| 1,TRIPS協定とは TRIPS協定は、知的財産権全般(著作権及び関連する権利、商標、地理的表示、意匠、特許、集積回路配置、非開示情報)の保護をする協定です。WTO協定の一部となったことで、WTOの紛争解決手続を用いることができます。 2,TRIPS協定とドーハ・ラウンド 2001年11月にドーハ閣僚会議が開催され、閣僚宣言が採択されました。TRIPSは、ドーハ閣僚宣言、実施問題に関する決定、未解決の実施問題、TRIPSと公衆衛生に関する宣言の4つの文書に記載されています。ドーハ閣僚宣言には、12段落(b)及び19段落(TRIPSとCBDの関係ほか)、17段落(TRIPSと公衆衛生)、18段落(ワイン・蒸留酒の地理的表示の多数国間通報制度登録創設交渉)にTRIPS関連の記載があります。 3,論点 ☆地理的表示☆ ① ワイン・スピリッツの地理的表示の多数国間通報登録制度(TRIPS協定23条4項で「ぶどう酒の地理的表示の通報及び登録に関する多国間の制度であって、当該制度に参加する加盟国において保護されるぶどう酒の地理的表示を対象とするもの」と規定されている)の創設(ドーハ閣僚宣言18段落、交渉項目):TRIPS理事会特別会合にて議論されている。 ② 現在ワイン・スピリッツについてだけ認められている追加的保護の対象産品を拡大すること(ドーハ閣僚宣言12段落(b)、実施問題の項目の1つ、非交渉項目):WTO事務局次長主催の協議の場で議論 地理的表示とは、単なる商品の生産地表示ではなく、"シャンパン(ワイン)"のように、生産地表示が生産地に由来する商品の品質や評判を想起させるものをいいます。TRIPS協定により、知的財産権として保護することが義務付けられています。 TRIPS 協定第22条では、消費者の誤認混同を要件に地理的表示一般の保護を想定しているのに対し、同第23条では、ぶどう酒(ワイン)と蒸留酒(スピリッツ)について、誤認混同の有無を問わず地理的表示に強力な法的保護を与えることを想定しています。これには、第22条の保護に追加する保護という意味で「追加的保護」という言葉が使われています。 この地理的表示に関して、2001年のドーハ閣僚宣言(パラグラフ18)において、(ⅰ)ワイン・スピリッツの地理的表示の多数国間通報登録制度創設につき新ラウンドの枠内で交渉を行うこと(ビルトイン・アジェンダ)、(ⅱ)第23条に規定されている地理的表示の追加的保護の対象産品をワイン・スピリッツ以外の産品に拡大することにつき、2002年末までのTRIPS 理事会での議論の結果を貿易交渉委員会へ報告すること、が合意され、以後、精力的な議論が行われています。 現在、ワイン・スピリッツの地理的表示の多数国間通報登録制度創設についてはTRIPS 理事会特別会合で、地理的表示の追加的保護の対象産品拡大についてはWTO事務局次長主催の協議の場で議論が行われていますが、EU、スイス、インド、東欧等の地理的表示の一層の保護強化を主張する諸国と、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等の現在の保護水準の維持を主張する諸国との間の対立は激しく、議論の収束には至っていません。 ☆ TRIPSとCBD(生物多様性条約)の関係☆(ドーハ閣僚宣言、実施問題の一つ、非交渉項目):TRIPS理事会及びWTO事務局次長主催の協議の場で議論 ドーハ閣僚宣言12段落(b)及び19段落に記載があります。香港閣僚宣言39段落に基づき、議論を強化することとなりました。 1993年に発効したCBD には知的財産に関する規定が含まれており、これら規定とTRIPS協定の関係について、2001年11月のドーハ閣僚宣言(パラグラフ12(b)及び19)において検討を行うことが合意され、TRIPS 理事会を中心に検討が行われてきました。しかし、遺伝資源等の出所や原産国、遺伝資源等の利用にかかる事前の同意、及び公正かつ衡平な利益配分の証拠につき、特許出願中に開示を義務づけるため、TRIPS 協定を改正するよう求めるインド、ブラジル、ペルー等の諸国と、我が国、米国等、TRIPS 協定とCBD は抵触なく、相互補完的に履行可能であり、CBD の目的を達成するに当たってTRIPS 協定の改正は不要とする諸国との間に意見の隔たりが大きく、議論の収束には至っていません。
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