政機関に対して申立てをする権利を有する。
    5 いずれか一方の締約国が自国の領域内において他方の締約国の国民及び会社に対し1から4までに定める事項に関して与える待遇は、第三国の国民及び会社に与える待遇よりも不利な待遇であってはならない。

第6条 いずれか一方の締約国の国民及び会社で、他方の締約国の領域内において、敵対行為の発生又は国家緊急事態により投資財産、収益又は投資に関連する事業活動に関して損害を被ったものは、当該他方の締約国が当該敵対行為の発生又は国家緊急事態に関連して何らかの措置をとる場合には、第三国の国民及び会社に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。


第7条 いずれか一方の締約国が、自国の国民又は会社に対し、他方の締約国の領域内にある投資財産及び収益に関して引き受けた保証に基づき支払を行う場合には、当該他方の締約国は、当該支払の原因となった投資財産及び収益に対する当該国民又は会社の権利又は請求権の当該一方の締約国への移転並びにこれに関連して生ずる当該国民又は会社の請求権又は訴権についての当該一方の締約国による代位を承認する。権利又は請求権の移転に基づき当該一方の締約国に対し支払われる資金の移転については、第5条2から5まで及び次条の規定を準用する。


第8条 いずれの一方の締約国の国民及び会社も、他方の締約国により、両締約国の領域の間及び当該他方の締約国の領域と第3国の領域との間に行われる支払、送金及び投資財産の清算の価額を含む金銭証券又は資金の移転の自由を保証される。
    2 1の規定は、いずれか一方の締約国が、自国の関係法令に従い、為替制限を課することを妨げるものではない。

第9条 この協定は、いずれか一方の締約国の国民及び会社の投資財産及び収益で、この協定の効力発生前1972年9月29日以後に他方の締約国の領域内において当該他方の締約国の関係法令に従って取得されたものについても適用する。


第10条 この協定は、両締約国間の外交関係又は領事関係の有無にかかわらず、適用する。


第11条 いずれか一方の締約国の国民又は会社による他方の締約国の領域内における投資に関する当該国民又は会社と当該他方の締約国との間の紛争は、可能な限り、紛争の当事者間の友好的な協議により解決される。

    2 第5条3にいう補償の価額に関するいずれか一方の締約国の国民又は会社と他方の締約国その他の当該他方の締約国の法令により補償の義務を負う者との間の紛争が、いずれか一方の当事者が紛争の解決のための協議の申入れを行った日から6箇月以内に解決されない場合には、その紛争は、当該国民又は会社の要請に基づき、1965年3月18日にワシントンで作成された国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約(以下「ワシントン条約」という。)を参考として設けられる調停委員会又は仲裁委員会に付託されるものとする。その他の事項に関するいずれか一方の締約国の国民又は会社と他方の締約国との間の紛争は、両当事者間の合意により、前記の調停委員会又は仲裁委員会に付託される。当該国民又は会社は、当該他方の締約国の領域内において行政的又は司法的解決を求めている場合には、紛争を仲裁に付託することができない。
    3 2に規定する仲裁委員会は、いずれか一方の当事者が他方の当事者から2に規定する紛争の仲裁を要請する通知を受領した日から60日の期間内に各当事者が任命する各1人の仲裁人と、このようにして選定された2人の仲裁人がその後の90日の期間内に合意する仲裁委員長となるいずれの締約国の国民でもない第3の仲裁人との3人の仲裁人から成る。
    4 各当事者の任命した仲裁人が3に規定するその後の90日の期間内に第3の仲裁人について合意しなかった場合には、いずれか一方の当事者が、両当事者があらかじめ合意する第3者に対し、両締約国が共に外交関係を有する第3国の国民である第3の仲裁人を任命するよう要請する。
    5 仲裁手続は、仲裁委員会がワシントン条約を参考として定める。
    6 仲裁委員会の決定は、最終的なものとし、拘束力を有する。仲裁委員会の決定の執行は、執行が求められている領域の属する国で適用されている仲裁決定の執行に関する法令に従って行われる。仲裁委員会は、その決定の根拠を陳述し、かつ、いずれか一方の当事者の要求に応じその理由を明らかにしなければならない。
    7 各当事者は、自己が任命した仲裁人に係る費用及び自己が仲裁に参加する費用をそれぞれ負担する。仲裁委員長がその職務を遂行するための費用及び仲裁委員会の残余の費用は、両当事者が折半して負担する。
    8 2に規定する仲裁委員会への付託が行われた場合には、当該案件につき国家間の請求を行うことができない。

第12条 いずれか一方の締約国の国民又は会社が実質的な利益を有する第3国の会社は、他方の締約国の領域内において、当該他方の締約国と当該第3国との間の国際協定で投資及び投資財産の保護に関するものが効力を有している場合を除き、次の待遇を与えらる。
    (1) 第2条2、第3条、第5条1から4まで、第6条及び第9条に定める事項に関し、 第3国の国民又は会社が実質的な利益を有するその他の第3国の会社が当該他方の締約国の領域内において与えられる待遇よりも不利でない待遇
    (2) 第3条,第5条1から4まで、第6条及び第9条に定める事項に関し、当該他方の締約国の国民又は会社が実質的な利益を有する第3国の会社が当該他方の締約国の領域内において与えられる待遇よりも不利でない待遇

第13条 各締約国は、この協定の運用に影響を及ぼす問題に関して他方の締約国の行う申入れに対し好意的な考慮を払うものとし、また、当該申入れに関する協議のための適当な機会を与える。
    2 この協定の解釈又は適用に関する両締約国間の紛争で外交交渉によっても満足な調整に至らなかったものは、仲裁委員会に決定のため付託する。仲裁委員会は、いずれか一方の締約国が他方の締約国から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から60日の期間内に各締約国が任命する各1人の仲裁委員と、このようにして選定された2人の仲裁委員がその後の90日の期間内に合意する仲裁委員長となるいずれの締約国の国民でもない第3の仲裁委員との3人の仲裁委員から成る。
    3 各締約国の任命した仲裁委員が2に規定するその後の90日の期間内に第3の仲裁委員について合意しなかった場合には、両締約国は、国際司法裁判所長に対し、いずれの締約国の国民でもない第3の仲裁委員を任命するよう要請する。
    4 仲裁委員会は、投票の過半数による議決で決定を行う。決定は、最終的なものとし、拘束力を有する。
    5 仲裁手続は、仲裁委員会が定める。
    6 各締約国は、自国が任命した仲裁委員に係る費用及び自国が仲裁に参加する費用をそれぞれ負担する。仲裁委員長がその職務を遂行するための費用及び仲裁委員会の残余の費用は、両締約国が折半して負担する。

第14条 両締約国は、この協定の実施状況及び両国間の投資に関連する問題の検討を行うこと、外国投資の受入れに関するいずれか一方又は双方の国の法制度又は政策の進展に関連して、この協定の運用及びこれに関連する事項について協議を行うこと並びに、必要な場合には、両締約国の政府に対し適当な勧告を行うことを目的として、両締約国の政府の代表から成る合同委員会を設置する。合同委員会は、いずれか一方の締約国の要請により、東京又は北京で交互に会合する。


第15条 この協定は、その効力発生のために国内法上必要とされる手続がそれぞれの国において完了したことを確認する旨の通告が交換された日の後30日目の日に効力を生ずる。この協定は、10年の期間効力を有するものとし、その後においても、2に定めるところにより終了する時まで効力を存続する。
    2 いずれの一方の締約国も、1年前に他方の締約国に対して文書による予告を与えることにより、最初の10年の期間の終わりに又はその後いつでもこの協定を終了させることができる。
    3 この協定の終了の日の前に取得された投資財産及び収益に関しては、前各条の規定は、この協定の終了の日から更に15年の期間効力を存続する。
    以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
    1988 年8月27日に北京で、ひとしく正文である日本語、中国語及び英語により本書2通を作成した、解釈に相違がある場合には、英語の本文による。
日本国政府のために
中 島 敏次郎

中華人民共和国政府のために
鄭 拓 彬
議定書

投資の奨励及び相互保護に関する日本国と中華人民共和国との間の協定(以下「協定」という。)に署名するに当たり、下名は、協定の不可分の一部を成す次の規定を協定した。
  1. 協定のいかなる規定も、著作権に関し、いかなる権利も許与し、又はいかなる義務も課するものと解してはならない。

  2. 協定のいかなる規定も、工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約
    の規定又は同条約の規定でその後に改正された規定が両締約国間で効力を有する限り、当該規定によりいずれか一方の締約国が他方の締約国に対して負う義務に影響を及ぼすものと解してはならない。

  3. 協定第3条2の規定の適用上、いずれか一方の締約国が、関係法令に従って、公の秩序、国の安全又は国民経済の健全な発展のため真に必要な場合において他方の締約国の国民及び会社に差別的な待遇を与えることは、「不利な待遇」とみなしてはならない。
  4. 協定第3条2の規定は、いずれか一方の締約国が自国の領域内における外国人及び外国会社の活動に関して特別の手続を定めることを妨げるものではない。た だし、当該手続は、同条2に定める権利を実質的に害するものであってはならない。
  5. いずれの一方の締約国も、投資を行うこと及び投資に関連する事業活動を行うことを目的として自国の領域に入国し及び滞在する希望を有する他方の締約国の国民の入国、滞在及び居住に係る申請に対し、自国の関係法令に従い、好意的な考慮を払う。
  6. 協定第3条の規定にかかわらず、いずれの一方の締約国も、相互主義に基づき、又は二重課税の回避のため若しくは脱税の防止のための協定により租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。
  7. 協定第8条2の規定は、いずれか一方の締約国が、為替制限に関して国際通貨基金協定の締約国として有するか又は有することがある権利及び義務に影響を及ぼすものではない。
  8. 協定第11条1の規定は、いずれか一方の締約国の国民又は会社が他方の締約国の領域内において行政的又は司法的解決を求めることができることを妨げるものと解してはならない。
  9. 協定第12条にいう「実質的な利益」とは、会社を支配し、又はこれに決定的な影響力を及ぼすことを許すような程度の利益をいう。いずれか一方の締約国の国民又は会社が有する利益が実質的な利益に当たるか当たらないかは、個々の場合において両締約国間の協議によって決定される。


    以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの議定書に署名した。

    1988年8月27日に北京で、ひとしく正文である日本語、中国語及び英語により本書2通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。
日本国政府のために
中 島 敏次郎

中華人民共和国政府のために
鄭 拓 彬

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