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非農産品市場アクセス(NAMA)

非農産品市場アクセス(NAMA)

議論の背景

農産品以外のすべての品目(鉱工業品及び林水産物)を含む非農産品の貿易は、世界貿易の約9割を占めており、市場アクセスの改善は世界経済活性化の鍵である。累次ラウンドを通じて、先進国の関税は全体として低水準となっているが、なお一部の品目において高関税が残存し、また開発途上国の中には全体として高関税の国も少なくない。

こうした状況を踏まえ、2001年11月のドーハ閣僚宣言では、一般に新しい貿易の創造による開発のための市場アクセスの改善の役割が強調され、特に非農産品市場アクセスの分野では、関税・非関税障壁の削減又は撤廃について交渉を行うことに合意した。

その後、2003年のカンクンにおける第5回閣僚会議は決裂に終わり、非農産品市場アクセス交渉も暫く停滞したが、2004年7月の一般理事会で採択された「枠組み合意」において、カンクン閣僚会議の際に議論された閣僚宣言案(「デルベス・テキスト」)を基本とした枠組みにより交渉を行うことに合意し、交渉は再び動き始めた。

2005年1月末にスイスのダボスで開催された非公式閣僚会合において、同年12月の香港閣僚会議におけるモダリティ合意と同夏までの「モダリティたたき台」の作成という交渉の進め方が話し合われ、また、関税引き下げ方式(フォーミュラ)に関する新たな提案が示されたことを契機に、フォーミュラの具体的なあり方についての議論が本格化した。同年4月に我が国が幕張で開催したNAMA東アジア閣僚会合、6月に韓国で開催されたAPEC貿易担当大臣会合、7月上旬に大連で開催された非公式閣僚会合等を通じて、スイス・フォーミュラ(後述)支持が大勢となっていったが、新興市場の関税引き下げに高い関心を有する先進国と、開発事情への特別な配慮を求める開発途上国の間の立場の違い、また農業交渉の難航等により、12月までのモダリティ合意は実現せず、香港閣僚会議では、スイス・フォーミュラの採用、非譲許品目についてノン・リニア・マークアップ方式の採用等に合意する香港閣僚宣言を採択し、2006年4月末にモダリティ確立を目指す新たなスケジュールが設定された。

2006年に入り、フォーミュラによる関税削減効果に関するシミュレーション結果を参照しつつ、モダリティの中核的な要素(フォーミュラの係数、開発途上国向けの柔軟性、非譲許品目に関するかさ上げ幅)について、交渉会合等で議論されたが、先進国と開発途上国の立場の違いは収斂に向かうことなく、2006年4月末までのモダリティ確立には至らなかった。

同年6月、NAMA交渉会合議長は、2004年の「枠組み合意」及び香港閣僚宣言において既に合意された事項に、交渉の現状を反映して可能な範囲で一部文言を付け加えて作成したモダリティ・テキスト案に、議長のコメントを付した報告書を発出した。6月末の閣僚会合及び7月下旬のG6閣僚会合では、農業とNAMAのモダリティ合意に向けて議論されたが、農業交渉における各国の立場の隔たりのため議論が膠着し、WTO事務局長は、交渉の中断を宣言した。

しかしその後、ラウンドの早期再開の機運は徐々に高まり、11月の貿易交渉委員会において、WTO事務局長は、2007年末までに交渉を終結することを目指して、各交渉議長の下での事務的作業を進めるべきとの考え方を表明した。

2007年に入って、交渉は本格化し、NAMA交渉会合においても技術的な論点から議論を再開して、6月までに一通り議論がなされ、論点の整理は進んだものの、具体的な関税削減効果を決めるフォーミュラの係数については収斂に至らなかった。7月にはNAMA交渉会合議長から、これまでの交渉経緯に鑑み、議長として考えるNAMA交渉のモダリティ案をまとめたテキストが発出された。

これに対し、NAMA交渉において強硬な立場をとる開発途上国グループ等は、10月9日に開催された一般理事会において、議長テキストに対する批判的な立場を主張、これに続いてフォーミュラによる関税削減に対する柔軟性拡大を求める一連の提案が開発途上国から提出された。他方で、NAMA交渉でより高い成果を求める先進国は、7月の議長テキストはNAMA交渉のマンデートを反映したものであることを強調し、議長テキストで示されているフォーミュラにおける開発途上国の係数を支持するとともに、途上国の柔軟性拡大に反対する共同文書を提出するなど、各グループが積極的な動きを見せたが、いずれも合意につながらなかった。

2008年に入って開催された交渉会合では、改訂議長テキスト発出に向けてすべての論点が議論されるとともに、二国間・複数国間でも非公式な協議が精力的に行われた。

2月の一般理事会において、WTO事務局長は、年内の交渉妥結のため、イースター前後を目処にモダリティを確立すべきとの考えを表明。NAMA交渉議長は2月8日、2007年7月以降の交渉の現状を反映した議長テキストの改訂版(第1次改訂議長テキスト)を発出した。第1次改訂議長テキストでは、2004年の枠組み合意以来記載されていた、途上国の柔軟性にかかる数字を削除・空欄化し、柔軟性を巡る議論において、加盟国間のコンセンサスが無かったことを正確に反映した。

その後、事務レベルでの協議を重ね、同年5月20日にNAMA交渉議長は、2月以降の議論を反映した第2次改訂議長テキストを発出した。第2次改訂議長テキストでは、係数と柔軟性の組み合わせとして3つの選択肢を提示し、関税削減率が高いほど柔軟性が拡大するスライディング・スケールの考え方が盛り込まれた。

更なる事務レベルでの協議を経て、6月25日、WTO事務局長は7月閣僚会合の開催を表明し、7月10日、NAMA交渉議長は、閣僚会合の議論の土台となる第3次改訂議長テキストを発出した。第3次改訂議長テキストでは、前回テキスト発出以来の精力的な議論の成果を反映し、調整中であることを示すブラケット(括弧書き)の数が大幅に減少した。

7月21日より開催されたWTO非公式閣僚会合では、2日目から日・米・欧・豪・印・中・伯の主要7ヶ国の閣僚により集中的な議論が行われた。6日目に、先進国と途上国の歩み寄りを促す事務局長提案が提示され、合意の姿が見えそうになった瞬間もあったが、とりわけ途上国の特別セーフガード(農業分野)発動基準を巡って、あと一歩のところで収斂を見いだせず、11日間にわたる夜を徹しての交渉も空しく、モダリティ合意には至らなかった。

8月12日、NAMA交渉議長は、7月閣僚会合における議論の積み重ねを記録したプログレス・レポートを発表した。同レポートには、閣僚会合の結果、第3次改訂議長テキストに示された論点のうち、フォーミュラの係数及び柔軟性、反集中条項等の多くの論点について意見の収斂が見られたことが記述された。

秋以降、NAMA交渉では、分野別関税撤廃の進め方を中心に事務レベルでの協議が行われた。11月15日、G20の金融・世界経済首脳会合宣言に、年内にモダリティ合意に至るよう努力する旨盛り込まれたことを受け、交渉が加速化し、12月6日には第4次改訂議長テキストが発出された。第4次改訂議長テキストは、フォーミュラの係数及び柔軟性等について7月閣僚会合で収斂した数字を反映し、分野別関税撤廃と一部の途上国にフォーミュラ適用の例外事項を設ける特定国(アルゼンチン、南アフリカ、ベネズエラ)の特別扱い等が残された論点であることを明示するとともに、その他の論点については、交渉の進捗を踏まえ、議長が着地点と考える内容を提示した。

12月8日、WTO事務局長は、分野別関税撤廃(NAMA)、途上国の特別セーフガード(農業分野)、綿花の3分野について関係国と協議を行い、その結果次第で閣僚会合を開催する旨表明した。しかしながら、WTO事務局長による閣僚レベルでの調整にもかかわらず、分野別関税撤廃と途上国の特別セーフガードについて、対立する主要国の間の溝は埋まらず、閣僚会合の開催は見送られ、2008年内のモダリティ合意は実現しなかった。

2009年に入ってからは、1月31日スイスのダボスで開催されたスイス政府主催WTO非公式閣僚会合において、主要国閣僚により、残された課題の難しさを認めつつも、ラウンド交渉の早期妥結に向けた各国の決意を再確認すると同時に、ラウンドがまとまることこそ、厳しい環境でも国際協調が可能なことを示し、最大の経済対策になるとの認識が共有された。

2009年は、米国の政権交代により米国通商代表(USTR)以下主要な交渉担当者の指名人事が遅れた等の事情も相まって、米国のラウンド交渉に対する姿勢が定まらないまま、各国間での交渉は政治的に対立する論点を避け、2008年12月の第4次改訂議長テキストを土台として実務レベルでの技術的な議論が続けられた。

NAMAに関しては、分野別関税撤廃、非関税障壁(NTB)、途上国の柔軟性の適用、特定国の特別扱い、特恵浸食などを主要論点として交渉が行なわれた。分野別関税撤廃では、交渉会合において大きな動きはなかったものの、提案国が主導して参加国との調整を行うアウトリーチ活動を継続し、一部の提案では新たな共同提案国が参加することとなった。NTBでは個別提案毎に議長主催の少数国会合を開催し、実務者間での詳細な議論が開始された。特に2009年9月からほぼ毎月開催されたNAMA交渉会合においては、参加国から提案内容への質問やテキストの修正提案が提出され、個別提案毎に集中的な議論が行なわれた。途上国の柔軟性の適用に関しては、適用品目に関する市場アクセスの透明性を高めるべく先進国と新興国の間での二国間協議が実施されたが、より効果的な関税削減を求める先進国と、適用品目の選択は自ら決定するものと主張する途上国との間の隔たりに大きな変化はみられなかった。特定国の扱いや特恵浸食等についても途上国から提起されたものの議論は進展しなかった。

7月にはG8、G20サミットにおいて2010年中の最終合意の実現が約束され、2010年第一四半期には議論の進捗を確認(ストックテイク)することも合意された。これを受けて、高級事務レベル会合(SOM:Senior Officials Meeting)と各交渉分野の実務レベルでの会合が頻繁に開催された。9月以降の高級事務レベル会合では、第4次改訂議長テキストのモダリティ案におけるフォーミュラ以上の関税削減を求める米国と、同モダリティ案のバランスを維持すべきと主張する中・印・伯等の新興国の意見の溝が埋まらず、関税削減に関する議論は進まなかった。2009年11月末から12月初頭にかけてジュネーブで開催されたWTO定例閣僚会合においても、ラウンド交渉に関しては、2010年中の交渉終結及びそのための来年第一四半期のストックテイクの必要性を確認するにとどまっている。

現在の概況

2010年に入ってからも、NAMA 交渉会合ではNTBを中心とした実務レベルでの議論が継続している。1月末にダボスで開催されたWTO非公式閣僚会合において2010年中のラウンド合意を再確認した後、3月にはストックテイク会合が開催され、NAMA交渉議長からはNTBの進捗を含む現状評価が行われるとともに、今後の交渉会合での作業として、最終的なモダリティ案にリーガルテキストの形で反映させるべくNTBに重点を置いていくこと、また分野別関税撤廃等の追加的な市場アクセスについては、二国間の協議を関心国が主導して進める必要があるとの見通しが示された。

分野別関税撤廃については、米国を中心とする先進国と途上国の間で膠着状況が続いていたが、状況を打開すべく、5月にパリで開催されたWTO非公式閣僚会合及び6月に札幌でのAPEC会合の機会に開催された高級事務レベル会合において、我が国から分野別関税撤廃の野心の水準を維持しつつも各国のセンシティビティに配慮し、製品分野毎に柔軟な条件設定を行うことで合意案を探る「バスケット・アプローチ」を提案した。7月以降は、各分野別提案の共同提案国による大使級会合を我が国が開催し、本提案についての理解を得つつ、途上国との対話を進めていくための各国の協力を求めた。10月から11月にかけては、交渉分野毎に大使級の会合(ブレーン・ストーミング会合)が開催され、現状の論点整理等を通じて具体的な交渉に入るための準備が整えられていった。分野別関税撤廃についても、新興国を中心に、追加的な市場アクセスの議論を行うことに対する慎重な意見があったものの、主要貿易国が参加してバスケット・アプローチに基づく議論を行っていくことについて概ね共通理解が得られ、これまで膠着していた分野別の議論についてもようやく進展の兆しが見られた。

しかしながら、当初約束された年内の最終合意は実現されず、11月に横浜で開催されたAPEC首脳会合及び閣僚会合、またソウルで開催されたG20サミットにおいては、各国の政治日程等も考慮すれば2011年が重要な「機会の窓(Window of Opportunity)」であるとして、2011年中のラウンド最終合意に向けて切迫感を持って交渉を進めることが確認された。NAMA交渉においても、これを受けて11月以降、NTB各提案について議長が主導して少数国での集中的な議論が行われ、テキスト改訂に向けた詰めの作業が進められていった。また、分野別関税撤廃についても、各分野の提案国が主導してバイ・マルチの議論が加速され、バスケット・アプローチに基づく品目毎のセンシティビティや輸出関心についての情報交換や、各分野別提案における関税削減の条件等の検討が進められた。

2011年に入り、1月末にダボスで開催されたWTO非公式閣僚会合において、WTO事務局長より、4月のイースターまでの改訂議長テキスト発出と、夏前にモダリティ合意を実現するとのスケジュールが示された。これを受けて、1月以降は継続的にNTBの少数国会合やNAMA交渉会合、分野別関税撤廃の関係国会合等が開催された。4月に公表された改訂議長テキスト等では、関税交渉に関して、スイス・フォーミュラの係数についてリオープンしないこととしたが、分野別関税撤廃については、“橋渡しの出来ない政治的なギャップがある”とした。他方、非関税交渉に関しては、2009年以降の作業内容を受けた内容となった。

5月のAPEC貿易大臣会合及びOECD閣僚会合では、ドーハ・ラウンド交渉の停滞に懸念が示されるとともに、同交渉の妥結に向けて様々なアプローチを探求していくことが表明された。その後もNTBの少数国会合等が継続的に開催されたものの、具体的な進捗は見られなかった。

このような状況を受けて、11月のAPEC閣僚・首脳会合において新たな斬新で信頼のあるアプローチの探求が確認され、12月の第8回WTO定期閣僚会議で、進展が可能な分野での先行合意を含めた新たなアプローチを進めることが約束された。

2012年に入り、1月末にダボスで開催されたWTO非公式閣僚会合において、日本より、新たなアプローチを進めるために技術的作業を行うことを提案した。

なお、2012年7月に前議長が退任し、同年11月に新議長(スイス大使)が、就任した。

モダリティの中核をなす主要要素の交渉概況は以下のとおり。

関税引き下げ方式(フォーミュラ)

フォーミュラとは、個別品目ごとに適用される関税引き下げ方式であり、NAMA交渉全体の成果の水準に直結することから、交渉の最大論点となっている。「枠組み合意」において、高い関税率ほど引き下げ幅の大きい方式(非直線形)を採用することに合意していたが、具体的には大きく分けて、各国共通の方式(係数)を志向する「スイス・フォーミュラ」と、各国ごとに現行平均譲許税率を基準として方式(係数)を定める「ABIフォーミュラ」の二つが対立してきた。後者は、現行譲許税率の高い一部開発途上国(ブラジル、インド等)が強く主張してきたが、後者では現行の各国間の関税水準格差が改善されないことから支持は広がらず、香港閣僚会議において、複数の係数を持つスイス・フォーミュラを採用することが合意された。

2006年に入り、先進国向け・開発途上国向けの2係数の水準、開発途上国向けの柔軟性の幅及び非譲許品目のかさ上げ幅について、一定の作業仮説の下、実際のデータを用いて関税削減効果についてのシミュレーションも試みられた。

実際の貿易拡大による開発の成果を生む観点から実行税率の削減効果を評価すべきとする先進国と、これに反発し「関税削減における相互主義の軽減」とは譲許税率の削減率の平均が先進国において開発途上国よりも大きい係数とすべきとする開発途上国との間で議論が重ねられ、2008年7月の閣僚級会合において、係数及び柔軟性の数字について、議長提案で一定の収斂が見られ、2008年12月の第4次改訂議長テキストに反映されている。なお、アルゼンチン、南アフリカ等一部の途上国は、フォーミュラ適用による関税の引き下げを緩和する特別な取扱いを要求しているが、合意には至っていない。

開発途上国向けの柔軟性

枠組み合意において、開発途上国については一定の限度内で、フォーミュラ適用による関税引き下げの軽減又は免除が認められている。開発途上国はこの関税引き下げにおける柔軟性の確保・拡大を主張する一方、先進国は、この柔軟性が適用されると、高関税品目が温存されるおそれがあるとしてこれを必要以上無制限に認めるべきではないと主張し、先進国と開発途上国の主たる対立点となっていた。

関税削減率が高いほど柔軟性が拡大するスライディング・スケールの考え方と関税分類の各章ごとに柔軟性の適用を制限する反集中条項が導入され、2008年7月、先進国と途上国の歩み寄りを促す議長提案に対して収斂がみられた。

非譲許品目の扱い

非譲許品目は、関税引き下げの困難な品目であることが多いことから、各国の間で議論が対立してきたが、2005年6月のAPEC閣僚宣言を受け、原則としてすべての品目の譲許、フォーミュラ適用による関税引き下げ、低関税率の品目への配慮という三つの原則について、一部の国を除き、広範な共通理解が得られた。同年12月の香港閣僚会議では、非譲許の低関税品目に配慮するための方式として、基準年(2001年)の実行税率に一定のかさ上げ(マークアップ)をした上でフォーミュラを適用する「ノン・リニア・マークアップ方式(非線形かさ上げ方式)」の採用について合意した。これを受けて、具体的なかさ上げの幅について交渉が行われた結果、25%ポイントのかさ上げ幅とすることで収斂がみられた。

分野別関税撤廃

分野別関税撤廃は、産業分野を特定してフォーミュラ適用による関税引き下げを超える関税撤廃・関税率の調和を行おうとするものであり、現在、電気・電子や化学等、14の分野が提案されている。分野別関税撤廃の成立要件としては、各分野における世界貿易の主要割合(クリティカルマス)を占める加盟国が参加することとされているため、参加国を増やすべく、各分野の主導国を中心にアウトリーチ活動が行われている。我が国は、電気電子及び自動車・自動車関連部品の分野別関税撤廃の議論を主導している。

なお、分野別関税撤廃について第4次改訂議長テキストでは、モダリティ合意後に参加の条件等について具体的に交渉することとされているが、加盟国間の立場の違いを踏まえ、交渉にかかる予見可能性を高める観点から、モダリティ合意時に交渉への参加国と参加する分野を明示する案と、モダリティ合意時には交渉参加国が具体的にどの分野の交渉に参加するかを明示しない案の2案が提示されている。また、分野別関税撤廃への参加は交渉全体の成果にかかるバランスを取る観点から重要であるとの主張と、香港閣僚宣言に基づき分野別関税撤廃への参加は非義務的なものであるべきとの主張とが対立しており、現時点ではクリティカルマスが成立している分野別関税撤廃提案はまだない。

前述のように、2010年に我が国がバスケット・アプローチの考えを提案し、分野毎に、参加を予断しない形で、野心の水準は維持しつつ製品分野毎に各国の輸出関心やセンシティビティに配慮し、より柔軟な条件設定を行うことでクリティカルマス達成を目指すべく、実務レベルでのバイ・マルチの議論が進められた。

非関税障壁

非関税障壁(NTB:Non Tariff Barrier)とは、技術規格、表示義務、輸入規制その他関税によらない貿易障壁を指し、テーマ・分野毎に提案国が主導し、その撤廃に向け議論が行われている。

2008年12月のNAMA交渉議長テキストでは、非関税障壁に関し、13の提案が附属書に記載されている。これらの提案は、大きく分けて電気電子、自動車、繊維等の個別分野に係る国内規制や認証制度の調和志向、透明性の強化等を提案する「分野別」の提案と、NTB解消に向けた二国間の協議を促進するための手続き等を定める提案などの「水平的」な提案が含まれている。我が国も、希少資源等の輸出規制措置の透明性向上(加盟国への通報義務の新設等)に係る水平的提案を主導しているほか、再製造品に係る輸入規制等の解消に向けた分野別提案に参加している。

2009年9月からは非関税障壁を議論の中心としたNAMA交渉会合が定期的に開催され、各分野を横断的に扱おうとする新しい提案の提出や、優先検討事項とされたものを中心に各国から修正提案が示されるなど、実務レベルで提案内容の議論が行われてきた。

2010年末からは、優先検討事項とされた提案の一部について、各国からの修正提案の内容を統合したテキスト案を作成すべく、議長主催で10か国程度の少数国で構成されるコンサルテーションが行われており、各国間の意見の収斂と論点の整理が進められている。

2011年は、コンサルテーションの結果を受けて透明性提案や繊維ラベリング提案に関して集中的に議論が進められた。

2012年は、1月末のWTO非公式閣僚会合を受けて、技術的な作業の進め方について議論が行われた。

なお、我が国が主導する輸出規制透明性強化提案については、各国への参加働きかけを精力的に行っており、2008年4月に米国、7月に台湾、2009年3月に韓国、2010年2月にウクライナ、7月にコスタリカ、9月にチリが共同提案国として参加。引き続き、各国からの支持を拡大すべく二国間での協議が進められた。

最終更新日:2017年9月8日
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