経済産業省
文字サイズ変更
アクセシビリティ閲覧支援ツール

補助金ルール交渉

ドーハ開発アジェンダにおける補助金ルール交渉

議論の背景

2001年11月のドーハ閣僚宣言により補助金協定の規律強化のための交渉を行うこととなった。また、その一環として漁業補助金についても議論することが明記された(同宣言パラグラフ28)。ルール交渉グループでは、2011年3月末までに55回の交渉会合が開催されている。

続く2005年12月の香港閣僚宣言では、附属書D(ルール交渉)において、ドーハ閣僚宣言による権限の範囲内のすべての分野で、AD協定及び補助金協定の改正という形で実質的な成果を得ることは、ルールに基づく多角的貿易体制の発展とドーハ開発アジェンダ交渉の全体としてのバランスを確保する上で重要であるとの認識が示され、議長に対し、ラウンドの終結時期との関連において、期限内の成果を確保するために十分に早いタイミングで、交渉の最終局面のベースとなる包括的な条文案(議長テキスト)を準備する権限が与えられた。
 

交渉の経緯と主要国の立場

香港閣僚会合では、2006年7月がルール交渉議長による議長テキスト提出の目標期日とされた。しかし、同年7月に開催されたG6閣僚会合でドーハ・ラウンド交渉全体が中断されたことにより、議長テキストは発出されなかった。その後、同年12月に、補助金分野(漁業補助金を含む)について、技術的な議論を行うための交渉会合が再開され、ADに比べ相対的に議論が遅れていた補助金分野の議論が進められた。

2007年11月末に、「ルール議長テキスト」が発出された。議長テキストとは、現行のWTO協定の改定案であり、一般補助金分野(漁業補助金分野以外)では、補助金利益の算定方法に関する規定の追加等が盛り込まれるとともに、漁業補助金分野では、漁港インフラ補助金、操業経費補助金等の禁止される補助金と、資源管理補助金等の禁止の例外となる補助金が列挙された。

その後の交渉において、ルール交渉分野全体として各国から改訂議長テキストの早期発出の要望が強まる中、2008年5月、ルール交渉議長から「作業文書」が公表された。補助金分野についてもAD分野と同様に、「改訂テキスト」ではなく、議長作業文書公表までの交渉を概括し、議長テキストの各論点についての各国の反応及び議長テキスト発出後になされた各国の条文提案を記したものであった。

さらに、2008年12月に「改訂議長テキスト」が発出され、一般補助金分野では、AD 分野と同様に、各国の立場が一定程度収斂している分野について条文案が提示され、各国の見解が対立する「輸出信用」などについては、条文改正案は盛り込まれず、各国の見解とともに、項目名のみが記載された。漁業補助金分野については、規律のあり方に関する各国の意見の隔たりが大きく現時点では改訂テキストを提示できないとして、禁止補助金の範囲や適用除外等の今後の議論すべき主要な論点を質問形式で列挙した「漁業補助金に係る議論のためのロードマップ」が提示された。

2011年4月には、一般補助金分野、漁業補助金分野ともに、これまでの議論を総括する「議長報告」が提示された。

また、2015年には、WTO閣僚会合(MC10)に向けて、補助金分野をはじめとしたWTO協定改定を目指して、各国が提案を行った。

本交渉分野(一般補助金及び漁業補助金)に関する経緯は、以下のとおり。

補助金・相殺措置規律一般

一般補助金については、これまでのパネル・上級委員会の判断を踏まえた関連条文の改正や過去に失効した条文の復活といった提案がなされてきた。

米国は、「禁止補助金の拡大」に関し、2006年2月、財政状況が悪化した企業に対する出融資や、産業の再編、合理化を妨げる補助金、更には既に失効している協定6条1対象の補助金を新たな禁止補助金の有力候補とする旨の提案を行い、2007年6月には、2006年2月の提案を踏まえた協定条文の改正提案を提出した。また、2006年5月には補助金利益の配分方法に関する提案を提出した。

EUは、2006年5月に、国内向け販売価格と輸出価格の二重価格制度や、コスト割れ融資等を禁止補助金に追加することを提案した。

カナダは、2006年5月に「著しい害」について協定6条1(1999年末で失効)の復活と規律の改善等を提案し、同月にはブラジルも同じく「著しい害」に関する提案を行った。カナダは、「特定性」についても、様々な要素を総合判断すべきとの提案を2006年5月に提出したほか、「補助金利益の移転」について、2004年6月から2回にわたり提案した。

豪州は、2005年4月から4回にわたり、WTO違反が確定した補助金の撤廃に関する規律を明確化する提案を行っており、「事実上の輸出補助金」の規律の明確化についても2004年10月から4回にわたり提案してきた(2005年11月にブラジルも提案)。

その他、輸出信用(ブラジル)や相殺関税規律の明確化(カナダ、EU、台湾、インド)等の条文提案が提出され、議論が行われてきた。

なお、開発途上国は、開発目的のための「特別かつ異なる待遇」(S&D:Special and Differential Treatment)を要求しており、2006年5月にインド、エジプト、ケニア、パキスタンが、輸出補助金の例外措置の判断基準に関する提案を提出した。

その後、2009年12月に中国が相殺関税調査手続に関し、①調査開始後に新たに発見された補助金の扱い、②調査開始前の協議手続の拡充の2提案を提出した。その後、中国は、2010年10月に相殺関税調査手続のファクツ・アベイラブルに関する提案を行い、インドも2010年4月に同様の論点に係る提案を提出した。

2015年6月には、EUが通報義務に関する透明性強化の提案を行うとともに、同年10月にロシアも相殺関税調査手続きに関する重要事実開示・秘密情報の取扱い等の手続きの透明性向上に関する提案を行った。

また、開発途上国は、改めて「特別かつ異なる待遇」(S&D)を要求し、地域発展や技術開発等の補助金をDSの対象外とする提案及び開発途上国の補助金を国内産品優先使用補助金の対象から除外する提案などを行った。

我が国は、提案ペーパーは提出していないものの、ADの規律強化と同様に、補助金・相殺措置に関する規律強化、明確化には賛成の立場で交渉に臨んでいる。

漁業補助金

議長テキストに関し、我が国を含む多くの国が提案ペーパーを提出し、漁業補助金の規律の明確化・改善に向けて活発な議論が行われた。ニュージーランド、チリ、米国等(フレンズ・オブ・フィッシュ)は、漁業補助金が貿易歪曲性を生むだけでなく水産資源の悪化に拍車をかけているとして、漁業補助金を原則禁止とした上で、例外として認められた補助金のみを許容する方式をとるべきとの考えを有し、これに対し我が国、韓国、台湾及びEU等は、漁業補助金を原則禁止とする方式は、資源管理に貢献する補助金を禁止する恐れがあるだけでなく、「WTO補助金協定の原則に則って」漁業補助金の規律の明確化・改善を求めるドーハ宣言及び「過剰漁獲及び過剰漁獲能力につながる特定の補助金を禁ずる」香港閣僚宣言を超えるものであると反対しており、真に資源に悪影響を与える漁業補助金のみを禁止すべきとの立場であり、また、多くの開発途上国は、どのような形にせよ、開発途上国の漁業発展を妨げるような規律の強化をすべきでないとの立場という、様々な立場に基づく議論が行われた。

2011年以降交渉は停滞していたものの、2015年に入り、禁止補助金を限定した規律や透明性の強化といった新たな視点に立った提案が複数の国から出され始め、議論が行われるようになった。漁業補助金については今後も引き続き議論されることとなるが、我が国としては、真に資源に悪影響を与える漁業補助金のみを禁止すべきとの立場に基づき議論に参加していくこととなる。

経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.