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RTA(地域貿易協定)

1.地域貿易協定とは

 地域貿易協定RTA: Regional Trade Agreement)とは、自由貿易協定FTA Free Trade Agreement)と関税同盟Customs Union)との総称です。

FTAとは、関税及びその他の制限的な通商規則を、実質上のすべての貿易について取り除くことにより、一定地域内の貿易を自由化するものです。米国、カナダ、メキシコによるNAFTAがその例です。

関税同盟とは、域内の関税及びその他の制限的な通商規則を、実質上のすべての貿易について撤廃すると同時に、各締約国が域外から輸入する産品に対する関税その他の通商規則を実質的に同一にするものです。ECがその例です。

RTAは、WTO協定においては最恵国待遇(MFN: Most-Favored-Nation Treatment)原則の例外として認められていますが、MFN原則の空洞化を防ぐために、RTAを設ける際に満たすべき要件が、モノの貿易についてはGATT24条において、サービス貿易についてはGATS5条においてそれぞれ定められています。

GATT24条における関税同盟、自由貿易地域、中間協定の要件

(第245項、8項の要件)

 

 

245

248

 

関税同盟

(a) 域外に対し、関税その他の通商規則が、関税同盟の組織前の関税の全般的な水準及び通商規則より高度なものであるか又は制限的なものであってはならない。

(a)(i) 関税その他の制限的通商規則(11条、12条、13条、14条、15条及び20条を除く)を構成地域間の実質上のすべての貿易について廃止する。かつ、

(ii) 同盟の各構成国が、実質的に同一の関税その他の通商規則をその同盟に含まれない地域の貿易に適用する。

自由貿易地域

(b) 域外に対し、関税その他の通商規則が、地域統合前にそれらの構成地域に存在していたものより高度又は制限的であってはならない。

(b) 関税その他の制限的通商規則(11条、12条、13条、14条、15条及び20条を除く)を構成地域間の実質上のすべての貿易について廃止する。

中間協定

(c) 上記(a)又は(b)に加え、妥当な期間内に地域・同盟を完成させるための計画及び日程を含まなければならない。

 

 

 (補償的調整)
  関税同盟:第245(a)の要件を満たすに当たり、譲許税率よりも関税を引き上
げる場合には、補償的調整を行う(第
246
項)。

(締約国団への通報、締約国団による検討)
 
・自由貿易地域、関税同盟又は両者の中間協定に参加することを決定する締約国は、その
旨を直ちに締約国団に通報しなければならない(第
247(a))。
 
・通報後、締約国団は、中間協定に含まれる計画及び日程をその中間協定の当事国と協議
して検討し、適当な場合には勧告を行う(同項
(b)
)。

 

GATT24条の明確化のための解釈了解など

(a) 1994年のガット第24条の解釈に関する了解

  ・ガット第245(a)にいう関税同盟の「関税の全般的な水準及び通商規則」における関税の計算方法には、貿易量を加味した加重平均関税率を用いる(パラグラフ2)。

  ・ガット第245(c)にいう中間協定における地域統合の完成までの「妥当な期間」は、原則10年以内とする(パラグラフ3)。

  ・関税同盟の構成国が譲許関税率を超えて関税を引き上げる場合には、関税譲許の修正等を行う前にガット第28条(条許表の修正についての手続き)に基づき交渉を開始する(パラグラフ4)。

  ・関税同盟の設立の結果として、関税率の削減の利益を得る加盟国は、関税同盟の構成国に対し補償的調整(いわゆる「逆補償」)をする義務はない(パラグラフ6)。

  ・物品理事会は、地域統合の創設、構成国の増加等に関する作業部会の事実認定の報告に基づいて適当な場合には勧告を行う(パラグラフ7)。

(b) アンチダンピング協定第43

  二以上の国がガット第248(a) の規定により、単一の統一された市場としての性格を有する統合の水準に達した場合には、統合された全地域における産業は、アンチダンピング協定の適用上、一つの国内産業とみなされる。

(c) 補助金協定第164

アンチダンピング協定と同様に規定。

(d) セーフガード協定第11項脚注

  本協定のいかなる規定も、ガット第19条と第248項との関係についての解釈に予断を与えるものではない。

(e) 原産地規則協定附属書

  一般特恵関税と並び、地域貿易協定における特恵関税についても、以下のようなことを確保。

  ・特恵原産地規則が適用される場合において満たされるべき要件を明確に定めること(パラグラフ3(a)(i))。

  ・特恵原産地規則は積極的な基準を基礎としなければならないこと(パラグラフ3(b))。

  ・特恵原産地規則に関する法律等をガット第10条1項(貿易規則の公表)に従って公表すること(パラグラフ3(c))。

  ・特恵原産地規則を遡及的に適用してはならないこと(パラグラフ3(e))。

  

サービス協定(GATS)第5条(経済統合)

以下の要件の下に域内のサービス貿易を自由化する協定を締結することができる。

  ・分野の数、影響を受ける貿易量及び提供の態様を勘案して、「相当な範囲の分野」を対象とすること(第1(a))。(ガット第248項では、「実質上のすべての貿易について」と規定されている。)

  ・実質的にすべての差別が協定発効時に存在しないこと又は合理的期間内に撤廃されること(第1(b))。

  ・協定外の加盟国に対して、それぞれの分野におけるサービス貿易に対する障壁の一般的水準を当該協定発効前の水準から引き上げるものであってはならない(第4項)。

  ・逆補償を求めてはならない(第8項)。

  ・なお、サービス協定において、地域統合を審査するための作業部会は「設置することができる」と規定されているのみで、ガットと異なり必ずしも義務付けられていない(第7(a))。

   開発途上国の間でのRTAについては、開発途上国に対する貿易上の特別待遇の根拠を定める授権条項“Enabling Clause”)において、以下の要件を満たすことを条件に設立を認めています。

 

授権条項における要件

(要件)

  ・開発途上国の貿易を容易にし、かつ促進するように及び他の締約国の貿易に対して障害又は不当な困難をもたらさないように策定されなければならない(パラグラフ3(a))。

  ・関税その他の貿易制限を、最恵国待遇の原則に基づいて軽減し又は撤廃することに対する障害となってはならない(パラグラフ3(b))。

(締約国団への通報、協議)

  ・締約国団に対する通報及び情報提供(パラグラフ4(a))。

  ・利害関係を有する締約国の要請があった場合には、速やかに協議を行うための適当な機会を与えること(パラグラフ4(b))。

 

2.問題の所在

従来、GATT24条およびGATS5条が求める要件の具体的解釈が不明確であることや、授権条項がGATT24条との関係について触れていないため授権条項によるRTAに対する規律の適用関係が不明確であることが、WTO体制の形骸化を招きうる問題となっていると指摘されてきました。

  また、WTOに通報されたRTAは、CRTA(地域貿易協定委員会。GATT24条及びGATS5条を根拠とするRTAの場合。)またはCTD(貿易と開発委員会。授権条項を根拠とするRTAの場合。)で審査されますが、その手続きに時間がかかっており、審査待ちのRTAがたまっていることや、当事国が提出すべき情報等についての詳細な手続規定を欠くことから、RTAの審査に対する透明性を高めることが課題となっていました。

そのため、ドーハ宣言によるルール交渉のマンデートにより、アンチダンピング及び補助金と並び、RTAに対するWTO協定の規律及び手続を、明確化及び改善するために交渉することが合意されました。

(ドーハ宣言パラグラフ29

We also agree to negotiations aimed at clarifying and improving disciplines and procedures under the existing WTO provisions applying to regional trade agreements.  The negotiations shall take into account the developmental aspects of regional trade agreements.

3.交渉の現状

論点は、大きく分けて、RTAWTOへの通報手続などの透明性と、RTAに適用されるWTO協定の規律の明確化との2つあります。

(1) 透明性については、2002年からの交渉の末、通報時期や通報内容などを定めた一般理事会決議案が既にできています。2006723-24日に行われたG6閣僚会合を受け、現状はドーハ交渉全体が凍結されていますが、交渉が再開されれば、一般理事会での採択により、ドーハ開発アジェンダのアーリーハーベストとして、一括約束(single under taking)に先がけて、暫定的に適用が始まることが期待されています。

従来の運用からの主な変更点は次のとおりです。

  RTA審査は通報から1年以内に終える。(パラグラフ6

(なお、文言としては、「審査(factual examination)」を用いることを途上国が懸念したため、かわりに正確には「検討(consideration)」を用いています。)

 

  授権条項根拠のRTAは、従来通りCTD(貿易と開発委員会)で審査するが、他の事項と同時に議論するのでなく、専らRTAを審査するための会合(dedicated session)として開催。(パラグラフ18

 

  RTA当事国は必要なデータをWTO事務局に提出し、WTO事務局が事実報告書を作成。(パラグラフ7b))

(従来は、ほとんどすべての審査報告書が事務局でなく当事国によって作成されてきました。)

 

RTA透明性メカニズム決議案

RTA透明性メカニズムの骨子(日本語)

 

(2) WTO協定の規律の明確化は、RTAによる自由化の水準(自由化すべき貿易のカバレッジなど)、途上国配慮の内容(Special and differential treatment)などが論点です。WTO協定制度自体の問題という意味で、システミックイシューと呼ばれます。200512月の香港閣僚宣言はルール交渉グループに対し、2006年末までに適切な成果に達するよう交渉を進めることを指示していますが、各論点について各国の意見が対立し、議論はあまり進んでいません。

 

(香港閣僚宣言附属書D

II.  Regional Trade Agreements

3.           We also note with appreciation the work of the Negotiating Group on Rules on WTO's disciplines governing RTAs, including inter alia on the "substantially all the trade" requirement, the length of RTA transition periods and RTA developmental aspects.  We instruct the Group to intensify negotiations, based on text proposals as soon as possible after the Sixth Ministerial Conference, so as to arrive at appropriate outcomes by end 2006.

 

カバレッジの考え方について、豪州、EU、中国、日本などが論点ペーパーを提出しています。

 

カバレッジに関する各国の提案

        - EU

        - 豪州

        - 中国

        - 日本(日本語英語

                     


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