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貿易と環境

ドーハ開発アジェンダにおける環境を巡る議論

議論の背景

 1994年4月のマラケシュ閣僚会議においては、貿易政策と環境政策を相互に支持的なものとすること等を目的として、WTOに貿易と環境に関する委員会(CTE)を設置すること、①WTO協定と環境目的の貿易措置(多国間環境協定(MEAs)に基づくものを含む)との関係、②WTO協定と以下の措置(環境目的の租税及び課徴金、強制規格、任意規格、パッケージング、ラベリング、リサイクリング等の産品に関する環境目的のための要件)との関係、③WTO協定と多国間環境協定の紛争処理機能との関係等、計10項目を具体的検討項目とすること等が決議された。

 その後、2001年11月のドーハ閣僚会議においては、EUが、①WTO協定とMEAsとの関係の明確化、②WTO協定と環境ラベリングとの関係の明確化、③科学的根拠が不十分な場合の危険性評価・管理の3論点について交渉化を求めた。しかしながら、大多数の国は貿易と環境の交渉化自体には反対で、前記10項目についての検討継続を支持していたため、閣僚宣言では、妥協的解決として、限定された分野での交渉の立ち上げ(パラグラフ31:(ⅰ)WTO協定とMEAs上の特定の貿易上の義務(STO:Specific Trade Obligation)との関係、(ⅱ)MEAs事務局とWTO委員会との情報交換等、(ⅲ)環境物品及びサービスについての市場アクセス改善等の3項目を貿易と環境委員会特別会合(CTESS)で検討)と、第5回閣僚会議(カンクン)における交渉可能性を残した検討の継続(パラグラフ32:(ⅰ)環境上の措置が開発途上国との関係での市場アクセスに関する影響、(ⅱ)TRIPS協定、(ⅲ)環境ラベリング)が盛り込まれた。

 2003年9月の第5回カンクン閣僚会議においては、上記パラグラフ32のいずれの項目も交渉化されず、カンクン後、2004年4月の会合から実質的な議論が再開された。

 2004年8月の一般理事会決定(枠組合意)では、CTESSにおいて、環境物品としての品目特定を行い、一方、NAMAにおいては、実際の関税引き下げ、撤廃について検討することが盛り込まれた。2005年12月の香港閣僚宣言では、パラグラフ31(ⅰ)及び(ⅱ)については、「作業の進捗を認識する」との記述し(宣言パラグラフ31)、パラグラフ31(ⅲ)については、「速やかに作業を完了させる」方針が確認された(宣言パラグラフ32)。

現在の概況

 パラグラフ31(ⅰ)(WTO協定とMEAsの関係)については、我が国、EU等が、WTOルールとMEAsの関係の概念的な整理(トップダウン・アプローチ)を主張、それ以外の各国(米、豪、開発途上国等)は、限られた個々のMEAsの条文とWTOルールとの関係の判別(ボトムアップ・アプローチ)を主張するとともに、米豪は国内における貿易担当・環境担当機関の連携により問題解決が可能として、CTESSにおける国内経験の共有を重視している。2007年のCTESSにおいては、MEAsの交渉及び実施にあたっての国内調整や、貿易担当・環境担当機関の連携に関する国内経験の共有、MEAsの専門知識の紛争処理における活用について、それまでの議論を整理するべく議論が継続された。

 パラグラフ31(ⅱ)(WTOとMEAsとの情報交換、オブザーバ資格付与基準)については、各国とも各事務局間の情報交換の重要性は認識しつつも、近年は議論が停滞していた。しかし、2006年5月にEUが、2007年2月には米国がそれぞれ提案を行ったことから、現在はこれら提案に基づき検討が行われている。

 パラグラフ31(ⅲ)(環境関連物品等の関税及び非関税障壁の削減)については、2002年の「貿易と環境委員会」における交渉開始以降、我が国をはじめ、米国、EU、カナダ、豪州、NZ、スイス、韓国等先進国が、関税削減・撤廃の対象とすべき環境物品のリストを提案し、2007年5月には、我が国、カナダ、EU、韓国、NZ、ノルウェー、台湾、スイス及び米国の9か国で作成した共同物品リストを提案した。これに対して、インド、南ア、ブラジル等を中心とする開発途上国は、マルチな取り決めとしての環境物品リスト作成(いわゆる「リスト・アプローチ」)につきまとう「デュアル・ユース」の問題(環境目的以外にも使用可能な物品がリストに含まれること)が解消されていないと主張し、個別具体的な環境保全・改善プロジェクトに使用される物品にのみ用途別免税を適用する方式(いわゆる「プロジェクト・アプローチ」)が望ましいとの従来からの主張を行った。また、2007年9月には、ブラジルが、リスト・アプローチでなく二国間交渉(リクエスト&オファー方式)に委ねるべきであり、バイオ燃料を対象とすべきとの提案を行った。また、2007年11月には、米国が、地球温暖化対策の一環として、エネルギー効率を高める製品やサービスに係る関税等の貿易障壁の撤廃をドーハ・ラウンドで交渉するようEUと共同で提案した。2008年7月には、CTESS議長より、各国より環境物品と認識している品目及び環境物品のリクエストとオファーを9月に提出し、10月にはそれらについての集中的な協議を実施するとのスケジュールが提示され、10月には具体的な品目提出のためのフォーマットが議長より各国に対して提示された。これを受けて、我が国は2010年2月に、気候変動問題への対処という観点から、省エネルギー製品等を関税削減の対象品目とした提案をWTOに提案した。その後も、議長の求めに応じ、各国から提案が提出されている。2012年9月にはAPECにおいて、54品目の環境物品について、2015年末までに実行関税率を5%以下に削減することが合意され、WTOにおける交渉にも良いシグナルとして好意的に受け止められたが、2013年末の第9回定期閣僚会合までは技術的な議論を継続すべきとの意見が加盟国間にあったため、現在まで交渉に大きな進展は見られない。このようななか、APECで合意された環境物品リスト(太陽光パネル、風力発電機、ガスタービン、気体ろ過器、排ガス測定器等)の作成等を受け、2014年7月には、WTOの有志国14か国・地域(日本、米国、EU、中国、韓国、台湾、香港、シンガポール、カナダ、豪州、ニュージーランド、スイス、ノルウェー、コスタリカ)による、環境物品交渉が立ち上げられた。その後、イスラエル、トルコ、アイスランドの3か国も加わり、2016年の早い段階での妥結を目指し交渉を行なっている(詳細は、第Ⅱ部第5章2.(3)環境物品交渉を参照)。

 

最終更新日:2017年12月14日
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